戦いは今日も続く。
「また来たの?全くこりないお兄さんだね!!ゆっくりまけてかえってね!!」
「いつまでもそんな口が叩けると思うなよ………?」
見るからに、都市の繁栄の暗部を一心に請負っている様な、治安も最悪な掃き溜めの様な裏路地。
そんな、住人ですらまともにゆっくりできていない場所に、そのバスケットゴールはあった。
器用に頭上でボールを弄びながら、踏ん反り返ったままゆっくりが青年の前に立ちふさがる。
「きょうも5本でいいね?!」
「ああ……」
「「じゃーん けーん」」
「ポン」は言えない。顔ジャンケン(グーは閉口 チョキが舌出し パーが開口)だからだ。
ちなみに、挑戦者の青年は、この年までこのルールを知らず、その事も大いにからかわれた。元々
は東洋の遊びなんだそうだし、こんなスラム街からまともに外に出たことも無いのだ。
一番の娯楽は、やはりストリートバスケだった。
「じゃあ、先攻はれいむからだね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
恒例の行事となったワンonワンに、その場にたむろしていた、主に柄の悪い住人達もゴールをあげ、
その勝負を歓声を上げて見守る。
「ゆっくりにいつまでも負けてられるかよ………!」
「お兄さんはれいむにはかてないよ!」
「こちとら食うにも困ってるんだ」
――――そう
このゆっくりがスラム街に現れるまで、バスケットコートは彼の私物と言っても良かった。勿論公共物で
あることは自明だが、その腕力と幾人かの手下と、実際のバスケの実力にものを言わせ、このコートで遊ぶ
には何かしらの賃金を彼は奪い取っていた。
最初は、賭け
ゲームとして周りにワンonワンを仕掛け、実際に勝つ事で小銭を稼いでいたのが、いつの間
にか立場が逆になってしまった。
周りが挑戦者となり、このコートの私物化を失くすため、もしくは単純に実力を試すために、勝負が毎日
挑まれたが、本当に誰も勝てないと解り始めてから、挑戦者はいなくなり、次第に訪れる人間もいなくなっ
ていった。
ゆっくりは、後者の方だろう。
この場のルールすら知らず、のこのこと1人でやってきた来た時には、まともに相手にすらしなかった。
どうやら素でこのコートでバスケをしたいと解った時、これも半ば冗談で使用料を請求したら、素直にど
こからともなく菓子の包みを渡してきた。
ライスクッキーだった。
ゆっくりに最初から期待はしていなかったが、その律儀さに思わず皆で笑ったものだ。
流暢に喋っているが、世界的に数は多いとは言え、この大陸自体では希少種にあたるれいむ種である。ど
この流れ者かと、早々に追い払うつもりでここでのルールを説明したら、勝負を挑まれた。
「お兄さんたちはゆっくりできない人たちだね!!」
「黄色い菓子が何言ってやがる」
「ここはれいむが遊ぶ場所だよ!悪い人たちはとっととでていってね!!!」
人間の余所者にケンカを売られるのとはまた違った殺意が湧き―――このまま踏み殺してもよかったのだが、
実際に本人の望んでいるバスケでその立場の違いを思い知らせ、気持ちの上でズタズタしようと考え、まず彼
はゲームを受けた。
腰の低い黄色人種どもは大嫌いだが、つけあがったゆっくりは、中がクリームのアリス種もぱちゅりー種も
含め、もっと嫌いである
「一ポイントでもとったらお前の勝ちにしてやるか」
「調子に乗っていると痛い目にあうよ!!!」
――――調子に乗りすぎました・・・・・・・・・・
どこぞの余所者はおろか、ゆっくりに一本もとれず、その後改めて始めた五本先取のゲームでは、連続で入れ
られ――――恥ずかしい話は俊足に広まるもので―――――お山の大将は、一日にしてゆっくりに頂上から突き
落とされる事となったのだった。
事もあろうに、ゆっくりはそのコートを我が物顔で周りに開放し始めたのだった。
最初はいくばくかの菓子を要求していたようだったが、元々小食らしく、最初に少しでも受け取ると、後はそ
れ以上を求めることも無く、やすやすとコートに誰でも通してしまうのだ。
一月後には早くも、あの硬派な緊張感溢れるゴールはどこにもなく、文字どおり女子共すら平気で戯れる遊戯
場と化していたのだった。
そしてここが一番重要で情け無い話なのだが、巻き上げていた金が、生活上どうしても必要なのだ
ゆっくりが幅を利かせている以上、そうした恐喝行為はできそうもない。
ゆっくりに実質しきられているコミュニティーもどうかと思うが、そのゆっくりに惨敗した人間には何も言え
まい
だから、今日も彼は勝負を挑むのだった
―――そして負ける
「いつまでもゆっくりできないお兄さんだね!!ここのおかねを取ろうとする悪い人は、とっととここから出て行ってね!!!」
「ちくしょう……!お前ゆっくりだろ?」
「勝負にゆっくりも人間も関係ないよ!!」
「そもそもゆっくりしてねえじゃねえか!」
半目と半開きの、何か浮かれている時のゆっくり特有の人を小馬鹿にした表情のまま、器用にボールの上に覆いかぶさる様
に張り付いたまま、ダムダムとバウンドし続けるボールと一緒に、辺りを跳ね回っている。本当に取り押さえて、ボールごと
ドリブルして叩きつけたいが、決してこの状態のゆっくりを捕まえる事ができない。
―――本当に、どうやってボールに張り付き、さらにドリブルして移動しているのだろう?
