ゆっくりのAAとQBのAAって何を考えているかわからないあたりが似てると思った

※ 幻想郷の文明レベルが原作とは大分異なります。
※ アニメネタ多し。
※ クロスオーバーではありません。








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「お邪魔しまーす。霊夢さんいますか~。いますよね~。勝手に上がりまーす」

夏の暑さもすっかり和らいできたある日の昼下がり。
博麗神社の居間にハイテンション風祝こと東風谷早苗の人懐っこい声が響き渡る。
先ほどまでゴロゴロと惰眠を貪っていた博麗霊夢はそれを耳にしてむっくりと起き上がった。

「ふぁぁ……何だ早苗じゃない、何の用?」
「遊びに来ました! ねぇ霊夢さん、こないだ貸した私のお勧めアニメDVD見ました? 見ましたよね? さぁさぁ感想で盛り上がりましょうそうしましょう」
「ごめん見てないや」
「ぐへぇー」

霊夢のつれない返事を受け、その場にがっくりと崩れ落ちる早苗。
近頃自分の好きなアニメや漫画を広めることに躍起になっている早苗であるが、霊夢のつれない返答に落胆する。
自分の好きな物を理解する人を増やしたい。皆で盛り上がりたい。友達とアニメの話をしたい。
こうして生来の強引さで半ば無理矢理霊夢にDVDを貸し付けて布教しようとしたことはいいものの、生憎失敗したようだ。

「何で見て無いんですかぁ!? 折角霊夢さんと一緒にアニメの話で盛り上がれると思っていたのに!」
「私はアニメとかも一応見るけど、ロボとか魔法少女モノとかは興味ないのよね。北斗みたいな悪党がバンバン弾け飛ぶ話が見たいのよ」
「……流石霊夢さん、期待を裏切らないバイオレンスっぷりです」

ちなみに幻想郷における北斗の拳の放送の時間帯は夕食時である。
愛情の篭った温かいご飯を作るお母さん、仕事から帰ってきてほっと一息のお父さん、
そして寺子屋での出来事を得意げに語る子供、BGMはモヒカンの断末魔。
それが最近の幻想郷における家族団らんの時間だ。
将来子供達は千葉繁ボイスのモヒカンの断末魔を聞く事でノスタルジーに浸ることになるであろう。

「うぅ……いるんですよね、第一印象だけで敬遠して見ない人。こうなればプリキュアみたいな肉弾戦多目のものを見せて徐々に洗脳していくべきだったんでしょうか……。かのドラゴンボールと同じ東映が製作しているんですし。でも4クール作品はちょっと敷居が高いし、かといっていきなり映画版見せたり神回の戦闘シーンを見せるのは勿体ない気がするんですよねぇ。ああいうのは積み重ねて見ることで感動が倍増するものですから……どうしたものか…………」

早苗がぶつぶつとこれからの作戦を考えていると、廊下からぽんぽんとボールやゴム鞠のような質感をもった物体が跳ねる音がしてきた。
 緩慢に、リズミカルに、楽しそうに、来訪者がいる事自体が楽しくて仕方がない事がその音から不思議と伝わってくる。
 そしてそれは早苗達の前に姿を現せた。

『ゆっくりしていってね!!』

間の抜けたように暢気な、その一方で子供が元気一杯にハキハキと活力に溢れたような、そんな矛盾した印象を与える声の主。
それは霊夢の記号を模した饅頭顔の一頭身――霊夢のゆっくりことゆっくりれいむだ。
ゆっくりれいむのその何処からともなくやってきて博麗神社に出没する様子はまるで野良猫が住み着いたよう。
ちっちっち~と早苗が猫を誘うかのような仕草で手招きすると、ゆっくりれいむはぽんぽんぽんと軽く飛び跳ねて寄ってくる。
他人の家のペット(?)を可愛がるのは女の子の本能のようなものだ。
おおよしよしとゆっくりを撫でながら満面の笑みの早苗と、無警戒にも早苗の手に柔らかな頬を摺り寄せて『ゆ~♪』と蕩けた表情を見せるゆっくり。
そうやって長閑な時間を味わう早苗に対し、ゆっくりが驚くべき台詞を口にする。

