GW前の
おりんりんランド。三途の川下りライドで働くドスまりさも大量来園に備えて余念がない。
そんなドスに園長のおりんが近づいてきた。
「ドスがきてくれてからお客さんがたくさん来るようになったわ。お礼と言っては何だけど、これ福引で当たったのよ。」そう言っておりんは一枚のチケットを差し出した。
"グランド・ホテル 宿泊券"
「有効期限がGWまでなんで連休にはいる前に行ってみたら?たまにはドスもゆっくりしなさい。」
「いいの?」
「連休にはいる前には戻ってきてね!」
「ありがとうおりん!ゆっくりして来るね!」
「ようこそ、グランド・ホテルへ!ゆっくりしていってね!」
そう挨拶する受付のパルスィに宿泊券を渡す。
「お部屋は5階ですね、でも・・・」
しかしこの巨体ではエレベーターにも入れないし、階段は幅が狭すぎる。
「ドスは空も飛べるから窓からはいるわ。」
「そうしていただけるとありがたいです。」
表に回ったドスまりさは浮かび上がって自室を探す。
「あっ、ドスさんこっちです。」
ドスを入室させる為にメイドのヤマメとベルボーイのおりん・きすめが窓を外している。
「さあどうぞ、ゆっくりしていってね!!!」
「ゆっくりしていってね!!!」
ゆっくり返しをしてドスはゆっくり入室した。普通のゆっくりなら口元に来る様なふかふかの絨毯もドスの前ではカーペットの様だ。
「ゆふぅ~。」
ドスは窓の外の景色を眺めてゆっくりした。向こうには山が見える。
「山かあ・・・」
かつてゆっくりが野生動物の様に野山で暮らしていた頃。ドスは群れのリーダーとして仲間たちをゆっくりさせていた。
その巨体ゆえパートナーもなく子供もいないドスだったが、ドスから見れば小さな仲間たちは自分の子供達と同じだった。
弱くか弱い生き物だった当時のゆっくりを庇護し、ゆっくりさせるのはドスの喜びであり、ゆっくりだった。
時は流れ"子供たち"は強く逞しく、図太く進化していった。新天地を切り開き独自の文明を築いていった。
それはドスからすれば"巣立ち"を意味し、喜ばしい反面ドスまりさにとっての"存在意義"を失う事を意味していた。
「ゆふぅ~、ゆっくり物思いにふけってたらこんな時間になったわ。そろそろお風呂に入ろうかしら。」
グランド・ホテルが誇る大浴場、浴室は浅め、深めと分かれており一般のゆっくり・胴付き・人間も浸かることができる。
浴室の中ではゆっくりゆかりんが緩んだ表情で浸かっていて、らんしゃまが尻尾を浮き袋の様にしてプカプカ浮かんでいる。
そこから少し離れた場所にゆっくりにとりが物憂げな表情で浸かっていた。
にとりはこのホテルに来る前、医師に余命2ヶ月と診断されていた。
残りの命をどう有意義に使うか・・・そんな事を考えてこのホテルに来ていた。
ガチャガチャ・・・
メイドのヤマメが浴室の戸を外している。
「どうもありがとう!ゆっくりしていってね!!!」
ドスが浴室に浸かるとお湯が溢れ出た。
「ゆああああああああ!」
プカプカ浮かんでいたらんしゃまは一緒に流されていった。
「トホホ・・・やっぱりらんは水難の相があるのかなあ。」
(【ゆイタニック号のゆ劇】およげ!らんしゃま参照)
「サウナに行ったら?ちぇんが待ってるわよ。」
水に濡れるとゆっくりまんじゅうになってしまうちぇんはサウナ風呂に入っているのだった。
「そうするよ!ちぇぇぇぇぇぇぇん!!!」らんしゃまはサウナに跳ねて行った。
「あらドス、お久しぶりね。」(【夏休み10】おりんりんランドでゆっくりしていってね!!!参照)
「お久しぶり!ゆっくりしていってね!!!」
「ドス、アレ出してもらえるかしら?」
「わかったわ!」
するとドスの漬かった髪の部分から金色の鱗粉の様なものがお湯に溶け出していった。
「ゆふぅ~やっぱりドスのこれはゆっくりできるわ~体がほぐれて来るわ!」
(これは・・・なんだか体が?)
にとりは不思議な感覚に包まれていた・・・
ドスは仰向けにゆっくり浮かんでいた・・・
お風呂でゆっくりしたドスは自室に戻ってきた。床には一面マットレスが敷き詰められていた。
「メイドさんありがとう!ゆっくりお休みなさい!」
その夜ドスは夢を見た。
かつて野山を駆け回った仲間たち。
おりんりんランドで楽しそうに遊ぶ子供達。
童心に帰ってドスまりさ式たかいたかいをされてはしゃぐ大人達・・・
ちんちん、ちんちん
朝ですよー!
夜雀と春の精が朝を告げる。
「ゆっ!ゆ~ん!!」
伸びをした後ドスはチェックアウトに向かう。
「とってもゆっくりできたわ!ありがとう!!!」
「ありがとうございました!ゆっくりしていってね!!!」ベルボーイのおりんが返す。
そのおりんの姿を見てドスはおりんりんランドの園長、おりんを思い出していた。
(おりん・・・ありがとう。またおりんりんランドのお客さんをゆっくりさせないとね!)
ドスまりさはおりんりんランドへと飛んでいった。そのドスまりさの後ろ姿を見ながら
「これからはドスゆっくりは特別料金を取るべきだと思うわ・・・」
とグッタリしながらつぶやくヤマメと
「一人分の料金で何人分もサービスを受けられて妬ましいパルパルパル・・・」
とパルパルするパルスィが居たのだった。
最終更新:2011年05月04日 21:33