※オリジナルキャラの少年が出演します。名前も便宜上付けさせてもらいました。
きずな②~触れ合い~
めーりんの今にも寝入りそうな顔に少年は焦りを感じた。
「ダ、ダメだよ!今寝たら…死んじゃうよ!」
実はめーりんは丈夫な体と高い再生力を持つ為、この程度の傷であれば半日程安静すればほぼ治癒する。だがそれは安全な状態にあるという前提の下に保証されること。
あのまま5匹のゆっくりに攻撃を続けられていたら間違いなく絶命していたに違いない。その点において少年がめーりんを救ったと言っても過言ではない。
だが、そんなことを知らない少年にとっては当然の焦りと言えよう。
少年はめーりんを落とさぬようにしっかりと抱きかかえ、駆け出した。自宅に向かったのだ―――めーりんを助ける為に―――
少年疾走中…
走ること15分、息も絶え絶えに家に着くと勢い良くドアを開ける。
「ただいまー!!」
「お帰りなさい、進(すすむ)。」
少年―進―の母親が奥から出てきた。が、進の泥だらけの服が目に入るとすぐに顔をしかめる。進は母親の姿を認識した瞬間さっとめーりんを背中に隠した。
「もう…こんなに服を汚して…ん?…今、何か持ってなかった?」
「な、何でもないよ!…うん、何もでもない!」
ばればれの嘘である。ひきつった笑みを浮かべ、自分の部屋へと向かう。
「こら~進!手を洗いなさーーい!!後、服も脱いどいて、洗うから!」
はーいという返事が響く。
「全く…何を持って帰ったのかしら…」
手を洗い、脱衣所で服を脱ぎ着替えると大急ぎで自室へ入った。めーりんをちょこんと床に降ろす。
「ふう…大丈夫…なのかな?」
めーりんの傷は先刻と比べると幾分かマシになっているように見えるが…。進がめーりんの傍で耳を立てる。すやすやと安らかな寝息が聞こえてきた。進はようやく安堵する。めーりんが大事に至っていないということに気づいたのだ。
「この子、結構丈夫なんだなぁ…」
ゆっくりはまんじゅうの化身などと聞いたことがある。もっと脆い生き物だと思っていた進だが、めーりんのその生命力の高さに感服していた。緊張感が一気に抜け始めるとゆっくりと床に伏す進であった。
うつ伏せになりめーりんの安らかな寝顔を見る。
「なんか、良く見るとかわいい…かな?」
めーりんの頬はいかにも柔らかそうで触ってみたいという欲求が芽生えてくる。
「寝てるのに悪いけど…少しぐらいなら…」
つんと人差し指で触れてみる。
「うわぁ…すごいぷにってする。」
予想以上に柔らかく指がめりこんだ。思わず感嘆の声が上がる。と、めーりんの重そうな目蓋が徐に開いてゆく。
「JA…O…?」
人の寝起きのようにぼけーとしていた。
「あ、ごめん…起こしちゃった?」
めーりんは目をパチパチさせ進をじっと見つめる。進もめーりんを見つめ返す。…だが、何も喋らない…否、喋れないのだ。
そのまま2分程経過した。と、進はようやく気づく。
(あ、そっか…この子は喋れないんだっけ…?)
