れみりゃを飼おう

 冬も終盤を迎え始めた3月。暖房が唸りを上げるホームセンターに僕は居た。わんわん、にゃあにゃあという鳴き声が響く動物ブースの隅っこにおいてある、縦に長い長方形の鉄かごの住人に僕は心惹かれていた。天井の黄色いライトに照らされながら、両足の爪で止り木をつかむ鋭い目付きの白いフクロウだ。肉を啄む尖ったクチバシに堂々と張った胸。まさに、ハンターの相貌そのものである。
 純粋にかっこいいと僕は思うが、その分、怖くて買える気がしない。それに、値段もすごいし、鳥を飼うにあたっての醍醐味である放し飼いなんてもってのほか。買うスペースがない、小屋の掃除が大変だ、などなど思いつく限り飼える要素は全くない。
 しかし、憧れる。鷹匠のように自由に鳥を使役できればなと。なら、それをクリアできる生き物を買えばいいじゃない! そう思った僕は動物ブースのとなりにあるゆっくりブースへと移動した。


『れみりゃを飼おう』

書いた人:がいうす・ゆっくりうす・かえさる(今後は“ゆっくりうす”で通します)

注意
  • 作者には文才が無いです。チープな作品でも許すという方だけ続きを読むことをお勧めします。
  • タイトル通り、捕食種がでます。
  • 現代設定です。
  • 誤字・誤謬があっても寛大な精神で・・・・っ!
  • ゆっくりしていってね!







 今度は「ゆっくりしていってね!」という挨拶と共に自己アピールをし始める不思議饅頭ゆっくりが僕を待ち構えていた。ショーケースの中に入れられたそれらはウィンクをしたり、ケースに向かって飛びついてきたり、あるゆっくりは妙なポージングで誘惑しようとしたり。多種多様である。
「れ・み・り・あ・うー!」
「おお、コイツだ」
 僕の目の前でれみちゃは羽をバサバサと拡げては閉じる。自分の名前と“うー”と“あまあま”と“まんま”と言う言葉以外まず喋られない胴なしれみりゃはボディーランゲージで愛想を振りまわる。純粋に可愛い。他のゆっくりたちも可愛いのだが、言葉を喋らない分、体をフルに使って意思を伝えようとするその姿にキュンとしてしまった。
「予想に反して可愛い生き物だが、果たしてコイツはハンターなのだろうか?」
 ケースの前でブツクサと独り言をつぶやく自分は怪しい人にほかならないかもしれない。少し反省。
 一応、ゆっくりに疎い自分でもれみりゃのことは知っている。野良のれみりゃは捕食種以外のゆっくりの中身を吸って生きているとか。味にうるさく、甘いもの以外は受けつけないらしい。だが、甘いものさえ与えていればおとなしく、種によってはなついてくれる可能性もあるそうだ。これは買いだろうか。
 ショーケースで飼われているれみりゃの値札の横に“躾済み”と書いている。最低限のしつけがなされていると書いているがどの程度かはわからない。言葉のボキャブラリが少ないので犬猫を飼うつもりでいけば大丈夫だろう。
「えーと値段は……一万円超えないんだな」
 財布の中身を確認し終えてから、店員さんを呼んでれみりゃの前に立たせた。
「この子ください」

 店員に勧められて買った初心者用ゆっくり飼育セット(内訳は折りたたみ式のスチール製のカゴ・ゆっくりフードお徳用・トイレセット等など)と持ち運び用のカゴを持ちながら帰りの道を歩いて行く。持ち運び用のカゴに入れられた、ラムネガスで眠らされたれみりゃは可愛い笑顔でうとうとと寝ている。少し顔を除くとピクンと反応するのがまた可愛い。
 ああ、忘れるところだった。僕の片腕にはビニール袋がぶら下がっている。その中に入っているのは赤ちゃんゆっくり6匹だ。内訳はれいむ・まりさ・ありす・ぱちゅりー・ちぇん・みょんのポピュラーな種族をそれぞれ一匹ずつ。
 れみりゃの主食は甘いものである。しかし、人間の持つ甘いものでは糖度が高く、人間の食べ物に依存してしまう。それによって、体調を崩したりする可能性もあるので、れみりゃには食べ慣れているゆっくりを与えるのが良いそうだ。
 会計の場でうんちくを垂れ流す店員のお陰でこれらのことを知ったのだが、少し恨めしい気分でもある。
「じゃあ、なんでゆっくりフードも買わせたんだ?」
 試供品ということで安くしてもらったが、その場のノリと店員のトーク力で買ってしまったいらないものだ。ぶっちゃけ、一番重量が重いので持っている手が痛い。
 それにしても、自分の予定通りゆっくりを買ったわけだが、いざ生き餌のゆっくりを見るとちょっと背筋がブルッとする。僕が欲しいペット像は従順で、部屋を自由自在に飛び回り、それでいてクールなペット。弱肉強食という現実を見るために買ったわけでもないが、飼う以上、現実と向き合うのも飼い主としての義務だろうな。
「よろしく頼むよ、れみりゃ」
 眠り姫の小屋を軽くノックして僕はこれからのことについてもう少し考えてみた。

