参上!メカまりさ

注意。
天寿を全うしてますが、死ぬゆっくりがいます。
人間による介入があります。
設定がイミフです。
そもそも、駄SSです。




息抜きのつもりで行き当たりばったりに書いてたのに……。
こんなに長くなるなんてどういうことなの……?本当。




参上!メカまりさ


「ユックリシテイッテネ!!!」
ゆっくりの森に谺する機械音声。
それはメカまりさ。天才の私が作りあげた、科学の結晶!
右、異常なし。
左、異常なし。
メカまりさのカメラアイと一体化したモニター機能は正常に稼動している。
やっぱり私は天才ッ!

このメカまりさはゆっくりの生態をより詳しく、
正確に把握する為に天才の私が開発した調査用ワンダフルマッシーン!!!
一番の目玉機能は、人工知能による、対ゆっくり用コミュニケーション能力。
こちらから指示を出すことで、これまでの調査用ロボでは出来なかった、
能動的かつ柔軟な調査も可能なのだ。

よぉし、さっそくテスト!

『まりさ。取り敢えず、北北西にいるゆっくりに声をかけてくれる?』
「イエス、アイ・マム」
メカまりさはそう答えて、北北西に進路をとる。
無限軌道により動くまりさは、悪路をものともせず、ターゲットに近付いていく。
そして、そこに居たのは
「ま、ま、まりさ!!いっしょにすっきりしましょうねぇぇぇ!!!」
まずい、発情期にすっきり出来ずに暴走したありすだ!!

ありす種は発情期になると、パートナーのゆっくりとすっきりしたり、
木や石にすーりすりしてすっきりするのだが、中には
「そんなすっきりは、とかいはじゃない。」
と恥ずかしがってすっきりしないありすもいる。
そうやって耐え続けると、ある日タガが外れて誰構わず
(比較的まりさ種を優先するらしいが……。)
すっきりをせがむ、暴走状態に陥ってしまう。
翌日には暴走事態は収まるが、無理矢理すっきりさせられた方の
ゆっくりとの中は険悪になり、通常出来る筈の子どもも出来ない。
そして、そのありすはこの黒歴史を知らない群れへと旅立っていくのだ。
(以上、ゆっくり研究のバイブル、~民明書房刊『ゆっくりしてる場合じゃねえ!』より。)

「ユックリヤメテネ!!!」
メカまりさもひとまず断る。だが、
「つんでれなまりさもかわいいぃ!!!」
と、なんか都合のいい解釈をされた。
つーか、まだツンしか見せてないというか、ツンしかねえよ!!
萌えをなめるんじゃねぇ!!!
……はッ?!いかんいかん、指示をださねば……。
『まりさ、おことわりモード!』
「チガウヨ、でれジャナイヨ!!……丁重にお断り致します。」
「んほぉぉぉぉぉぉ!まりさぁぁ!!!」
無視された……。
メカまりさはありすの激しいすーりすりをむりやり受け、
「すっきりー!!」
「スッキリー!!」
と、一応すっきりしたふりをすることに。
「ゆぅ、まりさってばヒンヤリしてつめたいのね!!」
「イヤァ、ソレホドデモ。」
何を言ってる何を……って
『わぁぁ!?』
メカまりさの視線そのものであるモニター越しにそれを見て、私は驚いた。
ありすから茎が生えているのだ。
しかも、茎型出産だと言うのに、たった一匹だけ。
「ゆゆ!?なんでありすからはえてるのかしら?」
通常なら、茎が生えるのは受けに回ったゆっくりの筈。この場合はメカまりさである。
だが、メカまりさに繁殖機能はない。故に子どもは出来ないと思っていたのだが……。
そんなことを考えている内に、ポトッ、と実ったありす種の子どもが落ちてきた。
これまた早い……。
「ゆっきゅりしちぇいっちぇね!!!」
「ユックリシテイッテネ!!!」
なんかメカまりさノリノリだね……初めての赤ちゃんが生まれたから仕方ないね。


……じゃねえ、どうすんのよコレ。マジ想定外過ぎるんですけど。
「柔軟すぎるだろ……。」
指示用のマイクを握ったまま、私は机に突っ伏した。頭痛ぇ……。
が、しかし。
「……いいこと思いついた。これ観察して研究して纏めて発表すれば、私学会の
注目の的じゃん!」
もうどこから突っ込んでいいのかわからない程の新発見連発。話題にならぬ筈はない。
流石は簡単に諦めない、ポジティヴシンキングの私ッ!
うふふ、伊達に私生活では腐っては……いや、何でもない。
『メカまりさ!暫く、そのありすと一緒に居なさい!』
「ガッテンショウチノスケ!!」
「ゆ?なにかいったの?まりさ。」
「にゃにかいったー?」
「ナンクルナイサー!」
一抹、というには大きすぎる不安とやけっぱちな感情を抱えつつ、観察はスタートした。

