※東方原作キャラが出てきます
※お嬢様が姉御口調です
※さとり様が内気な少女です
※捕食種設定が出てきます
それでもよければどうぞ
紅魔館の日常(さとりん来襲編)
霧の湖の畔に建つ悪魔が棲む館、紅魔館。
そしてここは紅魔館のベランダである。
そこでは紅魔館の主と客人がテーブルに備え付けられた椅子に向かい合う形で腰かけていた。
テーブルの上にはティーカップが2つ。
今は主と客人の爽やかなティータイムであった。
「お久しぶりです…レミリア」
「そうだね、あんたがなかなか来てくれなかったから」
「…すみません…」
客人は遠慮がちに謝る。
レミリアはその顔を見てはあ、と溜息をつく。
「あんたのことだから言わなくてもわかってると思うけど…」
「謝る必要なんかない、ですか?…すみません…」
「ああ、もう良いよ。で、今日はどうしたんだい?…さとり」
客人…古明地さとりはその言葉に照れ臭そうに微笑した。
紅魔館の主であるレミリア・スカーレットと地霊殿の主である古明地さとり。
この2人は出会ってそれほど間がある訳ではないのだが、自然と馬が合った。
2人とも共通の悩みを抱えていたからである。
そう、狂気を抱えた妹のことだ。
レミリアは破壊衝動を持ち、かつ引きこもりがちな妹…フランドール・スカーレットについて。
さとりは心を閉ざし、かつフラフラ無意識で歩き回るようになってしまった妹…古明地こいしについて。
2人はそれぞれ頭を抱えていた。
そのような共通の悩みを抱えていた2人の仲は一気に接近した。
変わった妹を持った姉にしかわからない苦労や愚痴などをお互いぶつけあった。
特にさとりは自分がコミュニケーション能力不足だと言うことも忘れて、とにかく愚痴を思いっきり吐いた。
そうして、このような奇妙な友人関係が生まれたのである。
また、この2人には能力にも共通点があった。
レミリアは他人の運命を見て、それを操る能力。
さとりは他人の心を覗き、考えていることを把握する能力だ。
つまり、2人とも他人のことを把握する能力を持っていたのだ。
お互いが似たような能力を持っているということもあって、お互いの能力に嫌悪感を感じることがなかったというのも2人の仲が急接近した要因とも言えよう。
とはいえ、地上の妖怪であるレミリアは地霊殿がある地底には行くことは出来ない。
それ故、自然とさとりの方が紅魔館に訪れるようになっていた。
しかし、それも万事上手く行った訳ではない。
さとりは第三の眼により、他者の心を読むことが出来る。
そして、それはレミリア以外の紅魔館のほとんどの住民には歓迎されることではなかった。
現に、今は紅魔館のほとんどの住民は外出している。
その中には、メイド長である十六夜咲夜も含まれていた。
さとりに心を読まれたくなかった為だ。
今の紅魔館に残っているのは、主であるレミリア以外では門番である美鈴と極少数の住民しか残っていない。
これはさとりが紅魔館に来訪する度に行われるのだ。
ちなみに、最初にさとりが紅魔館にやってきた時は咲夜も残っていた。
しかし、その時にさとりのいつもの悪い癖が出てしまったのだ。
さとりは相手の心を読むだけでなく、相手の考えていることを得意気に語ってしまう癖がある。
そして、その癖を咲夜の前でやってしまったのだ。
暴いてしまったのだ。
普段から考えているお嬢様の妄想を。
咲夜のプライベートスクウェアを。
敬愛するお嬢様の前で。
お嬢様の客人の口を封じる訳にもいかず、咲夜に出来たことは時を止め、さとりの第三の眼の効果範囲から逃げることだけであった。
以降、さとりの前に咲夜が姿を現すことはなかった。
話を戻そう。
最も、さとりは今更自分の能力が恐れられるということはあまり気にしてはいない。
いや、気にしていないと言う訳でもないのだが、数少ない友人に会いに来るという喜びの方が大きかった。
「ええと…今日は見せたい物があって来たんです」
「…見せたい物?」
「これです」
風呂敷に包まれた『何か』をテーブルの上に乗せるさとり。
その『何か』はもぞもぞと動いていた。
「これ…生き物かい?」
「開けてみれば分かりますよ」
ニコニコ笑うさとり。
怪訝そうな顔をしながらレミリアが風呂敷をほどく。
中から出てきたのは…
「ゆっくりとらうましていってね!」
紫色の髪をした下ぶくれのある顔。
それはさとりの顔によく似ていた。
「これ…あんたの?」
「私のペットが拾って来たんです」
そこに現れたのはゆっくりさとりんだった。
「へえ、あんたのゆっくりも居たんだね」
幻想郷に最近現れた生物であるゆっくり。
その生物は幻想郷に住む住民の顔を模した姿をしている。
数多くのゆっくりを見てきたレミリアにとって、今更新種のゆっくりが現れたところで何も驚くことはなかった。
「ゆっくりとらうましていってね!!」
ゆっくりさとりんの元気な声が響く。
レミリアはテーブルの上に乗っているゆっくりさとりんを一瞥する。
