※他の"美鈴の休日"シリーズと同じ設定ですが、読まなくても問題ないと思います。たぶん。
紅魔館の門番・紅美鈴は武術の達人でもあり、彼女に試合を申し込む人間が後を絶たない。また、彼女の飼っているゆっくりめーりんも強く、めーりんへの挑戦者も増えていた。美鈴とめーりんは休日の度に人里まで向かい、挑戦者の相手をしている。今のところ、双方とも負け知らずだ。
その美鈴が、ゆっくりをもう1匹飼い始めた。
ある日の門番中、例によって昼寝中の所を例によってメイド長の十六夜咲夜にたたき起こされ、一緒に門番をしていためーりんの方を見ると、昼寝していためーりんの隣で寝ているゆっくりがいた。
美鈴はまずめーりんを起こした。
「起きて、めーりん」
「…ZZZ…」
「起きろやーい」
美鈴はめーりんを揺すった。
「…じゃ、じゃお?」
めーりんはやっと起きた。
「あ、起きた。ねぇ、隣の子は誰?」
美鈴に聞かれためーりんは隣を見た。
「じゃおっ!このこはこまちだよ!」
「知り合い?」
「このこまちはめーりんのしらないこまちだよ!でもめーりんとこまちはなかがいいんだよ!」
美鈴は不思議がった。知らないのに仲がいいというのはどういうことなんだろう。
…ちなみに、美鈴が後日このことをパチュリー・ノーレッジに尋ねたところ、
「後半は種別のことを言ってるんじゃないかしら。何かの本で見たけど、めーりん種とこまち種はゆっくりの中では相性がいいらしいわ」
と言っていた。
とりあえず、害はなさそうだと判断した美鈴は、こまちに関してはそのままにしておくことにした。
その日の門番の仕事が終わったとき、美鈴とめーりんが帰ろうとすると、こまちが目を覚まし、めーりんについてきた。
美鈴はそれに気づくと、こまちを追い返そうとしたが、
「こまちはめーりんとゆっくりしたいんだよ!ゆっくりつれてってね!」
と言い、めーりんも、
「ゆっくりつれてってあげてね!」
と言ったので、仕方なくこまちも連れ帰ったのである。
それ以来、門番の仕事がないときは、めーりんとこまちはよくじゃれ合ったり、一緒に寝たりしている。
美鈴は、めーりん同様にこまちに門番を手伝わせようとして訓練させたこともあったが、めーりんほどうまくいかず、門番中や、美鈴とめーりんが挑戦者の相手をしに行く時はこまちは美鈴の部屋で留守番することとなった。
美鈴がこまちを飼い始めてしばらく経ったある休日。
珍しく美鈴にもめーりんにも挑戦者がいなかったので、美鈴は自室でのんびりしようと思っていたのだが、こまちが"ゆっくりぷれいす"に連れて行きたいと言ってきたので、散歩もかねて、めーりんと一緒に行くことにした。
こまちに言われるままに美鈴達が進むと、紅魔館の近くにある、魔法の森とは違う森を抜けた先に、少し開けた場所があった。
「ここがゆっくりぷれいすだよ!」
とこまちが言った。
こまちの"ゆっくりぷれいす"は、日当たりが良く、草が青々と生い茂り、風がとても心地よい。昼寝やピクニックにはうってつけの場所と言えるところだった。
と、美鈴達はそこに女性が1人、寝転がっているのが見えた。先客がいたようだ。
「ここはこまちたちのゆっくりぷれいすなのに!」
こまちは少し怒り気味だった。
("たち"って、私とめーりんも含まれてるのかな)
と美鈴は思った。
めーりんが指摘した。
「でもあのひとはゆっくりしてるからだいじょうぶだよ!」
確かに、ゆっくり流に言えば、女性はとても"ゆっくり"している。ゆっくりしているならばゆっくり達の敵にはならない。
美鈴達は女性に近づき、寝顔をのぞき込んだ。
(なんか、こまちに似てるなぁ、この人)
と思った美鈴はしばらく女性の様子を眺めていたが、だんだんとまぶたが重くなり、しばらくすると横になって眠っていた…。
「……い、おーい…」
どれくらい眠っていたのだろうか。女の声がして、美鈴は眠りから覚めた。
体を起こし、辺りを見回すと、2匹は美鈴の腰の辺りでまだ眠っており、隣には先ほどの女性がいた。
