ちるのは存外早く引き取られていった。
都内でも硬派な教育方針の有名な施設だったが、正直耐え切れるのかという不安すらあった。
それでも、こんな所にいるよりはましなはずだ。
去り行くちるのの背中を涙ぐんで眺めていると、先輩が虚ろな表情で問う
「読んだ?」
「何を」
「あの本」
我慢しながら読もうとかと思ったが、休憩時間にあっさり途中まで読んでしまった。最も、後
半は完全に猟奇趣味が過ぎた殺ゆっくりの実践とその時の倒錯した感情をのべつまくなしに書き
連ねているだけだったので、流石にすんなりとは読めなかった。
それでも――――共感できてしまったことを、彼は大いに恥じた。
共通点が多すぎる。
高い志と誇りを持って就いた幼ゆっくりへの教育職。のしかかる現実。無理解すぎる周囲の人間。
悪すぎる職場の環境。そしてその見た目の愛らしさに相反するような、ゆっくり達の我侭さ。
「いや、アメ公だろうが日本人だろうが、考えることは同じだよなあ」
「じゃあ、何です?先輩もあの作者と同じ様に、赤ちゃん達に殺意を覚えるって言うんですか?」
「俺はお前や奴ほど真面目じゃねえんだよ」
欠伸を堪えながら、玄関へ戻っていく。
中では、数人の泣き声が聞こえる。
出るなと言ったのに、何人かがぴょこぴょことこちらへ向かってきていた。
「ちるのちゃん、どうちたの?」
「何でもないよ」
「ちらにゃいおばちゃんたちだったにぇ」
何だかんだ言って、家にいるより施設に泊まっていることが多い子だったから、皆に顔を知られ、
友達が多かった。
知らない――――恐らく、相当ゆっくりできない場所に連れて行かれたのだと知ったら、この子達
はどう思うだろう。
「ねえ、どうしたの?どうしたの?」
「何でもないったら」
「おちえてー。ちるのちゃんどこいくの?」
「何でも無いって言ってるだろ」
あの本の作者の言葉が頭の中で反芻される。
――――ゆっくり達の聞き訳の無さ。
「おいい、手伝ってくれや」
「はいはい」
「おにいちゃん、おかちまだ?」
「さっきおやつ食べたよねえ?だから、お母さんが帰ってくるまで、お菓子はだめだよー?」
「ゆっくりできないよ!おかしおかし!!!」
「おかし?おかしおかし!!!」
「「「おかしー!!」」」
先程のおやつにそこそこ満足したはずの子さえ、何人かが菓子をせがむのを聞きつけ、半分は
興味本位に、同時にせがみ始める。
またしてもあの本がちらつく
<―――私は、頑として甘やかす事の無い様、こうした催促を無視し続けた。それにしても浅ましい
のが、最初にねだり始める子どもは、「もっと頂戴」ではなく、「まだ持って来ないの?」と要求
することだった>
無言で、マシュマロの袋を一段高い戸棚に閉まった。
足首に、何人かがころころと転がってきて体当たりを始める。勿論痛くは無いが………
<こちらが恵んでやったものに対して、感謝をする事はまず無く、それを当然とするか、更にそれ以上
の欲望の充足をはかるのだ。
彼等の煩悩は、尽きる事を知らない>
手が震える
「何やってるの?ゆっくりしてないで、早くもっと頂戴ね?」
「ちょうだいちょうだい!!」
やや乱暴に戸棚を閉めて音をたてたが、それに気付きもしない。
「ゆっ!?何してるの?」
「どおじでしまっちゃうのおおおおおおお?」
足元の子ども達を意識的に無視して踵を返すと、自然にぶつかり、ごろごろと転がっていった。
「ゆううううううううううううう!!!」
「あ、ごめん…………ごめんなさい…」
そこで、意識が戻った。現実に引き戻されたといっていい。
直ぐにぶつけた箇所を愛撫し始めたが、当分泣き止みそうに無いし、お菓子をくれないどころか、攻撃
を加えさえした相手に、憎悪の眼差しを向けている。
何だ、その目は。
「お前、帰れもう」
先輩が生暖かい手で肩を掴む。
「まだ少し時間あるけど、適当にやっとくから」
「いや、でも」
先輩は多少、興味本位と嫌がらせで殺ゆっくり鬼の書いた本を貸した事を、後悔している様だった。と、いう
か彼をその作者と同一視し始めたか。
「明日は夜勤からだろ?早目に帰って寝ろよ」
「………………」
「それにしても、本当にこいつら救いようがねえよな」
赤ちゃん達を眺め、はき捨てるように呟く先輩。
三日ぶりの帰還だったが、程よい疲れも、達成感も無かった。ただイライラだけが募る。
帰りの電車には殆ど人がいなかった。
うつらうつらと眠りかけていると、途中でけたたましい笑い声で目を覚まされた。
ゆっくりの集団が乗っている。
年齢は、保護者であろうゆっくりえーりんを初めとして、赤ん坊からそこそこいい歳のものまで、かなりの人数である。
節操の無い、無駄に高いテンションと言葉から、アメリカ辺りの旅行者だろう。
それも、どうせネバダ州やノースダコタ州やオクラホマ州といった田舎から来た連中に違いない。
事もあろうに、他に乗客がいないのを一応見計らってか、プリングルスを開け始めた。
体のあるえーりんが、一人一人に分けていく。
それも、一枚一枚ではなく、一人あたり4枚ほどまとめてである。
ゆっくり達は、それを器用に頬張り―――――「むーしゃむーしゃ」も言わず、バリボリと食べかす一つ残さず飲み込
んでいる。
その中途半端な行儀のよさに、更に腹が立った。
「ちくしょう…………」
むしゃむしゃと本当に幸せそうにチップを頬張る子ども達を見て、嫉妬を覚えずにはいられない。
「俺だって……………」
躾だの、栄養バランスだの、贅沢を覚えさせてはいけないだの、小うるさい目先の決まりさえなければ、取り合いのケンカ
も起きないほど沢山の食事を、満腹になるまで食べさせてあげたいのだ。
