人里のバカ騒ぎを期に始まった人気の取り合い合戦。
巫女が、魔法使いが、住職が、坊主が、聖人が、アホの子が、河童が、ただの通りすがりが、
観客達を魅了し、人気を手にする。
そんな戦いがあちらこちらで始まっていた。
そして、その人気の取り合いの裏舞台で活躍しているモノ達がいた。
モノ達というか、ゆっくり達であった。
イメージキャラ兼マスコットとして、あの謎の生き物達はこれ以上無い適役だった。
基本的に暇な彼らは良い暇つぶしになると、あるゆっくりはポスターを貼りまくり、
また、あるゆっくりは歌って踊ってアイドル的な存在になったりと、
自分のオリジナル的な存在を人気者にする作戦に暗躍するのであった。
今回はそんなゆっくり達の中からある1グループをピックアップしよう。
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「やはり、鍵はマントだと思うんです!」
そのゆっくりは仲間のゆっくりにそう言い放つ。
二本のでかい角のような髪型と、ヘッドホンをつけたそのゆっくりのなはゆっくり神子という割と新参者のゆっくりである。
このゆっくりは自分のオリジナル的な存在である神子の人気を鰻登りにするため、
同志を募って立ち上がったのである。
「今回、私のオリジナルはマントをつけています!
マントは凄い!どんな小物でも付けるとカリスマ溢れる存在に見せてしまう!
このマントのアピールこそが人気獲得の鍵だと私は思うのですがいかがでしょうか!」
ゆっくり神子は同士達にそう問いかける。
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その同士達は非常に丸い顔に神子と同じ髪が生えているという、
ゆっくりの中ではかなり異様な容姿をしていた。
彼らは通称、たんこぶ神子。
ゆっくり神子の派生系な存在だったが気がついたらきめぇ丸の如くこっちがメインになってしまったのである。
今のゆっくり神子の知名度は彼女が築き上げてきたものといっても過言ではない。
…うん、もちろん当のゆっくり神子は複雑な気持ちである。
「なるほど、それは同意です。」
「今回はマントこそ人気獲得の最重要要素となるでしょうね。」
「さすが、あなたは目の付けどころが違いますよ。」
自分と同じ丁寧口調で賛辞の言葉を贈ってくるたんこぶ達。
補お目手くれるのは素直にうれしいが、表情が微動だにしないので、かなり不気味だ。
そう言えばかのきめぇ丸もその表情を微動だにさせない。
そこに人は意志の強さを感じ、惹かれて行くのかもしれない…って話が脱線してしまった。
とにかく、今はマントだ、マント。
「そこで私、ゆっくり神子もマントを着けてこの魅力をアピールしようと思っています。
今からマントを着けてきますので少々お待ちを。」
そう言うとゆっくり神子は部屋を出ていく。
しばらく隣の部屋で絹の擦れる音やゴソゴソという物音がしたかと思うと、
再びゆっくり神子が戻ってきた。
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その身にはきらびやかマントを羽織って。
なるほど、身につけた者がたとえ凡人であってもカリスマ溢れる存在に変えるという意味も頷ける。
マントを身につけた神子は正にカリスマ溢れる存在に思える。
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しかし、たんこぶは何処か不満げな顔でこう言った。
「普通すぎる。」
「…え?」
ゆっくり神子はたんこぶ達が言い放った言葉を一瞬理解できなかった。
「普通すぎます。」
「マントはすばらしいですが、中身が普通すぎます。」
「これなら寧ろマントと髪の毛とヘッドホンが無い方が良いですね。」
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「それもう。ただの坊主じゃないですか!」
ゆっくり神子はたんこぶ達の不満な声に思わず叫んでしまった。
自信満々二マントを羽織って出てきたのに不満タラタラじゃあ流石に叫びたくなる。
「何ですか、何で不満があるんですか!マントは完璧でしょうが!
