ちょっと初心に戻って、シンプルな話です
『正体不明の床の間』
「いや、とにかくおかしいよこんなの」
「だったらそれを、何で私に聞くの」
こいつは、視野狭窄
連中の中でも最も聖を慕い、最も実直で、最もそれ以外への頓着が薄い
聖に関して何か事が起これば、率先して手段を捨てるのはこいつだろう
故に、扱い易い
――――最初の頃、ぬえはそう考えていたのだが
「………寅丸は、忙しすぎるし、ナズーリンは賢し過ぎる」
「私は、暇そうで馬鹿っぽいって事か」
「一輪は、真面目が過ぎる」
「私は、不真面目ってことか」
胡坐をかいたまま丁寧に札を床に並べるムラサ船長に、封獣ぬえは「机でやればいいのに」と言いたかったが
黙っていた。
午前中の命蓮寺にて。
あの山彦は今日は来ていない。
聖と星、ナズーリンは外出し、一通り寺で庶務を終えたムラサとぬえは、隅の居間でゆっくりと寛いでいる。
大事な大事な休憩時間だ。
そう――――ゆっくりと、ムラサは大事そうに札を床に敷き詰めている。手持無沙汰のぬえへ、顔は向けない。
寺には元来娯楽などなく、折角の余暇も、面白くも無い本でも読むしか無いが、そうした習慣自体をぬえは
持ち合わせていない。
ムラサは器用に返答はするものの、札の整理には込める手つきは何と言うものか、熱い。逆に会話が成り立つ方が
凄いとさえ思う。
「ムラサは、一番平和ボケしてなさそうだから(消去法で言うのも良くないか)」
「好戦的だと思っていた」と言いたかったが、多分それだと嫌がるだろう。
「平和ボケ?」
「人間どころか、妖怪までそういう手合いが多過ぎるじゃないか、最近は」
「ああ、じゃああの壺を見てごらんよ。あの中に――――そうだね、出来る限り、この境内に生息してる蟲類を全種類
数匹ずつぶち込んだとしよう。百足も毛虫も蛆も屁こき蟲も斑猫も」
ムラサは、以前は床の間にあった、今はちゃぶ台の上に移動した古壺を顎で示した。
「気持ち悪い……」
「それで、中の奴等が………まあなんやかやあって、9割がたバランス良く大して死ぬ事も無く上手く生き残り続けて
子供も生まれて、それでも全体のバランスが大差無いなんて状態に行きついたとしてさ」
「うへえ」
―――そんな世界の、どこが平和ボケなんだ
ムラサはまた手元の札に視線を戻して言った。
「どっか皆麻痺してないと、成り立たない話だなあ」
「平和っていやあ平和だしね」
「―――平和ボケじゃん……………」
「平和ボケでけっこう。聖の最終目標も、案外そこらへんにあるのかもしれないよ」
幻想郷は、全てを受け入れるのだとか
それは途轍もなく残酷な事だと言うが、この部分に注目した解釈は解れる。
聖は、そこを最も素直で前向きに受け取って(しんどい話だが)実践しようとしたのだろう。
―――ムラサはムラサで、後半部分をこのようにグロい例えで受け取っている訳だ。
だからと言って
「この状況は我慢できない」
,-- 、 「何なのあいつら」
) キヽ-、 ... ...... 「『ゆっくりしていってね!!!』としか言わないからなあ」
ノ 'ー' ) ).:::::::::::::::-..、 「あれ、床の間だよね? 百歩譲って庭とかじゃないよね、屋内だよね?」
ノ ノ .ノ:::::::::::::::::::::::=-、 「何が言いたいの………」
/ //::::::::::::::}:::::=:::::::.:', 「色々あるけど、まず浸水してるじゃないか」
`ー─''´:)::::=:::=/):=人::::-=) 「石でかこってあるじゃん………」
〈==::::=∠レ_ノ/ ノノレ '. ::::ノ,
,ノ::::::::::::::/ (ヒ_] ヒ_ンレイ::ソ そう、そのおかげで、畳の上に水が垂れる事はない。
フ:::::::::::::!//// ,___,///iノ:〈 という事は、床の間が幾分削られているという事か? それなら別の弊害が
ノィ:::::::::::人. i i⌒ー' 人:::) おこりそうなものだが、別段それも無い。