『ぼくとけいやくしてまほうしょうじょになってよ!!』
「!?」

早苗は目を丸くし、次いで頬が緩むのを抑え、そしてそわそわとした様子で霊夢に視線を向ける。

「霊夢さん、これひょっとしてかの営業マスコットの代表的な台詞じゃありませんか?」
「そうなの?」
「そうですよぉっ! 霊夢さんのゆっくりってアニメ見るんですか?」
「ん~、どうやらそうみたいね。早苗が貸してくれたDVDだけど、ゆっくりが見たがってたようなんで見せたわ。最近その台詞ばっかり言っているようだし、ごっこ遊びでもしてるんでしょうねぇ」
「しゃあっ!」

同士ゲットだぜ。
早苗はその言葉を受けてこぶしを握り締めてガッツポーズ。

「あの営業マスコットの真似とは中々見所のある子じゃないですかぁ。どれどれ、飴ちゃんをあげましょう。ご褒美だ、何個食いたい? 2個か? うそだよ! 5個投げてやろう! 同時に5個、口でキャッチできるかな? 手使っちゃだめだぞ」
「ねぇよ」

ハイテンションになりながらポイポイと飴を背面投げする早苗と、『む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~!!』とこの世の幸せをめい一杯味わうようにご満悦のゆっくりれいむ。
同好の士が見つかり、早苗は心の底から嬉しそうだ。

『ゆっくりしていってね!』
「ぼくとけいやくしてまほうしょうじょになってよ!」
『ゆ?』
「ぼくとけいやくしてまほうしょうじょになってよ!」
『けいやく?』
「けいやく!」
『ぼくとけいやくして』
「まほうしょうじょになってよ!」
「『ゆっくりしていってね♪♪』」
「うっせぇ」

わーいと、子供のような無邪気さで意気投合する一人と一匹。
霊夢がため息を吐きながら冷めた目でそんな早苗とゆっくりれいむを見やる。

「ねぇ早苗、私そのアニメ見て無いから詳しく知らないんだけど、え~と、はちべえだかじゅうべえだっけ? そいつそんなに契約契約五月蝿いの?」
「マジです。ぶっちゃけ射命丸さんの新聞勧誘が可愛く見えるレベルです。ノルマ厨の敏腕営業マンですよぉ。だがそれがいいんです! 魅力なんです! まぁ実際に関わることはお断りですけどね」
「そういえば最近の射命丸ってやたら生き生きとしているわよね、新聞の売れ行きがいいとかで凄く張り切ってたし」
「文々。新聞にTV欄がついたからじゃないですか? 番組表しか読んでない人って結構多いみたいですよ」

本人が聞いたら号泣ものである。

「ところで話を戻すけどさ、ゆっくりがアニメの影響を受けすぎたせいか、ごっこ遊びにハマってて面倒なのよねぇ。こいつ元々やたら構って欲しがりだし」
「え~、微笑ましいことじゃないですか~」
「早苗は当事者じゃないからそんなこといえるのよ。何かにつけて契約契約うっさいの。もう少し落ち着いて欲しいわ」
「まぁ、そういうキャラですしねぇ。契約厨って呼ばれるだけのことはあります」
「アニメにはまるとはいっても、ペンを咥えてお絵かき帳に絵を描くことに夢中になってた頃はまだよかったんだけどねぇ」
「え!? 霊夢さんのゆっくりってひょっとしてイラストや漫画描いたりするんですか? うおおおおっ、将来有望だコレ!」
『ゆっくりー!』

早苗が瞳をキラキラと輝かせながらゆっくりを胴上げする。胴無いけど。
そうだ、手足がない事なんて創作行為に何のハンデにもならないんだ。アニメとゲームと漫画とラノベを愛するこのハートが大事なんだ。

「お絵かきこそ同人の第一歩! 後の黒歴史こそが性癖を作り上げる! そうなんですよ、そういうのは大事なんです!」
『ゆっくりほめていってね♪ もっとほめていってね♪』
「いいでしょういいでしょう! おおおよしよしほっぺぷにぷに~♪ そうだ霊夢さん! 私そのお絵かき帳見てみたいです! よかったら見せてください!」
『ゆっくりみていってね!』
「ん~、じゃあちょっと持ってくるわね。私が言うのもなんだけど結構上手いわよ」

そこで霊夢が箪笥から一枚のお絵かき帳を持ってくる。
お世辞を言わない霊夢さんが褒めるほどとはこれは期待出来そうだと、早苗は期待に胸を躍らせながらお絵かき帳を受け取った。