 ホームセンターがある駅前から10分の所に僕の家がある。グレーを基色とした小さな2階建ての横長コーポだ。その一室が僕の部屋である。
 一階にある我が家の扉に鍵をさして、回してから中にはいる。廊下なんて高度なものはない。眼の前に現れるのが僕の部屋だ。
 早速、僕は部屋の電気をつけてから荷物をすべて下ろす。片手で持っていた持ち運び用のカゴの中かられみりゃをそっと取り出す。生暖かい体温が手のひらを覆い、このまん丸いのが生きものであるという 実感を覚えさせてくれる。
「ぅううう……うー?」
 どうやら、人の手に触れたことで目覚めてしまったようだ。感動のご対面というやつかな。僕はどんな表情を取ればいいのかわからず、とりあえずいつも通りの表情で返事をした。
「やあ、こんばんは」
 気軽に挨拶をする。だが、れみりゃはココがどこだかわからないようで少し困っているようだ。
「えっとね、僕は君の飼い主さんになったんだ。お兄さんと気軽に呼んで欲しい……って無理か」
 首を傾げるポーズを取ったれみりゃは次第に怪訝そうだった顔を笑顔いっぱいに咲かせ唸った。
「うー! うー!」
 パタパタと弱々しく浮上しながられみりゃは僕に返事を返してくれた。どうやら意図は伝わったらしい。躾済みは伊達じゃなかったそうだ。
「良かった良かった。それで、自分の立場はわかるかな?」
「うー!」
 頷く素振りを見せるれみりゃ。中々、賢い。まるで、人間の子供と会話をしているつもりになってしまう。
「いい買い物だったかな?」
 うんうんと納得しながら、僕は放置していたセットの中かられみりゃの家となる折りたたみ式のカゴを組み立てることにした。

「給水ボトルを付けてと」
 小動物を飼うときに使う舌で玉を押しだして水を得るアレである。それを柵に取り付け、餌箱とトイレ用の容器を設置。破った新聞紙を敷き詰めると出来上がりである。
「できたぞ!」
「うー!!」
 嬉しそうに部屋中を跳ねまわるれみりゃに僕の頬もほころぶ。
「ところで、れみりゃ。お腹空いてないか?」
「うー? うー!!」
 僕の肩に乗ったれみりゃは僕の頬と自分の頬をすりあわせてくる。ゆっくりで言うとすーりすーりという愛情表現の一種だ。
「おお、かわいいやつめ! 甘いの三個くれてやろう!」
 角砂糖ではなく、僕はビニール袋ですやすやと寝ているれいむとまりさとありすを取り出した。
「ゆぴぃ、ゆぴぃ」
「おきゃぁしゃん、むにゃむにゃ」
「ゆっくちしたおはなしゃん……」
 呑気に寝ているところも可愛い。寝言をしゃべるところが人間臭くてゆっくりって結構いいなぁとか思い始めている。だが、首を振って考えなおす。
 今から始まるのはゆっくりがゆっくりを食べる時である。弱肉強食というリアル。生きるための必須行動。れみりゃを買うと決めた以上、冷酷な目で見なければならない。
「悪いけど、餌になってくれ」
 三匹を片手でつまんで、れみりゃの前においてみた。
「ほら、お食べ」
 覚悟の時だ、と僕はじっとれみりゃを観察する。
「うー……」
 だが、れみりゃは一向にゆっくりに手を付けないのだ。何よりも、表情が曇りつつある。なぜだろう?
「食べたくないのか?」
「うー!」
 会釈するれみりゃに僕は驚いた。
「でも、れみりゃ、君はゆっくりを食べるんだろ? それともお腹が空いてないのかな?」
「うー! うー!」
 体を横に振って違うとアピールするれみりゃ。この場合、両方違うということなのかな? 質問の仕方を間違えた。
「えって、れみりゃはお腹は空いてる?」
「うー!」
 体を縦に振ってイエスと答えるれみりゃ。
「それじゃあ、君はゆっくりを食べるんだよね?」
「うー! うー!」
 今度は横だ。あれ? 何がどうなってるんだ?
「ゆぅ、うるさいのじぇ……ゆっくちねむ……れみりゃだ!!!」
「ゆん、うりゅさい……れみりゃだ!!!」
「まっちゃく、とかいはじゃ……れみりゃだ!!!」
 三者三様にれみりゃにビビる。中には失禁してしまった子もいる。
「ゆっくちたべないでくだしゃい!!」
「たしゅけて! おきゃあしゃん!」
「に、にんげんしゃん!? はやくたしゅけて!!」
 逃げるということは出来なかったのだろう。涙を流してその場で立ち止まっている。それ程までにゆっくりにとってれみりゃは畏怖の対象らしい。
「うー!」
 れみりゃは先程までのしょんぼりした顔から、笑顔に返り咲いた。
「ゆぴぃいい!!! こわいのじぇぇえええええ!!! にんげんしゃん、たしゅけて!!」
 三匹が僕の足元に寄ってくる。だが、僕はれみりゃがなぜ笑顔に変わったのかが知りたかった。
「う~!」
 れみりゃも僕の足元に近づいてくる。どうやら、三匹に用事があるようだ。……もしかして活き活きとしたゆっくりを食べたかったのかな。
「「「ゆわーん!!! ゆわーん!!!」」」
 大泣きする三人に接近し、身体一個分の距離出れみりゃは止まった。
「うー……」
 すると、自前の羽で顔を隠してしまう。いったい何がしたいんだろう。
「うー!!」
 声を沈めてから、れみりゃは羽を広げていないないばーをしてみせたのだ。子供をあやすその素振りはまるで、実の子をお喜ばせようとする親のように。
「「「ゆぅ、ゆゆゆゆ!」」」
 先程まで泣きべそを書いていた三匹は静かになり始めた。もしや……
「うー……」
 今度は先程よりもためて、
「うー!」
 いないないばーをしてみせた。
「ゆぅ! とっちぇもゆっくちしてるのじぇ!」
「もっちょして!」
「ときゃいはだわ!!」
「う~」
 三匹が喜びながられみりゃに近づいていく。それを頬を赤らめて照れてしまったれみりゃが優しくコウモリの羽で包み込む。
「うー!」
 赤ん坊を抱きながられみりゃは嬉しそうに鳴いた。

