※ゆっくりを野生動物として扱われるのを不快に感じる方
※捕食種設定を不快に感じる方
※ゆっくりの戦闘シーンを不快に感じる方
※酷い目に遭ってしまうゆっくりがいるのを不快に感じる方
※素晴らしい小説を求めている方
は、この小説に合いません。
申し訳ありませんが、ゆっくりお引き返しください。
それでも良ければどうぞ
ミリィのゆっくり冒険記 第十話
ミリィとレインの戦闘の直後…
マーサとメイシャが親れいむの傍で話していた。
「ゆ…メイシャ、れいむはどうなんだぜ?」
「…」
メイシャは答えない。
マーサの中で焦りばかりが募る。
「メイシャ!」
「残念ながら…」
「…!」
マーサはその言葉に露骨に顔を青ざめる。
親れいむは餡子を出し過ぎている。
ここまで出てしまうと、仮に捕食種の再生力でも手遅れだろう。
もしこのれいむが胴付きであったならば、また話は別だったかもしれないが。
「お…おちび…ちゃ…んは…」
体から餡子を出しながらも子供を案じる親れいむ。
最早生きてるだけでも不思議なくらいだというのに。
それも親の愛が成せる業か。
「いいからゆっくりしていなさい。貴方の子供もゆっくりしてますから」
「おち…びちゃ…ん…ゆっ…くり…」
「…すみません」
親れいむはそのまま息を引き取った。
それを見たマーサは自分の両親に思い出す。
胴なしれみりゃに体の中の餡子を吸われてしまった両親を。
「レイィィィィィィィン!!!」
マーサがレインに向かって叫ぶ。
その表情は怒りに満ちている。
一方のレインは微笑みながら地面に寝ているミリィの頭を撫でている。
とても愛おしそうに。
「どうして…どうしてぇ!!!!」
「うるさいなぁ…お姉様が起きちゃうでしょ…」
ようやくレインはマーサの方を向く。
それはとても冷たい無表情。
先程までの優しげな微笑みは消えていた。
「なんで…どうして…れいむにこんなことしたんだぜ!?」
「お腹が減ったんだからしょうがないでしょ~?まあこいつらがムカついたのもあったけど…」
「そんな…そんなので…!」
マーサには納得がいくはずもない。
お腹が空いた?ムカついた?
そんな理由で親れいむは死ななければいけなかったと言うのか?
マーサは怒りで体全体が煮え繰り返りそうだった。
「レインさん」
メイシャの声だ。
次の瞬間、マーサは自分の耳を疑うことになる。
「お腹が空いたでしょう。このれいむをお食べなさい」
その言葉をマーサは信じられなかった。
メイシャは…メイシャもレインとは違ってゆっくりを食べないとマーサは思っていた。
マーサはひどく裏切られた気分になる。
一方、メイシャはこのれいむを食べるのが当然だと考えていた。
レインが行った行動は突然だったとはいえ、れっきとした『狩り』だったのだ。
このれいむをここで食べなければ、自分達は無意味にれいむの命を奪ったということになってしまう。
捕食種としてのプライドから、メイシャはそれだけは絶対に避けたかった。
「どぼじで…どぼじでゆっくりをたべようとするんだぜぇぇぇぇl!!!」
「お腹が空いたらご飯を食べる。当然でしょ」
レインは素っ気なく返事し、息を引き取ったれいむに向かう…前に、転がっている子れいむを左手で拾う。
「あ~あ…お姉様に食べてもらおうと思ったのに」
レインは右手で子れいむに付いた埃を払う。
気絶しているのか、子れいむは動かない。
「カラス、これ持ってなさい」
埃を払い終わると子れいむをメイシャに向かって投げる。
それをメイシャは上手く子れいむを口でキャッチする。
そしてそのままもぐもぐと食べ始める。
それを見てマーサは震えあがる。
今、捕食種としてのメイシャをマーサは目撃してしまったのだ。
「誰が食べろって言ったのよ…」
「…実は私ももう限界だったんですよ」
「せっかくお姉様にあげようと思ったのに…」
メイシャの空腹も限界だった。
メイシャもまた、丸二日の間、何も食べていないのだから。
