『ゆっくりとテレビ』 
俺の家は四畳一間。辛うじて部屋にトイレとキッチンがある、そんなアパートの一階だ。 
そこに近頃、毎日の様にやって来る珍客がいる。 
「ゆっくりしていってね!!!」 
玄関の前にその珍客がやってくると、そのお決まりの挨拶で俺を呼ぶ。 
「おう、ゆっくりしていけ。」 
そういって玄関を開けてやると、ゆっくりれいむが其処に居た。 
ペコっと可愛らしく頭を下げて家に入る。すると大体何時もこの時間に来るからと、玄関に用意しておいた濡れタオルで 
自らの身体を満遍なくタオルにグニグニ押し付けながら拭いている。 
「ゆっく、ゆっく、ゆっくりさっぱりー!!」 
全身のドロが取れて綺麗になったらこのセリフだ。 
そのまま部屋の中に入ってちゃぶ台の上に鎮座する。 
「はやく、はやく!ゆっくり、ゆっくり!!」 
相変わらず矛盾してるな、と俺は苦笑する。それでもれいむはお構い無しにちゃぶ台の上から催促だ。 
「ああ、わかったわかった。」 
俺はリモコンを取り出し、テレビの電源をつけた。 
「さて、今日のニュースです。今日未明・・・。」 
れいむは興味無さげにやれやれ、と冷めた顔でふぅと溜息をついた。 
「打ったー大きい!!ホームランッッッ!!!!」 
「ゆ!ゆっゆー!!」 
実況の興奮が伝わったのだろう。テレビから流れる雰囲気で 
少し紅潮し興奮しながら、飛び跳ねて喜んでいる。 
「今日のご飯はこれで決まり!!ゲ・ボ・ラ・焼肉のた・れ♪」 
「ゆ~♪ゆ・ぼ・ら・やきにくのた・れ♪」 
テレビに映ったジュージューと美味しそうな焼肉に涎をだらだら垂らしながら、 
楽しげにCM曲を口ずさむれいむ。 
ぐぎゅ~・・・と腹の音が響く。 
れいむの、ではなく俺の腹の音が。 
いかん、ここの所、肉を食べてないから俺も涎が・・・。 
気を取り直してぱちぱちとチャンネルを変える。 
「ゆ~♪ゆっくりみせてね!!」 
お気に入りの番組が映ると、俺に変えないでと言ってくるのだ。 
まあ、れいむの目当てがこれなのは知っているので後は一緒にその番組を見る。 
「山を歩き、河を越えー♪僕等の町に降って来たー、ネッチョリ君が落ちてきた~♪」 
「ゆきゅー♪!!!ねっちょりくん、ねっちょりくん!!!」 
ぴょんとちゃぶ台から飛び降り、流れるテーマ曲と共にテレビの周りではしゃぐれいむ。 
どうやら、たまたまこの家の前にゆっくりしに来てたから家に上げて、 
たまたま見せたテレビで、れいむはネッチョリ君の大ファンになったらしい。 
放映中食い入るようにして、しあわせ顔になりながらテレビを見つめていた。 
約三十分後、番組が終わると、ヘブン化しているれいむはハッと我に返ってこう言う。 
「ゆ!れいむおうちかえる!!」 
「そうか、なら何時もどおりに山道までは送ってやる。そこから家に帰る途中で他の動物に捕まるなよ。」 
黄昏時、れいむの跳ねる歩調に合わせながら、町外れの山道までのんびりと歩いた。 
「あしたもゆっくりしてね!!!」 
明日も来るつもりなんだな。と、そんな珍客の一言に知らず口端が上がり、そのまま俺は来た道を引き返した。 
※時代考証、番組に深い突っ込みは無しでお願いしますw              即興の人 
-  れいむは食料集めしなくていいのか?  -- 名無しさん  (2010-11-28 13:38:56)
-  ねっちょり君wwwwww  -- 名無しさん  (2011-08-24 20:50:53)
-  可愛いゆっくりだ……ゆぼらww  -- 名無しさん  (2011-08-26 23:23:36)
最終更新:2011年08月26日 23:23