お手伝いするどぉ♪

お手伝いするどぉ♪


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≪はじめに≫
  • 自分設定有りです。
  • 本家東方キャラ出てきますが、口調や性格、けっこういい加減です。
  • 一部、軽めのいじめ描写があります。

以上、ご了承ご容赦ください。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
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人はおろか、妖怪達でさえ怖れる場所。
強大な力を持つ吸血鬼に支配された地。

幻想郷の人々は、そこを紅魔館と呼んだ……。


そんな紅魔館の中に在る大図書館で、
人々のイメージとはかけ離れた声がこだました。

"うぁーーーーーーん! こあいーーーーーっ!"

幼女を思わせる叫び声。
その声を聞いて、使いの小悪魔と本の整理をしていた司書・パチュリーは、溜息をついた。

「さっきまで大人しく絵本を読んでると思ったら……」

パチュリーは、手に持った本を小悪魔にあずけ、
一人で声のした方へ歩いていく。

書架の森を進んでいった先、
そこに幼児用の小さな椅子や可愛らしいヌイグルミやクッションが置かれたスペースがあった。

周囲から明らか浮いているその場所は、
頻繁にこの大図書館に訪れてはイタズラをする、困り者のために用意した場所だ。

「……あら?」

その場所には、絵本が散乱していたが、当の"困り者"の姿が無い。
きょろきょろと周囲を見回すパチュリー。

「こあいこあいのイヤー! こあいのぽいするのぉー! ぽぉーーい!」

……いた。
声の方向へ振り向いたパチュリーは、
書架の隙間に、ピンク色のスカートを着た大きなお尻を発見して苦笑する。

「……そんなところでどうしたの、れみぃー?」
「……う~~~~~~、ぱっちぇ~?」

大きなお尻の主は、パチュリーの声を聞いた安心したのか、
もぞもぞ書架の隙間から這い出てくる。

お尻の主は、予想通りの"困り者"、
少し前に咲夜が拾ってきて以来、いつのまにか紅魔館の居候の一人となった「ゆっくりれみりゃ」だった。

「う~~! れみぃーこあかったどぉ~~~!」

"れみぃー"と名付けられたそのれみりゃは、床に座ったままぐすぐす鼻をすする。

ピンク色の、フリル付きのおべべと帽子。
背中にチョコンと申し訳程度についている黒い羽。
ぬいぐるみのようにふくよかな体に、短い手足。
丸々下ぶくれた顔に光る、紅い瞳。

紅魔館の当主・レミリアは、当初この中途半端に自分に似たゆっくりを屋敷で飼うことに激しく抵抗した。
だが、メイド長の溺愛っぷりと、嫌がるレミリアをからって楽しむ図書館の長に押し切られ、
しぶしぶ館の一員にするのを認めたのだった。

「怖いって、なにが……」

パチュリーは、ふと床に落ちている一冊の絵本を拾う。
ペラペラとページをめくっていくと、そこに真っ黒いお化けの絵が描かれていた。

「う~~っ! そんなごほんいらなぁ~い! ぽぉ~~い! ぽぉ~~っい!」

手足をジタバタ振り回す、れみりゃ。
本に八つ当たりするれみりゃを、ぱちゅりーは静かにたしなめる。

「そんなことを言ってはだめよ、れみぃー」

れみりゃが嫌がっているこの本、
"イタズラ好きの悪い子のところには、怖~いモケーレお化けがやってきちゃうぞぉー☆"
……といった、よくある幼児を躾けるのに用いる絵本だった。

「なるほどね」

普段からイタズラ大好きな、れみりゃ。
どうやら自分のところにも怖いモケーレお化けがやってくると思ったのだろう。
また、れみりゃ本人からしてみればイタズラには全く悪気が無いため、なおさら理不尽に感じたのかもしれない。

「あらあら、れみぃはモケーレお化けに食べられちゃうのかしら?」
「うぁぁぁぁぁっっ! いやぁだぁぁぁぁぁ! れみぃはたべものじゃないのぉーーー!!」
「モケーレお化けが来たら、もうゆっくりできないわね」
「やだぁぁーー! れみぃーゆっくりするのぉぉぉーーーー!」