それこそ、「格子」を使うなんて発想自体起きないほどに。
そして、「むーしゃ みーしゃ しあわせー!!」を聞きたいのだ。
ストレスが解消されることも無く、家に着き泥のように眠ると、夢を見た。
施設の赤ちゃん達が、自分の家に入りこんでくる夢だ。
あの本には、(作者の自宅が森の近くである事と、まだ素行の悪い野良が多くいたことから、ありがちな被害にあった事がたく
さん書かれていたのだった)。赤ちゃん達は、悪さはしなくとも夢の中で、皆大声で泣き始めていた。
目が覚めると、当然気分が悪い。
すっきりしないまま出社すると――――先輩がいなくなっていた。
彼も疲れが溜まりすぎていたのだ。途中で卒倒したという。他の職員は揃っていたが、雑用はしてくれるけれど、肝心の赤ちゃ
ん達の相手はするつもりがあまり無いらしい。
仕方が無いので、先輩がやっていた(割かし上級者向けの)れみりゃやふらん達の散歩へと繰り出した。
「確かに―――籠からは出せないよなあ」
先輩とは違い、自由に散歩してもらおうかと考えていたが、いざ外に連れ出してみると、その勇気は中々湧かない。
それでも閉じ込めっ放しはよくなかったかと、一人ずつ外に出させてみる事に
「うわああああ!!ゆっくりできねえなこれ!!」
「うー うー !!」
開けた途端にパトパトと飛んでいくれみりゃを捕まえる事自体はそれ程困難でもなかろうが、いかんせん力ずくで捕まえると
潰してしまうのが恐ろしかった。
余程外が嬉しいのか、きゃきゃと楽しそうに気持ちよく飛んでいく赤ちゃん達をすぐに籠に入れるのは心が痛む。
そして、存外捕まえるのに時間を食う。
先輩があれほど時間をかけてしまうわけが解った。
しかし―――程なくして、籠を開けても、れみりゃ達は外へ出なくなっていった。
「どしたの?」
「こうえん、いかないの?」
「公園?」
理由も無く、泣きそうな目。
どう言う事だろうか?
「こうえん、いつも行ってたの」
「どこの公園かな?」
「わかんにゃい」
解らなければ、行き様も無いが………そうこうしている内に、朝日が差し始めた。
先輩が帰ってくるのが遅いのを、あれほど批判していたのだ。自分まで後れるわけには行かない。
「ごめんね。今度、また遊びに行こうね?」
「「「うーっ!!!」」」
問題はそれから起こった。
施設に帰り―――――朝食の用意をし始めると、れみりゃ達は騒ぎ始めた。
「ごあんまだー?」
「まだだって」
「…………………」
「………………まだ?」
声が低い。
いつもの泣き喚き方とは違い、呻くような、脅迫じみた声だった。
振り返るのも億劫になり、炊事場に向かっていると、またあの本が頭に浮かぶ
<――兎に角、品性下劣である。
――人の言う事は聞かない。何様のつもりなのか、世話をしてもらう事が当たり前だと思っている。
――暴力に訴える事は勘弁してやっても、言葉でしかりつけただけで延々と泣き始める。そこには
――被害者意識しかない。
――基本的に全て他者が悪いと思うのが連中の本能なのだろう。
――自制というものを知らない。欲だけで、相手を脅迫まがいに追い詰めて生きている
包丁を持つ手が震える。
作者は、調理中に殺意を抑えきれなくなり、火に掛けた鍋に、両手一杯の赤ちゃん達をぶちこんだのが
殺戮のきっかけだったという。
途中の快楽殺ゆっくり描写のパートは抜かしたが、最後の一文が何度も蘇る
<――ゆっくりは人の鏡である
――連中は、我々の心に眠る、「自分より劣る存在を蹂躙し、苦しめたい」という本能的な嗜虐心を
目覚めさせてくれる
――本当に虐待の為に生まれてきたような生き物だ。
――そんな悪辣な彼等を殺す事は、人間のあるべき心の開放である。
――私はそれに素直に従っただけなのだ>
本能か。
空腹や睡眠欲や時には性欲すら、隠すことなく目上の者に訴え、満たされる事を常に要求する。
それに比べて自分の今の現状といったらどうだ
「本能か……………」
外国のある少数民族では、野生のゆっくりを定期的に食用でも無しに定期的に狩る事が「儀式」と
して行われていたそうである。
今では、そうした習慣は他の形に無理やり置き換えられ(そもそも野生のゆっくり自体がいなくなっ
た)ているが、昔を知っている年寄りは、ストレスが抜けないともらしていたのを聞いた事がある
「自分達ばっかり我慢しないで………」
以前少しでも思いうかんでは振り払っていた邪念がいつまでも消えない。
―――乱暴に棚から取り皿を出して、夕飯をよそおうとした時であった。
「「ゆううううううううううううううう!!!!」」
「ひいいいっ!!」
赤ん坊と、人間の絶叫である。
いつもより少し切羽詰った声の気がしたことと、他の職員の声も混じっていたので、咄嗟に皆が眠る
部屋駆け込んでいく。
惨劇が起こっていた。
一人のれみりゃが―――比較的大きいれいむの子の頬に噛り付いている。
れいむの子に比べ、れみりゃとしては小さい方だったので、捕食されるには至っていなかったが、何回
も食いちぎったのか、破けた頬から餡子がもう露出している。
悲鳴をあげて、箱から逃げる事もできずに押し合いへし合い、パニックに陥る他の赤ちゃん達と、それ
に加わるでも、制止するでもなく呆然と見つめるしかない他のれみりゃとふらん達。
馬鹿な人間の職員は、ただ悲鳴をあげるだけだ。
「ちょ………やめなさい!やめなさい!」
とにかくれみりゃを引き剥がすと、途端に阿鼻叫喚といった様で泣き始めた
「ごあんーー!!ごあんー――――!!!!」
「何がご飯だこの糞餓鬼が!」
深い考えは無く、散歩用の籠にとりあえず閉じ込めてしまった。
「きゅ、救急車を呼びます?」
「馬鹿か!!外に知らせるな!!