何処に文句があるんですか!」
「…マントは完璧だ、しかし、それ以外が普通すぎる。」
「そうですね、このゆっくりは自分がゆっくりであることを活かしきれていません。」
「何ですって、何処が活かしきれていないと言うのですか!」
ゆっくり神子のその問いかけに、たんこぶ達はビシッと指摘する。
「ズバリ、身体は余計です。」
「な、何ですって…!?」
その言葉にゆっくり神子は衝撃を覚えた。
「身体を着けているからゆっくり的要素が何処と無く薄れてるんです。
全てのゆっくりに身体なぞ不要と極端なことを言うつもりはありませんが、
マスコットゆっくりなら首から上だけで勝負すべきです!」
厳しく、鋭い指摘のたんこぶ。
しかし説法はゆっくり神子の得意分野。
ここでおめおめと下がるつもりはない。
「しかし、今回は私たち自身の魅力ではなく、
オリジナルの人気支援のための活動!
ゆっくり成分は薄目にするべきでしょう…!」
そう、今回はあくまでも豊里耳神子の支援。
ゆっくりの為の活動では、ない。
「例えそうであっても、魅力無きゆっくりは誰もみてくれないですよ。」
「そうです、ましてや、型にハマろうとしている無個性なゆっくりはね。」
「無、無個性…!」
たんこぶの言葉にハンマーで殴られた衝撃を受けるゆっくり神子。
そう、ゆっくりは個性の存在。
凸も凹も無い平坦なゆっくりは空気も同じ、
個性なくして、ゆっくりに魅力なぞ生まれない!
「た、確かに、誰も見てくれないアピールに意味はありません…。」
そんな基本的なことさえ忘れていた、
ゆっくり神子もまだまだ未熟と言うことか。
「落ち込まないでください。」
「そうですよ、駄目と言われたら何処が行けないのか、みんなで考えましょう。
そのために今、ここにいるのですから。」
たんこぶ達がゆっくり神子を囲んで励ましの言葉を贈る。
正直、ゆっくり神子は怖いと感じた。
「そうですね…落ち込んでいる場合ではありません。
ここからは…みんなで考えて行きましょう。」
挫折し、励まされ、立ち上がるゆっくり神子。
そう、落ち込んでいる場合ではない。
自分がマントを着けるのはいい、しかし、それじゃあ今一。
重要なのはマントを着けるその先だ。その先を考えなければ!
「とりあえずその身体はいりませんね、なんて言うか…ゆっくりらしさを損ねてしまいます。」
まず実行に移したのは余計な者の排除。
別にゆっくりに身体があったっていいだろうが
世間一般にゆっくりは首だけだと認識されている。
身体が付いてると不協和音が生まれて魅力がかすむ可能性がある。
「そうですね、とりあえずコレはこっちに置いておきましょう。」
パカッ。
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ガチャポンのカプセルを開けるような音がして、ゆっくり神子の身体と首があっさり分離する。
そして首だけに戻ってゆっくり神子は身体を部屋の隅っこの方に持っていくと
きっちりと正座させてたんこぶの群の中に戻っていく。
首のない身体が正座している姿はかなりホラーな光景だが、
ゆっくり神子達は特に気にする様子もない。
そして首だけになったゆっくり神子は、
念のために用意して置いた、小さなマントを頭のてっぺんに取り付けた。
「…素直にかわいいですね。」
「ええ、普通にかわいいです。」
そんなゆっくり神子を見て、たんこぶ達は実に淡泊な感想を返していく、
多分、たんこぶ達は今のゆっくり神子の姿を見て、何かが足りないと思っているのだろう。
そしてそれはゆっくり神子も同じだった。
「とりあえず、ゆっくりらしさはコレで上がったでしょうが、
マントの魅力を伝えるにはまだ要素が足りません…
いったい何が足りないのでしょうか…?」
「むう…。」
「やはりこれはかなりの難題ですね…。」
「マントを付けたゆっくりなんて私見たことありませんからね。」
「まぁ、そもそもマントを付けた東方キャラって
誰かいましたっけって状態なんですけど。」
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「…リグル位ですかね。」