ヽイレヘ::>、..,|i____,, イレノ´ ノノ
|lll y´⌒ヾ、⌒゛ー-´:く≦
|li ,,'::::::::::::::::::::::;::::';:::';:::;:ヾヘ
|!|´ i::!:::::;:::::::::';:::::::';::::',:::)::)::;ヾ
(:::::::)‐─────|lll──────── !ソ:::;ノメ;;,、:::ソ::ンノヾ;':::'::::::;ノ)──────( ::) 「いや、本当におかしいだろ」
co0o ノ」:::ノ(ヒ_] ヒ_ン )ヌリ:':::::;ソ ( )。。。( :::) 「そうだなあ。昨日は驚いたけど
(^;;)o 从:イ /// ,___, /// レ、::::::::} (")o ( ) 慣れもあるし」
("'')0 c )ノi ヽ _ン ,ノ:::::::ノ O(~)o
(~~)ヽ ヾー::イ人 ,イ:::::::ノ (⌒(⌒~) せめて先月とか、時間が置かれているなら
/~゙゙ヾ⌒`ゝ (~゙゙ヾ⌒`) ) 理解はできるが、ムラサは適応が早すぎる。
(~´`(⌒(⌒~) (~゙゙ヾ⌒`)
(⌒(⌒~) )~~~)(~~)~゙゙co0o ヾ⌒`ゝ
この手の、訳の分からない生物が最近出没していることは知っている。
いつか間近で見る事もあるだろうとは思っていたが、ぬえにとってはいきなり近すぎた。
「ムラサは怖くないの……?」
「幼女の生き胆を食い続けて来た妖怪が何言ってるんだか………」
「いやだって………考えてみなよ」
―――自分達の生首だぞ?
生首だけの妖怪はいる。あんなに特徴的な丸っこさは持っていないが。
だが、何の妖怪か生物かも解らず、挙句の果てに―――――それが、自分や知り合いと全く同じ顔をしていたら?
妖怪だろうとそこは―――――
ぬえは気まずそうに、縁側を見やる
, --'.:::::::', ---- 、
/:::::::::::---:::::::::::::::: ヽ ,,.-''"´ ̄ ̄`ヽ 「ほぼ全員揃ってない?」
ノノ:::::::::ノ:::::::::::::::::::::::ヽ:::ヽ ./::::::::::::::::::::::::::::::::\ 「可愛いじゃないの」
/ :/:::ノ::::ノ::::::ノi:::::人::::::|::::::}. /i´::::::::::::::::::::::::::::::::::`i:::ヽ 「じゃあ、どういう現象なんだあれは」
{:(:(:::/::/ゝ,ノ ノノ /)/)::ノ:)'ウ /::|彡:::::::::::::::::::::::::::::::ミ|:::::ヽ 「何か蜃気楼だとか、幻術とか――――まあ
人:.:.ノ::( (ヒ_] ヒ_ン /:::.:.ノ/ l:::{;;;;;;;;_ノ;;;;;;;;;;;;\;;;;;;;;;;;}:::::::| 見えてるだけ とか。あんたの得意分野の
( )(:::::人''' ,___, '' ノ:) .:(:( |::::::::::l( ヒ_] ヒ_ン )Y l::::::::| 1つでしょうに」
) : )ノ:.:.:) (::ノ:.:ノ::ヽ |l:::))ノ!///____////ソ::::::::::| 「だれがあんなものを……というか、あんなものを
ノ :( : ):(>.., ______ ._イノ::(:.:.:.:.:\ |::::::::ヽ ヽ _ン /::::::::::::| 見たがる奴がどこにいるんだか……」
(' ''::):::::i=====i::ノフ : : : : : : :フ ノ:::::i:::::::>..,____,,... イ:::::::::i:::::::|
,ヽ/{ }ヽノヽ 「そういうもの」と、ぬえは思い込もうとしていた。
ノ ノ ' ヽ / ) } , /::::::::ヽ、 /´:::::::::::ヽ 本来妖怪もそうして生まれたものだ。
