きずな⑤~過去~後半

きずな⑤~過去~後半
※直接な虐待・虐殺を直接描写するシーンはありませんが暗に示す描写が含まれます。ご注意ください。
 また、赤めーりんの言葉が読み取り難い箇所が多々あります。


 現実的な話になるが4匹の赤めーりんが自然界の中で生き抜くことは出来るのだろうか?それは果てしなく厳しく思える。
 その理由の一つに、体の小ささと経験不足が挙げられる。
 彼女達は生まれてまだ2週間程しか経っておらず、体長も10cmあるかないか程である。
 加えて、今まで両親の世話で生活が成り立ってきた。当然狩など出来るはずもない。
 もう一つの理由は…寧ろ、これこそが重要なのかもしれないが、言葉を操ることができないろいう事実だ。
 めーりん種は言葉を解すことはできても話すことができない。
 どんな生物社会にも、自分達よりも劣っていたり、異なる特徴を持つ者は排斥される。(言葉を話せないからといって=頭が悪いという訳ではないのだが)
 それはゆっくり達の社会においても同様だ。大抵の場合しゃべれない者=ゆっくりできない者としてはじかれてしまうのだ。(一部、それを受け入れるゆっくりも居るであろうが)
 この障害により他のゆっくりに頼ることは不可能となってしまう。つまり、あくまで自分達の力のみで生き抜かなければならないのだ。

 さて、そろそろ4匹も泣き疲れ、涙も枯れてきたことだ。
 ここで長女めーりんが覚悟を決めたように妹達に話しかける。

「JAOO…JAOOOOOO、JAOOO、JAOOO…JAOOOOOO…JAOOO、JAOOOOOOOO!」
(きっと…めーりんたちがちんだら、おとーしゃんも、おかーしゃんもかなちむよ…ゆっくり、みんなでちからをあちぇていきようね!)
 両親は自身の身を挺して私達を救った。 その姿から「家族は大切にしなければならない。守らなければならない。」
 そういうメッセージが長女には伝わっていた。だから…ここは姉である自分がしっかりしないといけないと思ったのだろう。
 今まで泣くだけだった妹達もその姉の言葉に涙を拭い口々に言う

「JAOO…JAOOOO、JAOOOOOOO、JAOOOOOOOO!)(そうだね…かなちいけど、おとーしゃんとおかーしゃんのぶんもいきゅるよ!)
「JAOOOOOOOO、JAOOOOOOOO!」(ちからをあわちぇたら、きっとゆっきゅりできるよ!)
「JAO、JAOOOO!」(よち、ぎゃんばりょーね!)
「JAOOOO!」(ぎゃんばりょーね!)

 いつまでもくよくよしてはいられない。襲い掛かった不幸に対して苦しいと泣き叫ぶだけでは何も解決しないのだから。

 と、誰からかお腹が盛大に鳴る。もう、起きてから半日程となる。一食抜かしても平気だろうが食べ盛りな4匹にとって空腹は耐えがたいことだった。
 長女めーりんが妹達に提案する。
「JAOOO…JAOO、JAOOOOOO、JAOOOOO!」(おにゃかしゅいちゃね…おはなしゃんや、きのみをあちゅめて、みんなでたべよ!)
「「「JAOOOOO!」」」(ゆっきゅりりかいちちゃよ!)
 半日泣きっぱなしでは空腹感もひどかったらしい。とりあえず、近くの植物や食べられそうな物を集めることにした。

 30分程探す。まだ寒さの残る3月の半ばということもあって中々生命の実りはなかったが、幸いにも数本のたんぽぽを発見することに成功した。
「JAOOOOOO!!」(にゃんとかみちゅかっちゃね!)
「JAOOOOOO!!」(みんにゃでわけちぇたべようね!)

