きずな⑤~過去~前半

きずな⑤~過去~前編

※虐待・虐殺描写はありませんがゆっくりがゆっくり出来なくなるシーンを含みます。また、悪役のゆっくりが現れるので注意。

 舞台は森。この森には様々なゆっくりが生息している。
 ここである木の根っこに近づいてみよう。一見、何の変哲も無いが、注意深く見てみると葉がやや不自然に散乱していることが分かる。
 こういう場所には大抵、ゆっくりの巣があるのだ。今度は巣の中を覗いてみよう。

 巣の中には2匹のゆっくりが住んでいた。2匹ともめーりん種だ。
 片方のめーりんには茎が伸び、赤ゆっくりが4匹実っている。この2匹はどうやら夫婦らしい。
 母めーりんがピクッと震える。

「JAO!?JAOOO!」(ん!?うまれそうだよ!)
「JAOOOOO!!」(ゆっくりうまれてきてね!!)

 赤ゆっくり達が震えだす。と、次々に落ちてきた。新しい命の誕生の瞬間である。
 赤ゆっくり達は目をゆっくりと開け、声を揃えてお決まりのセリフを発する。
「「「JAOOOOO!」」」(ゆっくちちていっちぇね!)
「「JAOOOOO!」」(ゆっくりしていってね!)
 父、母めーりんも声を揃えて言い返す。だが、まだ一匹落ちてきていないことに気づく。
「JAOOO、JAOOOOO!」(あわてないで、ゆっくりおちてきてね!)
「JAOOOO!!」(がんばってね!!)
 5匹は口々に励ます。すると、とうとう最後の赤ゆっくりもぽとっと落ちてきた。
 ゆっくりと目を開けると、父、母、そして先に生まれた姉達が笑顔で迎える。
「JAOOOOO!」(ゆっくちちていっちぇね!)
「「「「「JAOOOOO!」」」」」(ゆっくりしていってね!)

 こうして新たなる生命が誕生した。
 この一家は出産後、実にゆっくりと幸せに暮らしていった。
 父親が狩にでかけている間に、母めーりんは赤めーりんに教育をしながら共に遊んで世話をする。
 一緒に歌を歌ったり、高い高いをしてあげたり。父親が帰ってくると家族全員でご飯を食べ、一緒に眠る。
 ゆっくりにとっては至極理想的な暮らし・家庭であった。

 しかし、その幸せは何の前触れもなく崩れ落ちることになる。赤めーりんたちが生まれてから2週間程経ったある朝方のこと。

 めーりん一家はいつものように家族で仲良く眠っていた。
 夜明けの静寂を打ち破るかのように、まだ深い漆黒に包まれた森に叫び声が響き渡る。

「た、たいへんだー!!ゆゆこいちみがきたぞー!!」

 その大声に父めーりん、母めーりんは目を覚ます。そして、急いで赤めーりん達を起こす。
「JAO、JAO、JAOOOO!!」(みんな、おきて、たいへんだよ!!)
「…JA…OO…?」(…なーに…おとうさん?)
「…JAOOOOO…」(…めーりんまだねぇみゅいよ…)
 赤めーりんたちはいきなりたたき起こされ、まだ眠そうな顔で文句を垂れる。だが、事態は一刻を争うので親めーりんは無視する

「JAOOOOOO!JAOOOOOOOOO!!」(ゆゆこいちみきたの!はやくにげないと!!)
「JAOO…JAOOOOOO?」(ゆゆきょいちぃみぃ?)
 ゆゆこ一味とは、この森を牛耳る悪党ゆっくりの集団だ。リーダーのゆゆこの下に、100匹程のみょんが集まって出来た。
 ブラックホール並みの胃袋を持つと言われるゆゆこの為にみょん達がゆっくりを捕らえ、ゆゆこに食べさせる。
 一度襲われた群れは餡子一つ残らないとも噂される。