ボールの音も、硬質な音ではなく、何やら ぼゆんぼゆん という緊張感の無い、まさにゆっくりの移動時の擬音に聞こえ
てしまうのだから腹が立つ。
余程楽しいのか、悦に入ったままボールに乗ってバウンドし続けるゆっくりに、あろうことか幼児までがコートに入ってき
た。ストリートバスケだから、多少ゴールは低めに作ってあるし、(この国では珍しい話だが)そもそもバスケをする環境がこ
こ意外にあまり無いという事もある。しかし以前では考えられなかった。
それもこれも、無差別にゆっくりがゴールを皆に使わせているからだろう。
キャンディやらプリッチェルやらを差し出す子ども達に、ゆっくりはやんわりと断り、端の一番低いゴールへ向かい始めた。
ゆっくりが実はかなり珍しいという事もあるのだろうか。まるで幼稚園か公園の一こまだ。
「くそっ!!」
歯軋りする彼を、ギャラリーどもがニヤニヤと見ている。それはそうだろう。
「見世物じゃないよ!」
「うるさい!お前が言うな!!」
遠くでぼよんぼよんとボールごと幼児と戯れるゆっくりがなおもニヤニヤしながら言う。
―――それから3日後
挑戦は連日続いたが、新たな考えを試してみた。
今までは、こちらがオフェンスの際、地を這うような相手のディフェンスを、突破することしか考えていなかった。つまり、
踏みつけてしまうのを無意識に避けていたのだが、もうそんな事は気にせず、踏み潰す事に頓着しない事に決めたのだ。
恐ろしく恥ずかしい話だが、ゆっくりからは「1点でもお兄さんが点をとったら勝ちでいいよ!!」といわれているのだ。
本来ならば即ファールだが――――点さえ入れればこちらの勝ちと言い張ろう。
ゲームスタート後、早速イライラする動きで相手のイライラするディフェンスが始まったが、気にせず正面から突破する。
ぎゅむり
思い切り踏みつけてしまった。
辺りからの盛大なブーイングを背に受け、レイアップシュートに持ち込もうとしたが、ゆっくりは予想外の弾力だった。
もう少し反発の無い素材であれば、そのまま踏み込めたかもしれないが、何か弾かれる様にして、彼は思い切り転んでしまっ
た。
立ち上がろうとすると、ゆっくりがこれもまた盛大に泣き喚く声が聞こえたが、起き上がった時には、ボールをすかさず奪わ
れており、一点取られていた。
―――とりあえず、踏みつけのは更に危険と解った。精神的にもだ。
―――一週間後
ディフェンスの際、初めてゆっくりに直接触れることができた。
前に踏んだ時から、弾力の塊だという事は知っていたが、表面は思ったよりも硬質だった。中にはクリームやらチーズやらが
はいっているため、ひたすら柔らかいという先入観があったが、そうではなかった。遠目では気がつかなかったが、よく見ると
特に下腹部?には微細な傷が傷が満遍なくあったのだった。
―――東方(?)からの流れ者(?)の上、ゆっくりである
この町に来てからの苦労も、こうしたゆっくりとは思えない能力も実力も、やはり今までに培ってきたものなのだろう。
彼は方向を修正した。
今までは、ほぼ対戦経験の無い「ゆっくり」にどう勝てるかを考えていたが、もう相手の種を意識する事はやめた。
すなわち、自分の性能を上げねばという話である。
しかしながら、この辺りにはバスケを練習できるのはこのゴールだけ
誰もいなくなった時に、こっそりとここを使うのはプライドが許さなかった。ゴールを探すとなると、他の町への移動となって
しまう。そうなると交通費が………
「バイトを増やすか………」
それから、毎日続いていたゆっくりとの対戦は、3日に一度の割合となってしまった。
そしてある日、初めてゆっくりからゴールを守ることができた
「ゆっ!!?」
「見たか!!」
ギャラリーから、驚嘆の歓声と拍手が上がった。
―――生まれて初めてのことだった。
「お兄さん、なかなか腕を上げたね!!!」
「実力を出せばこんなもんだ!!」
