レミリアの気まぐれ レミリア編

レミリアの気まぐれ レミリア編

「咲夜…ゆっくり捕まえに行くわ、付いてきなさい」
物事の発端は私の気まぐれだった

私の名前はレミリア・スカーレット、紅魔館の主よ
私は何を思い立ったのか、紅魔館の近辺にも生息するゆっくりと言う生物を飼ってみようと思ったの
ちょうどいい暇つぶしになると思ったからね
「ゆっくりは五匹ぐらい捕まえてくると面白そうね、家族なら尚更」
五匹ぐらいとなると何かゆっくりを持ち運べる物が必要になって来るわね
「お嬢様、持ち運ぶための物は私が用意しておきます、準備をお願いします」

私は館の外に出る際、図書館の司書を務める小悪魔に会った
「レミリア様、こんばんは、今日も月が綺麗ですねぇ」
「ええ、そうね…何か用があると見たけど?」
「はい、用件は手短に説明しますね」
やはりそうだったのか小悪魔はコホンと喉の調子を整えた
「作戦を説明する、雇い主はいつものパチュリー」
「目標は紅魔館近辺に生息するゆっくり一家五匹まで」
「雇い主はゆっくりの生態調査を独自に行ってみたいとのことだ」
「なお、未確認だがゆっくりさくやが存在するとの情報がある」
ゆっくりさくや?へぇ…咲夜を模したゆっくりも存在するなんてね……
案の定咲夜もびっくりしているわ
「もしそれが本当なら特別報酬の対象だ、逃がすなよ」
「こんなところか…まあ仕事は増えるが見返りは大きいと思うぜ、やるか?」
……何かに影響されたと見るべきだろうけどまあいいか
「私もちょうどゆっくりを捕まえに行こうと思っていた所よ」
「良かったら一緒に育ててみる?」
「ああ、ありがとうございます!」
「パチュリー様を呼び捨てにした件については内密にお願いしますね?」
念を押されたのでこの件はパチェには黙っておく事にする

館の外、門番は相変わらず仕事をサボり、居眠りをしてしている
「起きろ中国、用がある」
咲夜が中国を起こす、その光景は相変わらず暴力的だ
「イタタ……私が妖怪だからって毎回頭にナイフを刺さないでくださいよ!」
「ゆっくりを捕獲するための籠が欲しい、貸してくれるか?」
「無視ですかそうですか…籠なら……」
そう言うと中国は自分の小屋から籠をいくつか持ち出してきた
「これ一つでゆっくり十匹分、体つきも一匹入りますよ!」
「ありがと美鈴、もう眠いのは見てわかるし、夜勤と交代して良いわ」
呼び名が中国から美鈴にグレードアップしているのは彼女が任務を果たしたからなのだろう
これだけで普段中国と呼ばれているからか、美鈴の気分はとても良くなるようだ
「ありがとうございます!」
そう言うと美鈴はとっとと夜勤と交代、小屋に入っていった
頭にナイフが刺さったままなのは気にしないでおく、どうせ後で抜くだろう
「ちょっと出かけるわ、すぐに帰る」
私は夜勤に軽い挨拶を済ませ、咲夜と共に夜の森に行った

紅魔館周辺の森
「ここもはずれかしら……」
ゆっくりの巣は他の動物と比べてとても見つけやすい
なぜならゆっくり達は体つきでもない限り、巧妙に巣を隠すことが出来ないのだ
それどころか自己顕示欲の強いゆっくりになると
「まりさのおうち」といった汚い文字の看板を付けるようになる
それはそれで見つけやすくなるからありがたい物だけどね……
覗いてみても案の定ゆっくりさくやが見つからない
もうすぐ、夜明けの5時になろうとしていた

「ゆっくりめーりんですね、門番でしょうか……」
私達はまたゆっくりの巣を見つけた、もうそろそろ当たりが出て欲しい物ね
外にはゆっくりめーりんが寝ている、恐らく門番だと思うわ
咲夜曰く中国がモデルになっているだけであって習性もよく似ているとの事
中を覗いてみるとゆっくりれみりゃが一匹
ゆっくりぱちゅりーにゆっくりふらんが一匹
「いました…ゆっくり私ですね……」
ゆっくり……これがゆっくりさくやか……
見てみると咲夜の髪型に服装、体つき……
見れば見るほど咲夜にそっくりね、デフォルメされている点を除けばの話だけど
「咲夜、この子達が起きないようにゆっくり捕まえて」
咲夜は一瞬でゆっくり達を籠に詰め終える、ゆっくり達は起きる気配もない
何だか咲夜も眠たそうだ、目的を果たした私達は紅魔館に帰ることにした