 4匹は均等にたんぽぽを分ける。その量はさほど多くはなかったが初めて自分達の力で獲得した食べ物なのだ。そこには満足感と達成感があった。
 と、1匹の赤めーりんが呟く。
「JAOOOOOOOOOO…JAOOO、JAOOOOOOOO・・・JAOOOOOOOO・・・」
(ちゃべもにょをみちゅけるにょはちゃいへんにゃんだにぇ…おとーしゃん、まいにちあんにゃにいっぱい取ってきちぇ…しゅごいことだったんだにぇ…)
「JAOOOO・・・」(おとーしゃん・・・)
 また一匹がボツリと漏らす。しんみりとした空気が流れるが、長女めーりんが妹達を励ます。
「JAO、JAOOOOOO!、JAOOOOOOO、JAOOOO、JAOOOO、JAOOOOOOO!!」
(みんな、かにゃしんぢぇるひまはにゃいよ!めーりんたちががんばっちぇいきにゃいと、おとーしゃんも、おかーしゃんもきゃにゃしむよ!!)

 その言葉に同調するように、次々に元気良く3匹が続く。
「JAOO!JAOOOOOO、JAOOOOOOOOOOO!!」(しょうだねぇ!おにゃかもいっぱいだち、こんどはゆきゅりできりゅとこりょをちゃがちょう!)
「JAOOO!JAOOOOO!」(よーち、みんにゃでちゃがちょう!)
「JAOOOO!」(ぎゃんばりょー!)

 今度は、眠り、休息を取る為のゆっくりプレイスを求めて4匹は歩き出す。
 木の下や、穴をいくつか見つけるが、既に他のゆっくり達の巣となっており中々、空いている場所が見つからなかった。
 途方に暮れ、野宿も考え始めていると、小さな洞窟を発見した。

「JAO、JAOO!JAOOOOO!!(みんな、みちぇ!!あしょこにどーくちゅがあるよ!)
「JAOOO!JAOOOOOOOOOOO!」(ほんちょだ!みんにゃではいっちぇみよぉ!)
 入り口は非常に小さいものの、中は意外に広かった。他のゆっくりが住んでいる形跡もない。ひとまずここでゆっくりすることにした。

「JAOOO…JAOOOOO、JAOOO…」(ちゅかれちゃね…ほきゃにだれもいないち、きょきょでねぇよっか…)
 赤めーりん達は巣を探して2時間程彷徨っていてくたくただった。その意見に同意する。
「JAOO…」(ちゃんちぇい…)
「JAOOOO…」(めーりん、ちゅかれちゃよ…)
「JAOOOOOO…」(ゆっきゅりねぇようにぇ…)
 4匹はお互いに寄り添うようにして深い眠りへと堕ちていった。

―――翌朝―――

「JAOOOOO!」(ゆっきゅりちていっちぇね!)
 長女の朝の挨拶により、妹達も目が覚める。
「「JAOOOOO!」」(ゆっきゅりちていっちぇね!)
 だが、末っ子めーりんが中々起きようとしない。次女めーりんがめーりんに軽く体当たりして起こそうとする。
「JAOO、JAOOO!」(めーりん、おきちぇね!)
 末っ子めーりんはその衝撃でようやく目が覚める。
「JAO・・・JAO…OOO…」(ゆ…ゆっきゅり…ちてぃっちぇ…)
 目は開いたが再び寝入りそうな程うとうとしていた。

「JAO…JAOOOOOOO…JAOOOOOOOJAOOOOOOO!)(もう…めーりんっちゃら…みんなでちゃべもにょちゃがちににいきゅよ!)
 三女めーりんが無理矢理末っ子めーりんを引っ張ろうとするが長女めーりんがそれを止める
「JAOOOOOOOOOOO!JAOOOOOOOOOOOO!」(めーりんはまだねぇみゅいんだょ!いもーちょはたいちぇちにちないちょだぁめだょ!)
 次女もそれに続く。
「JAOO。JAOO、JAOOOOOOOOOOOO、JAOOOOOOOOOOOO、JAOOOOOOOO。」
(そうだね。それぇに、ちきゃきゅにょおはにゃしゃんと、きにょみしゃんをひりょうだけぢゃから、3にんでじゅうびゅんだょ。)
「JAOOO…JAO、JAOOOOOOOOOOOOO!」(ゆっきゅりりかいちちゃよ…じゃあ、めーりんはゆっきゅりまっちちぇねぇ!)

