れみりゃ達の日常(収穫編)

※絵本風にしてみました。
※一貫してほのぼのです。
※作中で登場するれみりゃは、全員胴付きのれみりゃです。









よろしければどうぞ







れみりゃ達の日常(収穫編)








ここは日本の山奥の辺境の地、幻想郷。
人間、妖怪、神様までもが共存している異色の地です。
そんな幻想郷は今は秋。
少しずつ寒くなっていこうという少々寂しくなる季節です。

そんな幻想郷にも朝が訪れようとしていました。
朝は誰にでもやって来ます。
神様にも、妖怪にも、人間にも…そして

ゆっくりにも。




ここは幻想郷のさらに山奥…
ある一つの集落にも朝が訪れようとしていました。

「あさだっぞぉぉぉ!!!!」

山奥に元気な声が木霊します。
とても元気な叫び声ですね。

その叫びを合図に、集落は活動を開始しました。

「うっう~♪あさだっぞぉ♪」
「まんまぁ…れみぃまだおねむだぞぉ…」
「おなかすいたどぉ…」
「くか~くか~」

おやおや、寝ながら歩いている子もいるようですよ。
大丈夫なのでしょうか?

「うぁっ!?」

寝ながらフラフラ歩いていたら大木にぶつかってしまいました。
おかげで目は覚めた様ですが、痛そうに鼻を摩っています。

「いたいのぉ…れみぃのかりしゅまあふれるたかだかなおはながぁ…」
「だいじょうぶだぞぉ!もともとひくいぞぉ!」
「うぁっ!!それはききずてならないどぉ!!」

近くにいた少女も鼻を摩っている少女を慰めようとしたのだと思いますが、どうやら言葉が悪かったようです。
そのまま喧嘩を始めてしまいました。
お互いの顔をそのふくよかな手で引っ張り合っています。

「「うにに…」」

喧嘩をする程に元気があると言うことですね。
心配はいらなかったようです。

そんな喧嘩をよそに思い思いに動くピンク色の洋服と帽子を身につけた少女達。
見た目は人間の子供に見えますが、彼女達は人間ではありません。
その証拠に、小さな背中には小さく黒い翼が生えています。
そう、彼女達は胴付きのゆっくりれみりゃ達です。
この界隈には、大小の50匹の胴付きれみりゃが住んでいます。
ここは胴付きのゆっくりれみりゃ達の集落なのです。

「みんなぁ!!ちゅうもくだっぞぉ!!」

おや?
ピンク色の洋服を着たれみりゃの中に、一匹だけ緑色の恐竜の着ぐるみを着たれみりゃがいます。
着ぐるみを着たれみりゃが声を張り上げると、それと同時に周りのれみりゃ達が着ぐるみれみりゃに注目し始めました。
喧嘩をしていた2匹も慌てて向き直ります。
これはどういうことでしょうか。

「おぜうさまからのかりしゅまあふれるおことばだぞぉ!!かりしゅまあふれるみんなぁ♪ゆっくりきいてねぇ~ん♪」
「「「「「「「うっう~♪」」」」」」」

どうやら着ぐるみを着たれみりゃがこの集落のリーダーのようですね。
彼女は元々レアな胴付きれみりゃの中でもさらにレアなれみりゃザウルスなのです。
れみりゃ達は誰もが自分達の事をカリスマだと思っていますが、れみりゃザウルスはそのれみりゃ達の中でも一目置かれる存在のようです。
だからこそ、子供っぽいれみりゃ達をまとめられる訳ですね。

「きょうはいよいよ『しゅ~かく』するぞぉ!!きょうがれみぃたちの『しゅ~たいせ~』だっぞぉ!!」
「「「「「「「うっう~♪」」」」」」」
「みんなのかりしゅまでさいごのしあげにするんだぞぉ!!」
「「「「「「「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」」」」」」

れみりゃザウルスの声に全員が歓声を上げます。
『しゅ~かく』…収穫のことでしょうか。
れみりゃ達は一体何を収穫しようと言うのでしょうか。

「みんなぁぁぁぁ!!!いちおういっておくぞぉぉぉ!!!つまみぐいははしたないからやめるんだぞぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「「「…う~」」」
「どぼじでこえがちいさいのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

