日曜日の朝、俺は昼過ぎになってようやく目を覚ました。
昨日の飲み会が遅くまでかかり朝ようやく眠ることができたからだ。
今から飯を作るのも億劫なので、カップラーメンでも食べようかと台所に行くとそれは居た。
「ゆっくりしていってね!!!」
カップラーメンの上に生首のような、顔のある饅頭のような物体が乗っかっていた。
突然の出現と気味の悪さに一瞬固まった後、すぐさま部屋へと戻る。
そして今の状況を整理した。
俺は朝起きた、そしたら謎の物体が台所にいる。
あの物体はなんなんだ?無害か危険なのかその判断もつかない。とりあえず触れないに越したことはなさそうだ。
そうこう考えているうちに台所から声がかかる。
「3分たったよ!!!ゆっくり食べてね!!!」
台所を覗くと、謎の物体はカップラーメンから下りて横でふんぞり返っていた。
本人曰くカップラーメンの食べれる準備が出来たということなのだろうが安全かどうか実に怪しい。
だが、あのカップラーメンは明らかに俺が買っておいたものである。
このままずっとこの調子というわけにもいかないので、意を決してあの物体に話しかけてみることにする。
「お前は何者だ?なんで俺の家にいるんだ?」
「私はゆっくりれいむだよ!!!お兄さんをゆっくりさせにきたよ!!!ゆっくりしていってね!!!」
「何で俺をゆっくりさせに来たんだ?」
「お兄さんが普段ゆっくり出来てないからゆっくりさせにきたよ!!!それより麺が伸びちゃうよ、ゆっくりはやく食べてね!!!」
ゆっくりはやくって何だよ…、いや、それより気になることがある。
「お前どうやってそのカップラーメンを準備したんだ?手足ないだろ。」
「お兄さんをゆっくりさせるためなら何でもできるよ!!!」
結局明確な回答は得られなかったが、とりあえず危険はなさそうなので近づいてみる。
近くで見ると本当に丸い。生首のような気持ち悪さはあるが柔らかそうな感じが俺に触りたいという欲求を生む。
ぷにぷに。お、かなり気持ちいい。ぷにぷにぷに。
「ゆっ、れいむをつついてる暇があったら、ラーメン食べてね!!!麺がゆっくり伸びちゃうよ!!!」
「これはちゃんと食べれるのか?」
「バカにしないでね!れいむがゆっくり準備したから大丈夫だよ!!!」
まぁ、とりあえずこれの言うことを聞いて箸とカップ麺を持って部屋に向かう。 何故かこのゆっくりれいむという奴もついてきた。
ふたをあけて見るが、どうやらスープの素もかやくもちゃんと入っている、いつも俺が作っているものと一緒だ。
だがやはり恐怖心は拭えず恐る恐る食べてみる、すると…
「 …… 麺がのびのびだ…。」
「ゆっくりした結果がこれだよ!!!」
ラーメンも食べ終わったところでこのゆっくりれいむについて聞いてみた。
「お前は一体どこから来たんだ? というかお前は一体何者なんだ?」
「ゆっくりはゆっくりできない人のところに現れる素敵な饅頭だよ!!!」
ああ、やっぱり饅頭だったのか。
「で、その素敵な饅頭とやらはどうやって俺をゆっくりさせてくれるんだい?」
「れいむと一緒にいればゆっくりできるよ!!!」
………、よく分からないがとりあえず特別どうこうするつもりはないらしい。
正直こんなのに居座られても迷惑なのでさっさと追い出すことにしよう。
ゆっくりれいむをつかんで玄関まで持っていく。
「わぁい、お空を飛んでるみたい!!!」
何か暢気なことを言っているが気にせず俺はドアを開けゆっくりれいむをほっぽりだした。
「ゆべっ!!!」
「生憎俺はゆっくりできてるんで他の人でもゆっくりさせてくれ。じゃあな。」
そういって扉を閉めて部屋へと戻る。全く一体なんだったんだろうな、あれ。
しかし部屋へ戻った俺を待っていたのは予想外の光景であった。
「ゆっくりしていってね!!!」
追い出したはずの饅頭が俺の机の上にいた。
「お兄さん、全然ゆっくり出来てないね。れいむがゆっくりさせてあげるね!!!」
「どうやってここに入ってきたんだ!!!???」
「ゆっくり移動しただけだよ、それよりお兄さんもう少しゆっくりしてね!!!」
やばい、やばいぞ俺。変なのにとりつかれちまったみたいだ。
どうする?どうする?そうだとりあえず外へ出よう。こいつのいない所で落ち着いてゆっくり考えよう。
そういって必要最低限のものを持ち俺は外へ飛び出した。
外でもあの非常識な饅頭が現れやしないかと思ったが、それは杞憂に終わり外でしばらくゆっくり過ごすことができた。
あの饅頭のことは明日霊媒師になんなりみてもらうことにするとして俺は家に戻った。
できれば饅頭がいなくなっていることを願ったが残念ながらその期待は裏切られた。
「お兄さんおかえり!ゆっくりしていってね!!!」
お前がいるからゆっくりできないんだよと思いつつ、家にあがる。
するとゆっくりれいむのとなりには皿とギョウザが置いてあった。
「当店自慢の一口餃子です。ゆっくり食べてね!!!」
「餃子?餃子なんてどうやって作ったんだ?そもそも食材がないだろ?」
「れいむにかかれば食材なんて関係ないよ!!!」
「食えるか、そんな怪しいもん!」
「ゆ、お兄さんゆっくり出来てないね。いらないなられいむが食べちゃうよ?」
「勝手にしてくれ。」