 姉達の心優しい言葉に末っ子めーりんはうとうとしながらも返答する。
「JAOOO…JAOOO、JAOOOOOO…」(ありがちょう…おねえちゃん、ぎゃんばっちぇねぇ…)
 そして、再び眠りについてしまった。

「JAO、JAOOOOOOOOOOOO!」(しゃあ、いもーちょのびゅんまでぎゃんばりょうね!)
 姉3匹は末っ子めーりんを残して狩に出かけた。
 …この選択肢が正しかったのか否かは…この段階ではまだ判らなかった。

 妹の分の食料も獲ろうと意気込み、外へ出て行く3匹の姉めーりん達。
 洞窟の外ではうーうーという呻きが聞こえてきたのは空耳なのか…それとも…


「JAOO…」
 末っ子めーりんが目を覚ました。惚けた顔で大きな欠伸をした後、しばらくの間ぼけーとする。
 意識が徐にはっきりとしてきたので周りを見回す。…が、姉達の姿はどこにもない。とても不安になり、泣き叫んだ。
「JAOOOOO!JAOOOOOOO!?JAOOOOOOOO!!」
(おねぇーちゃん!どきょいっちゃにょー!?へんじちてぇにぇー!!)
 だが、叫びは虚空へと響き、無機質に跳ね返ってくるだけだった。めーりんは不安と焦りからか、今にも泣きそうな顔を作る。が、ここで思い出した。
(・・・あ、ちょっか!おねぇーちゃんちゃち、ちゃべもにょしゃがしにいっちゃんだっけ…)

 そう、姉達は一時的に居ないだけ…そう思うと先刻の不安は一気に消え失せた。
 一人は少し寂しいものの、姉達の帰りをゆっくり待つことにした。


 おかしい。絶対におかしい。もう、2時間分…いや、めーりんが一度寝始めてから換算すると3時間程経つ。
 めーりんは一人でずっと待っていた。歌を歌ったり、飛び跳ねたりして寂しさを紛らわしながら。
 なのに、一向に帰ってくる気配がなかった。

 始めのうちは、たくさん食べ物を獲っているから遅くなっている。きっとなかなか見つからなくて苦労しているのだろう。と、無理矢理納得させてはいたが…
 いくら何でも遅すぎる。再び不安が襲い掛かってくる。それに、めーりんの空腹は限界に達していた。
 とりあえず、空腹を満たさなければ…外には花の1本や2本ぐらいあるだろう。そう思い、めーりんは外に出ることにした。

 外に出て、何か食べ物はないかと捜し求めていると、地面に不審な”何か”があった。それは…とても、薄っぺらかった。同じ様な物が3つ程落ちている。
「JAOOO…?」(にゃんだりょう…?)

 疑問と警戒を持ちつつ”何か”触れてみる。少しもちっとしていた。そして、恐る恐る一口齧ってみる。
「JAO…JAO…」
 ゆっくりと咀嚼してみた。決して不味くはない。どうやら食べられそうだと判断しためーりんは、”何か”を食していく。
 1つ丸々食べ終える。まだ2つ残っていたものの、空腹は十分に満たされた為、それ以上は口にしなかった。
 と、”何か”の近く緑色の物体が3つ落ちていることに気付いた。
「JAO?JAOOOOOOOO?」(ん?まちゃなにきゃおちちぇるよ?)
 それは…良く見ると…被る物のようで…星のマークがあった。

 あれ…?
       あれ…?
             あれ…?
                   あれ…?

 これ…どこきゃでみちゃこちょあるよ…?

 と、突然風が吹き、めーりんの帽子をさらってゆく。

「JAO!!JAOOO、JA…」(まっちぇ!!めーりんの、ぼ…)

 あれ…?
       あれ…?
             あれ…?
                   あれ…?

 いまみちゃにょ、めーりんのぼうししゃん…しゅごきゅにちぇるよ…にゃんで…3ちゅもあるにょ…?

 めーりんは、帽子を拾うと、”何か”に、ゆっくり、近づいて、恐る恐る、口に咥え、ひっくり返す。

 そこで、めーりんに衝撃が走った。

 …裏返したものには…顔があった。すごく苦しそうで、悲痛な顔があった。…それは、その顔は…

 あれ…?
       あれ…?
             あれ…?
                   あれ…?