さて、オチもついたところで、れみりゃ達の生活をもう少し詳しく見てみることにしましょう。


まず20匹程のれみりゃ達がバケツを持ってどこかへ出かけようとしているようです。
このれみりゃ達が向かったのは山の頂から流れる川。
どうやら水を汲もうとしているようです。

ゆっくり達も喉が乾けば水を飲みます。
それは人間や妖怪と変わらないのです。

れみりゃ達は川に着くと、靴を脱いで川の中に入ります。
水を汲むだけならば、川の中に入らなくても良いのですけどね。
しかし、れみりゃ達は子供っぽく好奇心旺盛で遊び好き。
川があるのなら、離れて見ているだけなどということは出来ないのです。

「うっう~♪ちべたいどぉ♪」
「そぉれ♪ばっしゃ~ん♪」
「うぁぁぁ!!ちべたいぞぉぉぉぉ!!!」
「おかえしだどぉぉぉ!!!」
「てめ~はれみぃをおこらせたぞぉ!!」

おやおや、水汲みそっちのけで水の掛け合いが始まってしまいました。
微笑ましい光景なのですが、はしゃぐと危ないですよ。

「うぁぁぁっ!!」

ほら、言ってるそばから一匹のれみりゃが川の中で滑って転んでしまいました。
洋服はすっかりびしょびしょに濡れてしまいました。

「うぁぁぁぁ…れみぃのおようふくがびしょびしょだっぞぉ…」
「おぼうしがないどぉ!!」
「うあっ!?」

転んでしまったれみりゃが他のれみりゃの指摘により自身の頭を触ると、そこには確かに帽子がありませんでした。
どうやら転んでしまった時に流されてしまったようです。

「れみぃのおぼうしぃぃぃぃ!!」
「みんなでさがすどぉ!!」
「やれやれだぞぉ…」

嫌そうに言うれみりゃも中にはいますが、その目は真剣です。
彼女達は誰もが帽子をとても大切にしています。
その想いは言わずとも伝わるのでしょう。
それからはれみりゃ達による帽子捜索が始まりました。

数匹のれみりゃが川下の方へ飛ぶと、流されてる帽子を発見することが出来ました。
川の流れがあまり早くなかったことが幸いしたようです。

「れみぃのおぼうしぃぃぃ!!!うぁぁぁぁぁぁん!!」
「よかったぞぉ…」
「かったっ!だいさんぶかん!だっぞぉ!」

自分の帽子を見つけたれみりゃが、帽子を抱きしめながら泣き出してしまいました。
余程嬉しかったのでしょう。
ですが、悪ふざけも程々にしましょうね。


さて、他のれみりゃも見てみましょう。
20匹のれみりゃが何処かへと歩いて行きます。
その中にはリーダーであるれみりゃザウルスも混じっています。
一体どこへ向かうのでしょうか。

「うっう~♪ぶれっくふぁすとだっぞぉ♪」
「れいと~こへいくぞぉ♪」
「あぅ~♪れみぃぺこぺこだどぉ♪」

『れいと~こ』…どうやら、彼女達は冷凍庫へと向かうようです。
しかし、ここは電気も届かない幻想郷の山奥。
冷凍庫などあるのでしょうか。

「うっう~♪ついたぞぉ♪」

れみりゃ達が向かったのは岩山の中にぽっかりと大きく口を開けた洞窟です。
ここが彼女達の言う冷凍庫なのでしょうか。
一見普通の洞窟にしか見えませんが…。

「チルノフ~!はいるぞぉ!」

れみりゃザウルスが一声上げると、ぞろぞろとれみりゃ達が洞窟の中へ入って行きます。
チルノフ…とは一体何のことでしょうか。

「うぅ~…さむいぞぉ…」
「しゅ~りしゅ~りしながらはいるどぉ…」
「おしくらまんじゅ~だどぉ♪」
「お~されてなぁくなぁだっぞぉ♪」

洞窟の中は所々霜が張ってあり、とても寒そうでした。
れみりゃ達はお互い身を寄せ合いながら中へと進んでいきます。
これがれみりゃ達の寒さ対策なのでしょう。

そしてある程度中を進むと、そこには山盛の野菜と共に一人の水色の髪をした少女が眠っておりました。
彼女がチルノフなのでしょうか。
れみりゃザウルスが少女に声を掛けます。