面白そうにからかうパチュリーに対し、、
れみりゃは泣き叫びながら、必死に想像上のモケーレに抵抗している。

れみりゃには悪いと思いつつ、その愛くるしい姿に笑みがこぼれそうになるパチュリー。
にやけそうになる口元を意識的に引き締めて、パチュリーは淡々と口を開く。

「食べられたくないなら……れみぃはこれから良い子にならなくちゃね」
「……うっ!?」

パチュリーの言葉に、れみりゃは泣くのを止めて、ぷく~と頬を膨らませる。

「うー! れみぃー、いい子いい子だどぉー!」
「あらそう? それじゃもっと良い子にならないと」
「う~? もっと?」

首を傾げるれみりゃ。
腕を組んで、う~~んと考え出す。

「うー! わかったどぉ!」

泣いていたのがウソのように笑顔を咲かせ、れみりゃは勢いよく立ち上がる。

「れみぃー、もっともぉ~~~っと、いい子いい子するどぉ~~♪」

言うや否や、れみりゃはパチュリーに背を向けて、トテトテ走り去っていく。
そのおぼつかない足取りの後ろ姿を見て、パチュリーは一抹の不安を覚えるのだった。


   *   *   *


紅魔館の当主レミリア・スカーレットは、
自室で優雅な午後のひとときを満喫していた。

「さくやー! 紅茶を持ってきてちょうだい!」

友人から借りた本を机に置き、
信頼を寄せる従者の名を呼ぶレミリア。

が、その瀟洒な時間は、予想外の返事によって破られた。

"はぁ~~い、ちょっとまっててねぇ~~ん♪"

運命を操れるレミリアだったが、自分のこの運命は読めなかった。
思わぬ返事に「はぁ!?」と素っ頓狂な声を上げてしまう。

ガチャと扉が開き、返事をした者が入ってくる。

「……ちょっと、これはなんの冗談かしら?」

その姿を見て、レミリアは眉根をしかめる。

「うっうー♪ こうちゃーどうぞだどぉー♪」

そこにいたのは、いつもの服の上からエプロンを着た、れみりゃだった。
おそらく咲夜の仕業だろう、エプロンにはディフォルメされた緑色の恐竜のアップリケがつけられている。

"いい子になる!"そう決心したれみりゃは、
咲夜にそのことを言って、お手伝いをすることにしたのだ。

れみりゃの申し出に感激した咲夜は、
鼻の奥から溢れてくる赤い液体が垂れないよう注意しつつ、
れみりゃ用のエプロンを用意して着せてあげたのだった。

「うっう~うぁうぁ~♪」

れみりゃは、れみりゃ種特有の歌らしきものを口ずさみながら、
おぼんの上にティーカップをのせて、ヨタヨタ歩いてくる。

おぼんはカタカタ震え、ティーカップの中の紅茶は激しく波打っている。
端から見ている方が不安になる危なっかしさだ。

「……なんのつもりか知らないけど、こぼさないように気をつけなさい」
「おねーさんは、しんぱいしょーだどぉ♪ れみぃーにおまかせしてねぇ~ん♪」

……が、このレミリアの不安は、案の定的中する。
れみりゃは、よりにもよって自分の足に足を引っかけて、豪快に転倒した。

「う、うあぁぁぁぁぁっ!」

咄嗟に手に持っていたものを投げ放し、両手で体重を支えるれみりゃ。
立ち上がり、額の汗をおべべで拭う。

「う~~~、ひやっとしたどぉ♪」
「……そう、こっちは熱いけどね」
「う?」

れみりゃが放り投げたティーカップは、見事レミリアの頭の上に直撃していた。
帽子の上から紅茶をかぶって、レミリアはぷるぷると震えている。

「う~~♪ おねぇーさん、それはおぼうしじゃないどぉ~~♪ れみぃーがおしえてあげるぅ~♪」

まさか自分のせいでそうなったとは、つゆも思わないれみりゃ。
頭の上のティーカップを帽子と勘違いしてレミリアがかぶっているものと解釈した。

「これはぁー、のみものを入れるものなんだどぉー♪」

れみりゃは、レミリアの頭の上のティーカップを持って、机の上に置く。
レミリアは、怒りをこらえるように俯いて体の震えを激しくさせる。

「うー? おねぇーさん泣いてるのぉ~?」

レミリアの様子を見て、泣いていると勘違いする、れみりゃ。

「う~~、いたいいたい~?」

れみりゃは、下ぶくれ顔を曇らせて、ぬぅーとレミリアの顔を下からのぞき込もうとする。

「だいじょーぶ? ねぇ、だいじょーぶぅ? 泣いたらゆっくりできないんだどぉ……」
「……そうね……私は大丈夫……いたって平静……いつも通りよ……」
「うっ、そうだどぉ! これみてげんきになるどぉー♪」

