※ 俺設定アリ。
※ 元ネタ、ガ板AA霊烏路 空 【うつほと読書の秋】など
Ⅰ.ゆっくりうつほと究極エネルギー
「ただいま~、今帰ったよ~。」
「お燐お帰り~。早く地上のお土産をちょうだい~。」
「ゆっくりしていってね!」
「はいはい、ちょっと待っててね・・・・・・よしっ、じゃじゃ~ん。地上土産の温泉卵~。お空にうにゅほもはいお食べ。」
「お燐ありがと!」
「うにゅっ!」
ここは地霊殿の中庭より通じる、灼熱地獄跡地。かつては地獄のひとつとして数多くの罪人が落とされた曰く付きの場所であるが、地下世界が地獄から切り離された後は元々棲んでいた地獄鴉、
死体を運ぶ火車、物好きな妖怪達、そして恨みだけで動く怨霊しか住んでいない寂れた場所だ。
そんな辺鄙なところの一角に今二人の妖怪と一体の不思議な生き物がいる。
「温泉ってやっぱりいいねぇ。この寒い季節には本当にたまらないや。」
今帰ってきた少女はお燐こと火焔猫燐。
彼女は猫を思わせるしなやかな引き締まった肢体を持つ、
猫耳に赤毛のおさげ、そして大きなつり目が特徴的な、猫から変化した妖怪の少女だ。
「あ~、やっぱり地上の温泉卵って格別だね。これでお酒があればいうことなしなんだけどね。」
暢気に談笑しながら温泉卵を剥いている黒い羽の生えた少女はお空こと霊烏路空。
幼くあどけない顔をしている傍ら、その体つきはアンバランスに女性的であり、
豊かな胸がブラウスからはちきれそうになっている。
そんな二人のそばの温泉卵をハグハグと頬張る不思議な物体がいる。
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クノ_ノノ_ノ/ゝ、 /ヽ:::_ヽ_ヽ
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不思議な物体、その名を「ゆっくり」と呼ばれている。
とある技術により食べ物をベースにして、触媒に幻想郷の少女達の髪の毛を用いて作られた魔法生物。
この場にいるのは「ゆっくりうつほ」。
饅頭の皮と温泉卵をベースに霊鳥路空の髪の毛を配合して作られた、一匹しかいないゆっくりだ。
霊鳥路空ことお空との名前の区別をつけるように、「うにゅほ」と呼ばれている。
ゆっくり達はモデルとなった本人の性格や性質を様々な形で受け継ぐようになる。
ただし同じ人物をモデルにした固体が数体いても、モデルとなった人物のどのような面が強く受け継がれるかが異なるため、同種のゆっくりでも性格に個体差がみられる。
うにゅほはお空から子供っぽい性質を強く受け継いだ性格をしていた。
「ん~、うにゅほときたら本当に美味しそうに食べるもんだね。やっぱり私に似て温泉卵が大好きなんだよね~。」
お空は夢中で温泉卵を食べるうにゅほに声をかける。
するとうにゅほは温泉卵から目を離して、お空を上目遣いで見上げた。
「そだよ!わたしの大好物だよ!」
屈託のない笑顔で頷くうにゅほ。それを見てお空が意地悪に笑う。
「へぇ~、ちなみにうにゅほ、あんた温泉卵でできてるから共食いだよ~♪共食い~♪」
「・・・・・・・・・・・・・」
ショックを受けてガクガクと震えるうにゅほを見てけらけらと笑うお空。
実際問題、温泉卵が中身となっているうにゅほに鶏から産まれた卵が加わったからといって共食いも何もないのだが、ブラックジョークにしては結構重い。
少しやりすぎた感のあるお空をお燐はたしなめる。
「お空、あんたも鳥科でしょうが。それにちょっとやりすぎなんじゃないの?