「チルノフ~♪おやさいもっていくぞぉ♪」
「…」

チルノフは返事をしません。
しかし、そこら中に落ちている野菜を拾っていくれみりゃ達を止めようともしません。
恐らく、チルノフは了解の意を示しているのでしょう。

この状況はどういうことかと言うと、れみりゃ達とチルノフは契約を結んだのです。
野菜を分けてあげるから、この洞窟を冷凍庫代わりに使わせて欲しいという契約を。
チルノフは基本的にずっと寝ている為、あまり御飯は摂りません。
しかし、彼女も生きている以上、御飯は食べます。
ただ、御飯を食べるには外へ出て御飯を探しに行かなければなりません。
チルノフにはそれはひどく苦痛に感じるものでした。
そんな時、れみりゃの集落が近くまで引っ越してきたのです。

れみりゃ達の要望とチルノフの要望が合致した結果、このように共存していくことになりました。
れみりゃ達が来てくれたお陰で、チルノフはこの洞窟から出ることなくずっとゆっくりしていられるようになったのです。
チルノフは何も言いませんが、心の中でれみりゃ達にとても感謝していました。

と、そうこうしているうちに、れみりゃ達が野菜を拾い終わったようです。

「みんなぁ!きちんとおやさいもったぁ!?」
「「「「「うっう~♪」」」」」
「じゃあみんなでそとにでるぞぉ!!」
「「「「「うっう~♪」」」」」
「つまみぐいははしたないぞぉ!!」
「「…う~…」」
「きちんとへんじしてぇっ!!」

どの道、野菜は凍っている為にこのままでは食べられないのですがね。
それでもれみりゃ達はお腹が空いている為、つまみ食いしたいようです。

「ううっ…おなかぺこぺこだどぉ…」

涎を垂らしているれみりゃも中にはいます。
持ってる野菜を見つめたまま歩いているれみりゃもいます。

「いっただっきまぁ~っすだっぞぉ!!」

おや、一匹のれみりゃがキノコに齧りついてしまいました。
余程お腹が空いていたようです。

「あがっ!…かたかただぞぉ…」
「なにしてるのぉぉぉ!?」
「うぁぁっ!みつかっちゃったぞぉ!」

当然、凍っている為に食べられるものではありませんでしたが。
さらに、れみりゃザウルスのお叱りを受けてしまうことになってしまいました。
皆さんもつまみ食いなどというはしたない真似をするのはやめましょうね。


さて、残りの10匹のれみりゃは何をしているのでしょうか。
見ると近くの山小屋に入って行ったようです。
中で一体何をしているのでしょうか。

「あぅあぅ♪おそうじおそうじぃ~♪」
「きれいきれいにするどぉ♪」

なんと!
れみりゃ達が山小屋の掃除を始めていました。

山小屋は本当に小さい山小屋です。
50匹のれみりゃ達が入りきれる大きさではない為、れみりゃ達はここで寝泊まりしている訳ではありません。
れみりゃ達は普段は草むらの上や木の上で寝泊まりしています。
では、何故ここを掃除するのでしょうか。

「こ~まかんはかりしゅまあふれるきれいなおやしきなんだどぉ♪」
「れみぃたちはこ~まかんのおぜうさまなんだぞぉ♪」

そう、れみりゃ達はこの無人の山小屋を『こ~まかん』と名付け、とても大事にしていたのです。
それは、れみりゃ達は『こ~まかん』の『おぜうさま』という自覚があるからです。
なのに、『こ~まかん』がなければ話になりません。
良い『こ~まかん』はないものかと幻想郷を探し回っていた時に、この山小屋を発見したのです。
れみりゃ達がこの場所で生活することに決めたのも、この山小屋があったからです。

ここは皆の『こ~まかん』で、皆はこの『こ~まかん』の『おぜうさま』という意識を持つことで、皆でこの『こ~まかん』を大事にしてきました。
そして、これからもこの山小屋…いえ、『こ~まかん』は大事にされていくことでしょう。
れみりゃ達の手によって。