森を出てから碌に言葉を発しなかったのも、体力を温存する為という意図もあった。
さらに、親れいむが死んでしまった以上、この子れいむを仮に逃がしたところで長く生きられないだろうという考えもあった。
勿論、この子れいむを自分達に同行させるというのは論外だ。
この子れいむが、自身の親の命を奪った相手と同行するなんてことはありえないのだから。
マーサの時とは話が違う。
だからメイシャはこの子れいむを迷うことなく食べる事が出来た。
「まあいいわ。またどっかでとればいいし」
レインは釈然としない様子だったが、腹を満たすことを優先させることにした。
一方、マーサの心は恐怖で占められていた。
捕食種の会話。
それをこれ以上聞いていたくなかった。
「それにしても、無理矢理食べさせるのはまだ早かったんじゃありませんか?」
「甘いわね。お姉様はもうフラフラだったわよ。ずっと見てる私が言うんだから間違いないわ。それにあんたももう限界だったでしょ?」
「まあ…ちょっと危なかったですね。3日間の絶食はさすがに勘弁です」
「だったら良いじゃない」
マーサは涙が出てきた。
ミリィと一緒にいれば…ゆっくりできると思っていたのに。
「ゆ…あ…」
涙が止まらなかった。
「どぼ…じで…どぼ…じで…」
「マーサさん」
メイシャの声だ。
優しげな声。
「すみません、貴方には刺激が強すぎましたね」
マーサにとってはそういう問題ではない。
そういう問題では…。
と、ここでマーサが気付く。
レインが四つん這いになり、親れいむの餡子に口を近づける。
「たべちゃ…たべちゃだめなんだぜぇぇぇぇぇぇ!!」
マーサはレインの前に回り込む。
今、マーサの目の前にいるのは胴付きの捕食種。
どう足掻いてもマーサに勝てる相手ではない。
「邪魔よ、どきなさい」
「れいむを…れいむをたべちゃだめなんだぜ…」
マーサは震えている。
いつ、自分も食べられるか分からないからだ。
「はっ…」
そんなマーサをレインは鼻で笑う。
何を言っているのだ、と言うように。
「あんただって、さっき虫を食べてたじゃない。どうして私達は食べちゃいけないのかしら?」
マーサにはその質問の意味が分からない。
「むしさんは…むしさんはたべものなんだぜぇぇ!」
マーサにとっては。
虫は食べ物でしかなかった。
親から「むしさんはゆっくりできるたべものなんだぜ!」と言われてきたから。
「あんたねぇ…」
レインは反論しようとしたが、口から出てきたのは諦めたようなため息だった。
さっさと餡子を食べたかったし、相手にするのも面倒だったというのもある。
「はぁ…もういいわ。もうそろそろ限界。カラス、あと頼むわ」
「レインさん、先程も言おうと思いましたが、私の名前はメイシャです」
「…意外と拘るのね。お姉様からもらった名前だからかしら?」
「おやおや、嫉妬ですか?」
「…潰すわよ?」
「おお、こわいこわい」
一見はほのぼのとした会話。
中身は殺伐としていたが。
レインが四つん這いになり、れいむの餡子を食べ始める。
「やっぱあんまり美味しくないわね…贅沢は言えないけど」
「ゆ…だからっ!」
「マーサさん」
レインの食事を再び阻止しようとするマーサだったが、メイシャの声に止められた。
「私達も生きているのです。ゆっくりしたいのですよ」
「だから…メイシャやレインもむしさんをたべてゆっくりすればいいんだぜぇっ!」
どうしてこれがわからないのか。
マーサには不思議でたまらなかった。
「マーサさん、虫さんも私達ゆっくりと同じく生きているのではないのですか?」
「ゆっ…?」
マーサには意味がわからなかった。
虫さんは喋らない。
だから生きていない。
マーサはそう思っていた。
「虫さんも生きています。貴方がそれを食べる度に貴方も虫さんをゆっくりできなくしているのですよ」
マーサには信じられなかった。
ずっと虫は食べ物だと思っていたから。
「ゆ…え…うそ…なんだぜ…」