うにゅほってば固まってるじゃないさ。」
「あははっ、冗談冗談。うにゅほってば前にも同じこと言われてショック受けてたじゃん。
反応が面白くってさ~。いい加減私みたいに学習しなよ~。」
「鳥頭のお空が言っても説得力ないよ・・・。」
「おくう・・きさまはぜったいに許さない・・・ぜったいにだ・・・・・」
お空をうにゅほは湯気を立てながら親の仇のような目で見つめた。
そのために食べていた温泉卵から目を離してしまい、コロンと温泉卵が転がって中身を零れる。
「うわぁぁぁぁぁぁ!わたしの仲間が!わたしのおやつがぁ!」
「どっちよ・・・。」
うにゅほは目の幅いっぱいの涙を滝のように流していた。
お燐は突っ込みをしながらポリポリとこめかみを掻きながら目の前のふやけた饅頭がこの先生きていけるのかと先を思いやった。
しょうがないから新しい卵を用意してあげようと、
お燐が気を利かせようとしたそのときに隣にいたお空が口を挟む。
「あぁほら、よそ向いてるからこぼしてるよ。うにゅほってば相変わらず行儀悪いね。私みたいにもっとつるんときれいに食べるんだよ。本当にあんた頭悪そうだね。」
「おくうにいわれたくないよ!」
八つ当たりのようにキッとお空を睨むうにゅほ。食べ物の恨みは海より深い。
「ほらうにゅほ、新しい卵剥いてあげるからちょっと待ちなさい。」
お空がお姉さん風を吹かせて温泉卵を剥くと、ぱぁっとうにゅほの顔が笑顔になる。
「ありがと!おくう!」
うにゅほはつい先ほどまではこの世の終わりのように絶望していたのに、現金なものである。
うにゅほはお空に向かって飛び跳ね、そのほほを擦り付けた。
お空は泣きながらほほを擦り付けるうにゅほをうっとおしそうに押しのけるが、
必要以上にぞんざいに扱うことはなかった。
妹分のようなものなのか、お空はなんだかんだいってうにゅほとは仲がいい。
お空がからかうことの出来る数少ない相手だからかもしれないが。
すらすらと温泉卵を剥きどこか誇らしげなお空と幸せ一杯な顔をしたうにゅほ。
その光景を見ることをお燐はなかなか愉快に感じていた。
賑やかな旧都とは違い、こんな何もない寂しい場所では楽しみ方を見つけたもの勝ちだ。
「共食い~♪」
「うわぁぁぁぁぁぁ!わたしの仲間が!わたしのおやつがぁ!」
「またやるか・・・・。」
「ところでうにゅほ、あんたがこんな時間にさとり様のそばから離れるのって珍しいね。」
地霊殿では基本的にペット達は放し飼いだ。
放し飼いにした方が怨霊の力を吸収してより強く健やかに育つためであるという
ペット達の主である古明地さとりの方針から来ている。
しかし放し飼いということは、どこに行っても自由ということであり、
それならばさとりのそばを好むものもいる。うにゅほもその類であった。
うにゅほは一日の大半をさとりのそばかお空のそばにいるが、
この時間ではさとりのそばにいる方が多い。
「でしょ、確かにお燐が言うように、うにゅほがこの時間にさとり様から離れるのって珍しい。いつもはべったりなのにね。でもそれには理由があるんだよ。」
「理由って何さ?」
「実はね、このうにゅほについてなんだけど、ちょっと変わった力を持つようになったんだよ。だからちょっとこれからどうしようか相談してたんだよ。」
「どういうことだい?あんたのゆっくりが不思議な力を使えるようになったって?」
「うん。それもひょっとしたら幻想郷を支配できるぐらいのすっごい力。」
お燐はお空の言葉に既視感を抱いた。そうだ、お空が以前神の力を得たときも似た様な事があった。
何かすごく嫌な予感がする。
「えへへえへえへわたしさいきょお~」
「・・・・・・・・・・・・・あんたら寝言は寝てから言いなよ。」
いつの間にか突っ込み体質になってしまっていてお燐は悲しく思った。
「あんたたちがそこまで自信満々になる力がどんな力か知らないけど、大袈裟にもほどがあるよ。あたいらなんかじゃそんなの絶対無理だってわからない?
