静緩飛行

静緩飛行

とある夜。
ゆっくりもみじがベランダでゆっくりとしていた。
飼い主のお兄さんに「おつきみしたい!!!」と懇願したからなのだが、
生憎今日は曇り空で月は見えなかった。

ゆっくりお願いした結果がこれだよ!!!

しかし、少し肌寒いくらいの風が、もふもふした耳にあたるのは意外に心地よく、
もみじは結構満足していた。
「ゆーっくりしてるよ……。」
もみじが半ば垂れ状態になっていると、
「おお、もみじもみじ。」
独特の声がした。
「……ゆ?」
もみじが声のする方を見上げると、そこにはきめぇ丸がいた。
見えないなにかに腰掛けるようなその態勢のまま、もみじを見下ろしている。
「こんばんは!!きめぇまるさん!!ゆっくりしていってね!!!」
もみじが挨拶をすると、きめぇ丸は扇で口元を隠した。
「おお、めごいめごい。」
きめぇ丸はそう言うと、ベランダの手摺に腰掛けた。
「きょうはどうしたの?」
もみじが尋ねるときめぇ丸は空を見上げた。
「おお、つきみつきみ。」
「おつきみ?もみじもおつきみしてたよ!!……でも、おつきさまはくもにかくれんぼしちゃったよ……。」
「おお、ざんねんざんねん。」
きめぇ丸はそう言うと、もみじの側に降り立った。そして。
「ゆ?」
もみじを持ち上げた。
「き、きめぇまるさん、ゆっくりおろしてね!!!」
だが、もみじがそう言うのも聞かず、きめぇ丸はもみじを抱えて空へ飛び上がった。
「ゆー!!!」
「おお、もふもふ、もふもふ。」
きめぇ丸はもみじの耳に頬擦りしながら、夜空をゆっくりゆったりと旋回していく。
最初は怖がっていたもみじだが、次第になれてくると、
「わぁい、おそらをとんでるみたい……じゃなくてとんでるー!!!」
とはしゃいでいた。
時間にして僅か数分だろうか。しかし、それとは裏腹に充分ゆっくりしたニ匹は、
ゆっくりとベランダに戻ってきた。
「ゆ!楽しかったよ!!きめぇまるさん!!」
「おお、さいわいさいわい。」
きめぇ丸はそう言うと、懐から何かを取り出した。
それは真っ赤な紅葉だった。
「ゆ!きめぇまるさん、これくれるの?」
「おお、じょうとじょうと。」
きめぇ丸はそう言って、カンザシのように、もみじの髪にそれを差した。
「ありがとー!!!」
きめぇ丸は嬉しげに目を細めて、夜空へと帰っていった。


「もみじー。そろそろ寝る時間だぞー。」
「ゆ!おにいさん!!」
もみじはお兄さんの元へと跳ねて行った。
「ゆっくりねようね!!!」
「おう。……ん?どうした、それ?」
髪飾りの紅葉を見つけたお兄さんが尋ねたが、もみじはにやり、として
「ゆゆゆ、ひみつだよ!!!」
とだけ言った。



一方その頃、ゆっくりのいる森では、
「ゆ!みのりこ、しずはのかみかざりしらない?」
「ゆ?しらないわおねえさま。」
「……けっ。しゃあんめえ、どっかからひろってくっか。
みのりこー、あっちたのむわ。」
「あたいもてつだうんかい……。」

「おお、おりきゃらおりきゃら。」
おりきゃらを眺めながら、ニヨニヨするきめぇ丸がいた。


――
ゆっくり怪談の人





  • きめぇ丸もやっぱええのぅ -- 名無しさん (2008-11-20 01:27:12)
  • もみじがもっとSSに出たらいいなーと思う程可愛いです! -- 名無しさん (2008-11-29 21:18:23)
  • ものすげぇ、めんこいです。 -- 名無しさん (2009-04-07 15:14:06)
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最終更新:2009年04月07日 15:14