『ゆっくりよんでいってね!』
「どれどれ~どんなジャンルなのかな~――ってリョナ絵ばっかじゃねーかコレ!? 何だよこのジャポニカ暗殺帳!?」

お子様が使うようなほのぼのとした表紙の中には、魔女空間(絶賛魔女裁判中。火あぶり的な意味で)が広まっていました。

『ゆ~♪』
「褒めてねーよ! 悪趣味そのものだよこの生首!  あぁもう鉛筆描きなのに壁サークルレベルの画力なのがむしろ腹立つ! 霊夢さんなんでグロ絵平然と見れるんですか!?」
「いや、北斗のモヒカンの扱いの女版みたいなもなのかな~って」
「全然ちげーよ!?」

はぁはぁと、早苗は肩を大きく上下させ息を荒げる。
いや、まだだ。描けるのがこういった系統なだけで、視聴における趣味はまた別なのかもしれない。
折角アニメ好きの仲間が見つかったのかもしれないのだから、諦めるのはまだ早いと早苗は思いなおす。

「ゆっくり、ずっとあの子たちを見守りながら、あなたは何も感じなかったの?」

早苗は一縷の望みを託して、ゆっくりに問いかける。

「ゆっくり、貴方の好きなアニメキャラは誰? エログロの対象としてじゃなくて、純粋に好きって意味で。子供が憧れのプロスポーツ選手を答えるように純粋な気持ちで」
『スポポビッチ!』
「うんやっぱり貴方は私の敵なんだね!? スポポビッチと言えばドラゴンボールの天下一武道会でビーデルさんをボコっていたリョナ界のスーパースターじゃねーですか!? アウトだよ!? どう考えてもアウトだよ!? しかも展開の遅いアニメ版では30分を二週にわたってビーデルさんをぼこぼこにするシーンが水曜の夕食時に流れていたんですよ! 私トラウマですよ! だって30分を二週ですよ! 二週! ビーデルさんをボッコボコにするだけで一時間スペシャルが出来ますよ! 放映できるかそんなもん!」
『そこビデオでもってる!』
「悪趣味の極致だよこいつ!?  アニメに対して純粋な気持ちなんて微塵もねー! こいつアニメをオナネタ探しにしか利用して無いよ! 何ぽっと赤らみながらいってるのさ! 照れるなよ!」
『ゆっくりほめていってね♪』
「褒めんわ!? 上目遣いするなや!?」

 ぜーはーぜーはー。
 信じていたのに裏切られた。
どうやらこいつは自分達とは違う価値観を持った生き物のようで、絶対に相容れないらしい。
仲間を見つけたかと思ったが、それは勘違いだったという事に気付いた早苗は大きく落胆のため息を吐いた。

「あぁもう、こんなことを考えるこの子の頭の中には何がつまってるんだか……餡子でしたっけ? いやいや暗黒物質ぐらい入ってますよこの子」

ゆっくりの中身とはなんだろう? 
餡子? クリーム?  いや、それは違うとゆっくりは首(頭)を振る。
ゆっくりの中に入っているのは――

『ゆめさ!(どや顔)』
「つまり頭空っぽってことですね」

あ~た~ま~か~らっぽの~ほ~うが~ゆ~めつめこめ~る~。
そういえば「夢っていうのは呪いなんだ」と子供向け特撮の小説版で某登場人物を達磨にした井上先生の脚本で言っていた。つまりこいつの頭の中には呪いがつまっているのか。
うん、納得。

「はぁ……やっぱり生首は所詮生首かぁ……。感性が違うよぉ……。霊夢さぁん、一緒にアニメ見ましょうよォ……。語れる同年代の女の子がいなくて寂しいんですよぉ……」

大きく落胆の色を見せたかと思えばゴロゴロと転がりながらふて腐れる早苗と、『ゆっくりかくよ!』と宣言して色鉛筆を咥え無邪気にカラフルな内臓を描いているゆっくり。
 これ放っておくと面倒なことになるだろうなぁ。
霊夢は後頭部をポリポリ掻きながら嘆息する。