「おそうじおわったぞぉ♪」
「こ~まかんもかりしゅまになったどぉ♪」

実際はれみりゃ達はほとんど何もしていません。
もし『こ~まかん』の中に虫が入っていたら拾う、程度の物でそれ以外のことは何もしていません。
しかし、彼女達はこの『こ~まかん』の為に何かしたかったのでしょう。
自分達の居場所である『こ~まかん』の為に。

「う~♪」
「こ~まかんがゆっくりできてるぞぉ♪れみぃもゆっくりできるぞぉ♪」
「う~♪ゆっくりゆっくりぃ♪」

れみりゃ達は外へ出て、『こ~まかん』を嬉しそうに見上げます。
『こ~まかん』がゆっくり出来ていると、彼女達もゆっくり出来るのです。
ここが自分達の居場所なのですから。



「おみずくんできたぞぉ!!」
「ごくごくのむどぉ!!」
「おやさいとってきたぞぉ!!」
「みんなでぶれっくふぁすとにするどぉ!!」

水を汲みに行ったれみりゃ達、野菜を取りに行ったれみりゃ達も戻って来たようです。
さて、ここで皆で朝食タイム…と、いきたいところなのですが、冷凍庫に保管してあった野菜を解凍しなければいけません。
それは一体どのようにするのでしょうか。

「みんなぁ♪かれきさんをれみぃのまえにおくんだぞぉ♪」
「「「「「うっう~♪」」」」」

れみりゃ達がれみりゃザウルスの前に何かを置いて行きます。
それは、食料調達組が帰り道で拾ってきた枯れ木です。
それをれみりゃザウルスの前に置きました。
一体どうするつもりなのでしょうか。

「いっくぞぉ…」

れみりゃザウルスは大きく息を吸い込みました。

「ふやじょうレェェェェッドだっぞぉ!」

なんと!
その言葉と共に、れみりゃザウルスの口から炎が吐き出されました。
炎は枯れ木に燃え移り、あっという間に小さな焚き火が出来たのでした。
そう、れみりゃザウルスは口から炎を吐くことが出来たのです。
この能力のお陰もあり、他のれみりゃはれみりゃザウルスのことをリーダーとして認めているのです。
れみりゃ達はれみりゃザウルスがいなければ、火を使うこともできないのですから。

「みんなぁ!おやさいもったぁ?」
「「「「「「「うっう~♪」」」」」」」

れみりゃザウルスが枯れ木に火を吹いている間に、野菜は全てのれみりゃに行き届いていました。
それをれみりゃザウルスも確認すると、満面の笑顔を浮かべて叫びます。

「それじゃあたべるぞぉ♪」
「「「「「「「いっただっきま~っす!!」」」」」」」」

れみりゃ達はその言葉を合図に焚き火に群がります。
余程お腹が空いていたのでしょう。
普段はゆっくりした動きと言うのに、このような時だけは非常に素早い動きです。

「はふはふ…おいしいどぉ…」
「あちゅちゅ…あちゅいどぉ…でもおいしいどぉ…」

れみりゃ達が食べる野菜は山の中で拾ってきた山菜やキノコ、そしてサツマイモなどです。

「はふはふ…おいもはあまあまでおいしいどぉ♪」
「おいもはゆっくりできるぞぉ♪」

美味しそうに芋を頬張っているれみりゃ達。
さて、このサツマイモはどこから調達してきたのでしょうか。

「お~、皆は朝御飯の時間だっぺなぁ」
「あ!」

れみりゃの一匹が、近寄って来た人影に気が付きます。
そして皆がその人物を見て、思い思いに叫びます。

「「「「「「「「「「のうかりんだっどぉ!!」」」」」」」」」」
「今日もれみりゃ達はゆっくりできてるっぺなぁ」
「うっう~♪のうかりんもゆっくりしていくんだぞぉ♪」
「「「「「「「「「「ゆっくりしていくんだぞぉ♪(だどぉ♪)」」」」」」」」」」

