【ディけいねシリーズ】伝子の雛祭り

「うーむ……。」


デカイ階段のようなモノの前で悩む一人の少女。
並より大きめな胸が目立つこの少女について説明させて頂こう。


彼女の名前は伝子。
読みはつたこ、決してでんこではない。
彼女は数奇な運命を得て、ゆっくライダーに変身する能力を
手に入れた少女である。
そしてそんな変わった特技が霞んで見えるほどの個性を
彼女は持っていた。


「…ねぇ、デカイ階段の前で何を悩んでるのよ。」


伝子の前に現れたのはゆっくりこいし。
成り行きで伝子と一緒になって数年、もうすっかり良き相棒である。


「ん~考えても考えても答えが出ないわね、こういう時は。」


伝子が獲物を捕らえた鷹の目でゆっくりこいしの方を見る。
こいしはしまったと思ったがもう遅い。



シュシュシュっ!



次の瞬間、伝子はこいしを全裸にひんむいてベッドに押し倒していた。


「こいしちゃんをおもいっきりラブラブしてストレス発散よ!」

「おりゃあっ!」


ドゴオッ!


勝負は一瞬だった。
ゆっくりこいしの魂心の膝蹴りが伝子の溝落ちに減り込んで行く。

伝子が白目を向いた瞬間に、ゆっくりこいしはベッドから抜け出した。


「全く、こう言う方面だけ、どんどん達人の領域になっていって…。」


ゆっくりこいしが呆れながら服を着て行く。

「これぞ、愛の力って奴よ!」

伝子は直ぐに回復してガッツポーズをとっていた。


これがゆっくライダーに変身できるという特技が霞むほどの伝子の個性だった。

彼女はゆっくりが大好きなのである。
いや、大好きなんてレベルではない。

好きだ、愛している、結婚してくれ。

そう、彼女は間違う事無き“変態”なのであった。


「って言うか、何でいきなり貴女に襲われなくちゃいけないのよ!」


ゆっくりこいしは服の衿を治しながら伝子にそう問いかける。
こんな変態と一緒になって幾数年。
電波系キャラは成りを潜めて、すっかり常識人のツッコミ役ポジションに収まってしまった彼女。
…まぁ仕方ないけどね。どっちも狂人じゃあ話が進まない。


「いやぁ、考え事してたらストレスが溜まって溜まって。
 だから、そのストレスをこいしちゃんにぶつけて発散させようと思っただけよ。」

「伝子ちゃん、前にも言ったよね?
 私をストレス発散のはけ口にするのは止めてって。」

「言われた気もするけど、こいしちゃんを見てたら
 色んなもんが頭の中からぶっ飛んで行っちゃった、てへ。」

「てへ、じゃないよ!」


これが無意識のゆっくりとゆっくり大好き少女の平常運転である。


「って言うかさ、そのストレスが貯まるくらいの悩み事って一体何よ。」

ゆっくりこいしは伝子にそう問いかける。
伝子はニヤリと笑い、階段を指差した。

「…こいしちゃん、コイツを見てどう思うかね?」

「どうって…。」

こいしには前から見ても後ろから見ても巨大な階段にしか見えなかった。
ただし、ただの階段じゃ無いのは一目で見て解る。
一段一段がデカすぎるし、何より階段は途中で途切れているのだ。