「あれは参考になりませんね、彼女の魅力はマントではなく男の娘であることですから。」
「確かにそうかもしれません。」
こんな会話を繰り広げるゆっくり神子達を
通りすがりのリグルが睨んでいたがそれもスルーされる。
とにかくゆっくり神子達はああだこうだと意見を交わし合うが、一行に話は先に進まない。
ゆっくり神子だけでなくたんこぶ神子までもが頭を悩ませる難題。
出口のない迷路をさまようかのように悩み続ける神子達、
そんな神子達に一筋の巧妙が差し込んだのは、たんこぶ神子の一人が呟いた一言がきっかけであった。
「ブカブカ…。」
「…!たんこぶ7号、今なんと言いましたか!?」
どうやらたんこぶ神子達は番号で仲間を管理しているらしい。
そんなどうでもいい事実を今知ったゆっくり神子であった。
「え、急に頭の中をよぎった単語を呟いただけですけど…。」
「そんな言葉を呟いた経緯はどうでもいいです、
今、重要なのはその言葉そのもの!」
「ブカブカ…なるほどそう言うことですか!」
「なるほど、ブカブカこそがマントの魅力を最大限に引き出す鍵だと!」
「ブカブカ!」
「ブカブカ!」
「ブカブカ素敵!」
「ブカブカ最高!」
「…えーと…。」
…なにやらたんこぶ神子達がブカブカブカブカ言いながら喜び合っているが、
ゆっくり神子にはいったい何を言っているのか解らない。
ここまで自分とたんこぶとの間に意識の差があるなんて思わなかった。
「…あの、皆さん、ブカブカとはどのような意味なのでしょうか…?」
恥を承知でゆっくり神子はたんこぶ達にそう問いかけた。
「…ゆっくり神子さん、貴方はサイズの合わない服についてどう思いますか?」
たんこぶ達はいきなりこう問いかけてきた。
「え?何ですかその質問は…そうですね、小さすぎるときついし、
大きすぎると余った部分がじゃまになるし、
できれば身の丈にあった服を着たいですね。」
「そうですね、しかしサイズの合わない服にはメリットがある…!」
「…なんですって?」
「サイズの合わない者を無理矢理身につけてるという光景は…かわいいんです!」
「…!」
「特に、マスコットのような存在が大きいサイズを身につけている姿は
反則級のかわいらしさなのです!」
「反則級…!」
確かに、この間本屋に立ち寄ったときに
妹みたいなイメージの女の子が大人用のワイシャツ一枚を身につけていると言う表紙の本を見かけた。
女の子そのものは割と微妙だったが、
ブカブカのワイシャツを身につけているその表紙は
かなり人の目を引きつける者だった…!
ブカブカには、隠されたポテンシャルを引き出す力があるのだ!
「そうか、そうだったのか…!」
ゆっくり神子は全てを理解した。
ブカブカは、宇宙の心理であると!
「すなわち、私がちょっと動くのも大変なくらい
大きなマントを身につければその威力は反則的になると!」
「ええ!貴方がマントを引きずって歩いてくる光景に
老若男女はメロメロになることでしょう!」
「…なるほど!ならば大きなマントに今すぐ取り替えてみましょう!」
ゆっくり神子は部屋の隅っこで正座している自分の身体に注目する。
その身体はまだマントを身につけていた。
あの体に合わせて作られたマントなら
今の首だけの自分にとってかなりサイズの大きなモノになるはずだ。
今身につけている小さなマントの替わりにあのマントを身につければもう十分にブカブカになるはず…。
そう思ってゆっくり神子は身体からマントをはずしたそのときだった。
「ちょっと待ってください。」
身体から外したマントを身につけようとする神子にたんこぶ達が待ったをかけた。
「…急にどうしたんですか?」
「確かに今それを身につければ魅力は上がるだろう、
しかし、それだけで満足か?」
「…どういう事です?」
ゆっくり神子はたんこぶ達の言いたいことを理解できない。
「私のカンが正しければホンの少しの工夫で
さらなる魅力上昇が期待できる!」
「…な、何ですって…!」
「ここは私たちたんこぶに任せてくださいませんか?
