ゆっくりの愚痴
―――夜―――ここに一軒のおでん屋がある。
経営者の名は頑固 一徹(がんこ いってつ)。おでん屋一筋30年。今年48歳を迎える。
20歳の時に妻と結婚。しかし、その7年後離婚。娘と息子が一人ずつ居たが妻に引き取られた。
そんな幸薄い一徹であったが、おでんの味だけにはヤ○ルト一杯程の誇りを持っている。
だが、このおでん屋の客は普通とは違う。…何が違うって?そりゃあなた。ここにはゆっくりが来るのだ。
おやおや。早くも今日の一番客が来たようだ。
一匹のこれまた幸薄そうなれいむがトボトボとおでん屋へと向かって来る。
着いてふてくされたようにどっしりと座り
「おやじー!さけ!!」
とこれまたムスッとした声で注文する。
「へいへい!…ってれいむの奥さん。また来たんかい。」
このれいむ、どうやら常連らしい。
「あたりまえだよ!おやじ、れいむはもうがまんできないよ!!まりさとはゆっくりりこんするよ!」
さっそく愚痴に入る。またかと言わんばかりに一徹は溜息を吐く。
「奥さん、愚痴るんもいいが、もうすぐ普通におでん食いに来る客もおるんよ。あーんまグダグタ垂れんといてーな。」
だが、そんなの関係ねえ!とれいむは一喝する。
「うるさいよ!!れいむはきゃくなんだよ!もうがまんのげんかいなの!」
ぷくうと膨らみ威嚇もしてくる。
「………はぁ………で、どうしたん?また浮気されんたんかいな?」
れいむは図星だったのだろうか。下を俯く。だが、徐々に怒りがこみ上げてくるように震えている。
「…そうなの…まりさったら…おちびちゃんたちが5にんもいるのに、またうわきしたのよ!!」
怒り心頭と形容するのがぴったりであろう。
「で、浮気相手は例のありすかいな?」
「…ちがうよ…こんどは…ぱちゅりーだよ…」
呆れたことに、まりさには二人の愛人がいるらしい。
「うわきげんばをみてやろうとおもって、まりさのあとをつけてみたら…ぱちゅりーのいえにはいっていって…すっきりー!!、までしたのよ!!」
キーキーと喚き散らした後、ゆ…ゆ…と嗚咽を漏らし、れいむが泣き始める。なんとも忙しい。
「『びょうきっこもかわいいぜ!れいむよりすきだぜ!』とかいうのよ…もう、れいむとはなんしゅうかんもすっきりーれすなのに!!!ぷん、ぷん!!」
泣きながらも怒り狂うれいむ。もう感情がぐちゃぐちゃになってしまっているのだろう。
「まぁ…まりさも若くてやりてえさかりやんね。奥さんの辛い気持ちは良く分かるんやけど、もうちょっと落ち着いたらどうや?」
れいむは一徹を睨むと鋭く言い返す。
「おやじになにがわかるの!?ばかなの!?おやじはゆっくりだまってきいててね!」
やれやれと肩を竦める一徹。こうなってしまってはこのれいむは酔い潰れるまで延々と愚痴を吐き続けるのだ。一徹の気苦労も当然と言える。
「だいたいまりさやおやじはねゆっくりごころってものがたりないのよ!ぷん、ぷん!」
ゆっくり心を説かれても人間である一徹には何のありがたみもないのだが。と、心中で嘆息して聞き流していると本日二人目の客が来た。
「えーと。だいこんとがんもください。」
「へーい。」
しめたという表情でれいむから離れ、客に大根とがんもを出す。
その客はちぇんだった。まだ子どもらしく生体と言うには小さかった。言葉遣いもこの場に合わない程丁寧である。
しかし、表情はどこか暗く、溜息をついている。
「お客さん、まだ若いんね。そんな早くからこんなところおったら、あのれいむみてえになっちまうよ。」
「ゆ!わからないよー。べつにちぇんのかってだよー。」
そう言い返す声もどこか影がある。思い悩んでるのは明確だった。
「…話してみんね。俺で良かったら聞いいてやらあ。」
ちぇんはその言葉に話すかどうか悩んでいたが、やはり愚痴を零したくてここに来ているのだ。徐に口を開く。
「おやじー。わからないよー…」
少しの間を置いて続ける。
「らんしゃまが…らんしゃまが…ぜんぜんゆっくりさせてくれなくて、わからないよー…」
一徹はふと疑問に思った。はて、らん種はちぇん種をとても大切に育てると聞いたが。
「ゆっくりさせてくれへんって…いじめられてるんかいな?」
だが、ちぇんは頭を横に振って否定する。
「ちがうよー。」
「んー…わかんねえ。じゃあ、どうしたんね?」
ますます不解である。
「らんしゃまは、さいきん、おそとはあぶないからってそとにだしてくれないんだよー。それに、もうちぇんはあかちゃんじゃないのに、くちうつしでたべものをたべさせたり、べったりくっついてくるんだよー。」
ははーん。成る程。
親馬鹿で過保護過ぎるっていう寸法か。だが、一徹は親父から鉄拳教育を受けてきた為、
ちぇんの境遇はちょっぴりうらやましく思った。
「もっとちぇんはじゆうにゆっくりさせてほしいのに、わからないよー。」
「らんもお客さんが可愛くてしゃーないから、そうしてるんよ。うらやましいこって。」