'ヽi ')ヽ oOo ノ /{ V} /:::::.,-ー、:::::l l:::::.,--、:::::l
< ''V 'o. '''' .oノ ノ ノ l::::::! l:::::l ヽ::::i l::::l 「そういうもの」として人間が幻想を抱き、解釈をし、
/ '' ' -' 'ヽ__ノ.-:'':: ' ヽ. ヽ ,!、___,ノ'´ ̄'"'" ゝ.i、_ノイ 「命名」し続けた結果の一つでもある。
、_/.::'' r '{::{ \.. ':. ヽ {ヽ / ヽ
' -{./ /:: 人::::ヽ ヽ::ヽヽヽ} (:':ノ / r 人
ノ( (:(:: ノ --)ノ '')/''--:、ノ:ノ: 入 ノヽノ__ノ-;ノ人ハ__/_」_ヽ_ヽ___\
ノノ>)::::) ( ヒ_] ヒ_ンヽ:) < | ノ (ヒ_] ヒ_ン )Y! (''''''
ノノi:::|'"" ,___, "|:: 入 ) / i ,___, i ヽ
)/'''人 ヽ _ン 人V '' ( 人 ヽ _ン / | )
ノ>.、____ ,.イヽ ''''ヽ >.. ..,____,,,.. .イ/ノ /
「別に床の間に住まわせるくらいでカリカリしなさんな。何か本格的に悪さでも始めたら懲らしめればいいんだし」
「何か企んでるってこと無い? あいつら」
「あんな顔で?幼女の生き胆を食い続けて来た妖怪が何言ってるんだか………」
確かに皆一応に顔が間抜けすぎる。
実際にあの連中が(想像自体難しいが)武装して襲ってきたとしても、憎しみを持てる気がしないし、恐怖も感じずに
いられる自信が少しあった。
「まあ、『全てを受け入れる』って言っても、一緒くたに何でもかんでもじゃないんでしょ。そういうシステムか、誰かが
仕事をしてるのかしらないけど、表で忘れられたものも、何かしら篩にかけられて入ってこられないはずだと私は思う」
「…………………」
聖の思想は、そもそもの幻想郷の理念、そして管理している妖怪の賢者達の考えと相容れなさすぎるのでは? との
批判はある。
何度かぬえは不安になって、その事をムラサと話した。
その都度、ムラサは動じずに話すのだ。
「幻想郷に来たもので、無意味なものなんていないんじゃないの?」
しかしだ。
ちらりと、ちゃぶ台の下を見ると……
,' キヽ,、
/ ,:' ノー-- ,,.、 yーヾ⌒゙ー-ノノ 「何て言うかさ、『そういうもの』っていうより、れっきとした『この手の生物』
<_,' /::::::::::::::;;:::ヽ、 √i ,'::::::::::::;:::::;::::;:::::≦ なんじゃないの?」
〈=:::):::::;;=,ノ)::;人::::;) / pヘ i::::;::::ソ、::::ンノ';::::::::ス 「あら可愛い」
ノ:::::::/´-‐'レル‐-',::ノ r" ,几 iソ:ノゝ、 ヾノ/ ',ヌ:::ノ),_ノ ,n } 「いやあの、何て言うか本当に怖いんだけど」
´フ::::::! (ヒ],__,ヒンレソ l/√i ;:イ (ヒ],__,ヒン) レ;::::::;ー-イ-レ' 「『この手の生物』がいてもいいじゃない」
ノィ::人 " ヽ_ン "人) ./ pヘイ! " ヽ_ン " イ:::::::ノ、_ノ ,n } 「自分で言っておいて何だけど『この手の生物』って何だよ………?そっちの
Vヘ>ー--,イレノ r" ,几_ノ:ゝ、.___,.イレ;;/`ー-イ レ' 方が怖いよ」
ムラサは、(傍からではよく解らないが)並べていた札が、何かの段階を過ぎたらしく、更に手際よく整理をしつつ、やはりぬえの方は見ないで初めて
愉快そうに笑った。
「鵺のあんたが、何で『正体不明』をそんなに怖がるんだか。幼女の生き胆を食い続けて来たくせに」
「怖がってはいないけど」
正直、ある意味で怖がってはいる。
何故なら
「何でもはっきりして、解明して、正体が解っていないと怖くて仕方がない人間どものために、『正体を判らなくする程度の能力』があんのよ。