保身の事だけは頭に残っているのか、職員達は、すぐ様ゆっくり用応急セットを持ち出し、食べられかけたれい
むの頬の治療を始める。
―――それから先の事は、あまり覚えていない。
何とか赤ちゃん達をおちつかせ、れいむの子に命の別状が無いことを確認し、籠に閉じ込め、泣き続けるれみりゃ
をどうしたらいいのかと思案している間、施設長がやってきた。
殴られ、閃光が走るほど怒鳴り散らされている内に、古株がやってきた。
もうそんな時間か。
感情のまま、世間体について叫びまくる施設長をなだめ、古株は彼を外に連れ出して尋ねた。
「公園には行った?」
「公園って……………?」
「引き継げなかったのね」
公園。
町外れにある児童公園で、先輩は毎晩全員をそこで籠から出していたらしい。毎日の繰り返しで、赤ちゃん達に
その敷地内だけならば、籠から外に出て、自由に遊んでもいいと教え込ませたのだそうな。
捕食種に対し―――他の種との共存は可能である。かつての野性の中でもその光景はあった。
人間との生活の場合―――ゆっくりに近い、餡子やカスタード等の極端に甘いものの味を、若い内に覚えさせない
こともさることながら、元々活発で残虐な一面のある種なので、日頃から十分に運動をして、他の種への「狩」の
必要性をなくす事が必要だった。
それは、室内での遊びだけでは少し足りない事を、先輩は気付いていたらしい。
「だからあんなに遅く………」
「あいつも、こうして一々公園まで行ってたから、『れみりゃとふらんには憎しみすら湧く』ってぼやいて
たけどね」
もう子ども達を引き取りに来た親ゆっくりや人間たちを見て、泣き出しそうになりながら彼はひとりごちた。
「全部、僕が悪いのか」
「引継ぎをしっかりしなかったここの職員が悪いよ」
この施設にとってはほぼ致命的な事件である。
怪我をしたれいむの保護者は、人間ではなくこの町ではかなり年長にあたる親ゆっくりだった。果たして、それが
いい事か悪い事か。
施設をあげて、人間ばかりが慌てふためいている中――――れみりゃの保護者が来た。
「お疲れ~♪ れみぃのあかちゃん、いいこしてる?」
実の母れみりゃと―――共同生活を営んでいるらしい、ぱっちゅりーとさくや達である。
仕事帰りだので疲れも溜まっているだろうに、ぱとぱと翼で一目散に入ってくる親れみりゃ。
人間達は、関わりあいたくなさそうに―――というか、本当の事を説明する事を逃げいていた。あの時現場にいた
という事もあって、彼が説明するより他は無い
「実はですね?」
「うー?」
最初は、理解できなかったらしい。
遠まわしに言ったのが良くなかったかと、腹を決めて、数回、「あなたの子どもが、他の子どもを食い殺しかけた」
と事実を言った。
れみりゃ特有の下膨れた頬がざわめく。いつも笑ったような目が、普通に開いている。
暫くの沈黙の後、その小さな拳が、彼の腹を抉った。
「うそつかないで!!」
「―――嘘じゃありません」
「うそうそ!! れみぃの赤ちゃん、いい子なの!!そんな事しないの!!」
「普段は確かに、いい子でした」
「約束したんだもん!!ママと、ここで遊ぶ時、いい子にしてるって!!!もうおともだちを食べちゃだめって!!!」
あまり知られていない事だが――― 一応施設に入るには、ある程度の条件がある。捕食種の子どもは、厳しい話
だが訓練を事前に受けて、他の赤ちゃんを食べない事の証明書の発行が必要となるのだ。
それは確かに万能ではないのだが―――
「うそ…………うそ……」
「おちついてください、おぜうさま!」
「むきゅー、赤ちゃんはどこにいるの?今日は帰ってこられるかしら?」
親れみりゃは泣き始めていた。
その場にへたり込み、ばたばたと見苦しく喚くあの泣き方ではなく―――さめざめと、心の呵責を振り絞るように
泣き続けた。声すら出さずに。
涙を堪え、必死にさくやとぱっちゅりーが対応してくれたが、彼は、もう何も聞こえなかった。
「とりあえずお疲れね。もうあんたはここにいるとかえってよくないわ」
「聞く事は聞いたから、帰りなさい」
呆然としながら、家に帰る。
そして、また家に赤ちゃん達が侵入してくる夢を見た。
<私の生活は、確実にゆっくり達に占領され、汚染されていった>
あの本の文章がまた浮かぶ。
置きぬけに、今度は終盤の猟奇的なパートも読破してみた。
また夜勤として出社すると、施設は穏やかなものだった。臨時で来ていた職員達は皆帰り、本日の当番と、古株だけ
が残っている。
どうやら、食われかけた子の親が、穏便に計らってくれたらしい。
自分自身も含め、今までゆっくりが捕食されかける事は経験済みらしく、れみりゃ達に対しても大きく理解を示す程
だったのだ。人間の保護者も全てこうだったら苦労はいらないのに。
しかしながら、もうあの一家はこの施設は利用できまい。
これから何処へ行かねばならないのか。
先を想像するとこちらも気が滅入る。
「ゆっくりおはよう!!!おにいちゃん」
「ああ、おはよう」
昨日と同じく、夕飯の支度をしていると、うしろから声がかかる。
「おにいちゃん、れみぃちゃんたち、どこに行ったの?」
「ん?ちょっとね……」
「ちるのちゃんも、れみいちゃんも、こなくなっちゃったよ?どおちて?」
