不思議の国の早苗さん

 森の中で、早苗は1匹のゆっくりを追っていた。
 境内を掃除していたときに早苗の目の前を横切ったそのゆっくりは、金髪で、三日月の飾りがついた紫色の帽子を被っていた。早苗が今までに見たことのないゆっくりだった。
 早苗はそのゆっくりに興味がわき、追っていたのだ。
 しばらく追っていくと、そのゆっくりは森の中の開けた場所に出た。早苗が後を追って森から出ると、そこにはゆっくりの集落らしきものがあった。
 その集落にはざっと見る限り4種類ほどのゆっくりがいたが、早苗にはどれもがそれぞれ誰かに似ているように見えた。
 集落を見渡していた早苗は先程の紫帽子のゆっくりを見失ったことに気づいたが、早苗に気づいた1匹のゆっくりが近づいてきた。
 「ゆゆ?おねーさんゆっくりできるひと?」
 「え、ええ、ゆっくりできますよ」
 早苗はそのゆっくりを見た。どこかで見た気がする。
 「あなた、お名前は?」
 「れいむはれいむだよ!ゆっくりしていってね!」
 "れいむ"と名乗ったそのゆっくりは、髪が紫色で、髪飾りとリボンもついていたが、よく見るれいむや霊夢のそれとは形や色遣いが少し違っていた。ただ、性格はれいむとあまり変わりがなさそうである。
 「あの…ここは?」
 「ここはれいむたちのゆっくりぷれいすだよ!」
 「案内してもらっていいですか?」
 「いいよ!ゆっくりあんないするよ!」
 早苗はれいむに連れられて集落に入った。
 集落を歩きながら、早苗はれいむにれいむ以外のゆっくりについて尋ねた。れいむの返答を要約するとこうだ。
 緑色の長髪のゆっくりはゆうかといって、集落のゆっくりの中では賢い方で、花や野菜の世話をしている。寝坊しやすいようで、たまに巣に行くと眠そうに出迎えてくれるらしい。
 金髪で青いリボンをつけたゆっくりはろりすといって、成体でも普通のゆっくりの半分から三分の一程度の大きさにしかならないらしい。性格は一般的なありすに似ているようだ。
 早苗が最初に見つけた紫帽子のゆっくりはまりさという。ゆっくりの中ではおとなしい方で、「ゆふふ…」と笑うらしい。あと、怒らせるとミサイルが飛んでくるらしい。一般的なまりさと違って三つ編みはない。
 そして、この集落("きゅーはち"と呼ばれているらしい)の長はしんきとみまの夫婦だという。早苗は両方とも名前すら聞いたことがなかった。
 しばらく歩くと、その長夫婦がいるという大きな巣の前にたどり着いた。れいむは早苗を連れて中に入った。
 「しんきさま!みまさま!」
 「「ゆ?」」
 「ゆっくりできるおねーさんをつれてきたよ!」
 「ゆっ!ゆっくりしていってね!」
 「みまーん。ゆっくりしていってねー」
 「「ゆっくりしていってね!」」
 「「ゆっくりしていってねー」」
 「おねーさん!しんきさまとみまさまだよ!」
 れいむは早苗に言った。銀髪で、髪の毛を片方で結び上げているのがしんき、緑髪で、星のマークが入った青い三角帽子を被っているのがみま、というらしい。しんきとみまの周りには、小さなしんきとみまが2匹ずついた。2匹の子供だろう。
 早苗は長一家と少し話をしてゆっくりし、もう帰らなきゃ、と言って巣を後にしようとした。
 「あの…」
 早苗は最後に、気になっていたことを尋ねた。
 「もし私がゆっくりできない人だったらどうするつもりだったんですか?」
 見ず知らずの人をいきなり集落の中に案内するのは、いくらゆっくりでも無防備なのでは、と早苗は思っていた。
 「みどりがみにわるいひととゆっくりはいないよー」
 みまが答えた。
 「はあ…」

 集落の入り口でれいむと別れ、早苗は守矢神社への帰路についた。
 途中、また紫帽子のまりさを見つけた。
 早苗はまりさに近づき、声をかけた。
 「ゆっくりしていってね」
 「ゆふふ…ゆっくりしていってね…」
 早苗はまりさの前でしゃがんだ。
 「おねーさん、ゆっくりできるの…?」
 「できますよ。あの、よかったらうちに来ませんか?」
 「ゆっくりできるの…?」
 「もちろんです」
 まりさは優しく笑った。