あいつらを思い上がらせないためにさ」
「それっぽく言ってるけど、あんたが怖がらせて面白がらせたいだけでしょうに」
「だから、『正体不明が、でふぉると』なんて生物がそこらへんにあふれるようになったんじゃ困るんだよ……」
恐怖ではない。危機感だ。
だから、周りが「平和ボケ」だと言っているのだ。
「焦ってるのはよく解るけど」
「何でも受け入れるのは良い事さ。でも、そんなにゆっくりし過ぎてると、いつか手痛いしっぺ返しを食らうよ」
「しっぺ返しって何よ? 誰が何するのよ」
「近いうちに始めるんじゃないかな」
「何が」
気乗りはしないが、ぬえは言った。
「戦争」
「―――――戦争って言うと、例えばああいうのも含まれるの?」
{───´─┬┐ ,,.-''"´ ̄ ̄`ヽ
___,,,...-‐''"| | /::::::::::::::::::::::::::::::::\ ,,. ' "´ ̄`',-ー 、::::... 「いや、確かに何かそれっぽくはあるけど」
 ̄7 | |:i´:::::::::::::::::::::::::::::::::`i:::ヽ ,r':: ;::---:::::::::、:::::::::::::ヽ:::::.. 「何やってんのあいつら。所謂 『情報戦』?『論戦』?」
i | ||彡::::::::::::::::::::::::::::::ミ|::::::ヽ ,イ:::,r':::::::::::::::::::::(:::::::::::::ヽヘ::::.. 「それはこっちが聞きたいよ」
.| .| | |:{;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;\;;;;;;;;;;}::::::| .{::::::| :::::人:::::::ト:::,ヽ::::!、:::Y:::::',::::... 「不穏な空気よねえ」
| | | |( (rr=-,::::::::r=;ァ`Y l:::::::| r(ゝ:::((ノ,r=;,ヽノ_ノ.r;=;、\::゙i):::):::::...
| | | |:ンi" ̄ ___, ̄"' レ| ノ::;イ . 「',::::::リ. ! ヒ_,!:::::::::::ヒ_,! ) )::!::、::人:::....
: | |:::::ト、 zイ´:::::} ):). (:(_''' ,___, '''_人: )( : :):::::..
: | |::i:::::::>..,____,,... イ::::::i:::::::|、 . ( ハ:ゝ ) ヽ _ン ( `(_ (:::::... やはり、ムラサも平和ボケか?
:::::::: | |::::::::::::::::::::::::::::::::::: ピッ :::::::ヽ ノ .) ( >.., ______ ._イ):( ) ヽ::::... それも極度の。
:::::::::: | |:::::::::::::::::::::::::::ii_: ピッピッ :::ヽ . 〈/レル/レ/´:i:::::::::::::: l |レノルレノVルノ:::::....
:::::::::::::::|______|__| : カタカタカタ :::| |:::::::::人 }
 ̄ ̄ ̄__/_______/ ーヽ、 .|--|__/ /__ ―――ぬえは、永い間妖怪だけでなく、人間を見続けて来たのだ
ニ二二i -二ニ---、J∪l ( ̄ l___/ | | ―――連中は、それ程1000年でも変わるものじゃなかった。
「幼女の生き胆を食い続けて来た妖怪が何言ってるんだか………」
「あんた、それさっきからずっと言ってるけど違うからね?! そんなに年がら年中肝だけ食べてる訳じゃ」
「随分平和な」
「豚どもの悲鳴こそが、私には何よりの馳走だわ」
ゲラゲラゲラゲラ………
それに