「じゃあ、今までは本気じゃなかったら負けてたの?ゴーマンなの?うぬぼれなの?」
「うるせえ!!次こそ一本とってやる」
相変わらず、ゴールはできなかったが、少しだけ聞こえた、ギャラリーの応援や慰めは、嫌な気分ではなかった。
それから、「ゆっくりのくせに」 という台詞が無くなった。
練習や試合のし過ぎで、シューズが破けたり、ボールが古びてしまったりと、何かと入用になり、彼はまた更に働かねば
ならなくなってしまった。
毎日であったゆっくりとの対戦は、週に2度となってしまったが、ゆっくりはいつでもコートで誰かしらと遊んでいた。
周りの連中も、その頃には彼が訪れるたびに湧くようになり、試合をじっくりと見るようになっていた。
相変わらず、一本もゴールを決める事はできなかったが、ゆっくりからは、今まで連続で入れられていたゴールも、次第
に守れるようになっていった。
「少しはしんぽしたんだね!!!」
「いい加減に、その上から目線やめろよ!!」
「ゆっ? おにいさんの方が下なんだから仕方ないね!!それにまだまだだね!!!」
気がつくと、以前よりも真面目に働いているためか、もう以前の巻上げとは比較にならないほど、彼の生活は安定しつつ
あった。
が、そんな事はどうでもよかった。
コートの所有権(?)の事も忘れていた。
ただ、あのゆっくりに勝ちたかった。と、いうか、試合がしたかった。
周囲も、それをもう冷やかすことなく見守っていた。
「お兄さん、ほんとうにがんばり屋さんだね!!何でそんなにあきらめないの?」
「おめえに負けっぱなしじゃ外を歩けねえ」
――――こんな勝負が、これからもずっと続くのだと漠然と思っていた
本末転倒というほどではないが、バイトを頑張りすぎた結果、持ち場のリーダーに就任し、いずれは正社員の道も夢では
ないかと伝えられた夜のことだった。
いつになくニヤニヤしながら家路を辿ると、初めてコート以外でゆっくりの後姿を目撃した。狭い路地に入り込み、何か
急いでいるのかと思ったら、何人かの人間が追い回している。どう見てもゆっくりできない風体の、この界隈では寧ろ自然
な連中である。彼と同じ種類だ。知っている奴もいたし、ゆっくりに負けた後、彼に愛想を付かした元腰巾着もいた。
気になって覗いてみると、大の大人がよってたかってゆっくりに刃物を突き立てようと躍起になっているのだった。
コートの開放を、快く思っていなかったのは彼だけではなかったのだろう。ちょうど今まで独占していた奴がゆっくりに
負けたので、そのゆっくりを片付ければ自分の天下と思っていたら返り討に張った口だろうか。そうでなくとも、建前では
平等や人類愛がデフォルトの世界とされていても、同じ人間すら人種によって公共物を共有する事が我慢できない連中がい
る世界である。
中途半端(というレベルではないかもしれないが)に実力のあるゆっくり等、今までこうして闇討にあわなかった方が不思
議というものである。
ゆっくりは複数の人間相手に、いらいらする動きでのらりくらりと上手くかわしていたが、やはり最後には両手でつまみ
上げられた。
眉間にナイフの先を突きつけられ、笑った顔がこわばっている。恐怖を感じる時の、あの阿鼻叫喚の表情ではなかった。
それなりに我慢しているのかもしれないが、かえって相手を逆上させてしまったようだ。
気がつくと、元の手下も含め、屈強な白人男性4人を殴り倒していた。コートを占領していたのは、何もバスケの腕前だけ
ではなかったのだ。ホワイトトラッシュめ。
ゆっくりは傷つけても、人間を本当に指すほどの覚悟がある奴等ではなかったらしく、見苦しく振り回されたナイフが頬に
何本か傷を作っただけで終わった。何度かゆっくりは踏まれていた。
とりあえず、何か硬質なものが折れてる音が聞こえるまで一人一人を殴り続け、数人がその場でへたり、何人かが逃げ出し
た。明日も仕事があるのに、下らない時間を過ごしたと嘆息しつつゆっくりを見ると―――