紅魔館門前
「お嬢様、メイド長、お疲れ様です!」
「あなたもお疲れ様、もうちょっと頑張ってね」
私は玄関で待っていた小悪魔に目標を捕獲したことを伝え自室に向かう
「さて…明日にでも何か買いに行こうかしら……」
咲夜も特別報酬がもらえると言うことで嬉しそうだ

部屋ではメイド妖精達が紅魔館の見取り図を見ていた
事前に通達しておいた手の空いているメイド妖精達に
ゆっくりを飼育するスペースの場所を決めてもらっていたんだっけ
「お帰りなさいませ、お嬢様!」
だいたい目星がついた所…問題は無さそうね
私と咲夜は指定された二階の空き部屋に向かうことにした

二階の空き部屋、適度な広さが確保されている
ゆっくりが五匹…いや十匹生きていくスペースを確保するのも問題ないだろう
「さて…咲夜、ゆっくり達を降ろしてやって」
咲夜が籠を降ろし、ゆっくり達を降ろし始める
さて…ゆっくり達が過ごせるように部屋の改造を行わないとね
「咲夜、この程度一瞬で作れるわね」
「はい、お望みであれば一瞬で」
だが一瞬で作るというのも芸がない
「面白そうだから私も一緒に作るわ、退屈しのぎにもなるし」
「はい、お嬢様が手伝ってくださるのなら!」
咲夜が何だか嬉しそうだ、まあそれは気にせず、物置から材料を運び始める
ゆっくり達が脱走しないための柵、まあゆっくりが怪我しない素材を使うべきね
いや、特にゆっくりれみりゃは私と同じく空を飛ぶことが出来る
それを考慮すると柵ではなく、窓を強化ガラスにしてゆっくりには割れないようにする
ドアをゆっくりでは開けられないようにする、この二つで十分ね
ちょうど咲夜があの眼鏡の店から丈夫な粘着性ビニールシートと鍵を買っていたわね
この部屋の脱出口はさっき私たちが入ってきたドアと二つの窓
咲夜が粘着性ビニールシートを窓に貼り付けている内に
私はゆっくりにはとても壊せるとは思えない鍵を付ける
ちょっとゆっくり達には可哀想だけど脱走なんかさせる訳にはいかない

次にゆっくり達の生きていくために必要な物を用意する
えさ、基本的に何でも食べるそうだけど…料理の失敗作とかで大丈夫かしら
ゆっくり達は舌が肥えやすいと聞くけどね……しばらくの間は森で採取した
自然の産物を与え続けてみようかしら

水、砂糖水、ジュースだと効果的…ね、ブラッドオレンジジュースなら
沢山あるんだけど…与えてみようかしら……

寝床か…ちょうど天狗達が発行しているいらない新聞があるわね
それに都合の良いことにフランが壊してしまったベッドの綿が沢山あるわ
新聞は他にもいろいろ役立つのでちょっとだけ拝借していくわ

ゆっくりを飼うのに必要な物は大体そろっていた
さて…支度も出来たのでゆっくり達が起きるまで私も仮眠を取ることにするわ

朝、基本的には夜に行動する私にとっては少々辛い
ゆっくり達は育てる際に活動時間を調整してやれば
十分夜行性に出来ると聞いている、じっくり調整してやるわ

「う?…ここどこ?……」
紅魔館周辺でもよく見るゆっくりれみりゃ、私をモデルにしたゆっくりね
もっとも私とは違ってカリスマを欠片も持ち合わせていないと聞くわ
「……おくない…あのおねえさんにつれてこられたといったところかしら」
それ以外の地域での目撃例もあるゆっくりぱちゅりー
どうやらパチェと同じく喘息持ちらしく、他のゆっくりより丁寧に扱う必要がありそうね
「うー!ゆっくりしね!!!」
私の妹であるフランをモデルにしたゆっくりふらん
フラン同様、ゆっくりにしては凶暴だけどそれでもメイド妖精にも敵わないでしょうね
「zzz…zz!…あ…ゆっくりしていってね!!!」
門番をモデルにした「ゆっくりめーりん」
本人同様シエスタを好むみたい、ゆっくりの中では打たれ強い傾向にある様ね
皮が厚いらしく傷つけるのはちょっと難しいと思われるわ
「………」
さっきから私と咲夜を警戒しているゆっくりさくや
家族内唯一の体つきゆっくり、まだわからないことが多々あるけど
そのあたりはパチェが解明してくれると思うわ