「修羅場なら、何度も見て来たし、体験したわよ」
「そうでしょうね」
ムラサは、札の整理が本格的に最終段階に入ったのか、確かな手つきで並べ替えていく。
まあ、怒ってはいないだろう。
受け入れる度量の広さ(?)は多少褒めてやらんでもない。
「酷いもんよ?外の世界は本当」
「そりゃ知ってる」
「平和ボケのあんたに何が解る」
手は止めたが、ムラサは顔を向けてくれなかった。
だが声の調子も変わらずに言う。
「私も、元々豚の一人だから」
少しだけ受け取るのに時間がかかった。
「生き胆は食べないけど、結果的にあんた以上に殺したんだと思うよ」
一瞬謝ろうかと思ってしまったが、何とか飲み込んだ。
「修羅場は――――そうさね、3回ほどどでかいのがあったかな。それだけだし」
―――考えてみれば、性質が違う。
色々考えた挙句、ようやくぬえは声を出して質問した。
「そういや、何で、そんなに、たくさん、船を沈めたの?」
「ん? 船幽霊って『そういうもの』でしょ?」
ぬえは、改めてムラサへの誤解を思い知った。
こいつは―――――色々と、他の命蓮寺の中でも、いや、そこいらの妖怪(それこそ極端な人食い含め)達と
比較しても、毛色というか、核が異なる。
気が付くと、ムラサはぬえの背後に回っていた。しかし、表情が無い。
存外健康的で、やや硬く感じる腕が肩に回されている。
「小刻みに震えて……」
「あんただから、聖とずっといるの?」
「それもあるけど………さっきからぬえ、おかしいよ?」
そんなにゆっくり達が怖いの? と笑われたが、答える気にならない。
不覚にも、ずっとずっと抑えていたのに目頭が熱くなっていた。
,-- 、
) キヽ-、 ... ...... ノノ
ノ 'ー' ) ).:::::::::::::::-..、 y´⌒ヾ、⌒゛ー-´:く≦ 「心配はあるよ」
ノ ノ .ノ:::::::::::::::::::::::=-、 ,,'::::::::::::::::::::::;::::';:::';:::;:ヾヘ 「『戦争』云々っていう?」
/ //::::::::::::::}:::::=:::::::.:', i::!:::::;:::::::::';:::::::';::::',:::)::)::;ヾ 「結局、平和なんて、次の戦争にむけての休憩時間に過ぎないのさ」
`ー─''´:)::::=:::=/):=人::::-=) !ソ:::;ノメ;;,、:::ソ::ンノヾ;':::'::::::;ノ) 「……………」
〈==::::=∠レ_ノ/ ノノレ '. ::::ノ, ノ」::::ノゝ、 ヾノ / ヌリ:':::::;ソ 「幻想郷(ここ)は、良い所だよ。でも脛が傷だらけの奴等だらけじゃないか。
,ノ::::::::::::::/ (ヒ_] ヒ_ンレイ::ソ 从:イ (ヒ_] ヒ_ン ) レ、::::::::} 少なくとも、そんな奴等はまた次の修羅場に出向かなきゃならなくなるのさ」
フ:::::::::::::! "" ,___, ""iノ:〈 )ノ:!"" ,___, "" ,ノ:::::::ノ
ノィ:::::::::::人. ヽ _ン 人:::) ヾー::イ人 ヽ _ン イ:::::::ノ それは、経験上言える。
ヽイレヘ::>、.., ____,, ._イレノ´ `ーz::::::>、.,___,,..イ::::::/ ぬえはぬえで、幻想郷は好きだ。
 ̄  ̄ だが………
「かっこつけすぎ……」
「うるさいよ
「でもまあ、そういうのを考えるのは良い事だわ」
初めて、馬鹿にしない笑いをムラサは見せた。
「だったら、修羅場を前より早く終わらせる事も思いつくかもね 次の休憩時間のために」
聖も寅丸も、まだ帰ってはこない。
もう少し休んでいても大丈夫な時間だ。
俯いたままのぬえの体の向きを無理やり変え、先程から整理した札の山に向かわせる。
花札か何かか?。
その表面には、様々な妖怪達の緻密な絵と、数値と、いくつかの記号が記されていた。
不思議な魅力があり、思わずぬえは見入ってしまう。