近づいてきたのは、麦わら帽子をかぶった黄緑色の髪をした少女。
しかし、この少女も実は胴付きのゆっくりなのです。
名前はのうかりん。
れみりゃ達とは非常に親密な関係を築いているゆっくりです。

れみりゃ達はのうかりんにとても感謝しておりました。
何故なら、れみりゃ達の食糧不足を補ってくれたのが、こののうかりんだったのです。


では、少し時計の針を巻き戻してみましょう。

れみりゃ達が住んでいる山は確かに食材は豊富です。
しかし、50匹のれみりゃ達を養いきれるものではありませんでした。
れみりゃ達が引っ越して来てしばらくした頃、急に食材が獲れなくなってしましました。
後先を考えずに獲りすぎてしまったのです。
れみりゃ達の集落は食糧不足に陥ってしまいました。

「う~…おなかすいたどぉ…」
「まんまぁ…れみぃぺこぺこだどぉ…」
「う~…まんまぁもぉ…」
「う~…」
「くか~くか~」

あっちでぐ~ぐ~、こっちでぐ~ぐ~、いびきでぐ~ぐ~。
まさにれみりゃ達の集落は崩壊寸前でした。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。
困っているれみりゃ達の前に現れたのが、のうかりんでした。

のうかりんは豊富な水資源があるこの近辺で、野菜や果物を作りたいと思っていたのです。
しかし、農作業に長けているのうかりんでも一匹では限界があります。
できるだけ大きな畑を作りたい、のうかりんはそう考えていたのです。
そんな時、50匹のれみりゃ達を見つけたのでした。

見ればれみりゃ達は空腹な様子。
慌てて自分の畑に戻り、沢山の野菜を大きなザルに詰め込み、れみりゃ達の元へ持ってきたのでした。

「おめぇら、お腹すいてるっぺ?」
「う~…?」
「だれだぞぉ…?」
「げんかくだどぉ…?」
「れみぃのまえにみどりいろのぷっでぃんがみえるどぉ…」
「くか~くか~」

突然現れた見知らぬ謎のゆっくり。
空腹のあまり、のうかりんが大好きなプリンに見間違えてしまうれみりゃも中にはいました。

「良かったらこれ食べないっぺか?」
「う~?」

のうかりんが差し出したのは、大きなザルに入っている色取り取りの野菜でした。
ぷ~んと甘いサツマイモの匂いがれみりゃ達の鼻へと届きます。
れみりゃ達は夢中でザルの中の野菜に手を伸ばしました。

「がぶっ!…おいしいぞぉ!!ゆっくりできるぞぉ!!」
「おちびちゃ~ん♪いっしょにたべるどぉ♪」
「う~う~♪あ~んだどぉ♪」
「れみぃがこれたべるのぉ!!」
「それはれみぃのなのぉ!!」
「沢山あるから喧嘩しないで食べてけろ~」
「くか~…あまあま…くか~…」

のうかりんが持ってきてくれた野菜は、取れたてで新鮮で非常に美味でした。
甘味が好きなれみりゃ達には、特にサツマイモが好評だったようです。
あまりの美味しさにサツマイモを取り合って喧嘩してしまうれみりゃや、寝ながら食べるれみりゃもいました。
寝ながら食べて喉に詰まらないのでしょうか?

「「「「「「「「「「ごちそうさまでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」」」」」」
「お粗末さまだっぺぇ」

ここまで美味しそうに食べてくれると、のうかりんも嬉しくなりました。
自身の作った野菜でれみりゃ達にゆっくりしてもらうことは、のうかりんもゆっくりすることが出来たのでした。

そこで、のうかりんは思いつきました。
このれみりゃ達に手伝ってもらえば、自分はもっと大きな畑を作ることが出来るのではないか、と。

「なぁ…こんなかにリーダーはいないっぺ?」
「う~♪れみぃがいちばんのおぜうさまだぞぉ♪」

れみりゃザウルスが可愛く手を上げ、のうかりんにゆっくりと近づいて行きました。

「なぁ…これからも野菜分けてあげてもいいっぺよ…」
「ほんとだぞぉ!?」

れみりゃ達にとって、降って湧いたような幸運です。
中にはあまりの嬉しさに踊りだしてしまうれみりゃもいました。

「だけどぉ…私のちっちゃな畑じゃあ、この数のれみりゃは養いきれないっぺ…」
「…う~?そうなのぉ?」
「だからぁ…あんた達が私の畑手伝ってくれないっぺ?そしたら野菜も分けてあげられるっぺ…」
「う~!そんなのでいいんだったられみぃたちにお・ま・か・せだっぞぉ♪」
「「「「「「「「「「う~!!」」」」」」」」」」
「くか~…う~…くか~」