私はゆっくり達に説明を始める
「いい?これからはあなた達には私が用意した家に住んで貰うわ」
「文句は一切受け付けない、だけど私もそれなりの環境は用意したつもりよ」
一部私のことを全く気にせず遊んでいるゆっくりがいる
ゆっくりれみりゃとゆっくりさくやだ
ゆっくりさくやがゆっくりれみりゃに付き合ってあげていると言ったところか
「なるほど…わたしたちはあなたにかわれるというわけね……」
ゆっくりぱちゅりーが返答を始める、とりあえず話は通じるみたいね
「そう言うこと、まあ酷い目には遭わさないつもりだからゆっくりしていきなさい」
「「「ゆっくりしていってね!!!」」」
数匹のゆっくりが脊髄反射的に例の台詞を唱える
「わかったわ、どうやらにげることはできそうにないし…ゆっくりしていくことにするわ」
ゆっくりぱちゅりーね…本当に物分かりが良いじゃない
まあ物分かりが良いと言われているゆっくりぱちゅりーがいる分
この家族を飼っていくのは簡単そうね

そろそろ私はパチェを呼ぶことにした、生態観察は彼女の方が上手そうだからね
と思ったところで咲夜が叫んだ、何を見たの?
「お嬢様…いつの間にかれみりゃがプリンを食べています!」
咲夜が指さした先にはれみりゃとさくやがいた
「うー、ぷりんうまうま……」
れみりゃはどこから出したのかプリンをおいしそうに食べている
「咲夜…どこから私のプリンを出したの、まさか貴女が持ってきたの?」
「とんでもない!お嬢様のプリンはちゃんと冷蔵庫の中にありますよ!」
念の為に私が確認したところ確かに私のプリンは私専用冷蔵庫内に七つあった
毎日のプリン、それが私の楽しみの一つ、い…今のは忘れなさい!
「確かに私のプリンは七つあったわ、後で一つ頂こうかしら」
「レミィ、少々遅れてしまったわ…」
鍵が開いたままだったからかまだ呼んでもいないのにドアからパチェが入ってくる
足に保冷剤を巻き付けている、本でも足に落としてしまったのだろうか
「小悪魔から話は聞いたわ、ゆっくりさくや、本当にいたみたいじゃない」
「ええ、確かに見つけたわ、ゆっくりさくやの生態観察を頼めないかしら」
「勿論、そのために来たような物だけどね」

さくやは相変わらず私たちに対して警戒心を解かずにいる
もうめーりんは何の警戒もせずに咲夜に寄り添っているというのに
「お嬢様、たとえ昼寝してばかりの中国でも、ゆっくりだとかわいく見えてくる物ですね」
咲夜……あの門番はこの紅魔館でも一二を争うほどのナイスバディなのよ?
それとも咲夜はあのスタイルが羨ましい訳?あの噂もあながち間違ってはなさそうね……
私はそれ以上深く考えるのをやめ、ゆっくりれみりゃと遊んでやろうと思った
けどれみりゃに手を触れようとした途端にゆっくりとは思えない速度で
ゆっくりさくやが立ちはだかる、ふらん、ぱちゅりーでも同様だ
なぜめーりんだけノーマークなのかは気にしないでおく
ひょっとしてこのゆっくりさくやは私にかまってほしいのかしら
わたしはゆっくりさくやと遊んであげることにした

「私と遊んでほしいの?」
「………ゆっくりしていってね!!!」
私の興味がさくやに向いた途端に楽しげに向かってくるさくや
その間にパチェや咲夜が他のゆっくり達と遊んでいるのは気にしない

さくやと遊んでいるうちにちょっとだけわかってきたことがある
このゆっくりさくや、やっぱりゆっくりのなかでは恐ろしく速い
そのあたりはモデルである咲夜の影響もあるのかしら
それに他のゆっくり達にどこからともなくプリンを差し出すことがある
私のプリンじゃないから良しとしておくわ
れみりゃを贔屓にしているのは気のせいかもしれないけどね

そう思っていた所パチェが部屋から出た、何か実験でもするのかしら……
まあそれはおいといてゆっくりれみりゃに近づいてみる
さくやも私が自分たちに害を及ぼす存在ではないと考えたのか止めるそぶりを見せない
「うー!うー!ゆっくりしていってね!!!」
私にあるカリスマなんか微塵も感じられない、でもこっちの方がかわいいかもね……
私は手頃な所にあるボールでれみりゃと遊んであげることにする
ボールにぶつかるれみりゃ、何だか楽しそうね…咲夜が和むのも無理はないわね……
私はボールを少し遠くへ飛ばすとれみりゃはそれを追いかけていく
他のゆっくりと変わらず跳ねていく、その羽は飾りなの?
よく考えたら私が捕獲したれみりゃは木の下に作った巣で暮らしていた
地上で生活していたら羽がなまるのも無理はないか……
そう考えつつ、私はボールを高く飛ばす
れみりゃは羽で飛び上がり、ボールを空中でキャッチする
「……飛べるじゃない…ああ、飛べないのは体つきね……」
私とれみりゃのボール遊びはパチェが帰ってくるまで続いた