「あ~もう、わかったわよ、少しだけだったら一緒に見ていいわよ」

 その途端先ほどまで死人のようであった早苗ががばっと、まるで全身がバネで出来ているかのように跳ね起きる。

「ホントですか!? 嘘じゃないんですね!?」
「その代わりちょっと見たらおしまいだからね。あまり我侭言うんじゃないの」
「ヒャッホォォゥ!!」
「うるせえ」




『ゆっ! ゆゆっ!』

ゆっくりれいむは座布団を咥えてテレビの前のベストポジションまで引きずり、それを二度繰り返す。
次はおやつだ、ゆっくりれいむは何を食べようかと頭を悩ませるようにクエスチョンマークを浮かばせながらコロコロと転がり、しばらく後にその頭上にぴこんと電球が浮かび上がった。
ゆっくりは戸棚の上にある煎餅を見つめながら、霊夢に声をかける。

『れいむ~おせんべとって!』
「ちょっと待ってなさい。――よっと、ほら向こうに持っていきなさい」
『さんくす!』

ゆっくりれいむは煎餅を入れた菓子入れを頭の上に乗せ、落とさぬようにぽすぽすぽすと低く低く慎重に弾みながら座布団の近くに持って行く。
霊夢はお茶を煎れたお盆を持ってきて、仕上げに早苗がわくわくとした表情でDVDと機器を用意する。
これで完璧だ。

「てか早苗って一度見たのにまた見るの? 内容わかってるのにつまらなくない?」
「二度目三度目と見ることで新たな発見があるんです。皆でワイワイしながら見たいんですよ。あ、ちなみに一周目はリアルタイムで一人で見る派です。霊夢さんもながら見や飛ばし見じゃなくてきちんと最初から最後まで追うことによって作品の良さがわかりますから」
「とにかくさっさと見て終わりにするわよ。アンタもさぁ、自分の好みを人に押し付けるんじゃないって。自分の好みを押し付けるのは宗教勧誘の基本とはいえさ。まったく、アニメのファンを信者と呼ぶのは良い表現ね」
「うぅっ、絶対に面白いのに……。私はただ霊夢さんとアニメの話をしたいだけなのに……」
『ゆっくりみようね♪』
「お前はかわいこぶるなマジで」

わいわいがやがやと、まるで上映前の映画館のような雰囲気。
霊夢と早苗が座布団に座り込み、ゆっくりれいむがぴょこんと飛び跳ねて霊夢のすべすべの太ももの上に収まる。
 早苗が再生のボタンを押すと、映画館の場内の灯りが消えてその賑やかさが静まり返るかのごとく皆黙り込み、視聴が開始された。


――そしてあっという間に5巻まで視聴完了した。


「杏子ちゃん……うぅっ……杏子ちゃんが……杏子ちゃんがぁっ……。あんなに良い子だったのにっ……。最初はこの子かませ犬になってすぐに死ぬんだろうな~って思っていてごめんね杏子ちゃん……。あの子天使なの? 聖女なの?」
「うんうん、そうですよねぇ霊夢さん。杏子ちゃんって第一印象が悪かった分、その後の株の上がりっぷりが物凄いんですよねぇ」

 わんわんと大泣きする霊夢。先ほどまでの邪険さはどこへやら。
 どうやら完全に食わず嫌いだったようで、霊夢の感情移入とはまりっぷりは早苗の想像以上であった。

「……あの、霊夢さん……その…………面白かったですか?」
「うんっ、面白かった! これを薦めてくれてありがとう、早苗! 早苗は、私の最高の友達だったんだね!」
「…………まったくもう、掌を返すにも程がありますよ」

 早苗はほっと一息安堵のため息を漏らす。ぼやいてはいるものの、早苗は満更でもない。
面白いものを見れた喜びか、太陽のように光輝く屈託の無い笑顔を浮かべる霊夢。
これが先ほどまでぶつぶつと文句を垂れていた少女と同一人物だから困りものだと早苗は思う。
「おもしろかった」
裏表の無い彼女の、思ったことはすぐに口に出す、そんな彼女の真っ直ぐな言葉。
自分が薦めた作品が肯定される。嬉しくもなろうものだ。あぁ、これだ。私が求めていたのはこれなんだ。面白いものを共有できる友達がいてよかった。
そんな一方で自らの行いを反省する自分が早苗の中にいた。
今考えてみると自分のやり方は強引だったかもしれない。下手をしたら彼女がそのアニメを嫌うようになっていたかもしれない。
成功してみて初めてわかる、自らの浅はかさ。もしも彼女に合わず薦めることを失敗したときの事を考えるとぞっとする。
けれど今、目の前の友人は笑っている。運良く結果オーライとなることが出来て早苗はほっとする。
今回ばかりは本当に勇気を出してよかった。アニメバンザイ。魔法少女バンザイ。
 そう感激する早苗の横で、霊夢がきょろきょろと忙しなく辺りを見回す。