ブツブツ呟くレミリア。
一方、れみりゃは、自分の顔を両手で隠して、
それからバァーと下ぶくれスマイルをあらわにする。

「いないいな~~~い………うーっ♪」

何度も何度も"いないいないうー♪"を繰り返すれみりゃ。
けれど、その良かれと思ってやったことが、レミリアの怒りに油を注ぐ。

「あ~~~もうっ! うるさぁぁーーーい!!」
「ぷっぎゃ!」

レミリアの怒声に驚き、れみりゃは尻餅をついてしまう。

「いないないうーじゃない! お前がこの部屋からいなくなれっ!」
「……ぅ~~~~~~~っ」

自分はお手伝いをして喜んでもらおうと思ったのに。
自分はおねぇーさんに元気になって欲しかったのに。
なんで怒鳴られなくちゃいけないの?

納得できない思いが胸の中で溢れ、れみりゃは泣きべそを書き出す。

「うっく……ひっく……」
「そんな情けない姿で泣くな! さっさと出て行きなさい!」
「ううう~~~~~っ」

とりつくしまもなく、結局れみりゃは部屋から追い出されてしまった。


   *   *   *


「う~~♪ れみぃーは、てんさいコックさんだどぉー♪」
「そう、その調子よ♪」

れみりゃは、踏み台の上に乗り、厨房で鍋をかき回していた。
その傍らで、鼻にティッシュを詰めた咲夜が、ニコニコ微笑む。

鍋の中では咲夜特性のシチューがコトコト煮えて、
美味しそうな匂いの湯気をあげている。

「おいしくなぁーれ♪ おいしくなぁーれぇー♪」
「ふふふ♪」

レミリアに追い出されたれみりゃは、咲夜に泣きつき、次のお手伝いをお願いした。
咲夜も、いきなりちゃんとした手伝いは無理だとようやく悟り、
自分の手元で簡単な手伝いをさせることにした。

「れみぃーのシチュー♪ みんなよろこぶどぉー♪」

楽しそうにシチューをかき混ぜるれみりゃ。
その額には大粒の汗が浮かんでいるが、そのぶん"お手伝いをしている"という充実感があった。

実際のところ、そのシチューを作ったのは9割以上咲夜であり、
れみりゃがやったことと言えば、ニコニコ咲夜の手並みを眺めていたり、
たまに鍋をかき混ぜさせてもらったりといった程度でしかなかったが……。

「あの、すみませんメイド長……」

その時、館のメイド妖精の一人が、咲夜を呼びに来た。
れみりゃには何を言っているかサッパリわからなかったが、
しばらく話した後、咲夜は「ちょっと行ってくるから待っててね」と言って、厨房を出て行った。