ありすと子ありすの父親を務めたメカまりさは、概ね良くやってくれた。
が、機械である以上、どうしても違和感の残る動作をしてしまう。
食事では、
「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!!」
「ムーシャ、ムーシャ、……エネルギーヘンカンカイシ!!」
メカまりさは謎の技術により、有機物をエネルギーに変換出来るのだ、が。
「ゆ?へんなこというわね、まりさ。」
「ときゃいはじゃないょ!!」
傍から見ればこれ程意味不明な言動もない。

移動するときも
「みちぇみちぇ、おとーしゃん!ありしゅこんにゃにたきゃくとべるょ!!」
「オオ、タカイタカイ。」
「ゆ?おとーしゃん、とびぇにゃいにょ?」
「ワガミチヲユックリススムヨ!!」
その重さと無限軌道故飛び跳ねることが出来ない。

しかし、中でも一番困ったのが、
「ゆ!?もうこんなにくらくなってるわ!ゆっくりしたけっかがこれだよ!!!」
「きゅらいょー!きょわいょー!!ゆっきゅりできにゃい!!!」
「ペカー。」
「ゆ!?おとーしゃん、めがひかっちぇるょ!!」
「まえがみえるわ!!これでゆっくりかえれるわね!!まりさかっこいい!!」
「ウフフフ。」
メカまりさ自らが、機械である自分の能力をフル活用し始めたことである。

どういうことなの……。

確かにメカまりさには自律した思考・行動能力があるのだけれど、
にしたってフリーダム過ぎる。
表面的ではなく、根本的にゆっくりそのものになっている。
しかし、よくもまぁバレないものだ。
人間というか、普通の動物……
いや、ゆっくりは普通とは言い難い存在だけれど、
にしたって、相手が自分達と違うってのは分りそうなものなのに。

「ミサイルハッシャ!!」
ちゅどーん(笑)。
「ゆゆ!やけんさんをおいはらったわ!まりさったらつよいのね!!」
「テレルノゼ。」

……流石にここまでやったら……。

まあ、これまでの調査用ロボにしたって、群に潜り込んでも
「ゆっくりみないでよえっち(はぁと)。」
ぐらいしか言われないほど警戒されて無かったが……。
ゆっくりには警戒心というものがないのだろうか。
それとも、自分達に危害を加えない存在を理解出来るのだろうか。
「……それを解き明かすのが私の仕事かぁ。」
モニターの前で夜食を食べつつ、私は呟いていた。
チキンラーメンうめぇ。


2年後。
あの子ありすは既に成体となっていたが、珍しいことに親と同棲していた。
そして。
「ゆぅ……ゆぅ……。」
「ダイジョウブ?シッカリシテネ、アリス。」
「おかーさん、がんばらないでゆっくりやすむといいわ!!」
母ありすは酷く衰弱していた。
恐らくは、もうすぐ環ってしまうのだろう。
行き遅れてしまった、かなり高齢のありすだったらしい。
ゆっくりは身体的な老いがほとんど発現せず、余程丁寧に観察しなければ年齢が分からない。
「ゆ……、まりさ、おちびちゃん、ありがとね……。」
振り絞る様にありすが話す。
「まりさ……とかいは、なんていえないありすといっしょにいてくれて、
ありがとうね。たのしかったわ……うれしかったわ。」
「アリス……。」
「ありすはもうすぐずっとゆっくりするわ……。おとうさんをたいせつにね、お
ちびちゃん。」
「おかーさん!!だめよ!!」
「ゆっくりしたけっかがこれで、ありすはしあわせよ……。」

そして、ありすは力尽きた。
メカまりさにしか聞こえない、弱々しい声を残して。


「にんげんさん、まりさをつかわしてくれて、ありがとうね……。」


「え……?」
私は思わず、声を漏らした。
ありすには、分かっていたのか。
自分が伴侶として迎えた相手が、自分達と違うことを。
そして、それをもたらしたのが人間だということを。



翌日、私はありすの巣にやってきた。

壊れたメカまりさを回収する為に。

ありすが死んだあと、メカまりさはアイカメラの洗浄液を流し続けた。
そして、制御不能になり、動作を停止した。
原因は……不明、だ。
そう思いたかったのかもしれない。

「ゆ!?にんげんさん?ゆっくりしていってね!!!」
巣の前で、あの子ありすに出会い、声を掛けられた。
私は無言で、巣の中のメカまりさを回収し始める。
「なにするのにんげんさん!!」
子ありすを無視して、私はメカまりさを抱きかかえる。
「おとーさんをゆっくりおろしてちょうだいね!!!」
子ありすがそう言ったとき、私の腕の中から音が聞こえた。
スリープから立ち上がる起動音。
そして、
「オチビチャン……ダメダヨ。コノニンゲンサンハ、マリサノオカアサンダカラ
……。」
抱き抱えたメカまりさがゆっくりと喋り出した。
「おとーさん!?」
「マリサモズットユックリスルカラ、オカアサンガムカエニキテクレタンダヨ。
ダカラ、シンパイシナイデネ……。」
「……わかったわ。」
「サヨナラ。ユックリシタケッカガコレデ、マリサハシアワセダヨ……。」

