ゆっくり新聞
いつものような穏やかな昼。
博麗神社の境内を掃除している霊夢の耳に、覇気のない声が聞こえた。
「毎度~、文々。新聞でーす……。」
射命丸文が自身で発行している新聞を配達しに来たようなのだが……。
「元気無いわね。」
これは霊夢の嫌味でも何でもない。
普段の射命丸なら、欝陶しくなる程に元気な声でやって来る筈なのだが。
「どうしたのよ?」
「実は、……ライバルが出現してね。」
「ライバル?」
霊夢が聞き返すと、射命丸は新聞を入れている鞄から紙らしきものを取り出して渡した。
「『ゆっくり新聞』……?」
受け取った霊夢がそう言うと、射命丸は大きく溜め息をついて語りだした。
そもそもは、射命丸が飼っていたきめぇ丸(体付き)の言葉に始まる。
「おねえさん、このきめぇ丸も、しんぶんをかいてみたいのですが。」
前々から、きめぇ丸が新聞に興味を持っているのを
知っていた射命丸は、色々ときめぇ丸に手解きをした。
しかし、考えてみるときめぇ丸に活字を組んだりすることは出来そうにもない。
「変な期待持たせちゃったかな……。」
と思っていた。
だがしかし。
しばらくして、喜々としたきめぇ丸が紙切れを持って来た。
「おねえさん、みてください!もりのみんなとかいた『ゆっくりしんぶん』です!!」
意外と上等な白い紙に、案外綺麗な字で書かれた、存外きちんとした体裁の手書き新聞だった。
「どうしたの、これ?活字を組んでる訳じゃなさそうだけど。」
「こうりんどうのおにいさんに『こぴーき』をかしてもらいまして。
おねえさんのしんぶんとは、おもむきがちがいますけどいかがですか?」
さっと目を通して見たが、ゆっくり達の日常が垣間見える微笑ましい記事だった。
「うん。いいと思うよ。お金はさすがに取れないけど、それは今後次第、だね。」
「ありがとうございます!!!」
きめぇ丸は嬉しそうに首を振動させた。
「あ、そうそう。今度からは私達はライバル同士。新聞に関しては基本的に不干渉ね。
相談には乗ってあげるけど。」
「がんばります!!きよくただしいきめぇ丸です!!」
「その結果がこれなのよ……。」
ぼやく射命丸。
そう言われ、件のゆっくり新聞を見た霊夢は納得した。
それは射命丸の回想の中と比べて、かなり内容が強化されていた。
まずは、ゆっくりまりさへの取材を元にした、食用キノコや魔法用キノコの紹介や旬、
その棲息場所を書いている記事。
1人には確実に需要がある。
次に、ゆっくりぱちゅりーによる薬草・毒草講座。
更にゆっくりけーねのゆっくりパズルや、ゆっくりありすのゆっくりトレンドコーナー、
ゆっくりあきゅんのゆっくり昔話など。
特集は『てっていきゅうめい!ドスまりさはじつざいするのか!!その⑨の3』
週刊新聞だそうだが、かなり力が入っていた。
……香霖堂の広告まである。
「最近じゃ文々。新聞より面白いとか言われるみたいでね……立つ瀬がないのよ。」
そう言うと射命丸はまた溜め息をついた。
「まぁ、あんたも醜聞記事ばかり書いてないで 工夫しろってことじゃない?
精進しなさいよ。」
「ぎゃふん。」
――
今回も流れを読まないお目汚しで申し訳ありませんでした。
by.ゆっくり怪談の人
- 射命丸はスキャンダルばっかり追いかけてるからなぁ・・・ -- 名無しさん (2010-11-27 19:25:46)
- ゆっくり新聞見てみたい -- ゆっくり好きのただのオタク (2012-10-23 21:00:18)
最終更新:2012年10月23日 21:00