進から沈黙を破る。
「えっと…ケガは大丈夫?」
聞いても言葉が返ってくる訳ではないのだがめーりんの場合、知能が非常に高い。その為、人間の言葉を正確に解することができるのだ。
「JAOOOOOO!!」
元気な鳴き声が部屋に響く。めーりんは自身が無事であるということを顕示するかの如く飛び跳ねてみせた。
「良かった…元気みたいだね。」
「JAOOO!!JAOOO~JAOOOO!!」
めーりんはぺこりと頭を下げる。
「えっと…ありがとう…って言ってるのかな…?」
「JAOOOO!!」
今度は正解だと言わんばかりにぴょんぴょん跳ねる。進は相手の機微を察することの出来る子だ。たとえめーりんが言葉を喋れなくともこれ位読み取るのは容易いようだ。
「ははは…どういたしまして。」
一時はどうなるかと思った進だが、これ程元気ならば心配はなさそうだ。
「そうだ、えっと…君の名前は…めーりんだっけ?僕は進って言うんだ。よろしくね。」
「JAO、JAOOOOO!!」
めーりんが進に近寄り、胡坐の上に乗る。
「JAOOOOOOO!、JAOOOOOO!!」
「お…っと…はは、僕のこと気に入ってくれたのかな?」
今のめーりんの鳴き声はゆっくりで言うなら『すすむのあんよ、めーりんのゆっくりぷれいすにするね』と言ったところだろうか。
と、突然ぐーーーーという音が鳴る。
「ん?…なんだろう…今の音…」
不審に思う進はめーりんの表情を窺う。すると、めーりんは頬を赤らめて俯いている。
「もしかして…お腹減ったの?」
「JAOOOOOOO…」
めーりんはどこか恥ずかしそうな素振りを見せる。
「う~ん…あ、そうだ!確か…」
進はめーりんを手のひらに乗せ移動する。
「JAO…?」
自分の机の上にめーりんを置き引き出しを開けた。
「えっと…この辺に…あ、あったあった。」
進が見つけ取り出した物は板チョコだった。
「って…チョコ食べられるのかな?」
進は少し考え込む。一方のめーりんは野生である為、進の手の中にあるものが何なのかは分からないで首を傾げている。
「うーん…ちょっとだけなら…大丈夫だよね?」
板チョコをほんの一欠けら程割る。
「JAOO?」
「食べてみる?」
「JAOO!」
めーりんは食べるという意志を示すようにちょんと跳ねる。
「そっか。じゃあ、あーんて口開いて。」
「JAAAAAAN」
大きく開いためーりんの口の中にチョコを入れる。
「JAO♪JAO♪」
ゆっくりと咀嚼するめーりんを進はじっと見守る。
「どうかな…?食べられそう?」
そう尋ねるとめーりんの顔がぱあぁと輝き始める。
「JAOOOOOOOOOOOOO!!!」
チョコレート。それは自然界では決して存在することことのない人工的な甘味。えも言えぬ味というのは正にこのことかもしれない。それを始めて口にしためーりんの感動は谷よりも深かった。そして、その美味しさから満面の笑みを浮かべるのだ。
「良かった…すごく美味しいみたいだね。…もっと食べたい?」
「JAOOOO!」
催促するかの如く飛び跳ねるめーりん。結局その後、板チョコ半分程をあっさりたいらげてしまった。めーりんは幸せな顔を浮かべる。今にも天に召されそうだ。
「まだ、子供なのに…よく食べるんだなあ。」
進はその食欲に感服しながら、めーりんのだらけきった顔を突付いて遊ぶ。ヘブン状態となった表情を見て触れてみたくなったのだろう。
すると、めーりんがうとうとし始めた。どうやら、また眠くなってきたらしい。
「むう…眠たそうだね。…あ、さっき起こしちゃったからかな?」
進は、先程無理に起こしてしまったことを反省した。だが、食事を取って眠気に襲われるのは仕方が無い生理現象である。ゆっくりにとっても例外ではない。ただ、めーりん種は何故か他の種よりも遥かに多くの睡眠を取るという習性がある。
「JAOOOO…」
めーりんは欠伸をすると、徐に目蓋を閉じていった。
「あらら。もうよだれ垂らしちゃって…しょうがないなあ…」
くすりと笑うとそっとテッシュで拭き取る。
進は率直にこのめーりんと一緒に暮らしたいと思った。
この子と過ごせばきっと毎日が新鮮で、楽しくなる―――そう感じて―――
これからのめーりんとの日々に思いを馳せ始める進であったが、その際、最大の難関になるであろう存在に気づいてしまった。
(…母さん…、許してくれるかな…?)
そう、進少年の母親は…大のゆっくり嫌いなのであったのだ…
~続く~
以上、ひもなしでした。
今、この話の構想を練り直してましたが思った以上に長引きそうなので削り中です。
あまり超長編になってもgdgdで途中で投げ出しそうで…そしてそんな失礼なことは避けねば。なんとか10話位には修まりそうなのですが…。
なんとか約週一のペースですが維持できないかもしれません。申し訳ないです。
来年の春を目処に完結を目指します。
最後に拙い文章を最後まで御覧いただきありがとうございました。
- 投下乙、ゆっくりと少年の交流が和む。しかしお母さんはゆっくり嫌いなのか、その経緯はこれからの話で明かされるのか?それとも単純な好き嫌い? -- 名無しさん (2008-10-05 00:48:46)
- >2008-10-05 00:48:46
コメントありがとうございます。
まだ明かすつもりはありませんでしたが…
母親は…ここでは割愛しますが過去にゆっくりとの因縁があるという設定です。
その内また詳しく投下しようと思っています。 -- ひもなし (2008-10-05 01:11:30)
- めーりん可愛(・∀・)イイ!!続き、ゆっくりとお待ちしておりますー -- 名無しさん (2008-10-05 08:17:29)
最終更新:2008年10月05日 08:17