絶望、そう彼女は絶望していた。
常に掴み所のない、得体の知れない笑顔を浮かべ、
何処と無く余裕を感じさせる態度。
それが白玉楼の主、西形寺ゆゆこの基本スタイルだった。
しかし今、彼女の表情から余裕は消え絶望が支配している。
その原因は、彼女の目の前にいる宙に浮かぶ一粒の豆だった。
この豆はただの豆じゃない、
大豆ゆっくりという節分の日に現れて豆をばらまくゆっくりだ。
去年は紅魔館に現れて、謎のバトルを繰り広げたのは
今だ妖精の間で語り草になっている。
「どうして…。」
ゆゆこのからそんな声が漏れる。
彼女の目の前に大豆ゆっくりが現れた時彼女は期待した。
だがその期待は彼女を裏切ったのだ。
「えーと、ゴメンね?」
大豆ゆっくりはゆゆこに向かって謝罪の言葉を送る。
今の彼女にそんな言葉は意味が無いと解っていても。
今の自分に出来るのはそれしか無いのだ。
「謝っても何も変わらないわ!どうして、どうして…。」
ゆゆこは泣いた両手で包み込むように持っているものを見て、
彼女は涙を流していた。
その彼女の両手にあるのは。
二十粒足らずの入り豆だった。
「どうして、これっぽっちしか豆をくれないのよぉおおおお!」
「しょうがないよ、幽霊として生きた年数は歳として数えられないもん。」
大豆ゆっくりは目の前にいる相手の年齢と同じ数だけ、豆を出してくれる。
ゆゆこはこのゆっくりが千年以上生きた自分に千個以上の豆を出してくれると期待した。
だがかの所の生きた千年は亡霊として過ごした千年である。
生者と違い、死者の時間は止まっている。
故に彼女の千年は年齢としてカウントされなかったのだ。
「誤算だった…これは完全に誤算だったわ…。」
「あ、お、落ち込んでるところ悪いけど、次に行かせてもらうね。」
「…次はどこに行くのかしら?」
「八雲さんち。」
瞬間、ゆゆこは下げっぱなしだったその顔をガバッと勢いよく持ち上げた。
「付いて行かせてもらうわ!」
最終更新:2015年02月22日 10:12