他のれみりゃ達も、れみりゃザウルスの言葉に同意します。
一匹だけ寝たままのれみりゃもいましたが、勿論そのれみりゃも同じ気持ちです、多分。

それだけ、のうかりんの野菜は本当にゆっくり出来たのです。
これからものうかりんの野菜を食べ続けて行きたい、れみりゃ達の気持ちは一つにまとまっていました。
まさにれみりゃ達の利害とのうかりんの利害が合致したのです。

「そうかぁ?じゃあよろしくたのむっぺなぁ」
「こちらこそだっぞぉ♪」
「「「「「「「「「「のうかりん!よろしくだっぞぉ(だっどぉ)!!!!!」」」」」」」」」」
「くか~くか~」


とはいえ、最初は上手くいきませんでした。
それもそのはず、れみりゃ達は農作業は初めてだったのです。
しかも道具も少ないので、畑を耕す時はその柔らかそうな手で耕さなければいけませんでした。

「う~…おてていたいどぉ…」
「おててまっかだぞぉ…」
「ふ~ふ~してもひりひりするどぉ…」
「そこの3匹!何サボってるっぺ!!まだノルマが終わってないっぺ!!」
「「「あぅ~!!!」」」

普段は優しいのうかりんも、自身の畑の事に関しては非常に厳しくなります。
最初の頃のれみりゃ達はのうかりんに怒られてばかりでした。

このれみりゃ達も、それなりに過酷な環境を生き抜いてきました。
しかし、のうかりんの畑の農作業はそれを遥かに上回る過酷さだったのです。
当然、反発するれみりゃも出てきました。

「もういやだっぞぉ!!もうやめたっぞぉ!!」
「ほう…じゃあおめぇはお野菜抜きだな」
「どうしてだぞぉ!!」
「働かざる者食うべからずだっぺ」
「うぅ~…」
「そんじゃあ飢え死にしないよう気を付けるっぺな」
「…れみぃもういちどやるぞぉ…」

れみりゃ達は、あの食糧難がトラウマとなって心に刻まれていました。
御飯を食べられないことは全くゆっくり出来ない、それはどのれみりゃにも理解できていたことでした。
そして、ここでのうかりんの畑を手伝わないと、御飯にありつけないということも。

「良い子だっぺぇ。ちゃんとお野菜あげるからな。心配すんな」

のうかりんは手袋を脱ぎ、笑顔でれみりゃの頭を撫でてくれます。
それはれみりゃをとてもゆっくりさせてくれたのでした。

「なぁでなぁで…ゆっくりできるぞぉ…う~♪う~♪」

撫でられたれみりゃは頬に手を当て、横に身体を震わせます。
余程気持ち良かったのでしょう。
そして、それを羨ましそうに見ていた他のれみりゃ達。

「れ、れみぃもおしごとやめたどぉ!!」
「ぷ、ぷ~んだ!れみぃにもなぁでなぁでしてくれないのうかりんはばぁ~かばぁ~か!」
「れみぃもおやさいとなでなでがほしいぞぉ♪」
「べ、べつにのうかりんのためなんかじゃないんだぞぉ!!」

次々と仕事を投げ出すれみりゃ達。
魂胆はのうかりんにも見え見えだったのですが。

「コラ~!!サボるんじゃねぇ!!」
「「「「う~!!わかりましたぁ~!!」」」」

のうかりんの声にワクワクしながら答えるれみりゃ。
いつ自分は撫で撫でしてもらえるのだろうと。
しかし、のうかりんは背を向けて立ち去って行ってしまいました。

「じゃ、しっかりな。私は他の畑を見て来るっぺ」
「「「「どぼじでなぁでなぁでしてくれないのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」
「いちいち50匹も撫でてられるか!!あほぉっ!!」