「ところで続きは無いの? 6巻はどこ?」
「ありませんよ」
「え? 何で?」
「まだDVDが売ってないからです。でももうすぐ発売ですから安心してください」

微笑ましく思った早苗はふふっと笑う。
これほどまでに楽しんでくれるとはこちらも薦めたかいがあるというものだ。

「……発売するのってあとどんぐらい? 明日? 明後日?」
「二週間後です」

それは霊夢にとって死刑宣告に等しい言葉であった。
この世の終わりのような顔をして、がっくりと膝を着き絶望する。

「そんなに待てない…………どうにかなんないのさなえぇ…………」
「いやいや、たった二週間じゃないですか。アニメは普通だったら一週間ごとですし、そもそも私はそれの本放映の時は一ヶ月以上待ったんですよ」

ですので私と同じく1ヶ月間待たされた気持ちを味わってくださいねふはは~と、早苗は霊夢をからかおうしたが、
「うぅっ……」っと本気で続きを見たがって呻く霊夢を見ると、そうすることを躊躇ってしまう。
「どうにかならないの?」と捨てられた子犬のような目で訴えてくる霊夢。
両腕を開いては閉じ、開いては閉じ、自らの欲求を抑えながら頭を悩ませる。
やばい、お持ち帰りしたいよこの子。
そう早苗が内心悶える中、ゆっくりが霊夢の袴を咥えて『ゆっ、ゆゆっ』っと引っ張っている。

「何よゆっくり、今それどころじゃないのよ。まどかの危機なの」

霊夢に振り払われてゆっくりは袴から口を外してしまい、コテンと後方に倒れて後頭部をぶつける。
涙目になりながらももそもそと緩慢な動きで再び起き上がり、霊夢の方を向き、そして告げる。
彼女達が先ほどまで嫌と言うほど聞いたあの悪魔の囁きを。

『ぼくとけいやくしてまほうしょうじょになってくれたらどんなねがいでもかなえられるよ! DVDだっておもいのままさ!』

 嘘ではない、冗談でもない、おふざけですらない。
何故ならばゆっくりれいむがどこからか差し出したのは、かのアニメの11話と12話のタイトルが記されているDVD。
早苗は思わず息を飲む。

「ほ、本当に本物……まさか――」
『ろくがしてた!』

そのDVDはパッケージ版ではなく、放映されていたものをゆっくりれいむが私的に録画した一枚だ。

「くっ、なるほど盲点でした……。どうやら貴方、TV放映版を録画していたとは……。その上でパッケージ版と見比べようという魂胆でしたか……」

ぐぬぬと歯ぎしりをする早苗。

「大体契約って何をしようというんですか? 魔法使いになる修行でもするんですか?」

何も本当に魔法少女になるわけではないだろう。ただのごっこあそびに違いない。
そう早苗がタカをくくっているとゆっくりは一枚の本を差し出した。

【貴方もなれるキョンシー入門】

「ガチでゾンビじゃねーですか! せめて魔法使いになる修行にしろよ! こいつ影響を受けるにも程がありますよ!」

差し出された本を叩き落として早苗が叫ぶ中、霊夢は虚ろな瞳でゆっくりの方に吸い寄せられるように歩み寄る。

「……本当なの、ゆっくり? 続き……見れるの……」
『きみがそれをのぞむのならね!』
「霊夢さんちょっと待った!? アニメDVD一つの為にゾンビ化する気ですか!? そいつの言葉に耳を貸しちゃ駄目!! 本当の事言うと私だって11話12話を自分で録画して持ってますから!     パッケージ版で見せたのなら最後までパッケージ版で見せようとか思っていただけで、実は私も最後の方のTV放映をブルーレイで録画したやつ持ってますから!」
「私ブルーレイ持ってない……。DVDじゃないと見れないのよ……」
「だったら私の神社で見ていいですから! ちょっと遠いですけど――」
「今すぐ見たいの、待てないの」
「この人堪え性無いにも程があんぞ!?」