「どういうテクノロジーなの?」
「さあ? ただ地底のお燐ちゃんに教えてもらったのよ」
「この数字は何?」
「この描かれている妖怪の『ゆっくり度』って奴が、その札に反映されてるんだって」
「高い方がゆっくりしてるって事か……」
中には、ぬえ本人の札もあった。
そこには、「700」と記されてあり――――何となく気まずくて、裏返して伏せた。
「お、聖が690000か……」
「ナズ、だっさ……80って」
ムラサは、懇切丁寧に遊び方を教えてくれた。
とても楽しそうだった。素直に、この遊びを覚えて二人で―――できればあの風来坊や、
あの地下室で見かけた吸血鬼の片割れとも遊びたいと思った。
話を聞くうちに、ふとぬえは思った。
「あの、ゆっくりについてだけど……」
「うん?」
「よく解らないし、抽象的だけど、『私達の反映』って見方はできないかな……?」
「え?」
「その………基本的にゆっくりできない私達に対して、何かがこう……私らの姿を借りて。
『今ぐらいはゆっくりしてきなよ』ってメッセージを送ってるとか」
「うーん、もの凄く反論はできるけど、それはちょっと可愛いね、その解釈」
元々解らなくて、今の所で害がないなら、どんな解釈をしても罰はあたるまい。
自分達のゆっくり2体を眺めつつ、ぬえは改めて思った。
,ノ⌒r-,. 、 )
r´ / /::::::.`'⌒ヾ'':..、 ,- 、r'⌒ヾ''イjr'⌒
(_,ィ'_ノ:::::::::::::::::::::::::::::.':, /.:,r'⌒´.::::.`:::.、::::::.ヽ、
/.:::::::::::::::::::::::::::':;::::::::::::::ハ /.::::;'.::::::::::::::::::::::::::::::::::::.ハ
;:::::〈::::ハ::::}:::::、:::::}:::::;:::::::::::!,.- 、 ;:::::〈::::ハ:::ヽ::.、::::::::::::::::::::::i
!:::::::ヽー}:ノ::ノ )人、ノハ:::::::}. ○)ノ!:::::::ヽム}:ノ_〉' )人、ノハ::::::}
八:::::)(ヒ_] ヒ_ン)ノj'`i:ノァ ,' 八:::从 (ヒ_] ヒ_ン)j'`i:::ノ
丿.::::ゞ ,___, ン. イヽ {. _ク.:::ゞ ,___, 丿イイ
`フ.:::人 ヽ _ン ノ:´.::::::::) \`フ.:::人 ヽ _ン ノノ:´:;丿
)ハノヽ,ー - チ_人ノ)ノ ', `ー壬::::::::::::;;ー - チ_:::;ノ _,,..,
,r'´ヾ:V// `ヽ、 ○)ゝ .,__`ーz:ァ'´ヾム=rム::::`ヽ、r'´_,..,,`ヽ、
,' , `只´ 》 ∧`ー- ..,,,__;<:::::;:::}`只´{:::::::::::::>r'´ `ヽ ':,
《. { 〈 》 j_r彡/,.- 、..,,__,,./ヽ.!:::'ァノヽr'::::ir‐1,r'⌒ヽ、 ', !
戸! V' i. 、 \○) / / i::::::::}oi{::::::::! !\⌒ヽ.ヽΛ !ハ
,' ./____ハ. \ \i / / ノ,'.::::::::::::::::::::::l |', ', ハ} ト、 i
/ ,' ', /\ ヽ /ー'''"/.:::::::::::::::::::::::::', ! } } ,' / \/
{ / , V /`ー'´ー-‐''<::::::::::::::::::::::::::::::::>' /,ィ__,,..>
`7 λ ヽ `ー―---―一1 ム
`ミニ三彡'ミニ三彡’ ,'::::::;' !:::::::i /
l ̄ l ',  ̄i .,'::::::;' !:::::::!/
i l ',__,キ ,'::::::;' !::::::i
「 ̄l ', ! ,'::::::;' }::::::!