「でかくて中途半端な階段にしか見えないけど。」

こいしは見たまんまの感想を伝子に返した。
伝子はチッチッと指を降る。

「こいしちゃんも甘いわね、この形状を見て女の子なら思い浮かべるものがあるでしょ?」

「?」

考えてもピンと来ないこいし。
そんな彼女に伝子は答えを告げる。

「これは雛段よ!雛祭りの雛段!」

「………ああ、なるほど!」

そう言われてこいしはピンときた。
確かにそう言われればそう見えない事も無い。
しかし、それはそれで気になることが一つ。

「…雛段にしては飾り気が無さすぎじゃない?」

そう、雛段には何の飾り付けもされて居ないのだ。
だからこいしはこれを見て最初階段だと思ってしまったのである。

「当然よ、だってまだ飾り付けを始める『前』だもの。」

伝子は溜め息をつきながらそう答えた。
そしてその様子を見てこいしは伝子が何を悩んでいるか検討がついた。


「もしかして、どのゆっくりをどの役にやらせるかで悩んでたの?伝子ちゃん。」


こいしがそう言うと、伝子の顔がぱあっと明るくなった。

「凄いわこいしちゃん!
 やっぱり私とこいしちゃんは心の絆で繋がりあっているのね!」

感極まってこいしに飛び掛かる伝子。
しかし、先ほどの不意打ちと違ってこいしは極めて冷静な状況。
闘牛の突進をかわすマタドールの様な華麗な動きで彼女は伝子のルパンダイブをかわすのであった。

で、愛の抱擁をかわされた伝子はと言うと。

「ふぎゃ!」

と間抜けな声を上げて、本棚に頭から突っ込んでしまった。
本棚から飛び出した本が数札、伝子の上に落下して来る。
その本のタイトルは『熟れゴロゆっくり-熟女のお味』、
いろいろな意味で中身を想像したくないタイトルだった。

「伝子ちゃん、天丼なんて今時通用しないわよ。」

大惨事な状態の伝子に向かってこいしはそう言い放つ。

「うう、ゆっくりの神様、これも愛の試験という奴ですか?」

本の山に埋もれながら伝子はそう呟いた。

「そんな事より、今は雛段の話題なんじゃない?」

こいしに言われて伝子はハッとした顔になる。
それを見てこいしは呆れ返っていた。

「そうそう、雛祭りの雛段なんだけどさ、どのゆっくりをどの役にするかで悩んでる訳よ。」

「そんなの、取り敢えず御内裏様と御雛様はれいむとまりさで良いんじゃない?」

「…ごめんねこいしちゃん、その二人は今年は盆彫役で決まってるんだ。」

伝子がそう言う通り、ゆっくりれいむとまりさは既に盆彫として雛段に飾られていた。
ちなみに目が光ります。部屋が暗かったらホラー過ぎる光景である。

「それにせっかく新しいメダルが届いたからさ、色んなゆっくりの組み合わせで試してみたいのよ。」

伝子はそう言ってポシェットの中からメダルを取り出した。
これぞゆっくらいだーディえいきの秘密アイテムの一つ、
キーホルダーにはめるとゆっくりを召喚できるメダルである
…念のために言っておくが、別に妖怪ブームに便乗した訳では無い。

「…あのさ、そのメダルはあくまでも戦うための武器であって、
 呼び出したゆっくりで遊ぶためのモノじゃないでしょ。」

こいしは溜め息とともに伝子に向かって説教する。

世に運びる悪しき者を討ち、ゆっくりと善良な人々をゆっくりさせる為に
戦うゆっくり戦士ゆっくらいだー。
しかしゆっくらいだーの一人である彼女がその力を戦いに使うことは殆ど無い。
そしてこいしはそんな伝子に呆れて何度もこんな質問を投げ掛ける。


『私の力を私が好きな様に使って何が悪い!』


そして決まって帰ってくるのがこの返事である。
「…何つーか色々な意味で元ネタに忠実ね、あなた。」
こいしはもう諦めの表情でそう呟いた。

「それじゃあ実際にゆっくりを並べて、どう飾り付けするか決めましょうか!」

「もう好きにしなさいな…。」

もはや諦めの表情のこいしを余所に、伝子はキーホルダーにメダルを嵌め込んだ。

『ゆっくらいどぅ ディディディディエイキ!』

あっという間にナイスバディの少女が一頭身の不思議生命体に大変身!
いつ見ても冗談みたいな光景である。


「さぁってまずは…。」


変身したディエイキは早速メダルの力でゆっくりを呼び出した。
呼び出されたゆっくり達はディエイキの指示で雛段に並んで行く。


「そうね…まずは五人囃子は自機経験者でまとめましょう!」


一番下の段には咲夜、早苗、妖夢、チルノ、文の五人のゆっくりが並ぶ。
欲を言えば正邪も入れたかったが、メダルで呼び出した擬似生命にもかかわらず、
全く言うことを聞かなかったので断念した。


「三人冠女は九十九神ズで…!」


真ん中には九十九姉妹と堀川雷鼓のゆっくりが並べられる。
欲を言えばドラムセットも並べたかったが、スペースの都合でデンデン太鼓を置くのが精一杯だった。


「そして御内裏様と御雛様は…この二人よ!」


一瞬、カッとディエイキのカットインが入った…気がした。
嵌め込まれたメダルから飛び出したのは…!