「う~~~、ひまだどぉー」

一人残されたれみりゃは、退屈だった。
咲夜が用心のため火を消していったため、シチューをかき混ぜる作業もできない。

「うっ! そうだどぉ!」

れみりゃは、頭の上にピカンと電球を光らせて、厨房の戸棚の中をあさっていく。

「うーー、これじゃなぁーい! これでもなぁーーい!」

ポイポイポイポイ。
道具や食材を放り投げていく、れみりゃ。

「うっ! あったどぉ!」

見つけて高らかに掲げたのは、れみりゃの大好物プリンだった。

「これをいれればぁ~、もっとおいしくなるどぉ~♪」

れみりゃは、そう言うとプリンをシチュー鍋の中に入れてしまった。

「あとあとぉ~♪ これとぉーこれとぉー♪ これもいれちゃお~~~っと♪」

ゼリー。
チョコレート。
ショートケーキ。
れみりゃは、自分の大好物を次々鍋の中へ入れていく。

「あまあまでぇ~~、ぜ~ったいおいしぃどぉ~~~♪」

完成したシチューの味と、それを食べて喜ぶみんなの顔を想像する、れみりゃ。
その顔は、自然とほころんでいく。

……が、逆に顔を凍らせた者がいた。
数分後、厨房に戻ってきた咲夜だ。

「……こ、これは」
「う~~♪ れみぃーがんばりましたぁー♪」

誇らしげに胸を張る、れみりゃ。
咲夜は、れみりゃを抱え上げると、何も言わず厨房の外に連れ出すのだった。

「……うー?」

扉の閉められた厨房の外で、れみりゃは一人首をひねった。


   *   *   *


「めーりん♪ めーりん♪」
「……なに?」
「れみぃーおてつだいしたいどぉー♪」

れみりゃは次に、紅魔館の門番のところへ足を運んだ。
そして、自分がみんなのお手伝いをしていることを告げ、
美鈴の代わりに門番さんをやると言い出すのだった。

「あんたがねぇ」

美鈴は、れみりゃに門番が務まるとは毛頭思っていなかったが、
退屈しのぎにはなりそうだと、試しに任せてみることにした。

「うー♪ れみぃーにおっまかせぇー♪」

れみりゃは、自信満々に門の前に立つと、
ビシッとかまえて気合いを入れる。

「う~~~っ、わるいやつは、れみぃーがやっつけてやるどぉ!」

れみりゃは、"おぜうさまのこーまかんは、おぜうさまがまもるどぉ♪"と、
その小さな体をいからせた。

……が、ほんの十分後。

「う~、あんよがつかれたどぉー……」

と、さっそく弱音を吐き出してしまう。
れみりゃは、美鈴の仕事は門の前に立つだけの簡単なものだと思っていた。
だが、その場に立ち続けて気を張り続けるというのは、人間にとっても辛いものである。
ましてや、甘えん坊で泣き虫なれみりゃには、ある意味もっとも向いていないお手伝いとも言えた。

「あんよがジンジンきもちわるいどぉ~~~!」

痺れだした足に不快感を覚え、れみりゃはぐずりだす。

「ううーっ! あんよがぁー! れみぃーのあんよがぁーー!」

とうとう、ペタンと地面に座り込んでしまう、れみりゃ。
その時、れみりゃの前に一匹の訪問者が現れた。

「うぅ~?」

それは一匹の野生の子犬だった。
子犬は、れみりゃの横を抜け、そのまま紅魔館の中へ入っていこうとする。

「うっ! だめぇー!」

門番として、侵入者を許すわけにはいかない。
れみりゃは、使命感に燃えて、子犬の尻尾を掴んで中へ入れまいとする。

が、驚いたのは、尻尾を掴まれた子犬のほう。
子犬は、れみりゃに興味を移し、警戒しながらその姿を見る。

「じっとみつめちゃイヤイヤ~~~ん♪」

子犬にじぃ~と見つめられ、何を思ったか頬を赤くしてかぶりを振る、れみりゃ。
帽子のリボンが、左右に揺れる。

すると子犬は、揺れるリボンが気になりだし、それに噛みついた。

「うっ!」

れみりゃが驚くよりも早く、子犬はれみりゃの帽子を咥えて奪ってしまう。

「……う~~?」

子犬が何を咥えているのか、れみりゃは最初わからなかった。
が、何気なく自分の頭に手をやり、本来あるべき大事なものが無いことに気付く。

「……ああああっ! れみぃーのおぼうしがぁーーっ!」

血相を変えて立ち上がるれみりゃ。

「かえしてぇ! それ、れみぃーのぉーーーっ!!」

帽子を取り返そうと、子犬にかけよるれみりゃ。
だが、れみりゃと犬とではあまりに運動能力が違う。

子犬は、れみりゃが遊んでくれているものだと勘違いし、
一定の距離を保ったまま、れみりゃから逃げては近づきを繰り返す。

「にげちゃだめぇーー! おぼうしかえしてぇぇぇーー!」

ゆっくりにとって、帽子は命の次に大切とも言える物だ。
それを失うことは、とてつもない恐怖だった。

「おぼうしぃぃーー! れみぃーのおぼうしぃぃーーーーっ!」

わんわん泣きながら、子犬を追うれみりゃ。
だが、一考に捕まえられそうもない。

そうこうしている間にも、ヨダレまみれになり、
くしゃくしゃになっていく帽子を見て、れみりゃは気が気でない。

「うわぁぁぁ! やめてぇぇぇ! かまないでぇぇぇ!」

れみりゃは、咄嗟に落ちていた木の枝を拾うと、それで子犬を叩こうとする。

ペシペシ!