 そんな危険な一味など聞いたこともない赤めーりん達が呑気になっているのは仕方がないことだ。
「JAOO、JAOOOOO!!JAOOOO、JAOO、JAOOOOO!!」
(ぜんぜんゆっくりできないよ!!ゆっくりしてたら、つかまって、食べられちゃうよ!!)
 その親の必死な表情と声で、赤めーりんたちも事態の深刻さに気づき始める。途端にガタガタと震え出す
「JAOOO!!」(ゆっくりちたいよ!!)
「JAOO、JAOOO!!」(いやあ、たべられたくないよ!!)
 まだ生きたい、ゆっくりしたい。生物の本能からそう叫ぶ赤ゆっくり達。
「JAO、JAOOOO!!」(だったら、ゆっくりはやくにげようね!!)
「「「「JAOOOO!!!」」」」(ゆっくりりかいしたよ!!!)
 いざ、逃げようと思ったその時、巣の入り口が開く。

「ちーんぽ。めーりんいっかがいたよ!」
「ちーんぽ。ほんとだ!」
「ゆゆこさまのためにゆっくりつかまってね!」
 3匹のみょんが侵入してきた。それぞれの口には何かの生き物のものだろうか?するどく尖った白い骨が咥えられている。

「JAOOO!!」(こわいよ~!!)
「JAOO!!」(いや~!!) 
 赤めーりん達は怯え、泣き叫ぶ。が、父めーりんは恐怖こそあったが同時に冷静でもあった。
「JAO…JAOOOO…」(くっ…武器をもってるよ…)
「JAOOO…」(どうしよう…)
 何とか…何とか助かる方法を…それを詮索し始めた。
 妻の顔を見つめた後、赤んぼう達に視線を移す。そして、決意したように色を正し、みょん達を睨む。

「JAO…?」(あなた…?)
「JAOO…JAOOOOO、JAOOOO!!」(おまえは…あかちゃんたちをつれて、うらぐちからにげるんだ!!)
「JAOO…?」(あなたは…?)
「JAO…JAOOOOO」(わたしは…ゆっくりおとりになるよ。)
 その言葉に、母、赤めーりんは共に反発する。

「JAOOOO!!」(だめよ、あなた!!)
「JAOO、JAOOO、JAOOO!!?」(どうち゛て゛?おと゛うし゛ゃん、ち゛んじゃうよお゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ!!?)
「JAOOO!!JAOOOO!!」(いやだよ!!おとうしゃんといっちょにゆっくちちたいよ!!)
 涙を流し必死に全員で逃げようと訴える。だが…父めーりんの決意が揺らぐことはなかった。

「JAO、JAOOO…JAOOO、JAOOOO!!」(ダメだよ、だれかがぎせいにならないとたすかたないよ。みんな、はやくにげてね!!)
「JAOOOOOOOOOOOOO!!」(おと゛お゛お゛おぉ゛ぉ゛ぉし゛ゃあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁあ゛あ゛ん!!!)
「JAOOOOOOO!!」(ち゛んじゃい゛やあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁぁー!!)
「JAO…JAO、JAOOOOOOOOO…JAO、JAOOOOOOO!」
(ごめんね…でも、かぞくのききにはおやがまっさきにぎせいになってでもかぞくをまもる。…これが、おやのさだめでありぎむなんだよ…)


「「「「JAOOOOOO!!」」」」(ち゛ょんに゛ゃの゛わか゛んな゛い゛ーーー!!)
 聞き分けの分からない赤めーりん達だったが、あくまで父めーりんは諭すように優しく語りかける
「JAOO、JAOOOO…JAO、JAOO、JAOOOO」(いつか、おやになったときにわかるよ…さあ、みんな、おとうさんのぶんまでゆっくりいきてね)
「「「「JAOOOー!!」」」」(い゛や゛あ゛あ゛あ゛あああぁ゛ぁ゛ぁぁ゛ぁ-!!)
 その重く、深い言葉簿を理解するのに赤めーりん達には…やはりまだ幼すぎた。大好きなお父さんを失いたくない。それが総意だ。
 だが…母めーりんには判った。長く連れ添った夫の言わんとすることが。今、母めーりんに出来ることがあるとすればそれは即ち―――

「JAO…JAOOOOOOO!!」(あなた…ゆっくりりかいしたよ!!)

―――最愛の夫の意志を汲んでやることだけだ。

「JAOOOOOOOOOO!?」(どーぢでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!?)