 必死に呼び止める早苗だが、それでも霊夢は止まらない。
一歩、また一歩とゆっくりに向かって歩み寄る。
それを早苗は両手を広げて制するように食い止める。

「駄目ぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

うっわー私ってば何でいつのまにかほむほむポジションになってるの。

「いいですか霊夢さん、見る方法なんて動画パックだの何だの色々あるんですから早まらないで下さい。願い事がすでに決まっているなら、より条件が良い相手と契約すればいいんです。――って霊夢さん? 何か思いついたような顔してどうしたんです? え? なんでゆっくりに向かって腕を振り上げてるんですか?」

 そういえば霊夢さん、ロマサガやったら何の迷いも無くガラハドをころしてアイスソードをうばいとりそうなタイプですよね? 
あれ? 何でこんなこと考えてるんでしょう。
早苗が見た霊夢のその姿は、まるで目を開けたまま西瓜に思い切り木刀を振り下ろす子供のようであった。


手刀「ゆっくりが割れる日」


「ちょいやーーーー!!」
「私のスペカ名ぱくったーーー!!?」

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  ,´ _,, '-´ ̄ /ヽ       |  `-ゝ 、_ イ、
  'r ´ iゝ、イノ| ::::i     |ヽレ/_ルヽ、ン、
  ,'==(ヒ_]   . | ::::|      |   ヒ_ン ).==', i
  i イ ///. ,__| ::::|    |_,   /// ヽイ i |
  レリイi    ヽ_/ :::::| 。   |ン     | .|、i .||
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   L.',.     i ::::::! ゜     i     L」 ノ| .|
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   レ ル` ー-ヽ '       `-─ ´ルレ レ´


「あくはさった! DVDゲットだぜ!」
「わけがわからないよ!?」

強、奪♪
                                          完

























~おまけ ゆっくりのほのぼのおやつタイム~

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  i イ ///. ,__| ::::|    |_,   /// ヽイ i |
  レリイi    ヽ_/ :::::| 。   |ン     | .|、i .||
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  'r ´          ヽ、ン、    'r ´          ヽ、ン、  ぶんれつ~♪
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 i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |   i イ iゝ、イ人レ/_ルヽイ i |
 レリイi (ヒ_]     ヒ_ン ).| .|、i .||   レリイi (ヒ_]     ヒ_ン ).| .|、i .||
  !Y!""  ,___,   "" 「 !ノ i |    !Y!""  ,___,   "" 「 !ノ i |
   L.',.   ヽ _ン    L」 ノ| .|    L.',.   ヽ _ン    L」 ノ| .|
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  !Y!""  ,___,   "" 「 !ノ i !Y! "" ,‐―(   "" 「 !ノ i || |
   L.',.   ヽ _ン    L」 ノ| L.',.             L」 ノ|.|.| |
   | ||ヽ、       ,イ| ||イ| | ||ヽ、         ,イ| |イ//  /
   レ ル` ー--─ ´ルレ レ´ レ ル` ー---─ ´ルレ レ´  

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       i イ  (ヒ_]     ヒ_ン ).ヽイ i |
       レリイi!""  ,___,   "".| .|、i .||  ゆっぷぃ♪
        !Y!   ヽ _ン    「 !ノ i |
         L.',.          L」 ノ| .|
         | ||ヽ、       ,イ| ||イ| /


「ゆっくりの皮をかぶったインキュベーターでしょこの子!?」

 その後何食わぬ顔で霊夢の膝の上に乗り続きを楽しんだゆっくりれいむとであったという。
 仲がいいのか悪いのか、どうやら彼女達にはこれが日常茶飯事だったようで、やはり幻想郷では常識なんて放り投げるべきなんだなーと早苗は改めて思った。










あとがき。

実は構って欲しがりなだけです。


  • 昨日ニコ生で全話視聴した自分にとっては、何てリアルタイムなw
    早苗ちゃんが現代人のティーン過ぎてワロスwwでもゆっくりれいむは少し頭冷やそうか。
    そしてこれからアニメに影響されて濃厚な「れいさな」が始まるんですよね!?だよね!? -- 名無しさん (2011-10-20 17:17:12)
  • でも普通に北斗の拳の再放送って夕方時なんだよね。それにしてもジャポニカ暗殺帳w -- 名無しさん (2012-08-28 09:20:12)
  • 霊夢はチャージマン研あたりがいいんじゃない?バッタバッタ無双されてく。 -- 名無しさん (2013-10-29 22:58:54)
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最終更新:2013年10月29日 22:58