「本当です。貴方にとっての虫さんの扱いも、レインさんや私にとってのれいむの扱いも何も変わらないのですよ」
メイシャはちらりと親れいむだったものを見る。
その顔はゆっくり出来ている、とはお世辞にも言えなかった。
「…このれいむは確かに気の毒だとは思いますし、私もいきなり殴りかかるレインさんにはさすがに私も驚きました。単純と言いますか短気と言いますか…」
「あんた…本当に潰すわよ…」
「おお、こわいこわい」
餡子を食べることを中断し、顔を上げ、メイシャを睨みつけるレイン。
が、すぐに餡子を食べることを再開させる。
レインもまた、空腹の限界だったのだから。
メイシャはこほんと一つ咳払いをする。
「まあ…これだけは言っておきます。私は…多分レインさんもだと思いますが、貴方を食べるつもりはありません」
マーサにはその言葉に説得力を感じなかった。
だったら目の前の光景はなんだと言うのだ。
捕食種がれいむを食べているのではないか。
マーサの疑わしそうな目つきにメイシャは苦笑する。
「私はあなたとは仲良くしていきたいと思っておりますし、私にも理性はあります。まあ、レインさんに理性と言うものがあるのかはわかりませんが…」
「さっきから…喧嘩売ってるの?」
四つん這いの体勢のまま、再び顔を上げてじろりとメイシャを睨むレイン。
メイシャの軽口にもそろそろ苛立ってきたようだった。
そんなレインの様子を見ながら今度はメイシャが鼻で笑う。
「寝ているミリィさんを襲おうとした方が言ってもねぇ…」
「あ、あれは…愛よ!愛!ちょっとキスしようとしただけだし!それもどっかの誰かが邪魔してくれたお陰で出来なかったし!」
レインは色々と手遅れだった。
夜這いを仕掛けようとしていたらしい。
またも脱線してしまった話をメイシャが戻す。
「とにかく…こうも餌がない状況では、私達捕食種はゆっくりを食べて行くしか生きていけません」
「…ミリィも?」
「…それはミリィさんが決めることです。彼女は頑なにゆっくりを食べようとしませんし…まあ、恵まれた環境で育ったからでしょうかね」
「こいつと同じね」
れいむを食べ終えたのか、レインはいつの間にか立ち上がってマーサへと視線を向けていた。
まだれいむの餡子は残っている。
「おや、もう良いのですか?」
「食べ過ぎても動けなくなるしね。残りはあんたにあげるわ」
「レインさんにそんな気遣いが出来るとは…このメイシャ、いたく感動いたしました」
「…やっぱぶん殴る!」
「おお、こわいこわい」
メイシャの皮肉についに怒りだしたレイン。
2匹は空中に飛び、じゃれ合っている。(レインの顔は本気だったが)
レインの拳を難なく避けるメイシャ。
そして、その結果にさらに腹を立てるレイン。
マーサは酷くショックを受けていた。
これまでの自分を否定された気分になっていた。
「あ~…それでですね」
声のした方を見ると、いつの間にじゃれ合いは終わっていたのかメイシャは地上へと戻っていた。
レインを探してみると、レインはミリィをお姫様だっこをしよう持ち上げ…ようとして持ち上がらなかったところが見えた。
どうやらミリィをどこかに運ぶつもりらしい。
「マーサさんにも考えてほしいのですよ」
「なにを…?」
「私達捕食種と一緒に来るのか…それとも…ここで別れるか、そして…」
「私達捕食種が生きる為にゆっくりを食べることは、いけないことなのでしょうか?」
- そら食われる方の想像なんぞできんから、そう言うしかないわな -- 名無しさん (2011-03-06 23:10:47)
- 親れいむ・・・何かこのシリーズいわゆる通常種の扱いがひどすぎる -- 名無しさん (2011-03-07 16:49:17)
- まあ要するに捕食種にとって通常種は虫けらって本音が出たって事。
この世界では捕食種>越えられない壁>通常種という訳だ、いろんな意味で。 -- 名無しさん (2011-03-08 15:49:54)
最終更新:2011年03月08日 15:49