 父めーりんの身を案じ抵抗する赤めーりん達を1匹ずつ口の中へ入れてゆく。

「JAO!!…」(みんな…)
 これが…これがきっと最後の言葉になる。
「JAOOOO!!!」(あいしてるよ!!)

「「「「おと゛お゛お゛お゛おぉぉぉし゛ゃあ゛あ゛あぁぁぁん!!」」」」

 父めーりんは勇敢にも3匹のみょんへと立ち向かう。この場は通さない。絶対に。そう心に誓って。


            …………………………

 母めーりんは懸命に走った。愛すべき夫の決死の覚悟に報う為に―――夫との大切な子供達を守る為に―――
 大粒の涙が零れるのも顧みず、裏口へと急ぐ。一秒でも速く、一歩でも速く。そして、とうとう裏口へと出た。
 ひとまず、口の中の赤めーりん達を解放する。…まだ、『JAOOOO!』(おとーしゃん!)と泣き叫ぶ。…ムリもない。
 だが、ここでゆっくりしている暇は無い。追っ手が来るかもしれないのだから。赤めーりん達を宥めようとした次の瞬間だった。

「こんなところにもいたぞ!」
「ちーんぽ、ぜんいんつかまえよう!」
「JA、JAOOOO!!」(は、はなちてー!!)
 …最悪のタイミングだった。既に追っ手のみょんが2匹いた。そして…赤めーりんが1匹捕まってしまった。
「ぜんいんうごくな、おとなしくつかまってね!」
 赤めーりんたちはみょんの言葉に再び怯え始めた。父めーりんが犠牲になり、今度は姉妹が…そして最後には家族全員が…

 しかし、母めーりんはその恐怖に屈しなかった。先刻、夫から勇気をもらったのだ。この状況で…家族が出来る限り助かる方法を詮索する。
 敵はみょん2匹。この2匹も武器を持っている。自分一人で闘っても恐らくは勝てない。ならば…どうすれば…?
 と、ここで母めーりんは気づく。夫が、家族の為に取った行動に。そして、決意する。

「JAO、JAOOOOOO!!JAOOOOOOO!!」(ねぇ、めーりんがかわりにつかまるよ!!だからこの子達を見逃してあげて!!)

 彼女は…父親と同じ道を歩むことにしたのだ ――― 子供達4人共の未来を守る為に ―――

「「「「JAOOOOOOOO!!!???」」」」(どーぢで、おがあ゛ああじゃん゛も゛ぞんな゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!??)
 一方の赤めーりん達は…もう、わけが分からなかった。どうして、父めーりんだけでなく、母めーりんも同じことをいうのか?
 どうして、全員で生き残ろうとしないのか?

「んー?なにいってるんだ?ちーんぽっ!」
 絶望的だった。…言葉が通じていない…が、幸いなことにもう1匹のみょんは把握していた。
「みょんはむかし、むれのめーりんとおはなししたことがあるからわかるぞ。」
「ちーんぽっ!さすがたいちょうだね!なんていってるの?」
「めーりんは『めーりんがぎせいになるからあかちゃんたちをみのがして』っていってるんだよ!」
「ゆっ!でも、そんなことはみとめられないよ!」
 それでも、母めーりんは必死に懇願する。
「JAOOOOOO!!JAOOOOOOO!!!」(おねがいします!!めーりんはどうなってもいいの!)
 めーりんのその必死の様子に隊長らしきみょんは悩む。
「うーん…そうはいってもなあ…」
「JAOOOO。JAO、JAOOOO、JAOOOOOOOO!」
(このこたちはうまれたばかりだよ。だけど、わたしはおおきいから、ゆゆこもおなか一杯になれるよ!)
 確かにお腹を満たすなら母めーりん1匹捕まえられれば十分な足しにはなる。

「ゆっくりりかいしたよ!!じゃあ、めーりんはゆっくりつかまってね!そのかわりあかちゃんたちはみのがしてあげるよ!ちーんぽっ!」
 みょん隊長のその返答に疑問をもつみょん。
「隊長、いいの?ちーんぽっ!ぜんいんつかまえたほうがりょうはおおいよ!」
 当然の意見だ。だが、みょん隊長は打算的であった。今、このめーりんを捕まえる位なら、まるまる大きく育ってから捕まえる方が効率がいいと思ったのだ。
 ただ、多少の同情もあった。いくら己の主の為とはいえ、これほどまでに幼い赤ゆっくりまで犠牲にしたくはないのだ。

