ゆっくりれみりゃと仲良しゆっくり

 ここはゆっくりたちがゆっくりしている大地。

 人里から遠く離れ、妖怪たちも知る事の無い世界。

 そこに、ひとつのゆっくり集団がありました。

 ゆっくりれいむと、ゆっくりまりさ。

 それに、ゆっくりぱちゅりーとゆっくりありすの4匹です。

 まだ小さいこの4匹がどうして一緒に暮らすようになったのか、家族はどうしたのか。

 ゆっくりたちはとてもゆっくりしている生き物なので、そんなこともう忘れてしまいました。

 でも大丈夫です。

 4匹は、みんないつでも仲良し。

 大事なのは、この4匹がそれぞれを大切な友達だと思っている事なのでした。



 そんなある日の事です。

 4匹が草原で仲良く遊んでいると、地面の上を黒い影が通り過ぎました。

「ゆ! みんなあぶないよ! ゆっくりにげてね!!」

 誰が上げたかその声に、みんなゆっくりなりに急いで近くの背の高い草むらに逃げ込みます。

 妖怪や人間は居ませんけれど、鳥に襲われては動きのゆっくりなゆっくりはひとたまりもありません。

 それに、ほとんどが夜行性ですが、ゆっくりの中にも空を飛んでゆっくりを食べるゆっくりも居るのです。

 幾ら平和とは言えここは大自然です。

 その事を身にしみて知っているから、ゆっくり達は草むらの中からじっと空を見ます。

 そこにいたのは、ゆっくりを食べるゆっくりの一種類、ゆっくりれみりゃでした。 

 真昼だと言うのに珍しいですね。

 顔の横から生えた翼をはためかせ、きょろきょろと何かを探しています。

 自分達の事でしょうか。

 見つかったら食べられちゃうかもしれない。

 その想像が、ゆっくり達を自然と小さく縮めていきます。

 その時です。

 ざぁっ、と、強い風が草原を駆け抜けていきました。

 その風にあおられ、隠れていた草むらが大きくなびき、ゆっくり達の姿が丸見えになってしまいます。

 そして、その事で気がついたのか、ゆっくりれみりゃが一直線にこっちに飛んできました。

 ゆっくり達は、ゆっくり隠れているつもりだったので、突然の事に体が動きません。

 怖い、食べられちゃう!!