さらなる成功を貴方にもたらすのは間違いありません!」
「…!」
正直、ゆっくり神子は一瞬迷った。
このたんこぶ達の言葉を信じるべきか、否か。
だが、たんこぶ達のまっすぐな瞳。
その吸い込まれるような純粋な瞳を見てゆっくり神子は確信した。
彼女たちなら、信じても良い、と。
「…解りました、貴方達を信じましょう。」
ゆっくり神子はそう言って、マントをたんこぶ達に差し出した。
「…任せて置いて下さい。みんな!やりますよ!
私たちの手で豊里耳神子の人気を絶頂にまで持っていってあげましょう!」
「おぉーーーーー!」
未だかつて無いくらい張り切りの声を上げるたんこぶ達。
コレは未だかつて無いモノ凄い事になるのではないか?
たんこぶ達の熱気を見てゆっくり神子はそう思うのであった。
~☆~
人気争奪を繰り広げるモノ達の戦いは今日も続く。
人里で、神社で、妖怪の山で戦いは繰り広げられる。
そんな戦いの最中、巷では奇妙な噂が流れるようになった。
場所は人里、魔法使い、霧雨魔理沙と導師、物部布都の戦闘中。
激しい空中戦を繰り広げながら、魔理沙が不意に口を開いた。
「…なぁ、お前知ってるか?」
「む?何だいきなり!まさか我との戦いは雑談を交わしながらでもないと
辛いほど退屈とか言うのでは無いだろうな!
「いや、そんなつもりはない、こんな時にしか聞いておく機会はないから聞いておくんだ?」
「こんな機会ってどんな機会だ…。
下らない話だったら我も泣くぞ!」
「別に泣くほどの事じゃないだろ…お前、「闇を覆うもの」とか言う奴の話を聞いたことないか?」
「…な、何の話だ?」
「何でもこんな戦いを繰り広げていると、フッ、と辺りが暗くなってな。
その次の瞬間に…襲ってくるんだってさ、あいつが。」
「お、襲ってくるんだってなにがだ!」
「そんなのは知らん、確かなのは既に紅魔館と守谷神社がそいつに襲われて一瞬で壊滅したと言うことだ。
今回、あそこが妙におとなしいのは壊滅状態になった拠点の復興に忙しいからって噂だぜ。」
「も、守谷と紅魔が一瞬で壊滅…。
で、デタラメを言うな!そんな馬鹿げたことがあるわけ無いだろ!」
「けど実際あいつ等今回は観客に徹してるし
デタラメとも…。」
フッ。
と、その時だった。
二人の周りを闇が包み込んだのは。
「…!こ、コレは!?」
二人は驚きのあまり、戦いをやめてしまう。
観客達も、戦っている二人より周りが急に暗くなったことに気が行っているようだ。
「お、オイ!何だ!何で周りが急に暗くなるんだ!?」
「ま、まさに闇を覆うモノの噂通りだな。」
「まさかその化け物がこれから襲ってくるのか!?
どうしてくれるのだ!貴様がおかしな事を言い出すから!」
「お、落ち着け、どうせどっかの妖怪のイタズラだろ?