「色々あって、遠くへ行ったんだよ」
「どおちて?」
「ちょっと、用が、あったの」
「れみぃちゃんのおばさんは?」
そういえば、親れみりゃは他の子にも人気があったことを思い出した。子どもと同じ目線とか、気が合うとかではなく、
精神年齢が大体同じくらいだったから………
「もう、会えないんだよ?」
「何でー?何でー?」
テーブルに皿を置いて、赤ちゃん達を呼ぶ。
「………………」
ある考えが浮かんで、彼は部屋の隅へあるものを取りに行く。
何かゆっくりできない道具とは察したのか、持ってきたものをみただけで、怯える子どもがいたのが面白かった。
「ゆっ?それは何?」
「使うの?それで食べるの?」
「格子」であった。
先輩は何人かをまとめて穴に入れていったが、彼は一人ずつ丁寧に入れていった。良心の呵責は、あった。
「お兄ちゃんまでそれやるのお?」
「ゆっきゅりできないよ、やめちぇね?」
「ふちうにたべたいよ!!!やめてね」
無視して、一人ずつに決まった分を上げると、嫌がっている割にはむしゃむしゃと食べ始める。
何と言う効率のよさ!
何で今までこだわって、使ってこなかったのか!?
しかし―――
誰一人、「ちあわちぇー!!!」を言わない。
一人のまりさが、食べ終わったというのに不満を上げる
「もう!!!こんな所じゃ、ゆっくりごはん食べられないよ!!!」
「――――――」
「それに、あんまりおいしくないし、足りないよ!!!おかちちょうだい!!!」
「今は、おやつの時間じゃない」
「足りないよ足りないよ!!!もっと食べたい!!!おかちおかちー!!!」
無視して、格子からつまみ出し、他の子をいれて食事を与える。
「おかち おかち!!!」
「おかち…? おかち!!!」
「「おかち!!!おかち!!!おかち!!!」」
昨日と同じである。
ただし、違ったのは……
「きこえないの?馬鹿なの?」
「―――はっ!!?」
NGワードだった。
何とか出さないように家庭でも躾をお願いしていたが、予想外だった。
「や、やめなさい!!!」
「おかちをくれない、けちなおにいちゃんは ゆっくりちね!!!」
絶対に言ってはいけない一言。
「おかち」と同じ様に、水に落としたインクのように、それは直ぐ広がった。
意味など解っていなくても、皆はそれをオウムのように真似し始めた。
「ゆっくりちね!!!」
「やめ、やめなさい」
「ゆっくりちね!!!ゆっくりちね!!!」
「やめろよう………」
木霊する。
「「「「「「ゆっくりちね!!!ゆっくりちね!!!ゆっくりちね!!!」」」」」」
―――れみりゃが他の子を襲った時より―――彼はめまいを感じた。
隠しようが無い。
人間が、もっとも嫌がるゆっくりの口癖の一つである。
保護者も、働いている大人のゆっくり達も、それを理解して何とかこの口癖を
失くそうと努力しているのだが、預けた施設で、こんな言葉を覚えて帰ってきた
とすれば、注意や苦情どころでは済まない。
下手をすれば、本当に下手をすれば閉鎖だってありえるのだ。
「もう………勘弁してくれ……!!!」
また本の記憶が蘇る
<私を最終的に突き動かしてくれたのは、あの言葉だった>
震える拳が上がってしまった。
赤ちゃん達は気がつかない。
「勘弁して欲しいのはこっちよ」
すぐに、その腕を後ろから掴んだのは、かの古株だった。
皆が好きな「おばあちゃん」の登場に、「ゆっくりちね」は中断する
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ええと、最初に『ちね』っていった子は?」
「―――あのまりさの子です」
「格子」を使っていた事を流石に恥ずかしく思っていたが、それは流された。
「まりさちゃん、どうしてあんな事言ったの?言わないって皆と約束したよねえ?」
「お兄ちゃんがけちなんだもん」
「なんでけちなの?」
「ごはんは少ないし、おかちもくれないんだよ!!!」
「ご飯は皆と同じ分よ?食べ過ぎちゃったら、ぽんぽんいたくなっちゃうでしょ?」
「おかちがほちいの!!!」
「今はおやつの時間じゃないでしょ?」
「おばあちゃんまでぞんなごどいうのおおおおおおおおおおおおお?」
さも自分が被害者のように、赤まりさは泣き始めた。
「おばあちゃんもけちなの?馬鹿なの?しぬの?」
「・・・・・・・・・・・」
「お兄ちゃんといっしょにゆっくりしね!!!」
古株は動じることなく続ける
「やめなさい」
「ゆっくりしねええ!!!」
「やめないとつねるわよ」
「つねられないよ!!!」
足元で、ちぇんの子どもがいう。
「本当は、人間さんはゆっくりをつねっちゃいけないんだよ!!!ここでは約束したから、
みんなをつねりたくてもつねられないんだよ!!!」
「そうなの?ゆっくりちn………」
事実である。
実際にやったら、愛好家達から袋たたきにされる
が、図に乗って「死ね」を続け始めたまりさは、それを言う事ができなかった。
「ゆっぐぐぐぐぐぐぐ…………」
「やめなさい?」
「ちょっとちょっと!!?」
これで、完全に彼は現実に戻った、これは放置できない。
「やばいでしょ!?本当につねっちゃ」
「『死ね』っていうのをやめるまで、やめない」
「どおじでごんなごどをおおおおおお?」