「おぉ。」

「あやもみあやもみ。」


一番上に並べられたのはきめぇ丸とゆっくりもみじだった。
しかもどっちもきめぇ顔。

「良いわ!良いわ!やっぱりあやもみは基本よ基本!」

ディエイキは満足げに完成した雛段の写真を撮りまくる。

「…あやもみねぇ、公式で仲が悪いと言われ続けているのに、
 何故このカップリングを推しつづける人が居るのかしら。」

はしゃぐディエイキに対して冷静なゆっくりこいしであった。


「例え公式が何を言おうとこの正義は貫き通す!
 いいえ、寧ろ公式なんか意味が無いって土屋アンナも言っていた!」


そんな暴言が許されるのは多分東方だけである。
あと、その公式違う。

「っていうか下の段に居るゆっくりあやが一番上を睨んでるんだけど良いの?」

こいしの言うとおり、一番下のゆっくりあやが一番上のきめぇ丸を
鬼の形相で睨んでいた。
ディエイキの命令に従ってるので襲い掛かることはないだろうが、
正直、怖い。ドン引きレベル

「気にしない気にしない!」

…が、ディエイキはのーてんき。
例え鬼の形相でもゆっくりならば愛せる、それが彼女なのである。

「まぁ、解ってたけど。」

こいしも取り敢えずなるべくゆっくりあやの顔を見ないようにしよう、と心に誓う。

「さて、雛段は無事に完成したわ!あとはこの雛段を
 町内会役場に運ぶだけよ!」

「…え、運ぶの?」

腰は雛段を見た。
ゆっくりが乗ること前提で作られた雛段はかなりでかいし重そうだ。

「大丈夫よ、何のためのゆっくり召喚能力だと思ってるの?
 ゆっくり萃香をたくさん読んで運べば問題ナッシング!」

「だからそんな事のための能力じゃあ…って言うかこれ最初から役場で
 組み立てれば良かったんじゃあ…。」

やる気満々のディエイキと正反対にやる気ゼロのこいし。
事件は次の瞬間起こった。


「名無三っ!」


シュッ!


突如、掛け声とともに光る巻物が雛段に向かって飛んで行く!

「え?」

二人は突然の事に咄嗟に対応出来なかった。


どぉおおおおおおおおおおん!!!


吹っ飛ぶ雛段の一番上の部分。

衝撃でぶっ飛ばされ、元のメダルに戻ってしまうきめぇ丸とゆっくりもみじ。

鬼の形相から一瞬で笑顔に代わるゆっくりあや。

でももみじも吹っ飛ばされてるので衝撃の表情に変わるゆっくりあや。


「きめぇえええええええええもみもみぃいいいいいいいいいいい!」


そして絶叫するディエイキ!

「何よその絶叫、って言うかメダルに戻っただけなんだからそんなに動揺しない!」

即効フォローに回るフォロ治こいフォロー。
ゴメン言ってて無理矢理だなと思った。


「誰よ!誰がきめぇ丸ちゃんともみじちゃんをこんな目にぃいいいい!」


メダルに戻った二人を前に怒りに燃えるディエイキ。


「その雛段、待ったを掛けさせてもらいます!」


そんな彼女の前に現れた一人のゆっくりとは!?





「後半に続く!」

「え、続いちゃうのこれ。」

「しょうがないでしょ、時間が無くなっちゃったんだから。」

「相変わらず無計画ねぇ……。」

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最終更新:2015年03月04日 00:05