 数日後、守矢神社に1人の白黒魔砲使いが降り立った。
 「たまにはこっちの神社にも顔出すか」
 魔理沙は神社に入っていった。
 「神奈子ー、いるかー?」
 「あら、魔理沙さん」
 早苗が出迎えた。
 「お、早苗か」
 「八坂様なら奥にいますよ。どうしたんですか?」
 「いや、いいつまみが手に入ってな。キノコの味噌漬けなんだが、早苗も食う…」
 「どうしたんですか?」
 魔理沙は早苗の足下にいるものを見ていた。紫帽子のまりさがいた。
 「ゆふふ…ゆっくりしていってね…」
 「ああ」
 早苗はまりさを抱え上げた。
 「この子、まりさっていうんですよ」
 「そ、そーなのかー」
 「どうしたんですか?さっきから何か変ですよ?」
 「あ、いや、急に用事を思い出してな、今日は帰るわ」
 「はあ」
 「神奈子によろしくな…」
 「わかりました」
 魔理沙は回れ右すると、肩を落としながら歩いて帰っていった。
 早苗は不思議そうに魔理沙の後ろ姿を見ていた。

 「…ってことがあったんですよ」
 「へー」
 博麗神社の縁側で、早苗と霊夢が話していた。早苗の横には紫帽子のまりさがいる。
 「それ以外にも、この子がうちに来てから、黒い帽子のまりさがあまり来なくなってしまって…」
 「へー」
 「黒い子も1匹捕まえて一緒に飼おうと思ったんですけど、すぐ逃げ出しちゃって…」
 「へー」
 「…人の話聞いてますか?」
 「聞いてるわよ」
 霊夢は茶碗を置いた。
 「まあ、その集落にはちょっと興味あるわね。今度案内してくれる?」
 「はあ、いいですけど」

 早苗達が帰った後、霊夢はまだ縁側に座っていた。
 お茶を一口飲んで、誰に言うでもなくつぶやいた。
 「…あいつら、とうとう化けて出たか」

 「ぎゃふん!」
 「ん?変なくしゃみだな」
 「風邪でも引いたかしら…」
 「そういえば、最近温泉が湧いたんだよ」
 「どこに?」
 「あの神社の裏だよ。ひとつ湯治としゃれ込もうじゃないか」
 「幽霊のくせによく言うわよ。…まあ、ついでにあの子に会いに行くのもいいかもね」
 「お前らはまだ仲いいのか?」
 「どういうことよ?」
 「なんか私、アイツにすっごい嫌がられてるっぽいんだよね。だからもう何年も会ってない」
 「ホントに?」
 「ああ」
 「心当たりは?」
 「ない」
 「無自覚ってやつね」
 「そんなのあるか。むしろ魔法教えてやったんだから感謝されるのが普通だろ」
 「まあ」
 「全く、なんなんだかねえ、アイツは」

俺設定補足
  • 黒帽子まりさは紫帽子まりさが苦手。けんかするとかじゃなくて、接触を避けたがる感じ。
  • まりさ以外(れいむと紫れいむ、ゆうかと長髪ゆうか、ありすとろりす)は普通に付き合える。
  • 紫帽子まりさはみまと、ろりすはしんきと一緒にいることが多い。
  • みまとしんきはけーね(通常時)が苦手だけどEXけーねは好き。


以下作者の言い訳など
  • あるぇー?サナマリが書きたかったハズじゃなかったっけ?
  • 他の旧作勢がいないのは情報不足だからですごめんなさい。
  • みまの喋り方がちぇんっぽくなってしまった。にょろーん。
  • キノコの漬け物ってあるんですね。
  • 最後は誰の会話かって?察してください。
  • 「ぎゃふん!」は元ネタありますよ、一応。
  • 感想、質問、誤字報告等あれば下のコメント欄へ。閲覧ありがとうございました。
尻尾の人

  • 誤字見つけたので訂正。 -- 作者 (2008-12-31 10:14:19)
  • まさかの黒歴史。きゅーはちってw -- 名無しさん (2008-12-31 11:38:34)
  • くすくす笑いが止まらなくなって大変でした。
    また、貴方の作品が読みたいです♪ -- ゆっけの人 (2009-01-01 10:04:46)
  • 黒歴史までゆっくりにww
    こういう東方Lvの高いSSは最高に楽しめますよw

    よし、ちょっくら魅魔様で神綺サマに挑んでくる(ぉ -- 名無しさん (2009-01-10 02:21:14)
  • 旧作との遭遇ですね。 -- かに (2009-07-19 04:06:49)
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最終更新:2009年07月19日 04:06