枝は当たらなかったが、子犬は驚き、帽子を放して逃げていく。

「う~! れみぃーつよぉーーい!」

それを見たれみりゃは、泣きながらも満足そうに微笑み、
地面に落ちた帽子を大事そうに拾う。

が、次の瞬間。
先ほどの子犬とは比べものにならない大きさな影が、れみりゃを押し倒した。

「うぁぁぁーーーっ!」

それは、先ほど逃げていった子犬の親だった。
子供が虐められたと勘違いした親犬が、れみりゃに襲いかかったのだ。

「やめてぇぇぇ! たしゅけてぇぇぇぇ!」

れみりゃとほぼ同じ、1メートル近いサイズを持つ親犬にのしかかられ、
れみりゃは地べたでジタバタ暴れ回る。

親犬は、れみりゃを逃がすまいと、服に噛みつく。

「ああーっ! おべべがぁー! れみぃーのキュートなおべべがぁーーっ!」

れみりゃの叫びもむなしく、親犬は服に噛みついたまま放そうとしない。
それどころか、服を引っ張り、れみりゃを自分の下へ引きずってこようとする。

「うあーーっ! こあいーーっ! がじがじしないでぇーーー!」

ズリズリ引きずられ、とうとう親犬の口の真下に連行されてしまう、れみりゃ。
恐怖で目を瞑った、その瞬間。

"キャーーン"

親犬がか弱い鳴き声を上げた。
おそるおそる目を開けると、そこには仁王立ちする美鈴と逃げ去る犬の後ろ姿が見えた。


   *   *   *


「……うー」

紅魔館の廊下で、れみりゃは落ち込んでいた。
いい子になろうとしているのに、みんなに喜んでもらいたいのに、ちっとも上手くいかない。

"もしかして、自分はいい子ではないの?"
"ほんとにモケーレおばけがやってきちゃうの?"

そんな思いがあふれ出してきて、れみりゃの小さな胸を締めつける。

「……あんた、そんなところでなにしてるの?」

れみりゃが、ゆっくりらしからぬ溜息をついていると、
いつの間にか、その前に金髪の少女が立っていた。

「う? おねぇーさん、だぁーれ?」
「……へぇー、そっか。あんたが最近お姉様が飼いだしたペットかぁ♪」
「うー! れみぃーはペットじゃないどぉ! れみぃーは、こーまかんのおぜうさまだどぉ!」

不満を露わにするれみりゃをよそに、
金髪の少女は、興味深そうにれみりゃを観察し、ほっぺたをムニムニ触り出す。

「あはっ、このほっぺたのムニムニなんか、お姉様そっくりね♪」
「うう?」

れみりゃは初めて会ったが、この金髪の少女こそレミリアの妹・フランドールだった。
彼女は、そのあまりにも強力な力と、安定しない精神状態のために、
495年間もの間、屋敷暮らしを強いられていた。

「む~にむ~に♪」

フランは、れみりゃの頬の感触が気に入ったらしく、
むにむにして手を放そうとしない。

れみりゃは、当初こそ戸惑っていたが、
楽しそうにするフランに感化され、やがて笑顔を取り戻す。

「む~にむ~に♪」
「う~にう~に♪」

2人で一緒に口ずさむ、れみりゃとフラン。

「うー♪ おねぇーさんはゆっくりできる人だどぉー♪」

すっかりフランに気を許す、れみりゃ。

「そうだどぉ! おねぇーさん、れみぃーにおてつだいできることなぁーい?」
「お手伝い?」

自分の口に手をあて、考えるフラン。

「そうねぇー、だったら……」
「うー!」
「私と遊んで♪」

そう言うと、フランはれみりゃの両脇を掴んで持ち上げた。

「う~~~♪ たかいたかぁ~~い♪」
「うふふ、そぉーれ♪」

フランは、れみりゃを抱え上げたまま、ゆらゆら左右にゆらしていく。

「ゆ~らゆ~ら♪……うっ?」
「そぉーれそぉーれ♪」

フランの動きは段々と速くなっていく。
最初はゆっくり左右に揺れているだけだったのが、次第に激しくなり、
ついにはブンブン振り回すようになる。

「うう~~~~~っ!!」
「あははははっ! たのしぃねぇーー♪」

振り回されるスピードと衝撃が怖くて、れみりゃは泣き出しそうになる。
だが、天真爛漫に笑うフランを見て、れみりゃの中に別の感情が湧き出てきた。

(うー♪ おねぇーさんたのしそうだどぉー♪)