「このあかめーりんたちがおおきくなってからつかまえたほうが、りょうはおおきくなるよ!」
「ちーんぽっ!きゃっちあんどりりーすだね!やっぱりたいちょうはあたまがいいね!」

 めーりんは自分の願い――― 赤めーりんを全員守る ―――が受け入れられ達成感と安堵を覚えた。しかし、赤めーりん達は黙ってはいない。
「JAOOOOOOOOOOO!?」(どーぢで、ぞんな゛ごどい゛う゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!?)
「JAOOOOOOO、JAOOOOO!!」(お゛があ゛じゃ゛ん゛ま゛でい゛な゛ぐな゛る゛ん゛でい゛や゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!)
「JAOOOOOOOOO!!??」(ごれ゛がら゛゛ーじゅれ゛ばい゛い゛の゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛!!??)
「JAOOOOO、JAOOOOOOOOOO!!」(じょ゛ん゛な゛や゛じゅ゛ら゛や゛っ゛ち゛ゅ゛け゛て゛よ゛お゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!)

 父めーりんが目の前で犠牲となり…今度は母めーりんが今まさに犠牲になろうとしているのだ。
 一緒に居たい。もっとゆっくりしたい。赤めーりんたちはただ、ただ悲しいだけだ。そして何も分からないのだ。
 だから、だから…母めーりんは分かってほしかった。自分達の想いを。子供達を助けたということを。だが、無情にも別れの時は来る。

「ほら、めーりんはやくいくよ!みょんたちがおこられちゃうよ!」
 みょんがめーりんをせかす。
「JAOOO…JAO、JAOOOO!」(わかったよ…みんな!ゆっくりいきのこってね!)
 それが…親子の、最後の会話となった。

「「「「JAOOOOOOOO!!!」」」」(お゛か゛ああああし゛ゃあああ゛ぁぁぁん!!!)

「ほら、おまえたち、はやくにげるんだよ!ほかのみょんたちにみつかったらつかまっちゃうよ!」
 みょん隊長が急かすが、その場で泣き崩れ動こうとしない。別に放って置いてもよかったのだが、約束の手前後味が悪いと思ったみょんは赤めーりん達を近くの深い草むらまで転がした。
 ここなら見つかりにくい。

「JAO、JAOOO…」(みょん、ありがとう…)
「きにするな。やくそくはやくそくだよ。」

 意外にも義理堅いみょんに感謝しながら母めーりんは心底祈る。
(みんな…これからつらいこといっぱいだとおもうけど…ゆっくり、たくましくいきのこってね…)

 とうとう、母めーりんは連れ去られた。…赤めーりん達だけが取り残されて。

 それからも永遠ではないかと思える程の間、泣き続けた。

 どうして、両親は居なくなってしまったのか?
 どうして、自分達がこんな目に遭わなければいけないのか?
 どうして、自分達だけ助かったのか?

 泣いて泣いて、泣き尽くせども、その答えは一陣の風に運ばれ、虚空へと消え去る。


                                                               ~続く~


以上、ひもなしでした。
愛でスレにてアドバイスを頂き、深く感謝申し上げます。
相変わらず拙い文章ですが…ここまで読んで頂きとても嬉しいです。

  •  お疲れ様です -- 名無しさん (2008-10-26 21:48:24)
  • ↑間違えた…… 毎回楽しませてもらっております。中々重い話に、ちと筋違いですが何気に人情家の隊長辺りはもう出ないのかな?このwiki的には(笑)悪ゆっくりでもどこかでゆっくりしてもらいたい… -- 名無しさん (2008-10-26 21:50:29)
  • 実は私も書いてるウチにみょん隊長を一回の登場で終わらしてしまうには勿体ない気がしてきまして
    詳しくは伏せておきますがこのシリーズが終わったらおまけの短編で出番を作ろうかなあと考えております -- ひもなし (2008-10-27 13:24:42)
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最終更新:2008年10月27日 13:24