パチェと小悪魔が部屋に入ってくる
ゆっくりれいむの家族を引き連れてね……
れいむが二匹、その内一匹が赤ゆっくり…まりさ種も同じ構成ね…多分一つの家族よ
「レミィ、これから実験を始めるわ」
実験ね…大方あのゆっくり達と私が捕獲したゆっくり達を争わせるつもりね
さくやがいることによってどのような変化がでるのか楽しみね……
「パチェ、このゆっくり達に被害が出そうだったら咲夜に止めてもらうわ」
「ええ、そのつもりよ」

そして小悪魔がゆっくりを降ろした
「ここがまりさたちのあたらしいゆっくりプレイスだね!!!」
「むきゅ…ここはわたしたちのすんでいるところよ、あなたたちのいえじゃないわ」
ぱちゅりーがまりさ達に説得を試みているようだけどどうかしら…
「ゆっ!…ここはまりさたちのいえだよ!よそものはゆっくりでていってね!!!」
「いつそうきまったの…これはしょうしょうおきゅうをすえるひつようがありそうね……」
ほらやっぱり…物わかりが良いから説得が無駄だというのもすぐに理解できるようね
「れみりゃ…ゆっくりできないこがきたわ……むかえうつわよ……」
「う?……うー!!!」

私は信じられない光景を目にしている
あのれみりゃがあっという間にゆっくり達を無力化してしまった
私はだらしないことに口をぽかーんと開けていた
正確に言うとれみりゃがれみりゃとは思えないほどの指揮能力を発揮し
効果的にれいむ達を追いつめたと言った所かしら
赤ゆっくりはさくやに抱えられ、れいむ達はまったく動けなくなっていた
「むきゅ…これがわたしたちとあなたたちのちからのさよ……」
「ゆ…ゆゆゆ……」
完全に負けたからか何も言えないまりさ、ぱちゅりーはさらに追いつめていく
「あなたたちはわたしたちからわたしたちのすんでいるところをうばおうとした」
「でもあなたたちはわたしたちにまけてしまった、つまりあたらしいいえをとれなかった」
「ゆ゛……ゆ゛ゆ……」
悔しいのかまりさが泣きそうになる、あれだけ打ちのめされたのに
こうやってさらに打ちのめされている、プライドだけは無駄に高そうなこのまりさの事
相当悔しいのだろう、私も霊夢にやられた際に咲夜の膝枕で泣き寝入りした事がある
その気持ちはわからない事もない……今のは聞かなかった事にして
だけどぱちゅりーはさらに打ちのめそうとする
「ないたってむだよ……むだだとわかったらとっとと」「そこまでよ、ぱちゅりー」
れみりゃがぱちゅりーを止める、戦闘態勢に入ってからずっとこのままよ
「このゆっくりたち…こどもがいるじゃない」
さくやが抱えている赤ゆっくり達も信じていた親ゆっくりが
完膚なきまでに打ちのめされたのを見て大泣きしている
さくやはさくやであやしているが一向に泣き止む気配がない
「せめて……このこどもたちがいるぶんにはほりょにしてやらない?」
「むきゅ…れみりゃがいうならそれでもいいわ、それはそれでおもしろそうだし」
良かったわね、あなた達は新しい家を手に入れる事ができたのよ
まあゆっくりを九匹育てる事などうと言う事ない
そう思っている内にぱちゅりーが私に寄ってくる
「むきゅ…かいぬしさんたちにはめいわくだけどもうよんひきついかしていい?」
「良いわ、あなたの言う通りそれはそれで面白そうだしね……」
これで私が飼っているゆっくりは九匹になった、ちょっと手間がかかるかもね
いつの間にかパチェがいないけどどうせ今の事態を独自に調べるくらいだし
特に気にする事は無いわ、それにしても面白い物が見れたわね
ゆっくりをこのまま飼ってみようかしら、退屈しのぎにはなりそうね……
「ねえ、れみりゃ?」
「う?なあに?」
いつの間にかれみりゃは元に戻っていた、それはそれで安心する私だった


  • 小悪魔の依頼説明時の口調の元ネタはARMORED CORE for Answerから -- ありすアリスの人 (2008-10-13 16:18:07)
  • 紅魔館ゆっくり、恐るべし…! -- トミー (2008-12-07 16:29:30)
  • 通常時とカリスマモードの落差が可愛すぎる!!! -- 名無しさん (2008-12-16 17:14:08)
  • 紅魔館ゆっくり、こええwww -- 名無しさん (2010-06-10 23:00:27)
  • うー!うー! -- 名無しさん (2010-11-30 16:22:14)
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最終更新:2010年11月30日 16:22