そんなこんなもありましたが、れみりゃ達の努力もあり、畑も立派になってきました。
そして月日が経ち、今日がれみりゃ達にとって初めての収穫の日になりました。


時計の針を元に戻しましょう。

「御飯食べたら早速収穫するっぺ」
「「「「「う~!!」」」」」

嬉しそうに返事をするれみりゃ達。
れみりゃ達はこの収穫の日を楽しみにしていたのです。
自分達が育てた野菜はどのようなカリスマな野菜に育っているのかと昨日からワクワクしたのです。

と、そんなことを話している間にれみりゃ達の朝御飯も終わってしまったようです。

「「「「「「「「「「ごちそうさまでしたぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」」」」」」」」」

焚き火の火を消して、皆がそれぞれ立ち上がります。
食後のダンスを踊るれみりゃも中にいました。
皆が食べ終わったことを確認すると、のうかりんが一つ大きな声を上げました。

「じゃあ早速行くっぺ!!」
「「「「「「「「「「うっう~♪」」」」」」」」」」

のうかりんを先頭に、れみりゃ達が畑に向かって歩き出します。

のうかりんもれみりゃ達に手伝ってもらった事で大きくなった畑の収穫の日を楽しみにしていました。
自分達が育てた野菜はどのようなものか。
のうかりんも非常にワクワクしていました。


畑に着くと、そこは一面の野菜だらけ。

「うぁぁぁ…」

れみりゃ達はその光景に驚くばかりです。
といっても、今日初めて見た訳ではないのですが。

「アホみたいに呆けてないで早速収穫するっぺ。ほれ、散った散った」

パンパンとのうかりんが手を叩くと、れみりゃ達があっという間に散開します。
自分の持ち場である畑に向かって行ったのです。

「いいかぁ!?草さんの周りを一所懸命掘るんだっぺぇ!!芋さんが見えてくるっぺ!!」
「「「「「「「「「「うっう~♪」」」」」」」」」」

それぞれのれみりゃが近くの畑を掘りますが、なかなか芋を見つけられません。
上手く掘れていないのです。

「う~…」
「みつからないどぉ…」
「れみぃのかりしゅまなおやさいがぁ…」
「(う~ん…茎が邪魔で上手く掘れないみたいっぺなぁ…どうすっぺ…)」

本来なら、サツマイモの収穫をする前に茎を切る必要があります。
しかし、今の畑は非常に広大。
道具も少ない状態で切ることは難しかったのです。
ここまで畑が大きくなることは、のうかりんにとっても少々誤算でした。
れみりゃ達がここまで働いてくれるとは思わなかったのです。

そして、のうかりんが手を出さないのは親心からです。
れみりゃ達がこの日を楽しみにしていたことは、のうかりんも知っています。
この集大成の日は出来るだけれみりゃ達にやらせてあげたかったのです。
彼女達がいなければ、ここまで広々とした畑を作ることが出来なかったのですから。

と、のうかりんが色々と考え事をしていた時

「うぁ♪とったどぉぉぉぉぉ!!!!」

歓喜の雄たけびを上げたのはちっちゃな子れみりゃ。
その右手には、紅い物体が握られています。
サツマイモです。
初めて収穫に成功したのは、この子れみりゃでした。

「おちびちゃ~ん♪すごいどぉ♪」

隣にいた親れみりゃも鼻高々のようです。
余りの嬉しさに踊りだしてしまいました。

「うあっ!!」
「あったぞぉ!!」
「うっう~♪」

次々と畑の中の芋は見つかって行きました。
大量にサツマイモを掘り出すことが出来て、嬉しそうなれみりゃ達。
その光景は、のうかりんをゆっくりさせてくれたのでした。

全ての野菜の収穫が終わる頃には、すでに辺りは暗くなりかけていました。
れみりゃ達の目の前には山盛りのサツマイモやその他の野菜がありました。

「じゃあこの野菜あげるっぺ」
「こ、こんなにもらっていいのぉ!?」
「れみりゃ達が手伝ってくれたおかげだっぺ。私は人里で売る分があれば十分だっぺ」

のうかりんは食料に困っていた訳ではありません。
のうかりん一人分の食糧など、この山には沢山あるのですから。
あくまで大きな畑を作りたかっただけなのです。

「あ、ありがとうだぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「「「「「「「「「「ありがとうだぞぉ(だどぉ)!!!」」」」」」」」」」
「うわ、50匹同時に抱きついてくるなっぺぇぇぇぇ!!!潰れるぅぅぅぅぅ!!!!!」

