※小ネタ
灰色の空。枯れ木の森。
一匹のゆっくりぱちゅりー、通称ぱちぇが越冬の準備をしている。
「むきゅ~」
しかしぱちゅりーの体は弱弱しく、餌集めも薪拾いも思うように捗らない。
このままでは飢えるか凍えるか、いずれかの結末が待っている。
せめてつがいの相手でもいればよいのだが――
その時、ぱちゅりーの頭の上で豆電球がぴっかり閃いた。
「むきゅ! そうだわ!」
必要なものを揃えると、薄暗い部屋の中でぱちゅりーはなにやら唱えていた。
「いろいろえるさいず~、いろいろえるさいず~」
かがり火が揺らめき、壺の中はぶくぶくと泡立っている。
部屋の中央には魔法陣が墨で描かれていた。
「……ぱちぇはもとめうったえたりっ」
そして半眼のぱちゅりーは、ポーズを決めて叫んだ。
「いでよっ、あかいこぁくま~!」
{ もわもわもわ~ん }
「およびですか、ぱちぇさまー!」
たちこめた煙の中から、なんとゆっくりこあくま、通称こぁが現れた!
「むきゅ! せいこうね!
あなたには、これからふゆをこすためにたくわえるおてつだいをしてもらうわ!」
「わかりました、ぱちぇさま♪」
喜ぶぱちゅりーは、早速こぁくまに指示を出した。
召喚契約によりぱちゅりーの従者となったこぁは、仕事に取り掛かろうとする。が、
「むきゅ。あ、ちょっとまって~」
と呼び止められた。
「はい? なんですかぱちぇさま?」
「ひとつ、いうのをわすれてたわ。
こぁ、おしごとはしてもらうけど、それはそれとして……」
むっきゅりと微笑んだ。
「ゆっくりしていってね!」
「……! はい! ぱちぇさまもゆっくりしていってくださいね!」
こぁは元気に冬の空へと飛び出していった。
頭脳労働には定評のあるぱちゅりーと実行部隊のこぁの連携は見事なもので、
巣穴には食料や暖房資材が順々に蓄えられていった。
こぁはとても献身的で、少々難易度の高い作業であっても小器用にこなしていく。
その働きぶりは当初の予定を大幅に短縮させた。
残った時間はもっぱら読書と講釈の時間である。
ぱちゅりーはちょっとした薀蓄話しが好きだったので、話し相手が出来た事が嬉しかった。
そんなぱちゅりーのむきゅむきゅぶりを、こぁは優しく見つめている。
穏やかでたのしい、木漏れ日のような日が過ぎていった。
そんなこんなで一週間。
「むきゅ。きょうでおわりなの……」
それは、こぁとの契約期日だった。
1人分どころかゆっくり数人が冬を越せるくらいになった蓄えへ最後の仕事を積み終えると、
しずしずと、こぁが進みよって来る。
「はい。それで、そのぉ……さいごにほうしゅうをいただきたいのですが……」
「むきゅう……」
ぱちゅりーは顔を赤らめる。
報酬とは、つまり――
だが、その働きには報いなければならない。
意を決して、眼をつむるこぁくまにそっと顔を近づけた。
――ちゅっ
接触は一瞬。
だが、2人にとっては永遠に近しい。
唇を離せば、目の前には赤い顔をした相手が居た。
特に、ぱちゅりーはまっかっかだ。
その反応をみて、こぁは声を震わせた。
「あれ、ぱちぇさま。もしかして……」
ぱちゅりーはぷいと、顔を背けた。
「……わるかったわね……これがはじめてで」
ぷるぷる震えると、こぁは一気に爆発する。
「っっっっっっっっっっっ、きゃーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!
ぱぱぱぱぱぱちぇさまのふぁーすとちゅっちゅきたーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!
かんげきですかんどうですしあわせですっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
いよッしゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あちこちを飛び回り、駆け回るこぁ。
巣も壊れよとばかりのはしゃぎようであったが、ぱちゅりーはぱちゅりーでそれどころではなかった。
「む、むきゅ~」
「はぁ……はぁ……ぱ、ぱちぇさま……」
小一時間して、こぁの暴走がようやくおさまった。
嬉し涙に濡れる目を擦ると、にっこり笑う。
「このなのかかん、おつかえできてとてもしあわせでした」
「……むきゅ」
まだ照れくさいようだったが、それでもぱちゅりーはこぁの笑顔を受け止める。
「ええ……ありがとう。とてもかんしゃしているの」
「それでは、わたしのいとしいぱちぇさま、しつれいいたします……」
いつの間にか煙が立ち込めると、こぁくまは来た時とは反対に、やがて煙の向こうへと消えていった。
あとにはこぁが残した冬の蓄えと、涙を流すぱちゅりーだけがいた。
こうしてぱちゅりーは、冬を迎えたのでした。
エピローグ
「むきゅ。それにしても、わたしひとりにしてはたくわえがおおすぎるわね」
「あ、それはですねー」
ぱちゅりーが驚いて振り返ると、そこには笑顔のこあくまさんが!
「む、むきゅ!? どうして? けいやくはおわったはず!?」
「きょうまでのけいやくはおわったんですが、
これからはけいやくとかかんけいなしにおつかえしようとおもいまして!」
「む、むきゅう」
「それでさきほどのこたえなのですが……」
ごくり。ぱちゅりーは唾を飲み込む。
「これからおせわになるわけですから、ひとりぶんじゃたりないじゃないですか。
……その、いろいろと」
「む、むっきゅ~!」
もじもじとしていたが、やがてがばっとぱちゅりーに突撃するこぁ。
「っ、はあぁん、ぱ、ぱちぇさまぁー、こぁ、もうがまんできませぇーん!」
――ぱちゅりーの紫色の脳裏に、先ほどの甘い香りが掠めた。
「……」
「……ぱちぇさま?」
ぱちゅりーは薄く笑って、ウインクする。
そ・こ・ま・で・よ?
「……きょうは、ね」
――冬は恋の季節。
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いろいろとすんません。
- あれ・・・
何だか鼻から赤い液体が出ているんだが・・・!? -- 名無しさん (2010-05-07 16:03:04)
- ぱちぇこあは正義 -- 名無しさん (2010-11-27 19:04:52)
- おっきした -- 名無しさん (2011-02-22 04:23:35)
- 魔法陣の書き方教えてくだしあ -- 名無しさん (2012-07-26 14:34:50)
- 俺だって召喚したいぃー! -- 名無しさん (2016-10-26 05:14:01)
最終更新:2016年10月26日 05:14