「おい、大丈夫か?」
「ゆっくりありがとうね・・・・・・」
実際に傷つけられたわけでは無いし、丈夫な奴なのでそれほど被害は無いかと思っていたが、ゆっくりは、もう、目も当て
られない程衰弱していた。
涙が地面に水溜りを作り、数分の事だというのに、膨れていた頬もこけている様にすら見えていた。
「どうしたどうした!!?」
「れいむはもうだめだよ……楽しかったよ………」
咄嗟に持ち上げて全身を調べたが、特に外傷は見当たらなかった。
ただ、リボンが一部欠損している。
「これか?これのためか?」
「ゆゆ………こんな国でゆっくりした結果がこれだよ……」
「馬鹿ガ!すぐ病院に行くぞ!!」
しかし近場で知っている病院というと、無認可のろくでなしの医者しか知らない。
ゆっくりのこと等、見た目に傷すらないのに、何か解るだろうかと夜更けに叩き起こして診察してもらったが――――程な
くして、ゆっくりの保護者(?)が訪れた。
赤と青の看護士の様な服を着た体つきのゆっくり(種類はわからなかった)と、ゆちゅりー種である。
すぐに欠損したリボンを見つめると、嘆息しつつ首を振る。
どういうことだ
「あなたが病院に連れてきてくださったんですね。ありがとうございます」
「いや………」
「この子はもう駄目でしょう」
突然の断言に、何が起こったのか理解できず―――ただ、もう勝負の相手がいなくなるだとか、ようやくコートに邪魔者が
いなくなっただとか、今までこのゆっくりとの接点であったはずの事象は全く思いうかばず、ただただ呆然とするしかなかっ
た。
胸に訪れたのは、途方も無い喪失感である。それはごまかせなかった。
「何が問題なんだ!?」
「ご心配をおかけしました」
東洋人らしく、うやうやしく一礼すると、2体は弱ったゆっくりを抱えて帰っていった。
翌日、仕事を早く切り上げ、何とかいつもゆっくりが帰るぎりぎりの時間にコートに向かったが、いなかった。
次の日も次の日も、毎日普段ゆっくりがいる時間にはコートに行き、休みの日などは、一日中待っていたが、ゆっくりは
来なかった。
周りに聞いても、ゆっくりはあれ以来姿を現さなかったという事だった。
連日ゆっくりに無謀な挑戦を続けていた男が、不在と入れ替わるように毎日顔を出すようになり、ひたすら待ち続けてい
るのだから、周りは決しておちょくる事はせず、黙って見守るか、たまに見かねてワンonワンを申し込むものもいた。
ふて腐れて、それを拒否するような事はしなかった。
久々に、人間とのバスケは中々楽しかった。
何日も彼は待ち続けた。
そして、ある時、バイトが遅れ、ゆっくりがいつもいる時間を大幅に過ぎての帰宅となってしまった。
その頃には、半ば帰還をあきらめていたのだが――――
「いつまで待たせるの!!?お兄さん、ゆっくりしすぎだよ!!」
いつものように、ボールの上でバランスを上手く取りながら、ゆっくりが踏ん反り返っている。
もう暗くなりかけているのに、ギャラリーが皆帰らずに残っている。
更に、どこから来たのか多くのゆっくり達まで集まっていた。この前のぱちゅりー種と体つきもいる。
「治ったのか!?」
「ごちゃごちゃうるさいよ!!!ゆっくりまたしょうぶしてね!!!」
よく見ると、まだ頬がこけている。
目にも光が無く、威勢がいいのは声だけ。以前は絶妙なバランスでボールにはりついていたのに、今は何だか頼りなくぐら
ついている。
「お前……っ!?まだ駄目なんじゃないか?」
「だいじょうぶだよ!!」
「馬鹿野郎!そんな状態の奴に勝って嬉しいわけあるか!!」
「いえ……勝負してください」
幾分悲愴な声で告げたのは、例の体つきのゆっくりだ。
「これが最後なんです」
――ゆっくりの生態は詳しくない。確かに体の装飾品がなくなると、個体を識別しにくくなったり、疎外される事があるらしい
事は聞きかじっていたが、それであの様に衰弱する理由がわからなかった。
気持ちの問題だろうか?