 皆、ゆっくりれみりゃが怖くて目に涙を浮かべています。

 そんな4匹の前に、大きく口を開けたゆっくりれみりゃがびゅーっと飛んで来て……

「うー♪ うー♪♪」

 ぺろり、とゆっくりれいむの顔を舐めました。

「???」 

 何が起こったのでしょうか。

 そのままがぶっと食べられちゃうと思ったれいむも、他の3匹も、何がなんだかよく判りません。

 もしかして、食べる前におもちゃにでもするつもりなのでしょうか。

 でも、ゆっくりれみりゃはみんなの顔を一舐めすると、わざわざ地面に降りて不器用にぴょんぴょん跳ねています。

「うー♪」

 お決まりの「ぎゃおー!」も「たーべちゃーうぞー!」も言いません。

『ゆ?』

 これはどういうことなのでしょうか。

 みんな困ってしまいます。

 ニコニコしながらぴょんぴょんしていたゆっくりれみりゃも、だんだんと困った顔になってきました。

 やがておずおずと、ゆっくりれいむが挨拶します。

「ゆ……ゆっくりしていってね?」

 するとゆっくりれみりゃは笑顔に戻り、みんなの周りを跳ね、飛び回ります。

 どうやら、このゆっくりれみりゃは自分達を食べに来たようではないみたいです。 

 それならば、ゆっくりがする事は一つです。

『ゆっくりしていってね!!!!』 

「うっうーーー♪♪♪」

 どうやらこのゆっくりれみりゃはちょっと変わり者のようでした。

 れみりゃ種だというのにゆっくりたちを食べようとはせず、夜はみんなと一緒に眠ってしまいます。

 近づいてきた鳥だって追い払ってくれますし、高い所にある珍しい木の実なども取ってきてくれました。 

 ほかのゆっくり達は怖がりましたけど、そんな事は関係ありません。

 いいじゃないですか、皆、それぞれどこか違うものなのです。

 4匹にとって、このゆっくりれみりゃはもうお友達なのです。

 いつからか、みんなは5匹のゆっくり集団になっていました。



 それからしばらくたったある日。

 突然れみりゃがれいむに噛み付きました。

 それどころか、リボンを取ろうとしたり、髪を抜こうとしたりするのです。

 今まで友達だと思っていたれみりゃのそんな行動にれいむは怒り、そして泣き出してしまいます。

 まりさやありすも、口々に「ゆっくりあやまってね!」「ゆっくりできないこはきらいだよ!」と怒ります。

 最初は「うー! うー!!」と必死に何かを訴えていたれみりゃでしたが、あらあら、しまいには自分も泣き出してしまいました。

 怒られた事が悲しかったのでしょうか。

 いいえ、そうじゃありません。

 れみりゃはただ噛み付いたわけではないのです。

 ただ怒られた事よりも、自分のしたい事がみんなに伝わらなかった事。

 自分が上手く伝えられなかった所為で、れいむが泣いたり、みんなが怒ったりした事。

 その事が、とっても悲しかったのです。



 した方も、された方も、わんわんと泣いているばかり。

 初めは怒っていたまりさとありすも、慰めても泣き止まない2匹の様子にどうして良いのかおろおろとするばかりでした。

 わんわんと泣きながらも、れみりゃはまだ何かを伝えようとしているようです。

 その場で小さく飛び跳ねてみたり、れいむの下にもぐりこもうとしてみたり。

 他のゆっくりよりもおしゃべりが上手くないれみりゃは、自分の体を使って何かをしようとしているのです。

 れみりゃは、本当の事を判ってもらって、みんなと仲直りをしたかったのです。



 そんな様子を、ゆっくりと見ていたゆっくりがいます。

 それはゆっくりぱちゅりーです。

 頭の良いぱちゅりーは、れみりゃは意味も無く噛み付くゆっくりではない、きっと何かがしたかったはずだとゆっくりと考えていました。 

 ゆっくり、でも真剣に考えをめぐらせます。

 やがて。

「むきゅーーーーん!! わかったわ!!!」

 体の弱いぱちゅりーにしては大きな声と高いジャンプ。

 それが、ぱちゅりーの喜びを示していました。

 ぱちゅりーはまずれみりゃの所に行くと、顔を舐めたり頬擦りしたりして、やさしくなだめます。

 やがてれみりゃが落ち着き始めると、自分はれみりゃの横に行き、今度はれいむに向かって自分の上に乗るように、と言いました。

 病弱なぱちゅりーにとっては辛い事でしょう。

 でも、ぱちゅりーは優しいれみりゃの想いに応えてあげるために、必死で我慢します。

 れみりゃの顔を横目で見ると、れみりゃは満面の笑みを浮かべていました。

 ああ、良かった。

 友達が笑っている、自分の考えが間違いで無いとわかると、それだけでそんな苦労もどこかへ飛んでいきます。