それは、今日お手伝いをしてきて、初めてれみりゃが見せて貰った表情だった。
……ならば、自分ももう少しこのまま頑張ってみよう。
れみりゃは、自分にそう言い聞かせる。

「あははは~♪」

が。

「ぐぴっ!」

心で頑張ろうにも、ゆっくりの体がついていかず、
振り回され続けたれみりゃは、限界を超えて気を失ってしまう。

「……あれ? どうしたの?」

れみりゃの異常に気付き、フランはそっとれみりゃを床に下ろす。
れみりゃは、目を開けたままぐったり意識を失っていた。


   *   *   *


「……う~~~」

れみりゃは、ゆっくりと目を開ける。

「ここ、どこぉー?」

上半身を起こして、周囲を見回すれみりゃ。
そこはベッドの上であり、周囲にはレミリア、咲夜、美鈴、パチュリー、
そして心配そうに目を真っ赤に腫らした金髪の少女・フランがいた。

「よかったぁ~~~!」
「うー?」

フランはそう言うと、れみりゃに抱きつく。

「ちょっと、また加減を間違えても知らないわよ」
「もぉー! わかってるわよ、お姉様のイジワル!」

べぇーと舌を出すフラン。
れみりゃは、何が起こっているかわからず頭上に疑問符を浮かべる。

「れみぃー、どうしちゃったのぉー?」
「あなたは、妹様と遊んでいて気を失ったのよ」
「う?」

パチュリーに言われ、れみりゃはしょんぼりする。

「うーーー、またお手伝いできなかったどぉーーー……」

が、そんなれみりゃをフォローしたのは、意外にもレミリアだった。

「なに言ってるのよ。……フランを楽しませるなんて、そうそう出来ないお手伝いだわ」
「うー?」

まだ状況を掴めないれみりゃ。
そんなれみりゃを、咲夜と美鈴がねぎらった。

「えらいわよ、れみぃー♪」
「いやー妹様の相手は大変ですからねぇー」

……よくはわからなかったが、自分はお手伝いができたらしい。
それを実感し、れみりゃは幸せな気持でいっぱいになった。

「うー! やっぱりれみぃはいい子いい子だどぉー♪」
「あら、それじゃモケーレお化けはもう怖くないの?」

意地悪げに口の端を上げるパチュリー。
れみりゃは、びくっと体を震わせてから、勇気を振り絞る。

「れ、れみぃーはいい子だもぉーん! も、もけーれお化けなんかこあくないのぉー!」
「大丈夫だよ、れみぃー。 そんなお化けは、私が"きゅっ♪ぼぉーん♪"ってやっつけちゃうから!」

フランはそう言って、れみりゃの頭を優しく撫でてあげる。

「うー、なでなできもちいい~♪ なぁ~でなぁ~で♪」

頭を撫で撫でされて、喜ぶれみりゃ。

そんな、幸せそうなれみりゃとフランを眺めながら、
フランの能力を知るレミリアが、大儀そうに溜息を吐いた。

「……あんたが言うと洒落にならないからやめて」

だけど、れみりゃとフランに、その言葉は届かない。
2人は楽しく、声を揃えるのだった。

「うっうー♪ きゅっぼぉーん♪」
「あははー♪ きゅっぼぉーん♪」



……ここは、紅魔館。
人はおろか、妖怪達でさえ怖れる吸血鬼の居城。

その中からは、れみりゃとフランの楽しげな声が聞こえてきた。




おしまい。




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≪あとがき≫
これは愛でなのか虐めなのか……。
わからないですが、自分としては愛でかな-と。
あまり東方原作キャラを出さないようにとは思ってるんですが、たまには出してみました。

by ティガれみりゃの人
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  • れみぃーががんばってるのがとてもいい。こういうドジっ娘みたいなのいると胸がときめいてしまうぜ -- 名無しさん (2008-09-26 21:00:28)
  • 登場人物が多いと賑やかですね。こういうれみりゃも個性があって良いです。 -- ine (2008-09-26 22:39:12)
  • ふりゃん様が随分とご機嫌というかご機嫌すぎてキャr(ry  ぱちぇさんもあんなイジw(ry  (ry  (ry -- 名無しさん (2008-10-04 17:44:26)
  • きゅっぼぉ~ん♪ -- 名無しさん (2009-08-17 03:23:53)
  • れみぃはかあいいな。超ゆっくりできるわ。 -- 名無しさん (2010-11-28 01:35:13)
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最終更新:2010年11月28日 01:35