 どうやら僕の誤算だったようだ。ゆっくりフードを買ったのは正解で、れみりゃは赤ゆっくり6匹の面倒を見ながら一緒に食べていた。
 店員の話は野良のれみりゃを飼う場合の話だった。飼いゆっくりはたとえ捕食種でもゆっくりフードを食べるように躾されているらしい。いかんいかん。勘違いだった。
「むーちゃむーちゃ、ちあわしぇー!」
「そうだにぇ!」
「ときゃいはなあじだわ!」
「むきゅん!」
「おいちいんだにぇーわきゃるよー」
「もっちょだびぇるみょん!!」
 微笑ましいその姿を見ながられみりゃは満足気にしている。想像していた猛禽類とは違えど、中々、見応えのあるものだ。
「母性でも目覚めたのかな」
 僕はケースの中の1シーンを見ながら机の上でカップラーメンをすする。色々とゆっくりのために準備をしていたら夕食を作る時間がなくなってしまったのだ。
「これからどうしよう」
 多頭飼いは初心者がすることではないということは分かっている。しかし、れみりゃとそのチビどもを見ていたらなんとも言えない空気が漂っていた。
「そうだよなぁ……仲を裂いちゃうのはダメだよなぁ」
 飼い主としての義務もあるし。とりあえず、僕がするべきことは今以上の節約生活と、新しいゆっくりセットの購入かな。


  • ゆっくりでペットネタって久しぶりに見たかも。
    なんて言うか、違和感は覚えるけど面白いと思う。
    -- かに (2012-03-06 00:10:19)
  • 07 01:12:12)
  • れみりあかわええ -- 阿部さん (2013-10-26 20:59:48)
  • 赤ちゃんもくれたのはれみりゃが甘えん坊だからか? -- 名無しさん (2014-04-05 13:34:32)
  • とりあえずお前ら黙って見ろ -- 蛇尾 (2015-03-08 08:20:23)
  • 批判コメする奴は見に来んなよ -- 名無しさん (2015-10-07 13:05:38)
  • れみりゃ可愛いです。   飼ってみたい(笑) -- 名無しのおねーさん (2015-10-16 20:25:14)
  • れみりゃと一緒に生きたいものですね...
    早く明晰夢が見れるようになりたいものです。 -- 名無ノ権兵衛 (2015-12-12 21:35:37)
  • リアルでゆっくりがいたら良いのになー -- 緑茶 (2016-05-03 14:32:46)
  • 荒らしコメントを削除しました。
    注意して下さった方、すみません。 -- 名無しさん (2020-02-16 11:30:47)
  • れみりあが母みたいやー!。 -- 黒曜石 (2021-01-09 09:07:05)
  • れみりゃはやっぱりかわいいね! -- にゃる (2021-04-03 02:17:20)
  • ゆっくりちぇんがリアルでいたらいいのに
    -- DOM527 (2021-09-04 14:24:39)
  • むちゃくちゃかわいい抱きつきたい! -- user4598 (2021-12-09 01:23:31)
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最終更新:2021年12月09日 01:23