【⑨⑨⑨企画】++疎遠になるごちそうさま

67マルク

大まかに算出した現在までの負け分である。
世界中で似たような状況がいくつあるか、自分以外に同じ境遇の者が何人いるか
正確に知る術はないため、これが妥当な額なのか何か不当な搾取を受けているのかは
解らなかった
確実に言えるのは、この先足し算では無く掛け算方式で金額は増えていく事と、
この先勝ち続けて負け分を補える日は絶対に来ないだろうという事だ。
67マルクという金額もまた随分と中途半端で、「あの金で何ができただろうか?」
という試算をやる気も起きなかった。
まだ余裕があるということだろう。
それもいつまで保てるだろうか。


「こんな所を、誰かに見られたらどうすればいいんだ・・・・・・」


思わず口に出る。
村の入口にさしかかったところで、ひとりごちてしまった。
廃村とかそういう訳では無い。人の姿はほぼ見えないが、何かの音や煙突からの
湯気等で、生活臭は感じられる
家々も特に損傷している訳ではない。
この前、道中で看板がある事に気づいてしまった。
そして、「Dorf reich und Satoi Ohr」という村の名前を見たが、違和感が拭えない。
「Satoi」とは何語だろう?中国語か日本語だろうか?

そもそも、あのゆっくりが日本人なのかどうかも怪しい。

先程同じ境遇の者が~と言ったが、これは確かにいる。たまにあの屋敷の前で先客と
すれ違う事があるのだ。
お互い何故か顔も合わせようとしないし、挨拶さえできる雰囲気ではないので正確に
顔を覚えている訳では無いが、おそらく4人は同じように通っていることだろう。
多分町中で出会ってもお互い知らないふりをするに違いない。
―――そう、あの屋敷
廃村ではないのだが、何だかしつらえたようにあの屋敷は朽ち果てた外観をしている。
だが中は普通だ。
どうにも、意図的に外面だけをそれっぽくみすぼらしくしているとしか思えない。
近隣の建物は特に古い訳ですらないので、違和感が尋常ではない。
入った瞬間に何かを感じる訳ですらない。
至って普通なのだ。
2階の、何もない白い部屋にていつも待っている


                       
  ヽ\             ノ     
   ) Vヽ          /(,     
   /   ' -、       )v'  >    
  (      ヽ_、   )V   / ,    
   \   .:.   \ / ..:....:..: V(    
   、i  .:.:.:.::.:.:.:.:.:.V, ---- 、;ノ    
    ヽ .:.:.:/  '' '''      '- ._   
    'ヽ:.:.:./==─     -==<    
    .--V   /( i i 人   ヽ)   
   /イ:|::(ヽ__/'ゝ、'Vレレ' /ヽ,ヽ (   
    i:木|_:| ') i' (ヒ_]    ヒ_ン i/:i-'   
   ヽ::::ノ ノ' ヽ''  ,___, "" i:ヽ    
    ノ-- 'ヽ, <         人_>   
    ̄ヽ/ヽハ-> .., ____,,_ イ人(    
      /            ヽ ( ::)  
     /      /^ー r ̄ ̄ ̄i    
     |   i   /    ノ、___ノ    
     |   l /  r‐´    ̄ |    


さえ普通だ。
あまり見かけることの無かったゆっくりではあるが、暴力的でもないし
会うたびに「体の一部か何かなんじゃないか?」と思う程コーヒーを
手放さないが、これはゆっくりにはよくある現象だろう。

問題は



   ヽi\             ノ
    ) Vヽ          /(,
   /   'ゝ-、       )v'  >
   (      ヽ_、   )V   /
   \   .:.   \ / ..:....:..: V(
   、l \ .:.:.:.::.:.:.:.:.:.V....   ;ノ
    ヽ_ . >' ~    ̄` .,,/
     ./         \
     /  ,rr=;,     r=;,,  ヽ.
    .,'   ::i ヒ_,!::::::::::::::ヒ_,!i::  '.
    |:::.⊂⊃   ,___,   ⊂⊃
    ';:::..      ヽ _ン     ,'
    ヽ:::.           /
     \:::::......      /
       .>―-t--―<


の方で、前述のゆっくりから、この「たんこぶ」と呼ばれている。
頭部の装飾?はゆっくりの髪型に酷似しているが、こちらの方は
どうにも炎の様に見えてしまう。そう思うと、ゆっくりの方も
髪では無く炎なのではないかと疑ってしまうのだ。
ほぼ言葉を発しないが、一度会釈の際に何かを呻いた声を聴く限り
何となく吹き替え版のショーン・コネリーっぽいと漠然と思ったものだ。