「こいつもあんたのように心を読むことが出来るのかい?」
ゆっくりにはオリジナルの一部の能力、性格などを受け継いでいることがある。
非常に稀にではあるが、スキマを使うことが出来るゆっくりゆかりんや、時を止めることが出来るゆっくりさくや、というのも存在する。
だから、このゆっくりさとりんにも何か特殊な能力があるかもしれないとレミリアは考えていた。
「それがですね…」
「おね~さぁ~ん!さぁくやぁ!れみぃおなかぐ~ぐ~だぞぉ~!!!」
さとりの声をかき消す程の叫び声。
叫び声が聞こえたと思ったら今度は丸っこいピンク色の物体がベランダに走ってきた。
「あれ、あんた起きたのかい」
「こんにちは、れみりゃちゃん」
「うぁ!さとりおね~さんがいるぞぉ!!」
お腹を抑えながら走ってきたピンク色の物体。
紅魔館に住んでいる胴付きのゆっくりれみりゃであった。
紅魔館の住民の一人であるゆっくりれみりゃ。
その名の通り、紅魔館の主であるレミリア・スカーレットをオリジナルとしたゆっくりだ。
咲夜が突然どこからか拾ってきて以来、紅魔館の住民の一人となっている。
れみりゃは紅魔館の住民の中でさとりを避けることがない数少ないうちの一人だ。
いや、それどころか思いっきりさとりに懐いてしまっていた。
「なでなで」
「う~♪う~♪さとりおね~さんのなぁ~でなぁ~ではとってもゆっくりできるぞぉ♪」
れみりゃには覗かれて困るような思考は持っていなかった。
さとりに懐きこそすれ避ける理由がなかったのだ。
さとりもまた、れみりゃと一緒に過ごすことはとてもゆっくり出来たのだった。
「う~…なぁでなぁではゆっくりできるけど…おなかぐーぐーはゆっくりできないぞぉ…」
再びお腹を抑えて体を縮こませるれみりゃ。
「困ったねぇ。ここにはあんたが食べられそうなお菓子はないよ。今は咲夜も留守だし」
「いやいやぁぁ!!れみぃおなかすいたのぉ!!ゆっくりしたいのぉ!!」
両手をばたばたさせて泣き叫ぶれみりゃ。
困ってしまう2人。
この場は紅茶しかなく、れみりゃの腹を満たせそうな物はない。
「おたべなさい!おたべなさい!」
「…う?」
涙目のれみりゃの視界に入ってきたもの。
それは自分を食べろと催促をするゆっくりさとりんだった。
そして、れみりゃはお腹が空いている。
この申し出を断る理由はれみりゃにはなかった。
「いっただっきま~すだっぞぉ♪」
「ちょっと!れみりゃ!」
「あっ、ダメ!!」
満面の笑顔でゆっくりさとりんに噛みつくれみりゃ。
レミリアとさとりの制止の声にも耳を貸さなかった。
「…う?」
噛みついたれみりゃの顔が一瞬固まる。
一方、さとりんの口元はニヤリとわずかに歪んだ。
そして…
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
噛みついたれみりゃの方が大きな悲鳴を上げた。
「え!?どうかしたのかい!?」
「にがにがぁぁぁぁぁぁ!!!からからぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「れみりゃちゃん!お茶飲んで!」
泣き叫ぶれみりゃに素早くお茶を飲ませるさとり。
差し出されたお茶を躊躇なく飲み込むれみりゃ。
レミリアには何が起きたのか分からない。
悲鳴を上げるとしたら噛みつかれたさとりんの方だと思っていた。
しかし、さとりんは噛みつかれたというのに平然としている。
「ゆっくりとらうましていってね!ゆっくりとらうましていってね!」
いや、それどころかテーブルの上でぴょんぴょん跳ねている。
レミリアの眼にはさとりんが喜んでいるようにしか見えなかった。
一体どういうことなのか。
「よしよし…なでなで…」
「う~…う~…」
先程まで泣き叫んでいたれみりゃも大分落ち着いてきたようだ。
さとりのなでなでに気持ちよさそうにしながら、眠そうな顔をしている。
先程まで寝ていたというのに、泣き叫んだからかもう眠くなってきたようだ。
「う~…」
「ゆっくりしていってね…れみりゃちゃん…」
れみりゃはさとりの腕の中で静かに眠りだした…。
「…で、どういうことか説明してくれるかい?」
眠ってしまったれみりゃをベッドまで運んだ2人は再びベランダまで戻ってきた。
さとりんは未だにテーブルの上で跳ね続けている。
すっかりご機嫌な様子だ。
「あのですね…この子は…特殊な力なんてないんです…ただ…」
「ただ?」
「その…この子の中身がですね…」
「中身?」
「おたべなさい!おたべなさい!」
「とりあえずこの子の中身を見てもらえませんか」
レミリアはむにゅっとさとりんの頬の一部分を千切る。
本人(?)が自分を食べろと言ってる以上、遠慮することはないとレミリアは考えた。
そして、千切った頬に付いてきた中身をその深紅の瞳で観察する。
「…うわぁ」
絶句するレミリア。
ゆっくりさとりんの中身は真っ黒。
ダークマターか何かだろうか?