少し皮肉っぽく言うがちぇんには通じない。
「わからないよー。おともだちのちるのやるーみあ、だいちゃんとあそぶほうがたのしいよー。」
まぁ、好奇心の強い子供を縛りつけるっていうのも問題か。と思っていると先ほどのれいむがちぇんに話掛けていた。
「ちぇん!そのおやじはぜんぜんだめだよ!こっちきて、れいむにゆっくりはなしてごらんなさい!」
「れいむううううううううううう!!!」
「ちええええええええええええん!!!」
二人で大いに盛り上がっている。馬鹿にされたが所詮は酔っ払いの戯言に過ぎない。これでいいのだ。
そう思っていると次なる客がやってきた。
「おやじー!はんぺんとこんにゃくー!」
「こっちにはたまごとちくわー!」
「へい!」
次の客は二人組みだった。だが…一徹がまだ見ぬゆっくりだ。当然、二人の名前が気になる。思い切って名前を聞くことにした。
「失礼ですんが、おめぇら、名前、何ってんだ?」
その言葉を聞いて二人は俯く。やはり失言だったかと後悔した一徹であったが、言葉が返ってくる。
「おやじ!わたしたちのなまえ、なんだとおもう?」
…いきなり名前を聞かれるとは。というか、占い師でもないのに初対面の相手の名前なぞ分かるはずも無い。
だが、黙るのも失礼だと思った一徹はわざと適当にボケて場を和ませようと思った。…が、この判断がまずかった。
「んー。そうやね…俺はまだ見たことないんよ…ああ。見知らないキャラはオリジナルキャラって言うらしいんね。略して、オリキャラってのはどうね?」
二人の目にじわっと涙が溜まる。そして、すぐに怒りが爆発した。
「なによ!おやじまでおりきゃら、おりきゃらって!じみだってばかにしてるの!!??」
「けっ!!死ね!氏ねじゃなくてゆっくり死ね!すきでこんなきゃらやってるんじゃねえよ!!!」
うわあ…失言だったか…と思う一徹だったが時すでに遅し。オリキャラと言われた二人の怒りは沸点に到達する勢いだった。
が、急に怒りは萎み、泣き崩れた。
「ゆーーー!ゆーーー!みんなでよってたかって、おりきゃら、おりきゃらって…!」
「ゆーーー!ゆーーー!もうすぐふゆがくるのに…ねっとですれをのぞいても、みんなにむしされて!」
「かまってもらえなくてもひっしにROMりつづけて…ようやくわたしたちのSSができたとおもったのに…そこでもおりきゃら、おりきゃらって…」
…一徹には良く分からなかったがとても辛く、誠に遺憾なことらしい。
「くうきなの!?わたしたちはくうきしまいなの!?あのときのみんなのしゃざいはうそだったの?」
「もっとたいどでしめしなさいよ!!!」
と、泣き叫ぶ二人。こうなってしまえば腫れ物だ。迂闊に触れない方が良い。そう思った一徹に反対側にいるれいむとちぇんが呼びかける。
「おやじ!ちょっといい!?」
「何ね?勘定かいね?」
「ちがうよ!!―――あのふたりにこれを…」
さらにさらに泣き続ける二人。憐れな二人組みだ。このまま夜を明かしてしまうのかもしれない。
すると一徹が二人の前に酒瓶を置いた。二人は頼んだ覚えのない物に戸惑う。
「おやじー!こんなのたのんでないわよ!どうじょうのつもり!?」
一徹はちらっとれいむとちぇんの方を向く。
「金は要らんね。あの二人の奢りだと。」
二人の目にまたじわっ涙が溜まる。と、ここでれいむがニコッと微笑んで決定的な言葉を二人に贈る。
「そのむしされる気持ち、れいむはすっごくわかるよ!こんやはこの4にんでのみあかそう!ね、しずはさんに、みのりこさん!」
ダムが決壊したように涙が溢れ出る。そして、二人は『ゆわーん!ゆわーん』と叫びながられいむとちぇんの下へと行く。
「…今日も長くなりなりそうだな…」
クセなのか再び肩を竦める一徹であった。
そんな一徹を背の気苦労を背に4匹の夜は更けてゆく。…今夜は朧月だ。
~続き…ません~
以上、ひもなしでした。
ゆっくり達も辛い日々を送っているかもしれないそう思い作成しました。
秋ももうすぐ終わってしまいます。秋姉妹もかまってあげてください。
- ・・・・苦労しなすってまさぁねぇ・・・。いやいや・ゆっくりしていらぁ、晴れの日もいずれありまさぁ・・。・・ゆっくりしましょうや・・。 -- ゆっけの人 (2008-10-27 21:50:47)
- あのー・・・ 後半の二人は誰ですか? ああなんだオリキャラか -- 名無しさん (2008-10-31 10:16:38)
- オリキャラって言ってやるなよ・・・ -- 名無しさん (2009-03-22 01:13:28)
- ゆっくり達もいろいろ大変なんですね。 -- 名無しさん (2010-05-03 19:27:28)
- オリキャラじゃねーし!風神録の先陣を切ってるし!守矢の2柱よりも出会う頻度は高いんだぞ! -- 名無しさん (2010-12-02 04:57:44)
最終更新:2010年12月02日 04:57