「あ、起きた」
「…おはようございます…」
「もう夕方近いけどね」
西の空が赤みを帯び始めていた。
美鈴が尋ねた。
「え~っと…どちら様でしたっけ?」
「あたい?あたいは小町。小野塚小町だよ」
「小町…こまち…あ!」
と言って美鈴はこまちを抱き上げ、小町に見せた。こまちとめーりんも目を覚ましたようだ。
「もしかして、この子の"本物"の方ですか?」
「"本物"って…まぁ、そいつはあたいのゆっくりみたいだね」
意外な形での"本物"との初対面になった。
「…なるほど、あのこまちが美鈴達をここまで連れてきたってわけか」
小町は納得したようにうんうんと頷いた。
「ゆっくりって、結構本物に似るもんなんだな」
「そうですか?」
「そうだろ。だって…」
と、小町は、三途の河の河岸にいるゆっくり達の話を始めた。美鈴も、幻想郷にいるゆっくり達やその"本物"達の話をし、2人でゆっくりと"本物"の共通点を探し合った。おおかた探し終わった頃には、たくさんの共通点が挙がっていた。
「…な、言ったとおりだろ?」
「ホントですね」
と、2人は笑い合った。
日が沈み始めたので、2人は帰ることにした。途中までは道が一緒ということで、そこまでは2人で絶え間なく談笑していた。死者の話、挑戦者の話、裁判所の話、紅魔館の話…話の種は尽きなかった。
途中で美鈴がふふっ、と笑った。
「今の話、そんなに面白かったか?」
「いえいえ。小町さんとお話してるの、楽しいなあって」
「そっか。あたいも結構楽しませてもらってるよ」
「なんか、私たちって、結構似てないですか?」
「ん~…そうかもね」
その後も歓談は続いたが、しばらくすると、2人は別れ道までたどり着いた。
「それじゃ、あたいはあっちだから」
「ここでお別れですね」
「また会えるといいな」
「また会いましょうよ、あの場所で」
「ああ」
そう言って小町は美鈴達に手を振りながら帰路についた。美鈴も小町が見えなくなるまで手を振っていた。
数日後、三途の河の河岸で昼寝をする死神が1人。
「…かまぼこっ!?」
小町が跳ね起きた。しばらく間があいて、
「…なんだ、夢か…」
小町は辺りを見回した。腰の辺りにゆっくりが2匹。めーりんとこまちだ。ただ、場所が場所だけに2匹とも実体がない。
「…こいつら飼えるのかな…」
以下作者の言い訳など
- 美鈴と小町を絡ませたかった。つまりこれはゆっくりSSに見せかけた新カうわなにするやめ(ry
- 最初に考えてたのとだいぶ違う形になりましたが、なんとか書き上げられました。
- 感想、質問、誤字報告等あれば下のコメント欄へ。閲覧ありがとうございました。
尻尾の人
- これがメイこまの始まりであった。
執筆速度すごいですね。どうしてそこまで速いのか知りたくなります。
時間でも止めてるんですか? -- 名無しさん (2008-11-28 23:33:09)
- 全ての世界は『彼』の物 -- 名無しさん (2008-11-28 23:51:30)
- 実は咲夜さんにスペカをお借りして(ry
移動時間が長いので、その間にネタとか部分的な本文を
ケータイのメモ帳に書きためて、あとは時間と勢いがある時に
ガッと書く感じですね。
あとサークルでレジュメとか資料をワードでよく作ってたんで、
そのせいでキーボード打ちが少し速いのかもしれません。 -- 作者 (2008-11-29 00:02:48)
- えーこまは我が彼岸。
だが…、たまにはメイこまもいいよね!
勝手に着いてくるゆこまち可愛いです。 -- 名無しさん (2008-11-30 22:14:00)
- 感想ありがとうございます!
1カ所、人物が違ったところがあったので修正しました。 -- 作者 (2008-11-30 23:01:18)
- 最後の部分を少し思いついたんで変更しました。 -- 作者 (2008-12-08 20:04:32)
最終更新:2008年12月17日 21:58