何が入っているのかレミリアにはさっぱりわからなかった。
しかし、一つだけ確信していることがある。
これは食べられるようなものではないということだ。
手に持って観察しているだけでも刺激臭が漂ってくるのだ。
辛いような苦いような臭いような…何とも言えない臭いだった。
「この子は『ゆっくりとらうましていってね』と何度も言ってますよね?」
「ん、ああ、そうだね」
そういえば、とレミリアは思い出す。
最初に風呂敷の中から現れた時も言っていた。
あの言葉の意味は…と、レミリアが考えたところで、何となく一本の線で繋がったような気がした。
レミリアがさとりの顔を見る。
「レミリアが考えている通りです」
さとりが静かに頷く。
どうやらレミリアの考えは間違っていなかったようだ。
「…つまり、こいつはクソ性格が悪いクソ不味い饅頭だってことかい?」
レミリアが歯に衣を着せぬ言い方でさとりに問いかける。
ゆっくりさとりんははっきり言って常人が食べられうような饅頭ではない。
大食漢と言われるゆっくりゆゆこでさえも食べられるかどうか定かではない。
そんな自身を、さとりんは『おたべなさい!』と自身を食べるように申し出る。
空腹な相手なら十中八九さとりんを食べようとするだろう。
しかし、それはさとりんの罠でしかなかった。
さとりんを食べた相手は、文字通りトラウマになるくらいの味を体験することとなる。
そして、あまりの不味さに苦しんでいる相手を見て、笑いながらこう言うのだ。
「ゆっくりとらうましていってね!」
と。
レミリアにとって家族同然であるれみりゃが罠にはめられた。
しかし、そのことに関してレミリアはさとりんに怒りを感じることはなかった。
そこまで紅魔館の主は狭量ではない。
むしろそのふてぶてしさに感心してしまった。
「れみりゃにもこいつくらいのふてぶてしさがあればいいんだけど」
「あの子はあのままで良いんですよ。可愛いじゃないですか」
「そうかい?まあ、ふてぶてしいれみりゃなんて想像つかないけどね」
ふてぶてしいれみりゃを想像してレミリアは笑う。
そんなレミリアを無言で見ていたさとりだったが、突然申し訳なさそうに頭を下げた。
「本当にごめんなさい。私がきちんと説明していればれみりゃちゃんは…」
「ああ、いいのさ。騙されるれみりゃが悪いのさ」
レミリアは自身の過去を思い出す。
幻想郷のルールを知らず、好き勝手に暴れて痛い目を見た時のことを。
これでれみりゃも少しは警戒心を持ってくれれば、と考えていた。
「ま、れみりゃには後でお仕置きだけどね」
レミリアはニヤリと口元を歪ませる。
レミリアとれみりゃの間では、紅魔館の中にいるゆっくりを食べてはいけない、という約束が成されていた。
紅魔館に住んでいるゆっくりはれみりゃだけではない。
研究用の為に図書館の主が飼っているゆっくりもいれば、司書や妖精メイドなどゆっくりを館内で飼っている者もいる。
一方、れみりゃは咲夜に拾われて紅魔館に来る前はゆっくりを捕食して生きてきたらしい。
それ自体はレミリアは悪いことだとは全く思わない。
自身も人間を口にしているし、生きる為には捕食することは当然だと考えているからだ。
しかし、紅魔館の住民を襲うとなると話は別だ。
レミリアは紅魔館の住民を家族同然だと考えていた。
捕食すること自体は何とも思わなくても、家族を襲うことはレミリアは許さなかったのだ。
れみりゃが紅魔館に来て間もない頃、図書館の主が研究用に飼っているゆっくりを捕食しようと襲ったのだ。
図書館の司書である小悪魔に難なく止められたから良かったものの、何度も同じことが起きては館内のゆっくりはゆっくりできない。