そんな怪物が本当にいるわけ…。」
全力で動揺する二人は見た。見てしまった。
遙か向こう側からこっちに迫ってくる、
ありとあらゆるモノを飲み込んでこっちに迫ってくる何かを。
その何かに気づいた人里の人間は顔を真っ青にして逃げ出しているが、
逃げきれずにどんどんそいつに飲み込まれていく。
「ま、まさか…。」
「噂は…本当なのか?」
顔を見合わせる魔法使いと導師、
そんな二人の目前にまで何かは迫ってきている、もはや逃げられない。
「う、う、うわぁああああああああ!」
二人は絶叫を上げながら何かに飲み込まれていく…。
二人は深いに闇に一瞬、包まれた。
…その直後、二人は強い日差しを浴びる。
「…!?」
…二人とも、目を覚ましたら地面に倒れていた。
起きあがると、そこはさっきと同じ、人里の中心だった。
「な、何だ?」
「い、一瞬とんでもない化け物に襲われた気がしたが、気のせいだったのか?」
二人は何が何だか解らないままに辺りを見回す。
あちこちで人々が倒れているが、見る限りどこにも外傷は無い。
建物も傷一つ付いていない、
あの闇に襲われる前と、人里はどこも変わっていない。
「…何だったんだ?今の出来事は?」
「…そう言えば太子様は今回の騒ぎには裏があるようなことを言っていた、
今回もそれと関係があるのか?」
「戦いの裏に潜む、闇、か。」
で、結局今回のお二人の戦いはそのままお開きになった。
またの再線を約束し、家路に就く二人。
その途中で二人はそれぞれ思いに耽る。
(そう言えばこんなに人里の連中がバカみたいに騒ぐのも普通あり得ないな…ちょっと調べてみる必要があるかもしれない。)
(太子様が言う戦いの裏に潜む闇…いつか来るべき戦いに我も備えなければ。)
今回の件を期にこの退廃的な戦いに新たな動きが生じるのだが
それは今回の件には関係ない。
今回の件の真実は…数行後、直ぐにお見せすることにしよう。
~☆~
「コレです!コレなんです!コレこそが究極のダブダブなんです!!」
ゆっくり神子の横でたんこぶ神子がそうほめたたえる。
現在、ゆっくり神子が何をしているのかというと、
たんこぶ神子が改良してくれたマントを羽織ってその辺をうろついているのである。
そしてそのマントがどんなのかというと。
M
/ ○ \←ゆっくり神子
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大体こんな感じである。
たんこぶ達は兎に角マントを大きく大きくした。
大きくし過ぎた、やりすぎた。
もはやコレはマントを羽織ったゆっくり神子と言うより、
ゆっくり神子がマントにくっついてると言った感じである。
「…あの、たんこぶさん達、コレちゃんと地上の人たちに見て貰えているのでしょうか?」
平行して飛んでいるたんこぶ神子達にゆっくり神子はずっと思っていた疑問を投げかける。
もはやここまで大きいと、普通にあるいて移動することも難しいので
500メートルくらい上空を飛びながらアピールの為に移動している。
おかげで地上にいる人達の様子が全然解らない。
「見てもらっていると思いますよ。」
「現に地上からの声援がわずかに聞こえてくるではありませんか。」
確かに耳を澄ませばワーとかキャーとかそんな声が微かに聞こえてくる。
しかし、あれはホントに声援なんだろうか?
自分にはなぜか悲鳴に聞こえる気がするとゆっくり神子は思っていた。
「さぁ、マントアピールはここからです!」
「次は迷いの竹林まで行きますよー!」
たんこぶ達は行き巻いてゆっくり神子をカムカムする。
ゆっくり神子は何だか取り返しの付かないことになっている気がしながらも
たんこぶ達と共に豊里耳神子のアピールへと向かうのであった。
いつの間にか新たな異変の象徴になっている超巨大マントと共に。
おまけ、各勢力の一員に今回の異変に参加しなかった理由を聞いてみた。
早苗「加奈子様は「早苗と諏訪子より活躍してやる」と張り切ってたんですけど、
張り切りすぎて腰を痛めまして…。
両用のために今回の戦いは辞退させていただくことにしました。」
パチュリー「さすがに悪魔信仰をはやらせたらヤバいんじゃね?って事で。
いいのよ、次は咲夜が頑張るから。」
ゆゆこ「そんなことよりオニギリうめぇ。」
- こ、小林◎子……! -- 名無しさん (2013-06-08 17:56:02)
最終更新:2013年06月08日 17:56