嬉しさのあまりにのうかりんに抱きつこうとする50匹のれみりゃ達。
のうかりんは少々苦しそうでしたが、心の中ではとてもゆっくりできていました。

そして、お日様がすっかり沈んでしまった頃、れみりゃ達とのうかりんの晩餐会が始まりました。

「うっう~♪うぁうぁ♪」
「かりしゅま☆だんすぅ~♪」
「くか~くか~」
「れみりゃ達は踊るの大好きだっぺなぁ」
「うっう~♪のうかりんもいっしょにおどるどぉ♪」
「仕方ないっぺなぁ。今日だけだっぺ」

そして、のうかりんも交えたダンスパーティーが始まりました。
それはそれはとてもゆっくりできるものなのでした。

「じゃあそろそろ帰るっぺ」
「ばいばいだぞぉ♪」
「「「「「「「「「「ばいばいだぞぉ(だどぉ)♪」」」」」」」」」」

50匹のれみりゃ達がのうかりんの背中を見送ります。
さて、れみりゃ達もそろそろ就寝タイムに入ります。

「うっう~♪みんなぁ♪おねむのまえのおいのりタイムだっぞぉ♪」
「「「「「「「「「「うっう~♪」」」」」」」」」」

おや、れみりゃ達は何かをするつもりのようです。
一体何をするのでしょうか。
れみりゃ達が何かを呟きながら胸に手を当ててお祈りしております。
一体何を呟いているのでしょうか。

「さくやぁ…」
「れみぃたちはここにいるぞぉ…」
「さくやのあまあまぷっでぃんたべたいどぉ…」
「きょうもさくやのおかげでゆっくりできたぞぉ…」

れみりゃ達は、さくやに対してお祈りをしているのです。
ほとんどのれみりゃはさくやと出会うことはありません。

しかし、れみりゃ達の間ではこう語り継がれているのです。
さくやに出会えたれみりゃはとってもとってもゆっくり出来る、と。

それ故、れみりゃ達の間ではさくやはお祈りをする対象となっているのです。
本物の紅魔館のメイド長がそれを知ったらどのような顔をするのでしょうね。

「さぁて、みんなねるぞぉ♪」
「「「「「「「「「「うっう~♪」」」」」」」」」」

咲夜へのお祈りが終わると、今度こそ就寝タイムです。
各自ゆっくり出来る場所を決めると、その場で横になり眠ってしまいます。

「う~…おなかいっぱぁい…」
「ふぁぁぁぁ…う~…」
「くか~くか~」
「さくやぁ…」

皆とてもゆっくり出来た顔をして眠っています。
さくやに出会えた夢を見ているれみりゃもいるようです。
とても嬉しそうな顔をしたまま眠っていますね。

一日を終えた50匹のれみりゃ達の集落。
誰もがゆっくりしたいと思い、集まったれみりゃ一同。
これから何処に向かい、何処に行こうと言うのでしょうか。
それは誰にもわかりません。

ただ、一つだけ言えることがあります。
このれみりゃ達はずっとずっとゆっくりしていけるでしょう。
ずっとずっと…。


  • 一匹ほしい   -- 名無しさん (2011-03-14 20:20:27)
  • チルノフがいい味だしてますね。
    きっと心の中では「ゆっくりしていってね!!!」って言ってると思う。 -- 名無しさん (2011-04-10 16:46:31)
  • 俺は毎日れみりゃにお祈りしているがな。 -- 名無しさん (2011-10-11 00:16:11)
  • お互いに支え合うゆっくりの生き方はとても面白かったですが
    のうかりんがやや贔屓されてますね -- 名無しさん (2012-06-28 15:47:58)
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最終更新:2012年06月28日 15:47