ぷつ。

メカまりさの電源が、落ちた。
私は踵を返して、巣を離れる。
「にんげんさん、おとーさんを、おねがいね!!」
子ありすの言葉を背に、私は乗って来たバンに戻った。


暫くして、私はあの巣の前に戻ってきた。
「ゆ?どうしたの、……ええと、おばあちゃ……」
……いや、言いたい意味は分かるけど、流石にそれは……。
「お、おねえさん!!!」
分かってくれた。
……それとも、眉間の皺がそれを分からせてしまったのか……。
「あなたの、お母さんは?」
「まだおうちにいるわ。あとでおりんたちがやってきてくれるの。」
一匹残された子ありすは気丈そうに、けれど、少し寂しげに答えた。
「ちょっと、いい?」
私は巣の中にいるありすの亡骸を外へだす。
「ゆゆ!?なにするの!おねえさん!!」
「心配しないで。ちょっとした餞別。」
私はそう言って、あるものを取り出す。
メカまりさから取り出した、小型記憶装置。
とても小さいそれは、ありすのヘアバンドで簡単に挟めた。
持ってきた予備のメカれいむで色々試してみたが、メカまりさの故障はこの記憶
装置にあるようだった。
……だから、きっとこれは……。
「おねえさん、なに、それ?」
「……分からなくていい。もう使いものにならないし、バックアップも取れたから、
不法投棄させてもらうのよ。」
正直、万単位の損失だけど……。
「そう、なの。」
子ありすはしばらく考えこんでいるようだった。そして、
「……つよくて、かっこよくて、やさしいおとうさんをありがとう、おねえさん。」
そう言うと、体を深々と下げた。


……ああ、やっぱり。
この子も分かっていたのか。
それでもきっと大切だったんだ。
私と同じ様に、こんなにもぼろぼろ涙を流して。





『……ゆっくりは全てを受け入れる。
それはきっと彼等にとってとても残酷なことなのだろう。
だが、きっとそれこそが彼等を繁栄に導いた要因なのだ……。』
つらつらと私が論文をまとめていると、
「ユックリシテイッテネ!!!」
2代目のメカゆっくりMk-Ⅱメカれいむがゆっくりを発見したようだ。
慌ててモニターを確認すると、
「やくもゆかり14さい、いいえむしろうまれたてです!!」
よぅし!!よくやったメカれいむ!
希少種のゆかりんをひっかけるたぁ、ナイス!
しかし、すこしばかり心配になる。
「ゆ……?なんだかゆっくりできなさそうなれいむね……。」
ゆかりんはやたらと目が肥えてるのだ。
「ソンナコトナイヨ!!」
新機能・「胸を張る」で必死にアピールするメカれいむ。
「ひぎ!しょうじょしゅう!!」
……何?
特に変化はないけど……。
「わたしのしょうじょしゅうにどうじないなんて、きにいったわ!!
ゆっくりついてきてね!!」
なんだか良く分からないが、れいむを気に入ったらしいゆかりんはそう言って跳ねていく。

「アイ・マム。」
メカれいむからの通信……?
『どうしたの?』
「キュウカクキノウガコショウシタヨ。ユックリカイダケッカガコレダヨ!!!」
……うわぁ、やっぱり。
『……ごめん、頑張ってとしか言えないわ。』
「ハクジョーモノ……。」
メカれいむはちょっぴり寂しそうに、無限軌道の音を立てながらゆかりんについていった。


「むきゅ!ありす、へんなれいむがいるわ!」
「あのれいむのこと?ぱちゅりー!」
「そうよ。どこかかたそうで、へんなおとをたててる!!!」
「たしかにそうね!!!」
「どうしようかしら!ゆかりんにしらせる?」
「……ひつようないわ。」
「むきゅ?どうして?」
「ゆかりんだってわかってるわよ。それに。」
「それに?」
「ゆっくりしてるじゃない。それだけでじゅうぶんよ。」
「むきゅ!そうね!」 


――
ゆっくり怪談の人。







  • 最後のやりとりに全てが集約されているんだねー。わかるよー。 -- 名無しさん (2008-11-17 22:24:03)
  • やっぱりすごくいいわ、この作品。wikiに保管されて本当によかった。 -- 名無しさん (2008-11-23 22:10:25)
  • ありす.....(T-T) -- 名無しさん (2008-11-29 22:00:01)
  • タイトルだけだとどう考えてもギャグなのに…こうゆうファンタジーもあるんだなぁ… -- 名無しさん (2009-07-30 23:30:27)
  • 前半のほのぼの感と後半の哀愁あふれる感じの対比が良かったです。 -- 名無しさん (2009-09-07 20:01:04)
  • 読みにくかったけど、話は凄く良かった。 -- 名無しさん (2010-04-21 13:21:01)
  • 「ゆっくり」という言葉の使い方が上手すぎてドンドン読んでしまう。悔しいw -- 名無しさん (2017-11-06 23:11:38)
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最終更新:2017年11月06日 23:11