 自分の上にれいむがゆっくり乗ったら、次はれみりゃの上に乗るようにと。

 まだぐずりながらも、れいむはぱちゅりーの言うとおりに動きます。

 さあ、これで準備はおしまい。



「れいむ、れみりゃにゆっくりつかまっててね!」

 ぱちゅりーが言うと同時、れみりゃが小さな翼を精一杯動かします。

 するとふわり、とれみりゃだけの時よりは速さも高さも少ないですが、れいむをのせたままゆっくりとれみりゃが浮かび上がりました。

「わぁすごい、おそらをとんでるよ!!」

 浮かんだれみりゃの上から見る景色、その光景にれいむはたちまち泣き止んで目を輝かせます。

 そう、れみりゃは以前にれいむが「れみりゃみたいにおそらがとべたらなぁ」と言うのを聞いて、それを叶えてあげようとしたのです。

 れいむを乗せたまま、バランスを崩さないようゆっくりゆっくりとれみりゃは飛んでいきます。

 空からは、みんなニコニコ笑ってこちらを見ているのが見えました。

 やがて、短い空の旅が終わり、れみりゃとれいむはゆっくりと地上へと降りてきます。

「れみりゃ……さっきはゆっくり怒ってごめんね!」

 れいむはれみりゃが自分の事を思ってしてくれた事に気づき、さっきは泣いて怒った事を謝りました。

「う……? うーーー♪♪」

 れみりゃは一瞬ぱちくりすると、れいむに擦り寄ります。

 れみりゃにとっては、れいむが喜んでくれた事、それだけで十分なのでした。

 2匹は笑いながら、体をすりあわせてにっこり仲直り。

 そこにまりさとありす、ぱちゅりーも加わってみんなで仲良くすりすり。

 それかられみりゃは疲れるでしょうに、まりさも、ありすも、それぞれ乗せて空に舞い上がります。

 そして最後に、今回一番の功労者のぱちゅりーを乗せて、みんなよりも、ゆっくりゆっくりと飛びました。



 ぱちゅりーを乗せたれみりゃが戻ってくると、まりさとありすが自分達も乗せてくれたお礼と、二人で怒った謝罪を込めて木の実や花を集めていました。

 さすがにちょっと疲れたし、大事な帽子もみんなが乗ってくしゃくしゃになってしまいましたが、れみりゃはそんな事気にしません。

 みんな怖がるれみりゃ種の自分を受け入れてくれた友達。

 そんな友達みんなが笑顔で幸せ。

 それがれみりゃの一番なのです。

『ゆっくりありがとうね、れみりゃ!!!』「うーーーー♪!♪!♪」



 そんな仲の良いゆっくりたち、まりさとありすが集めてくれたご飯を食べると、そろって近くの木の洞に入っていきました。

 ……あらあら、みんな寝ちゃいましたね。

 今日は色々と疲れたのでしょう、ちょっと早めのお昼寝の時間みたいです。



 ゆっくりおやすみなさい。





                                    おわり。

                                    作・話の長い人

  • ゆっくりできてよかったね。 -- 名無しさん (2009-07-14 22:18:00)
  • れみりゃかわええ/// -- 名無しさん (2009-09-18 05:54:27)
  • れみりゃは可愛いなぁ… -- 名無しさん (2010-07-14 05:16:38)
  • イイハナシダナー -- 名無しさん (2010-09-19 18:37:43)
  • れみぃかあいい
    -- 名無しさん (2010-11-27 14:27:04)
  • めっちゃいい話この話作った人マジかみ -- ゆっくり大好きです!! (2011-10-22 19:49:55)
  • れみりゃが可愛いすぎて生きるのが辛い -- 名無しさん (2012-01-03 08:44:39)
  • よし、れみりゃ1匹飼わせてもらおうか -- ちぇん飼いたい (2012-02-27 19:10:39)
  • さて!今日の昼飯は・・・
    肉まん・・・だと・・・ -- 名無しさん (2012-08-11 10:39:36)
  • ありがとう。 ゆっくり虐待とかわけのわからないジャンルが増える中で、すごく安心のできる作品でした。キャラクターがものすごくかわいいです。 -- 名無しパチュ (2012-09-25 20:20:51)
  • ↑同感、ゆっくり虐待する人ってなんかこう・・・病んでるんだろうね。 -- 名無しさん (2012-12-13 07:06:17)
  • 絵本みたいにほのぼのしてるな。 -- 名無し (2014-02-14 07:51:47)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年02月14日 07:51