お代

※終盤にグロあります。注意。













私はミスティア、ミスティア・ローレライ。八目鰻屋の店主兼看板娘兼歌姫として働いている。
お酒と鰻を用意しながら早く誰か来ないかなと思っていると、誰かが暖簾を潜ってきた。
お客さんだ。

「やぁいらっしゃい。今日もいい八目鰻があるよ。ゆっくりしていってね」
「「ゆっくりしていってね!」」

お客さんは生きた饅頭、ゆっくりだった。
紅白の巫女に似たゆっくりれいむ、白黒の魔女に似たゆっくりまりさの一組。
ゆっくりのお客さんは初めてだ。

「おや、ゆっくりじゃないのさ。珍しいお客さんが来たものだね。ちなみにその台詞は私がいうものだよ」
「「ゆっくりしていくね!」」
「そう、それでよろしい。」

聞き分けがよくて助かる。もっとも、話が通じているかはよくわからないけどね。
とりあえず注文を聞くことにしようかな。でも、一見さんは勝手がわからないから、
こっちからオススメを出すことにしよう。

「何が食べたい?さっきも言ったけど、今日はいい鰻が入ったよ。それにする?」
「「ゆっ!」」

ゆっくり達は頷いた。
実はこれはただの鰻で八目鰻じゃない。だけどたいていの人はわからないから大丈夫。
仕入れるときは安く、売る時は高く、これぞ商売の鉄則。

「じゃあ、ゆっくり待っててね。鰻は焼きあがるまでに時間がかかるから」
「ゆっくりまってるね!」

ゆっくり達はふてぶてしい顔をしながらじっと待っている。
全く動かない。目の前に出されたお酒とお通しには目もくれずじっと待つ。


「♪~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

ジュージューと鰻を焼く音と私の歌声が響く。
ゆっくり達は黙ったまま、石のように固まっている。













皮はぱりぱりに焼けて、身は肉汁を滴らせている。
たっぷりタレをつけて、よし完成
目の前のゆっくり達に変化があった。口からたらりと涎が出ている。
なんだ、結構可愛いところあるじゃん。

「はい、お待ちどうさま。ゆっくり食べてね。」
「「ゆっくりたべるね!」」

そういったそばから今までまったく動かなかったゆっくりががばっと口を広げる。
そしてかぶりつく。

「「むーしゃ、むーしゃ、しあわせ~♪」」

のんびりとした声とは裏腹に、ゆっくり達は今までのじっとした姿からは考えられないほどの速さで鰻に囓りつく。
ここでお酒とお通しにも手?いや、口か、とりあえず口をつけた。お通しは一口でぱくり、お酒は人のみでグビり、
本当に良い食べっぷり。
どこがゆっくりよ・・・。


でも、私の作った料理をあんなにうれしそうに食べられるのはちょっと嬉しい。
酒好きの多い幻想郷。お酒さえあればつまみは何でもいいって人もいる中、
こういうお客さんはありがたい。今度この子たちが来たときには本物の八目鰻をあげようかな。
でも、その食べっぷりはある幽霊を思い出させた。
白玉楼の大食い亡霊だ。

「そういえば貴方達って饅頭なんだよね?あの大食い亡霊に食べられたりしないの?」

ふとした疑問。動く饅頭なんてものがその辺りにいたら、あいつが黙っていないだろう。
一匹残らずに食べつくされるかもしれない。
ゆっくり達は鰻に囓りつくのをやめて、口の中にある分を飲み込むと、よどみのない声で言う。


「「ゆっくりたべられるね!」」
「それじゃあ、いつかあなたたちって一匹もいなくなるんじゃないの?そんなときはどうするの?」

ゆっくり達は妙に達観した顔で答える。

「「ゆっくりした結果がそれだよ」」

理解できない。やっぱりこの子達の考えてることはわからない。
そう思ったところで今気がついたことがある。この子達お金持ってない。

「ところでお客さん、御代は?」

そうだよ、珍しいお客さんだからそればっかり気になってお金の事を忘れてた。
この子達はいったいどうするつもりなのだろうか。帽子やリボンには・・・ないみたいだ。
それなら身包みを剥がす?帽子とリボンしかないじゃん。全然足りないよ。
もし食い逃げなんてするつもりならこいつらを鰻の代わりに焼いて、次のお客さんに焼き饅頭として売り出してやろうと思った。
するとゆっくりれいむは私のほうを向いて答えた。

「「ゆっくりまっててね!」」

「?」

どうしたものかと私が首をかしげていると、ゆっくりれいむが箸を咥えた。
根っこの方を持って、先のとがった部分は目の前を向いている。ゆっくりまりさだ。
ゆっくりまりさは口をあけて目の前を向いている。その下にはお皿。
ゆっくりれいむは目の前のゆっくりまりさ目がけて箸を突き出す









まさか・・・・・・・・









まさか!!!








「ゆ゛ぎぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛」





ゆっくりまりさより吐き出されるのは餡子。その顔は真っ赤に染まり、目が飛び出るのではないかっていうくらい開いて、
体はぶるぶると痙攣している。
ねちょり、ねちょりと黒い餡子が糸を引いてずるりずるりと出てくる。
わぁ、まるで魔法みたい。さっきまで食べていた鰻はどこに行ったんだろう?
わたしがぼんやりと見ていると今度はゆっくりまりさが箸を持ち、口をあけたゆっくりれいむめがけて突き出す。
そしてまた吐き出される餡子。二つの餡子がネチョネチョと混ざり合う。
私はあの大食い亡霊に追い詰められたときのような感覚がした。
こういうのなんていうんだっけ、恐怖?
ゆっくりれいむが餡子を吐き出し終えたら、私のほうを向いてくる。
二匹ともげっそりと青い顔をしている。
怖えぇ!





「「さぁ、おたべなさい!」」

















結局私は餡子を受け取って、それを見たゆっくり達は満足そうな顔をして帰って行った。
次に来たのは緑色の髪をした巫女と白黒の魔女の二人組みだった。
餡子は緑色の髪をした巫女にあげた。「珍しいお客さんだからサービスです」って言ってね。
その子は餡子だけ出されてちょっと不審に思ってたけど、やっぱり女の子。
甘みに対する誘惑は捨てられなかったらしい。一緒に来た白黒の魔女が説得していたせいもあると思うけどね。
その子をお酒で酔わせたりしてね。ちなみに魔女は一口も餡子に口をつけていない。
緑色の髪の巫女はほっぺたに手を当てて餡子を頬張る。おいしそうにぱくぱく、ぱくぱくと。






彼女の幸せそうな顔は今でも忘れられない。そしてこれからもそうだろう・・・・・。



6スレ目


  • おぉこえぇこえぇw みすちーも一口だけでいいから食えばよかったのに… -- 名無しさん (2008-12-09 15:18:47)
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最終更新:2008年12月09日 15:18