だとすると―――――ああしていつもどおりに気丈に振舞っているのは―――――
最後―――――の意味は―――
彼はコートに入った。
「病人だからって手加減しねえぞ!!」
「ゆっくりまけていってね!!」
――――――ボロ負けしました・・・・・・・
実は今まで手加減されていたのではないかと言うほど、完膚なきまでに。
ある程度、相手が弱っている事で本気を出せないのではと心配していたのが馬鹿らしい。今までの努力は何だったのかとこちらが
泣きたくなった。
が、試合後、ボールにも乗らず、そのままへばって荒い息をついているゆっくりを見ると手加減などという生易しい世界ではない
ことがわかった。
相手も――――持てる実力以上のものを引き出して、全力で自分にぶつかったのだろう。
他のゆっくり達がかけよる。
ギャラリーが心配そうにざわめく。
惨敗した彼を笑うものはいなかった。
体つきのゆっくりに抱きかかえられ、ゆっくりは寝息を立てていた。
「最後まで遊んでくれてありがとう」
「そいつはどうなるんだ」
「もう、ここにはいられません」
絶望的な一言
「こんな町にわざわざ来る事はありませんでしたね―――――だから、私達の故郷に帰って、ゆっくり静養することにします」
故郷
半端な知識ながら、思い当たる節があった。
「そ、それはもしかして――――東にあるという、『GEN SOU KYOU』―――――?」
「はっ!!? オクラホマですけど?」
「あ……そうですか…」
ぞろぞろと、ゆっくり達が立ち去っていく。
何のために、こんなスラム街にわざわざオクラホマからやって来たのか判らないが、この先、もうここで遊ぶ事はないだろう。
と―――抱かれていたゆっくりは、うっすらと目を覚ましていった。
「お兄さん………嫌な町だったけど、ここはゆっくりできたよ……」
「お前がゆっくりした場所にしちまったんじゃねえか」
今では、ほぼ人種や年齢、格差すらなく、このコートで人間達がゆっくりしてしまっている。
―――ゆっくりを待っている間、彼もゆっくりできていたのかもしれない。
「このまま勝ち逃げか?」
「腕をあげたね!!」
「いつまでも上から目線だな、おい!?」
目頭が熱くなるのを我慢しつつ、彼は食い下がった。
「れいむはもう帰るけど、お兄さんはれいむがもういなくたって、十分ここでひとりでゆっくりできるよ……」
「――――」
親しかった人間の子供達はこらえられずに泣いている。
彼は何も言えなかった。
最後に体つきゆっくりの頭上に這い登り、ギャラリー達と彼に向かって、ゆっくりはひときわ大きく言った
「 TAKE IT EASY !!!」
人間も皆それに応える
『(オクラホマでも) TAKE IT EASY !!! 」
******************************************************************************
はじめまして
いつも見ているだけだったので、自分でも書かねばと挑戦しましたが、何だかゆっくりしていない上に変にベタなものに…
ちなみに、この話の舞台となっている界隈の事をそこまで詳しいわけではありません。すみません、かなり想像や偏見であ
あります………
あと、 ↓ に後日談です。あまり見ないほうがいいかも
******************************************************************************
「それで?それでゆっくり達はどうなったの?」
「いや………それからは会う事がなかったよ」
後部座席の息子が、興奮した様子で続きをせがむが、この話はここで終わりである。
意外に数多く生息していたと思われたゆっくり達だったが、あれ以来本当に姿を見かけないので、一気に移住したのだろ
か。まあ、その方がいいだろう。
と、彼の家族にとっての新天地に到着した。
オクラホマである。
「わあ、ゆっくりだー!!」
タイムリーに、車が止まった先に公園があり、ゆっくり達がサッカーをしている。
あんな話の後だから息子は興奮しているが、あの激戦を繰り返した彼には、ボールと戯れているだけのゆっくりなど――
「チルノフなんか、コートで寝てるじゃないか」
その時――どうやったものか――まりさ種が大きくボールを蹴り上げた。
と、秋姉妹がびょこびょこと飛び跳ね、ちょうどチルノフの足にあたる場所まで移動する
『スカイラブ行きまーす!!!』
寝たままのチルノフに、足の力だけで押し出された2体は、頬でボールを挟み込んだまま、自軍のエリアから相手のゴール
まで一ッとびにねじ込んだ。
「すごーい」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
本当に、オクラホマでもゆっくりできるのだろうか
- なんか泣けた・・・ -- 名無しさん (2008-10-03 03:04:21)
- 別れたれいむはどうなったんだろうか -- 名無しさん (2008-10-04 20:45:29)
- いろいろと突っ込みどころがありますね -- 名無しさん (2010-06-15 18:17:12)
- 面白かったです -- 名無しさん (2010-10-22 00:35:43)
最終更新:2010年10月22日 00:35