l .i ', j ,':::::/ ;::::::;
「レ7. マ/7. ,':::::;' ;:::::;、
辷シ 辷ノ 〈辷j 辷シ
おまけ
「なあ………」
「え?」
何とか息を殺して、ぬえは言う事が出来た。
ムラサの、
ゲームのルール説明は非常に解り易かったが……
「やっぱりさっきの解釈、あながち間違えじゃないと思う」
「ん、何で?」
「とりあえず、こういう事やめようよ
「あらあらあら」
入口の辺りを指さすと………
|┃
|┃
: ,-- 、 : |┃ 「あんなにムラムラと……」
: ) キヽ-、 ... ....|┃ 「さっきの二人とはまた別の個体ね」
: ノ 'ー' ) ).::::::::::::|┃ 「ちっこい奴等もいなくなったし……」
: ノ ノ .ノ:::::::::::|┃
: / //::::::::::::::}|┃
: `ー─''´:)::::=:::=/)|┃
: 〈==::::=∠レ_ノ/ .|┃ 断腸の思いで、ぬえはそろそろ太腿の付け根に到達しかけていた
:ノ::::::::::::::/ (ヒ_] |┃ ムラサの手を振りほどいた。
: フ::::::::::::!//// ,___|┃
:ノィ:::::::::::人. 'ー⌒|┃
: ヽイレヘ::>、.., ____|┃
「やっぱりさあ、色々見直した方がいいよ! 平和なのはいいけど、その内とんでもない事になる気がするしさ!」
「何をそんなに怖がってるの……」
「いや、さっきのムラサの話で、少しは元気も出たよ? でもね」
,,. ' "´ ̄`',-ー 、::::...
,r':: ;::---:::::::::、:::::::::::::ヽ:::::..
,イ:::,r':::::::::::::::::::::(:::::::::::::ヽヘ::::..
.{::::::| :::::人:::::::ト:::,ヽ::::!、:::Y:::::',::::...
r(ゝ:::((ノ,r=;,ヽノ_ノ.r;=;、\::゙i):::):::::....
「',::::::リ. ! ヒ_,!:::::::::::ヒ_,! ) )::!::、::人:::....
):). (:(_''' ,___, '''_人: )( : :):::::..
( ハ:ゝ ) ヽ _ン ( `(_ (:::::...
ノ .) ( >.., ______ ._イ):( ) ヽ::::...
,/ ,´ ̄:,,'/:::::::::::::::::::::⊂////;`) 彡 「連中が鏡だとしたらさあ………」
/ /:i´:::::::::::::::::::::::::::::::l,,l,,l,|,iノ : 「遊んでるだけ………でもないか、あれは。でも聖はそんな悪い事は
|;/"⌒ヽ,,イ:/::|彡:::::::::::::::::::::::::::::::ミ|::::::ヽ : するはずないし………」
l l ヽ:l::::{;;;;;;;;ゝ、;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;}:::::::::| : 「それは解る。だけどあれは」
゙l゙l, l::::(( ((◯), 、(◯) `Y l::::::::| : 「まあ、いいじゃないの。休憩時間はもう少しあるし」
| ヽ ヽ|:::::))ノ ,rェェェ、 ソ:::::::::::| : 「そういや、一輪はどうした?」
"ヽ 'j!:|:::ヽ |,r-r-| /::::::::::::| :
ヽ ー──''''''""(;;) ̄ ゙j::::i::::| : あ
ヽ、_ __,,,,,r-'''''ーー'''''
確か、森の人形使いやら、寺子屋教師と一緒に、盆栽市に行くとか行かないとか……いやそれは別の日か。
外出予定もないはずだが……
いや、そもそも……・・
「ええとええと」
「空気の様な存在って訳?」
「うん。空気。いなくちゃ困るもの。雲だって元は空気だし」
「気が付かなかったじゃん………」
大体
「前から言おうと思ってたんだけどさ、一輪、こういうの知ってるよ多分」
足首にまとまりつくムラサの足の親指と人差し指を押しのけ、率直にぬえは言った。
「私もさ、最初の内はあんまりにも普通にこういう事になってるから、一輪も本当に気づかないと思ってたけど、
そんな訳ないよね」
「あいつは気にしてないよお」
「いや、そういう風に思おうとしたけど、普通に考えて、その、付き合い古いからって、友人が目の前でってのは
気にしない訳が」
顎をなでるムラサの柔らかい曲毛を懸命にどかせ、ぬえは訴える。
ムラサはそんな様子をクスクスと笑った。
「大丈夫だよ。だって、一輪だよ?一輪」
「いや。そういう所じゃないかな………」
,,.-''"´ ̄ ̄`ヽ 憐みではなく、危機感を感じる。
./::::::::::::::::::::::::::::::::\
