美鈴の休日:激突!めーりん対ゆーぎ!!

 「…参りました」
 青年は敗北を認めた。
 青年の前には、ボロボロになったゆっくりまりさがのびており、それに相対するように勝ち誇った表情のゆっくりめーりんと、その飼い主の紅美鈴がいた。

 吸血鬼の館・紅魔館の門番である美鈴は武術の達人でもあるので、彼女に試合を申し込む人間がしょっちゅうやってくる。門番中に相手をするわけにはいかないので、美鈴は休日の度に人里まで向かい、挑戦者の相手をしている。今のところ、彼女に試合を申し込んで勝った人間はいない。
 その美鈴が最近ゆっくりを飼い始めたという噂が上がり、彼女が飼っているならゆっくりも強いはずだ、という考えから、自分のゆっくりを育てて美鈴のゆっくりに挑戦したいという者が現れるようになった。
 実際、彼女の飼っているめーりんは強かった。元々、美鈴は門番を手伝わせるためにめーりんを鍛え始めたのだが、噂を聞いた飼い主達がやってくるようになってからは、美鈴は人里へ向かう時にはめーりんを連れて行き、めーりんへの挑戦者の相手もしていた。美鈴の教育の賜物か、こちらも未だ負け知らずだった。

 「いやあ、相変わらずお強いですね」
 先ほどのまりさの飼い主が美鈴に話しかける。美鈴は、そのまりさを彼女の"気を使う程度の能力"で回復させているところだった。
 「いえいえ。貴方のまりさもだいぶ強くなってますよ」
 美鈴は回復を続けながら笑顔で答える。
 その後も世間話などを挟みつつまりさの回復は続けられた。美鈴は基本的に穏やかな性格で、どこか親しみやすさを感じさせる。それも挑戦者が多い理由の1つかもしれない。
 まりさがすっかり元気になると、
 「もっと強くしてまた挑戦しますね!」
と言い、青年は美鈴と別れた。この日の挑戦者は彼で最後だった。
 「さてと、私たちも帰ろっか、めーりん」
 「じゃお!ゆっくりかえるよ!」

 日が暮れ始めた帰り道を美鈴とめーりんが歓談しながら歩いていると、前方に人影が見えた。
 「やぁやぁご両人。初めまして、かな?」
 「はぁ、初めまして。え~と…失礼ですがどちら様で?」
 「ああ、私は勇儀っていうんだ。宜しく」
 星熊勇儀…伊吹萃香の古い友で、萃香同様四天王の1人だった鬼だ。今は、地上に嫌気のさした他の鬼達と共に地底に住んでいるという。
 「…あ!萃香さんのお知り合いの」
 「お?あんたも萃香知ってんのか」
 「ええ…」
 美鈴も萃香の強さを身をもって知る1人である。
 「…で、一体何の用でこちらまで?」
 「単刀直入に言おう。勝負がしたい」
 「…ええ!?」
 紅魔館の図書館の主、パチュリー・ノーレッジ…先日地底に向かった霧雨魔理沙と交信していた…の話によれば、勇儀は勝負事の際に、片手に酒を満たした杯を持ち、酒を零さないようにするというルールを自らに課して戦うとのことだった。そのルールがなければ相当な実力者に違いない。普通の人間相手なら強い美鈴も、相手が妖怪や鬼…しかも元四天王ともなれば話は別だ。勝ち目がないのはともかく、無事でいられなくなるのは避けたい。
 「いや、あの、それはちょっと…」
 美鈴は丁重に断ろうとした。
 「ん?…ああ、悪い悪い。言い方が悪かったみたいね」
 「…へ?」
 「別に私があんたとやり合おうってんじゃないんだ。…ほら」
と言って勇儀は、自分の足下を指す。そこには勇儀と同じ顔の饅頭…ゆっくりゆーぎがいた。
 「あんたも飼ってるんだろ?あんたのゆっくりと、私のゆーぎで、勝負。いいかい?」
 「ゆっくりしょうぶしてね!」
 ゆーぎが続けて言う。
 美鈴はしゃがみ込んでめーりんに聞く。
 「どうする、めーりん?」
 「じゃお!めーりんしょうぶしたい!」
 「大丈夫?疲れてない?」
 「だいじょうぶだよめいりん!」
 「そっか。…それなら」
 美鈴は立ち上がった。
 「いいですよ。その勝負、受けて立ちます!」
 「じゃおおおおおん!」
 2人と2匹の表情は自信に満ちあふれていた。

 2匹の戦いは引き分けに終わった。実力はほぼ互角で、相打ちで勝負が決まった。
 「あんたのめーりん強いなぁ」
 「貴方のゆーぎもなかなか」
 美鈴は2匹を回復させながら勇儀と談笑していた。地上の妖怪の話…特に風見幽香の話に、勇儀は大いに興味を示した。勇儀はどこからか酒を取り出し、自分で呑みつつ美鈴にも勧めたが、回復が終わってないので、と美鈴は断った。気を使っているときに酒などの外部刺激が入ると気が乱れてうまくいかなくなるのだ。
 2匹の回復が終わると、空が黒くなり始めていた。
 「あんたが気に入ったよ。今度ゆっくり酒でも呑もう。あと地底も案内してあげる」
 勇儀は美鈴の肩を掴み笑いながら言った。めーりんとゆーぎはすっかり仲良くなったようで、しきりにじゃれ合っている。
 「ええ、その時はこの子も連れて」
 「ああ、待ってるよ」
 そうして、2人はそれぞれ自分のゆっくりを連れて帰路についたのだった。

以下作者の言い訳など
  • 最近のチル裏のやりとりを見て思い切って投下することにしました。実は発端になった(?)コメント(めーりんとこまちネタで~)を投下したのは自分です。たぶん書きます。
  • シリーズものっぽいタイトルですが、今のところあと1本しか考えてません。
  • 美鈴の使う気=気功とかそれ的な何か…という解釈です、一応。
  • 戦闘描写は…勘弁してくださいorz
  • 感想、質問、誤字報告等あれば下のコメント欄へ。閲覧ありがとうございました。
尻尾の人

  • 「ゆっくり酒を飲もう」を
    ゆっくりを漬けて発酵させた酒か何かだと思ってしまった。 -- α (2009-02-03 03:59:09)

  • そういうのもあるのか…!

    表現変えた方がいいですかね? -- 作者 (2009-02-03 22:58:30)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年02月03日 22:58