だから、その時にレミリアはれみりゃと約束したのだ。
ここにいたいならば館内のゆっくりを襲ってはいけない、と。
それ以来、れみりゃがゆっくりを襲うことはほぼ無くなった。
極稀に空腹のときに「ぎゃお~!たべちゃうぞぉ~!」と襲ってしまうことがあったが。
全て未遂に終わった上に、れみりゃもその度におやつ抜きなどという罰を食らっているので特に問題は起きてはいなかった。
「ゆっくりとらうましていってね!」
未だにテーブルの上を跳ね続けているさとりんをレミリアが一瞥する。
「さとり、こいつどうするのさ?」
「…考えてませんでした」
さとりは恥ずかしそうに顔を俯かせる。
「ふ~む…」
レミリアはさとりんを見ながら考える。
クソ不味い饅頭…。
誰かに食べさせてみようか…。
「そうだ!」
「え?」
さとりがレミリアの声に驚いて顔を上げる。
そしてレミリアの思考を読み、さとりもわずかにニヤリと口を歪ませた。
悪戯を思いついたかのような顔だった。
「…面白そうですね」
「だろう?あんたもあいつに借りはあるだろ?」
レミリアとさとりはそう言って立ち上がる。
「じゃあ行こうか」
「はい」
「博麗神社へ!」
博麗神社
「…で、珍しいコンビが何しに来たのよ。さっさと帰って」
「相変わらずつれないねぇ」
「私達は貴方にプレゼントがあって来ました」
「いらない、胡散臭い」
「…これでも?」
「…諭吉!?」
「…一気に乗り気になりましたね」
「おたべなさい!おたべなさい!」
「ほ、施しは受けないわよ」
「勘違いしないでくれる?これはれっきとした賽銭だよ」
「さ、賽銭…諭吉が賽銭箱に…」
「さあさあ、頬を一抓りで良いから食べてごらんなさい」
「さ、先にお賽銭よ…」
「相変わらず思考が金のことばかりですね…」
「うっさい!」
(すたすた)
「入れてきたよ」
「では、これをどうぞ」
「おたべなさい!おたべなさい!」
「一口だけよ?」
(むにゅっ、ぱくっ)
「「(食べた!!)」」
数時間後
「お嬢様…シエスタをしてたらいつの間にかいなくなっちゃったけど…何処に行っちゃったんだろう…」
「ねえねえ」
「…うわっ!?貴方は!?(気を読める私がこんな至近距離に近寄られるまで気付かないなんて…)」
「お姉ちゃん来なかった?」
「貴方は…さとりさんの妹さんでしたっけ?」
「うん、そうよ」
「今は…いませんね。さとりさんもお嬢様も紅魔館の中に気が感じられません」
「そっかぁ」
「清く正しい文々。新聞の号外ですよ~」
「あ、御苦労様」
「ねえねえ、それ何て書いてあるの?」
「ええと…凶悪な鬼巫女が出没…?付近の住民は避難されたし…?」
,.-─- 、
∧_,,∧\書/
/\ ( e'ω'a)∩‐
| 後 ⊂ /
ヽ/ r‐' /
`""ヽ_ノ
最近マンネリ化しているような気がしてきたので、最後は少々手法を変えてみました。
- 新しい…読心にばかりイメージが先行してトラウマを植え付ける(否呼び覚ます)という発想がなかった… -- 名無しさん (2011-02-17 11:16:33)
- とらうまと言うからもこたんかと思ったよ! -- 名無しさん (2011-02-17 15:23:50)
- なんという根性悪 -- 名無しさん (2011-02-18 04:42:09)
- リンゴリンゴ!!!食べたいな!そのリンゴ -- ひやだなぁ、、、、、 (2012-08-02 06:48:04)
- ひまだにゃー、、、 -- 名無しさん (2012-08-02 06:50:21)
最終更新:2012年11月14日 22:50