/i´::::::::::::::::::::::::::::::::::`i:::ヽ 「やっぱりさあ、もっと注意して見直した方が……」
/::|彡:::::::::::::::::::::::::::::::ミ|:::::ヽ 「しつこいな。また最初から話を繰り返すの?」
l:::{;;;;;;;;_ノ;;;;;;;;;;;;\;;;;;;;;;;;}:::::::| 「う~ん……」
|::(( ({旡≧///≦乏}Y l::::::::|
|:::))ノ!| | __ | |ソ::::::::::|
|::::::::ヽ |'ー⌒ー'| |/::::::::::::| このままでは、何かとんでもない事が起こりはしないか
ノ:::::i:::::::>..,____,,... イ:::::::::i:::::::|
「もっとゆっくりしなさいな。大体まだルール説明、全部終わってないんだし」
「だけどさ……」
「じゃあ、今度にする?」
「あ、もう少しちゃんと教えて」
右肩の付け根にムラサの顎が当たり、少し考えがついてこれないというのもあったが―――――ぬえは、
「ゆっくりする」というのはこういう状態も指すのかと考えていた。
とにかく、悪くは無い―――――というか、ムラサと話すのは、純粋に楽しいのだ。
消去法とか、扱い易いとか、好戦的とか平和的とか、何かを悟っているとかではなしに。
彼女と話してしまう理由は、そんなものだ。とてもシンプルなところだ。
察してくれたのか、少し優しいトーンでムラサは言った。
「神は天に在り 世は全てこともなし ってね」
「う~ん…… でも………」
「何よ、まだ何かあるの?」
「何て言うかさ、あれはその」
「だから何」
何で、こんなにもすぐにゆっくりできなくなってしまうのか。
「まあ、よく見なよ」
震える指先で、ぬえは、庭先を指した。
___
,..ー::::::::::::::::::::::ー、 __  ̄ -,/)
,'':::::::/:::::::::::::::::::::::::::ヽ , --'.:::::::', ---- 、 ,-、,-'-' /:)
,':::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::',/:::::::::::---:::::::::::::::: ヽ ヽ /
.|:::::::;':::::::::::;::::::::::::::::::::::::ノノ:::::::::ノ:::::::::::::::::::::::ヽ:::ヽ_ィヽ___.|-、
|:::/|::::::__,.::::::::::::::::、__/ :/:::ノ::::ノ::::::ノi:::::人::::::|::::::}.\====/
,|:; ( (,´::( ο)ilililili( ο{:(:(:::/::/ __,ノ ノノ 、__))::ノ:) |\//|
|:::ヽ)))::::::::::::::::::::::::::::::人:.:.ノ::( (○),:::::、(○)!::.:.ノ |//\| 「……ね?」
,|::::::| ) ヽ:::::::::::::::::::::::::( )(:::::人 !|iil! ___, "ノ:) (:( /ヽヽ::| 「う、うわあああああああああああああああ!!!」
|::::::::|:::::l:>,、 _____, ,.イ) : )ノ:.:.) (__ Y.: ∵・:ノ''' ヽヽ/
ニ三 ̄ ゙i:::::::::::::::::::::::::::::::ノ :( : ):(>.., ______ ._イノ/:::::::::::/
ニ三 ハ__ハ__/{_,(' ィ´::::::::::::ヾゝ====i:/:::::::::::/
ニ三 >─ン、, ドスッ) i:::::::::::i::::::::i >< i::::::::::/(
ニ三__、‐ー',_ _∠/ .i二二i:::::::::|< >|:::::::! ',
-ニ三〈_ニ三{ , , , |-|_ノ ';::::::::::k:::::;;;;;;>< i:::::::! )
-ニ三/ `'-リj └( ',:::::::::::',:::::;;<____>|:::::::', (
三/ ) ヽ:::::::::ヽ::ノ----ヽ:::::::', ヽ
その日の内に、3人部屋から、一輪のみ特別に自室があてがわれたことは言うまでもない。
- おまけの流れで、割と真面目な会話の内容がどうでもよくなってしまったww
ぬえが受けか!まぁ当然そうですよね!
ゆっくりが可愛くて良かったです(一部除く)。一輪大丈夫かw -- 名無しさん (2011-09-02 21:21:05)
最終更新:2011年09月02日 21:21