「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」
全く何なんだ、こいつは。
「いい加減出てってくれないか。何で俺なんかにとりつくんだよ。」
「お兄さんまだ全然ゆっくりしてないよ!ゆっくりするまでれいむが一緒に居てあげるよ!!!」
「結構だ!」
我慢の限界に来た俺はゆっくりれいむを窓から投げ捨てる。ここは2階だ。これでいなくなってくれれば。
そう思って後ろを振り返るが…… 何も居なかった。
「やれやれ…」
少し落ち着いたのでベッドに腰をかける。それにしても何やら頭が重いな。
あいつのせいで色々考えてたからか?そう思いふと鏡を見ると
いやがった…。俺の頭の上に……。
むんずと捕まえてゆっくりを壁に向かって投げつけた。
いい音をしてぶつかったがゆっくりれいむはこちらを向いて
「おお、こわいこわい。」
とほくそ笑んでいるだけであった。
もはや打つ手なしの俺はそのままベッドに横たわった。
疲れたな、もうただゆっくりしたい。そんな気持ちになった。
「ゆっくりしていってね!!!」
ああ、もうゆっくりするよ。それが一番だ。
ただぼんやりと俺が横たわっている一方、ゆっくりれいむは忙しなく動いていた。
俺の菓子を食べやがったと思ったら俺の所に持ってきたり
汚い家の床のごみを集めてたり、台所に消えていったと思ったら1時間後に戻ってきたり
こっちがゆっくりしろよといいたくなるぐらいに動き回っていた。
そしておもむろにゆっくりれいむが俺の服をひっぱり出してきた。
「イェ~イ、ゆっくりしてる~?」
「久しぶりに話しかけてきたと思ったらそれかよ。」
「それはとにかくお兄さん、お風呂が沸いたよ。ゆっくり入ってってね!!!」
「風呂!?」
驚いて俺が風呂場に行くと確かに風呂が沸いていた。
ふと見ると汚かった台所もきれいになっている。
「これ全部お前がやったのか?」
「ゆっくりできるように頑張ったよ!!!」
一体どうやったのかと聞こうと思ったが、元々非常識物体なのを思い出してやめた。
今はゆっくりと風呂に入ることとしよう。
風呂からあがるとゆっくりれいむはゆっくりしていた。
ゆっくりゆっくり言っているがそういえばゆっくりれいむがゆっくりしているのは今日初めてなように思える。
「なんだか随分ゆっくりしているな。」
「お兄さんがゆっくりしてるから、れいむがやれることがなくなっただけだよ!!!」
ああ、そういうことか。人をゆっくりさせて初めてゆっくりできるのか。
そう思うと何か微笑ましくなってしまった。
「おい、ゆっくりれいむ。ビール飲むか。キンキンに冷えたのがあるぞ?」
「ゆっくり飲むよ!!!」
ゆっくりれいむを長座した膝にのせ、右手に自分のビールを左手にゆっくりれいむのビールを持って
ゆっくりとビールを飲んだ。こんなにのんびり飲むビールはいつ以来だろうか?
「ゆ~、ゆっくり酔ってきたよ!!!」
「ハハハ。お前は酒に弱いのか。」
「ゆっくり酔っただけだよ!ここから先は強いよ!!!」
そういってプクーっと膨れるゆっくりれいむ。膨らむ感触も心地よい。
「そういやつまみがないな。ちょっと取ってくるよ。」
「ゆ、それなられいむをお食べなさい!!!」
「お前食えるのか? っていうか食われてお前は大丈夫なのか?」
「食べられてダメな饅頭なんていないよ!ゆっくり食べてね!!!」
「そうか、じゃあ頂きます。」
そう言ってゆっくりれいむを掴むとあっさりとかけらが取れてしまった。
さっきはあれだけ叩きつけてもびくともしなかったのに…。
そしてゆっくりの一片をいただく。
… … 甘い
今まで食べたことのないような甘さが口に広がった。ほっぺたも脳も蕩けるような、そんな味だった。
「うっめ、めっちゃうっめ。これ。」
がらにもない言葉でリアクションをとってしまう。それほどの美味さだった。
まさに天に昇る味、夢の中にでもいるような感覚が俺を襲った。
… … …
ふと目覚めると俺はベッドの上で寝ていた。
布団もちゃんとかぶっている。
あれは夢だったのか?
机の上を見るとデジタル時計が月曜の朝を表示している。どうやら夢ではないようだ。
ビールの缶は二つあるし、床も台所もピカピカだ。
たがどれだけ辺りを見回してもあのゆっくりれいむの姿は見当たらなかった。
するとビールの缶の下にメモのような紙が置いてあった。
「ゆっくりしていってね!!!」
ゆっくりできない人の元にやってくる… か。
「もう少しお前がゆっくりしていってくれれば良かったのに」
そう笑って俺は仕事へ向かう支度を始めた。
今日からは少しゆっくりと過ごしていこうと思う。
今日はあなたのところへやってくるかもしれない……。
- うわああ可愛い!
うちにも来ないかなー -- 名無しさん (2010-03-18 15:36:40)
- プリーズ カム トゥー マイハウスッ!!! -- 名無しさん (2012-05-04 23:56:26)
- あー、ゆっくりできないなー(棒読み) -- 名無しさん (2012-07-31 21:30:37)
- なんかカワイイ・・・・・
-- ゆっくり好きのただのオタク (2012-10-23 21:24:42)
最終更新:2012年10月23日 21:24