 こにょきゃお…おねぇーちゃんにょかおとちょっきゅりだよ…?

 ―――次ノ瞬間、メーリンノ中デ何カガ切レタ―――

「JAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!」

 激しく咆哮すると、その場を一目散に逃げ出した。
 …めーりんは、全てを知ってしまったのだ…”何か”の正体は、姉だったということを
 姉は死に、自分は姉を ―――タ ベ テ シ マ ッ タ――― ということを

 うそだ!うそだ!!うそだ!!!うそだ!!!!うそだ!!!!!うそだ!!!!!!うそだ!!!!!!!うそだ!!!!!!!!うそだ!!!!!!!!!

 そう、何度も否定しても…何度も忘れようとしても…鮮明に頭に刻まれてしまう。

 ―――わたしは姉を食べてしまった―――
 ―――わたしは一人ぼっちになってしまった―――

 両親を失い、枯れてしまった涙も再び溢れてくる。もう…死にたかった。もう…ゆっくりなんて出来なかった…
 めーりんは希う

 おかーしゃん、おとーしゃん、おねーちゃん…ごめ゛ん゛な゛じゃ゛い゛。めーりんはわるいきょでちゅ。
 あにょとき、ちゃんとおきちぇいれば…いっちょにちょとにいっちぇいれば…おねーちゃんちゃちはたしゅかっちゃきゃもちれない…
 めーりんを、いましゅぐころちちぇくだしゃい…
 ごめ゛ん゛な゛じゃ゛い゛ごめ゛ん゛な゛じゃ゛い゛ごめ゛ん゛な゛じゃ゛い゛ごめ゛ん゛な゛じゃ゛い゛ごめ゛ん゛な゛じゃ゛い゛ごめ゛ん゛な゛じゃ゛い゛…



「JOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
 突然、めーりんが吼える。辺りは真っ暗だ。はっとなり、周囲を見渡す。
 ここは…小屋…そうだ、進むのお父さんが作ってくれた。

 そう、めーりんは…過去に自分に降りかかった出来事を夢見ていたのだ。
 夢だと理解したかどうかは分からない…が、まだ幼いめーりんには耐え難い程悲しく、辛い。…涙を流すしか逃れる術はなかった。

「JAOOOOOOOOO!!JAOOOOOOO!!」
 悲しい咆哮を上げ、泣き叫ぶ。壊れたラジオのように…

「…めーりん?…どうしたの?…」
 と、めーりんの泣き声に進が目を覚まし、小屋の戸を開け、めーりんに話しかける
「JAOOOOOOOO!!JAOOOOOOOO!!」
「怖い夢でも見たのかな…?こっちにおいで。一緒に寝よっか。」
 優しい声で話しかける。と、すぐにめーりんが進の方に寄り、胸に飛び込んだ。
 その衝撃に進はよろけるが、しっかりとめーりんを受け止める。

「よしよし…怖かったね…でも、もう大丈夫だよ。」
「JAOOO…!!JAOOO…!」
 少しずつ泣き叫ぶ声が弱弱しくなってゆく。進は、めーりんを安心させようと優しい言葉を掛け続ける。
 が、めーりんのこの重い過去等知らない進には、その辛さを和らげ、共に背負うことはこの時点では叶わなかったのだった。

                        ~続く~

 以上、ひもなしでした。愛でスレにてアドバイスを下さった方々、ありがとうございます。
 気が弱い性分なので偉そうなことは言えませんが…私の作品を読んでいただけるだけで大変嬉しいです。
今回は幾つか補足を入れておきます。
1.めーりんの姉達は捕食種・れみりゃの集団に襲われ、中身を吸い取られてしまいました。
2.この後、めーりんは生きているという意味が分からなくなり、さ迷い歩きました。気がついたら人の住む町にまで降りてきました。そして、この後、一話にでてきた5匹から攻撃を喰らい、進と出会う…といった時間系列です。

  • 姉めーりんのデスマスクを想像しちゃったよ・・・(泣 -- 名無しさん (2011-08-27 18:43:38)
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最終更新:2011年08月27日 18:43