「約束を破ったから、です!!!」
古株はきっぱりと言った。
やめろだの(どこで覚えたか)虐待だとのと、好き勝手に言っていた周りは、いつに無く声を
荒げた古株の一言に、はたと静まり返った。
「さっき、ちるのちゃんと、れみぃちゃんと、そのおばさんがいなくなった話をしましたね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あまり関係の無い話に、一同は戸惑う。
「れみぃちゃんは、もうここでみんなと遊ぶ事はできなくなりました」
「ゆっ!!?どうしてー?」
「ゆっ!!知ってるよ!!れいむちゃんに、いたいいたいをしたからだよね?」
しかし、古株は首を振った。
「約束を破ったからです」
静まり返る
「他のお友達を、食べたりしてゆっくりできなくさせちゃいけない、ってれみぃちゃんはここに来る
前に、おばあちゃんやお兄ちゃん、おばちゃん達と約束しました。ここで遊んで、ゆっくりしても
いい代わりに、友達を食べない、と言ったんです」
それは、そうだ。
「でも、あの子は約束を破り、れいむちゃんを食べて、ゆっくりできなくさせようとしました。だから、
これかられみぃちゃんはゆっくりできない所へ行かなければならないんです」
そう―――どこに引き取られるか
「そして、おばちゃんも、ゆっくりできない所に行かなければならないんです」
「ゆっ?どうして?れみいおばちゃん、何も悪い事してないよ?」
「おばちゃんの子どもが、悪い事をしたから、おばちゃんもゆっくりできなくなったんです」
「わからない、わからないよー!!!」
解らないだろう
「もう一つお話しましょう。ちるのちゃんのお兄さんは、ゆっくりできない、約束を守れない人間でした」
「その話は………」
「働いて、借りたものを返す約束をしていたのに、働かず、借りたものも返さなかったんです。だから、ゆっく
りできない場所に連れて行かれました。そして、お兄さんがいなくなってしまったから、ちるのちゃんは誰も
迎えに来てもらえなくなりました」
「そうだったのー?」
「かあいそう………!」
「ひどいよ………………!」
「お兄さんが、約束破ったから、ちるのちゃんもゆっくりできなくなったんです」
少しずつ、赤ちゃん達は話が見えてきたようだった。
「人間さん達は、あなたたちをいじめたり、つねったりはしません。余程悪い子じゃないと、つねりません。
でもね?」
既に何人かが泣いている
「約束を破ったら、ゆっくりできない所へ連れて行かれるんです」
「ゆゆ……」
「殴られない代わりにです」
まりさの子は顔を真っ赤にしている
「そして、おばあちゃんは、今、約束を破りました。だから、おばあちゃんは、今日で皆とお別れです」
「ゆっ!!?」
「そんなの酷いよ!!!」
「行かないで!!?行かないで!!?」
再びざわめき始める中、古株は淡々と続ける。
―――この人は、本当に愛されていたのだ。
「約束を破ったら、自分だけじゃありません。約束を破った人の、お兄さんやお母さん、お友達まで、悪い事を
していないのに、ゆっくりできなくなるんです」
「どおしてえええええ?」
「人間さんは、一人では生きられません。皆と一緒じゃないと、ゆっくりできないんです。だから、皆がゆっくり
できるように、約束をするんです。それを破る人がいたら、ゆっくりできません」
「でもでもでも!!!」
「さっき、皆は約束を破って、『死ね』って言いましたよね?」
手の上で、まりさの子はガタガタと打ち震えている。
「ゆっ!!?じゃあ、まりさちゃんがいけないんだね!!!」
「まりさちゃんがいけないんだ!」
「わるいこのまりさちゃんだけ、ゆっくり出ていってね!!!」
「いいえ、悪いのは、あなた達全員です」
今度は、全員が呆然と震え始める
「みんな、
お約束はしたのに、『死ね』っていいましたね?おばあちゃんは、それじゃゆっくりできないから止め
ようとしたんだけれど、それでも皆は約束を破り続けました。だから、私も約束を破って、まりさちゃんをつね
りました。」
「でも、それは……」
「私も約束を破ったんです。そして―――――約束を先に破ったのがあなたたちですから、私も、そのためにここ
からいなくなります」
彼は何も言えなかった。
「みんなのお母さんやお祖母さんが、遠くのお山や原っぱで生きていた頃は、お友達を食べたり、他の子の食べ物を
盗んだり、けんかしたり、『死ね』というのは、悪い事ではありませんでした。自分がゆっくりするためには仕方
なかったんです」
「―――――」
「でも、人間さん達の国では、このおうちの中では、それは悪い事です。悪い事をした人は、連れて行かれるのが
この国です」
「おばあちゃん悪い事してないよお」
「もしも、ゆっくりしたいのだったら」
まりさの子を床に置き、本当に踵を返して古株は去っていった。
「周りのゆっくりや人間を、ゆっくりさせなさい」
黙っていたゆっくり達は、再び泣き始めた
「いかないでえええええええええ!!!」
「ごめんざざいいいいいいい!!!」
「いいごにじまずがらああああああああ!!」
「ごめんなさい!!ごめんなさい!!」
―――恐らく、生まれてはめて感じる、「罪悪感」といったものではないだろうか?
