「おねえさんおはよう!ゆっくりしていってね!」
「ああ、おはよう。ゆっくりはしてらんないけどね」
私は毎日、通勤途中にゆっくりと出くわす。この会話も、いつから始まったか忘れてしまうほど長く続けている。もはや習慣のようなものだ。
しかし最近になって、少し変化が訪れた。
「おにぇーしゃんおはよう!ゆっくちちていってにぇ!」
少し離れたところからぽてぽてと、小さいゆっくりが跳ねてくる。最初に挨拶を交わしたゆっくりの子供らしいのだが…。
「おちびちゃん、決して焦らず急いで跳ねてきて、そしてゆっくりしていってね!」
「わかったよ、おきゃーしゃん!」
「…ねえ、ちょっといい?」
私は前々から、どうにも引っかかる事があった。
「ゆっ?なーに?」
「あのさ…これは私の勝手な、我侭って言ってもいいくらいの個人的なことなんだけどさ…その子のこと『おちびちゃん』って言うの、やめてくんない?」
「…」
「どうもその呼び方ってなんかちょっと…失礼を承知で言うけど、イラっとするのよ。いや、もちろんそれは私が勝手にそう感じてるだけだし、嫌なら別に…」
「いいよ!」
そのゆっくりは、にぱっと笑ってそう答えた。
「呼び方一つでおねえさんがゆっくりできるなら安いもんだよ!」
「ありがとう…君のほうも、それでいいの?」
「おきゃーしゃんとおにゃじきもちだよ!ゆっきゅりちていっちぇね!」
「ごめんね、私の勝手なお願い聞いてもらっちゃって…」
「それよりおねえさん、会社はいいの?」
「あ、いけない!じゃあ私、急ぐから!」
「「またねー」」
そして翌日。
「おねえさんおはよう!ゆっくりしていってね!」
「ああ、おはよう。ゆっくりはしてらんないけどね」
挨拶を交わした後、少し視線を逸らすと、昨日と同じようにゆっくりの子供がぽてぽてと跳ねてくる。
「おにぇーしゃんおはよう!ゆっくちちていってにぇ!」
昨日はちょっと失礼な事言っちゃったなぁ、と思い出すと同時に、ある疑問が湧いた。
私は『呼び方を変えてほしい』と言い、了承しては貰ったが、どういう呼び方をするかまでは確認していなかった。
しかしまぁ、そんな事は些細な話…というか、疑問を抱くだけ無駄である。何故ならば。
「無理しないでゆっくり来てね!」
この後1秒もせずに答えは出るのだから。
「おちくびちゃん!」
「いやらしい!」
- イラっとはしないけどムラっとはするねw -- 名無しさん (2012-12-14 14:43:59)
最終更新:2012年12月14日 14:43