更に、部屋には



                                      ,.. -──- 、
                         (⌒⌒)      /:‐-::、:::::::::::::,:}      
         (`´)               \/      ∠_::::::::::::::_><:/      
          Y       , -   - 、        /:::::::::><:::::::::::::/      
               /                  |::'"´:::::::::::::``::‐-|=ニ二   
            .____/            ヽ   ,. . :´: : ̄ ̄ ̄ ̄:` < ̄`: 、        ,. -‐- 、
         /    ,'                〃: : : : : : : : : : : : : : : : : \: : :ヽ    __ /、、:::::::::::',   
        , '     |     ⌒ ,___, ⌒   |  : : :i: : :、: 、ト、: : : : : : :、: : : ヽ: :     ⌒! \ 、::::::!   
        i   i    ';    /// ヽ_ ノ /// ,'  / |: ト-- - ト :、 --、: :ハ: : :ノ: :/    i{  ト、  〉〉:::| / 
        ' ,/ |  ハ             /  :ノイ..(ヒ_]    ヒ_ン ).. }:`:`〈 : {     `>┴< ̄\<、      
        / 'ヽ|/ -- \         /    シ i ''  ,___,  '' イ:i: : : :.}: }   / /⌒ヾ \ \ \     
       ノ ..:::::(.( (◯)   ' ----------'      (\  ヽ _ン / ̄): : : :ノ    i   / / , ヽ ヽヽ  ヾ ヽ  
      ノ  ::/(人⊂⊃     ⊂⊃' ,           7:| ``ーー' |  ヽ:イ:/     〉 i{ ゝ'レ' `ヽノ/、',  ヽ八、 
     /  ::( 人 )     -    人  \ ̄ ̄ ̄ ̄ゝ ノ  ̄ ̄ ̄ヽ  ノ  ̄ ̄ ̄ハ ト(ヒ_]    ヒ_ン)Yl  ',ヾ 
    (  ......::::::ヽヽ ヽ、.. ___,,, r─┐ )                       (二二ヽヽ_i"  ,___,  "ルヾ 〉∨
             /    丶 ヽ{ .希 }ヽ                             }ハ八  ヽ _ン   ハ  i \
            |      ヽ、__)一(_丿                              ル、>,、 ____ ,イ 从    




がいて、この3頭が審査をしてくれるので、ぞんざいに扱う訳にはいかない。
しかしながら、この3頭は上述2頭のゆっくりを「みみみ」と呼ぶ。
最初は混乱したが、同じ名前を呼んでいるのだ。
何かイントネーションの違いでもあるのかと思ったが、そういう訳でもない。
詳しい事を聞いてみたいが、何となくできずじまいでいる。
「たんこぶ」という単語が何を意味しているのかも判然としないが、
ここは重要な秘密が込められている気がしていた。

デコレーションは、勿論たんこぶの方に行う
「みみみ」は特に審査したり口をはさむ事も無いが、


         、               //
        、)\ ,           ノV (
        < '  V(         ノ   ヽ
         'ヽ   ' ヽ     , '--'      ')   
        i'V、 ...:....:.. 'ヽ ,___ノ   .:.   /
        'ヽ_''.;;----::、V...._.:.:.::.:.:.:.:.:. /、    
       __, -''   ,::'''' "' '''' -- ' 、:.:.:.:. ''/     
       >==─       == 'v:. ノ
       (/  /  人 i i )\   ノ:--、  
       ) / ノゝ )/)/)//ヽ_.//:イ:i'::i  
       '-' i/| rr=-:::::::::::r=;ァ'i ( (:木|_:| 
( ::::)      ヲ i""        "ノ ヽヽ::::イ  
 ( :::)      i'<人   -=-   フ  ' -- ')- 
   ( ::)   | ; ;;| >.. ..,____,, ノ::,,,、ノ_.ノ ̄  
   i ̄ ̄'〈´ ̄`ヽ.r::::::r、__/:::::::r-、::::;)   
   '、_ノヽ    ヽ::ノク::::,,,--'/ ヽ:ノ    
        |' -.、ノ>\// : : :/   /    
        r--;;|\ミノ ヽ : :./   /     
       (  _,`〉|\   '`    /|      
        ヽ__,ノ| ||ヽ     / |     
         | ; ;;| | ||*||' -- '  |      






という顔をしてこちらを見続けている。
正直冒頭で愛想よく挨拶してくれること以外の存在意義を見出せない。
頭頂部の炎?には触れるが、熱くは無いし、やはり炎ではないのだと
今では確信できるけれど、髪でもないのだった。


そんなたんこぶを、いかに混沌にデコレーションできるか―――素のままでも
十分に可笑しいのに―――日中の大半の思考を今では費やしている。
KOTATSUに入っている3頭の審査で、小遣いがもらえる事もあるが、気に食わなければ
罰金までとられるのだ。
最大のゲーム要素だ。
それを承知で今では週5でこの村を訪れている。


どうしてもやめられない。


その止められ無さの理由を考える事はとっくに放棄してしまったが、いつ頃から始まったのか
を思い出すと、3週間前だという事には流石にぞっとした。

3週間で67マルク


そういえばあの3頭の一頭の声は、日本の「フューチャーカード バディファイト」というアニメの
如月斬夜というキャラに似ているとうっすら思った
吹き替え版では無くむこうの方の


 了

名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2015年02月12日 19:38