多分、味わった事の無い苦しみだろう。
自分の好きな相手が、自分が原因で不当にゆっくりできなくなると宣告されては、自分がゆっくりできないことよりも、
辛い。
彼は慌てて古株の後を追った。
本当に荷物を纏めて、帰ろうとしている
「え?冗談抜き?今日は帰る、って話ですよね?」
「いや、本当にやめた方がいいわ………色々と」
「何でですか!?」
「何かこう……………すごく卑怯な事やったわ」
そうだろうか
「これで、またひょっこり帰ってきたら元の木阿弥だしねえ」
「いや、あなたは立派な方だ」
心からそう思う。その分、やめてもらっては困る
それに引き換え、自分は………
「悩んでるとは思うけど、あの『目覚めの季節』だっけ?あの外人の書いた本、真に受けるんじゃないよ?」
「へ?」
「あれは私がこの仕事に就いた頃に流行ったのさ。だから知ってるよ」
年代的には、そうか
「馬鹿馬鹿しい。考えてもみい。『感謝されない』『聞き訳が無い』『我侭』『自分勝手』――――どれもこれも、
そいつがゆっくりを殺し始めた言い訳にしている要素って、全部人間の子どものことじゃないか」
「それは―――」
「大体、『助けてやってる』って視点だから駄目なのさ。この本を読んで『共感できました』なんていってる奴は、
人間の子どもの世話をしても虐待に走るだろうし、『ゆっくりだから』って免罪符を自分でこさえてるんだよ。
自分であの仕事についておいて、何が『汚染された』だか」
恥ずかしくて何もいえない。
「ゆっくり相手だから」という思い上がりか
「とりあえず、外で一服して、中の様子もう一度見たら帰るわ。つねって泣かせたし、本当にくびになるかもしれ
ないけど、その時は頑張りな」
「はあ………」
泣きながら追ってくる赤ちゃん達をなだめ、全員を部屋に連れ戻した後に戻ると、もう古株はいなかった。
「―――そうだ」
先輩はまだ伏せっているようなので、また夜の散歩に自分が行かねばならない。
他の職員に聞いて見ると、いつも行っているという公園の場所がわかった。
籠に入れたまま、急ぎ足に、そこまで一度も出さないで向かう。
すこしうらぶれた児童公園にて、恐る恐る彼は籠を全開した。
「うー!うー!」
「お外だー!!」
「お兄ちゃん、ありがとう!!」
「ははは………本当に逃げないや。遊んでる…………」
律儀に目一杯の敷地内を、ぱとぱと全力で飛んで遊びまわるれみりゃとふらん達に思わず脱力した笑いを浮かべた。
「楽しいかー?」
「たのしー!!」
「そうか、よかったなあ」
懐に、あの本をまだ入れていた。
改めてまが流し読みして閉じる。
「何が、何が―――人間の本能の開放だ!?」
思い切り地面にたたきつけた。
「何とでも上から目線で言いやがれ!!気持ち悪いだの、ゆっくりんピースだの信者だの虐待と紙一重だの、自然に反
しているだの、偽善だのって言われても、俺は俺でゆっくりを可愛がり続けてやる!!」
どこかの馬鹿な人間の子どもが拾っては大変だし、考えてみると借り物だので、いそいそとまた懐にしまった。
「さあて、帰るか!!」
わざと元気よく声をあげ、鼻息も荒く岐路についた。
れみりゃ達は一日ぶりに思い切り体を使えて、気分も良さそうだ。
「ただいま帰りましたー」
明かりが殆どついていない。
本当に皆寝ているのだろう。
デスクでは、もう一人の夜勤者が暢気に居眠りしている。怠慢である。
炊事場だけがついていた。
うめき声がする。
明らかに赤ちゃんの声だった。
苦しんでいる。
声を出したくても出せない時――――幼少時、虐めの一環として、口を指でこじ開けっ放しにさせ
ながら言葉を発音させる戯れ(がっきゅうぶんこー等と言わせる)があったが、それに近い。
何かの予兆を感じ、籠かられみりゃ達を出すよりも先にのぞいてみた。
古株がいた。
ここで、あの本の内容がまた蘇る
<その日、私は施設をやめる予定だった。最後の仕事と、夕飯の支度をしている際に―――毎日溜まって
いたものが、溢れかえってしまったのだろう。きっかけは何でもいい。
いや、あふれたというよりは、もう退職すると言う事で、『タガが外れた』というべきか>
まな板の上で。
手元には、赤ちゃんぱっちゅりー
左手で押さえつけ
右手にもった棒状のものを、口の中にねじこんでいる
「あ……あ・・・・・・」
何をするべきか、何故か思いうかばなかった。
こちらから古株の表情は見えなかったが、ぱっちゅりーは白目を剥いている
『タガが外れる』
『10年続けたベテラン』
『やめた日に』
『炊事場』
『誰もがもつ本能』
「ああ…………」
走馬灯のように、駆け回るこの数日間で覚えた単語。
何とか声だけでも出そうとしたその時だった
「何してやがんだババア!!」
気付かなかっただけか、直ぐ横から、飛び出し、古株からぱっちゅりーを奪ったのは、伏せっていたはずの先輩だった。
鼻息も荒く、手の中のぱっちゅりーに呼びかける。
「しっかりしろ!!何された?大丈夫か?」
「馬鹿かい!?虐待じゃないよ!!」
古株は大汗かきながらこちらに向かった。
大声で、居眠りしていた当番と、赤ちゃん達が目を覚ましたので、とりあえずそっちの処理は任せた。
「は?」
「喘息の癖に、間違って他の子の落ちてたリボンを飲み込んじゃったんだよこの子は!!それを出そうとしただけ!!」
持っていたのは、耳かきだった。
「あ、危なくないっすかあ?」
「救急車読んでちゃ時間がなくなるし、それにこんな事は昔はよくあったし、慣れてたんだ。今の施設が清潔すぎるだ
けだよ!!」
先輩の手の平の上で、ぱっちゅりーはフルフルと起き上がった。
「ちゅっきりー!!!」
思わず、脱力してへたりこむ彼だった。
決まり悪そうに、ぱっちゅりーを預け、先輩は元々寝ていた仮眠室へ戻っていった。
「あいつも、何だかんだで真面目な奴なんだ。普段愚痴ばっかり言ってるけど、こんな時、真っ先に助けようとしてたな」
「ええ…………」
深夜の散歩とか
それにひきかえて自分は…………
「思い上がってたのかなぁ…………」
「それはあるね」
今度こそ本当に戻ってこないつもりか、上着を羽おり、荷物を抱えて古株は帰り支度をしている。
「一応言っておく。この仕事は、名誉職でも何でもない」
ずっと受け続けた罵倒と、それを払うためにすがっていた、学生時代の言葉や、親御さんや保護者から受けた褒め言
葉がざらざらと崩れていった。
「ついでに言うと、あんたは偽善者でもゆっくりんピースでも鬼意山でも加工所職員でも愛で厨でも虐待厨でもない。
目の前に赤ん坊がいて、世話する人間がいなくて、必要だから世話して教育してるだけだ」
「ゆっくりは人間の鏡」の3つ目の意味を思い出した。いい意味でも悪い意味でも純粋なゆっくり達は、人間の負の部
分もあます事なく臆せず表現してくるのだ。そこで目の当たりにするのは、根源的な自分の見たくない意識なのである。
「仕事で、必要だから赤ちゃんを相手に仕事してるんだ。相手がゆっくりも何もあるか。うぬぼれるんじゃないし、
ゆっくりを見下すんじゃないよ」
膝を突いた彼に、すれ違い様古株は言った。
「――――それって、すごい事じゃないか」
当番が、必死で赤ちゃん達をあやす声を聞きながら、彼は初めて職場で泣いた。
泣いて泣いて泣きじゃくった。
「僕、もうこの仕事やめます。やっぱり向いていないし、そんな凄い人間じゃないんだ」
古株は、少し予想外だったのか、踵を返して向き直り、古株は最後に言った。
「クリスマスにな」
この仕事を始めてから、まだ暮と正月は体験していない
「最後に、大きなホットケーキを焼くんだ。座布団みたいな奴。その年最後のサービスとお楽しみでな。
蜂蜜はかけ放題だし、チョコとか餡子とか、好きなものもトッピングして、皆で食べるんだよ。
大きすぎるから、取り合いにはならないし、目一杯ご褒美に食べまくるんだ」
立ち上がることもできない。
「死ぬほど気持ち良いんだ。赤ちゃん達が、全力で遠慮無しに皆で食べるのって。
せめて、全員で『しあわせー』を言うの見るまで、続けたらどう?」
想像しただけで、にやにや笑いが止まらなくなった。
泣きじゃくりながら、彼はにやにや笑い続けた。笑い続けて、また泣いた。
ぱっちゅりーと―――――抜け出した赤ちゃん達が、いつのまにか彼にすりすりを始めていたが、気が
つかなかった。
了
- 彼も・・・いずれは・・・古株のように・・・(´・ω・`) -- 名無しさん (2008-11-14 07:13:50)
- 自分が守られてるとわかったら好き勝手言うのが、一部の頭悪いガキみたいでリアル -- 名無しさん (2008-11-14 14:49:39)
- うp主は保育園の先生?面白かった -- 名無しさん (2008-11-15 19:15:49)
- 暗いなあ…。虐SSでも、もっと平和なのがあるのに…。 -- 名無しさん (2008-11-16 19:59:53)
- 重たいねー。ありがとうね。面白かったよ。 -- 名無しさん (2008-11-17 20:50:18)
- 身も蓋もないが、やっぱりこの青年の将来が不安。程度のひどさで苦悩しているところに、程度の差こそあれ人間の子供と同じなんて問題の解決にならん。10年ももつかな・・・ -- 名無しさん (2008-11-17 22:13:57)
- ありがとうございます。ちょっと恥ずかしいのですが、この青年は「実は二日遅れていた~」という作品にて、かつての赤ちゃん達に気を使われる、さらに将来が心配な大人として登場します……が、あれは全く別の世界の話と捉えてくださって構わないので、そうでない彼の姿というのは、少し想像ができません(汗 -- オクラの人 (2008-11-18 10:21:10)
- 元々あの続編のためと、赤ちゃんゆっくりが沢山いる環境に身をおく、という単なる煩悩を走り書きになる予定が、思った異常に暗い話になってしまい、読み返して自分でもドン引きしました。 -- オクラの人 (2008-11-18 10:22:34)
- 学生の頃中途半端に、2週間ほど養護施設(ガチで大人に虐待された子どももいる)にいたりした事を、無意識に思い出し手しまったためかもしれません(舞台は託児所で、全然違う場所ですが) -- オクラの人 (2008-11-18 10:24:24)
- 単純に救いのある話にすると、かえって納得のできない人(自分も含め)もいると思い、ああした終わり方になったのですが――――「人間と同じ」ってのは、解決というより、「俺はゆっくりを救って『やっている』んだ、名誉職なんだ」という、かなりさもしい思い込みに、必死でしがみついて仕事を続けている青年に、少し頭を冷やさせるつもりで言った言葉だと思います。多分。 -- オクラの人 (2008-11-18 10:28:34)
- あの外人の本(実際に子どもを虐待した人間の言い訳が一部混じっています…)を読んだくらいで、動揺したりしているのは、変なものにすがっているからで、最後にそれまで取っ払われたので、泣き出してしまったのかもしれないですね。私の中では、あのまま不安定なまま続けて、いつか反動で虐待に走る――てことはなく、古株にぼろくそに言われて傷ついたのをきっかけに、マイナスがゼロくらいにはなれていたらいいなあ……と思っています。多分、この年のクリスマスの光景がやみつきになって、それ見たさに毎年乗り切るんじゃないかな…… -- オクラの人 (2008-11-18 10:36:43)
- 自分の話しに、ダラダラと申し訳ありません。あと、あの傷害起したれみりゃは別の場所で捕食を克服して、ちるのはミシシッピかオクラホマかアラスカ辺りで就職します(基本皆デキる子として書きたかったので…)。これは確定してます。 長文大変失礼しました。 ありがとうございます -- オクラの人 (2008-11-18 10:40:07)
- 面白かったです。
ゆっくりを題材にして、ゆっくりの設定におんぶにだっこせずに本当に良い話を書こうとしてるのが良く分かります。
その文章力を役立てて、物書き頑張ってくださいる -- りの (2008-12-06 09:42:54)
- 面白かったです
先輩がなんだかんだいって(勘違いとはいえ)ゆっくりを助けようとしたのには感動しました
これからもSSを書いてください -- 名無しさん (2008-12-18 14:58:16)
- 重たくて少しの間イライラしたけども、
いや、最後のホットケーキの部分を想像したら嬉しくなった。
そういうの見てみたいもんだねぇ。 -- 名無しさん (2009-03-23 16:07:38)
- コメントで偉そうなこと言いたくなくなるくらい面白かった -- 名無しさん (2009-04-15 01:52:28)
- 人間のガキもこんなもん。すぐ図に乗り菓子が好きで大人の気持ちお構いなし。みんなそうだったのに忘れちゃうんだねーわかるよー。一部の頭悪いガキだけじゃないよーw -- 名無しさん (2009-07-06 09:39:10)
- 最後のホットケーキの描写は素晴らしいと思います。しかし3点だけ。
古株程の年の人間が厨を付けた言葉を使うとは思えませんし
ゆっくりんピースなる組織に所属していないのも同じ職場なら知っていていもおかしくはないです。
ですので、古株が主人公を諭す台詞には違和感を感じざるおえませんでした。
また「そして、『むーしゃ みーしゃ しあわせー!!』を聞きたいのだ。」や「いつのまにか彼にすりすりを始めていたが」等、地の文にこれはいただけません。
「『むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!』と言う声が聞きたいのだ」や「いつのまにか彼に頬擦りをし始めていた」などにすべきです。
最後にこのSS、前篇・後編の2部で構成するには少々長すぎます。
-- 最近みました (2012-03-28 01:28:18)
- とても面白かったですし、読後感も良いですね。
古株さんがいい味出してますね。最後の啖呵が良かったです。
幼き者の指導者として他者のエゴイズムを説得する態度
作者さんの苦悩みたいなものまで垣間見えた気がします。 -- 名無しさん (2017-11-06 23:38:24)
最終更新:2017年11月06日 23:38