前に失敗したの忘れたの?」
「お燐は相変わらず変に慎重だね~。ふっふっふ・・・それじゃあどれだけすごい力か教えてあげようか。」
どこかの氷精と双璧をなすほどの・・・むしろ氷精以上の馬鹿といわれてるお空の戯言を聞いて、
お空の言うことはどうせいつもの冗談だ。真面目に話を聞いていたら身が持たない。
とりあえず話半分に聞いておこうと、お燐は思った。
「まずはじめに、お燐は幻想郷での強さ、立場の良さって何で決まると思う?」
「何って・・・そりゃ弾幕ごっこじゃないの?」
幻想郷では何か争いごとや異変があると弾幕ごっこ、
またの名をスペルカードシステムと呼ばれる弾幕戦で決着をつけるように定められている。
妖怪同士の全力での戦闘は幻想郷を破壊する危険があるためだった。
「でもさお燐、弾幕ごっこで負けたって何もペナルティってないよね?」
弾幕ごっこは模擬的な戦闘とはいえ、言い方を帰ればただのお遊びだ。
異変が起きたときの弾幕ごっこは巫女が勝つまで続けられ、異変は必ず解決される。
それが幻想郷のルールだった。
「確かに。あんたも異変を起こして地上に迷惑をかけたけど、さとり様が庇ってくれたから殆どお咎めなしだったよね。」
「ま~ね~、さとり様にはこってり叱られたけどね~。」
負けても平気な戦いなど、幻想郷の強さには影響しない。
それもそのはず、弾幕ごっこの目的は外の世界の妖怪が幻想入りした際に、
幻想郷の妖怪が太刀打ちできないくらい弱体化しないようにするための模擬的な戦闘システムだからだ。いわば妖怪と人間がそれぞれの役割を演じた遊戯。
それならば何が幻想郷を支配するのだろうか。
お燐はここでふと疑問に思ったが、お空はそれを見透かしたように話を続ける。
「大事なのはさ、弾幕ごっこをした後なんだよ。」
「弾幕ごっこをした後って?」
「例えば幻想郷で普段から立場のいい奴ってどんなやつだかわかる?」
そこでお燐は考える。
どんな奴だっけ?戦いが強い奴?頭のいい奴?長く生きた奴?それともカリスマ性がある奴?
どれも正解であるように思えるし、どれも間違っているように思える。
頭を悩ませるお燐に向かって、お空はニヤリと確信したような笑みを浮かべて答えを出した。
「それはね・・・・・ネチョがすごいやつなんだよ!」
「はぁ!?」
一体何を言い出すのだこのお⑨は?お燐はついにお空の頭が放射能にやられたのではないかと思った。
「まぁ、落ち着いて聞きなよ。考えてもみな、スキマ妖怪、亡霊姫、永遠亭の薬師、アルティメットサディストクリーチャー・・・幻想郷でいい立場にいる奴らってみんなネチョがすごそうじゃん。」
「それは・・・・・・・・・いわれてみると・・・・・そうかもしんない・・・・・・」
そう、幻想郷では異変は日常茶飯事。弾幕ごっこも日常茶飯事。
よって異変によって力ずくで幻想郷での力関係が変化することは殆どない。
調停者である巫女と妖怪の賢者達によってバランスが整えられるためだ。
だからといって弾幕ごっこを無視した争いを起こそうとする者がいてもすぐに制圧される。
暴力にはいくらでも上には上がいる。
弾幕ごっこが制定される以前に幻想郷を支配しようとした吸血鬼騒ぎも、
それ以上の力を持つ幻想郷の妖怪たちによってすぐに終結した。
力は力で押さえつけられる。暴力では何も解決しない。
外の世界と同じだ。日々の生活において大事なものは喧嘩の強さではない。
人との関わりを円滑に行なえる能力が必須である。
つまり愛と友情、そしてその先にあるもの、ネチョだ。
「ネチョですごければ相手に対して主導権を握ることができるんだよ。実際、今言ったやつらの大半が攻めらしいよ。」
例えるなら男同士が夕焼け時に河原で殴り合って友情を深めるように、
幻想郷の少女はベッドをギシギシいわせながら嬌声を響かせることで互いの友情やら愛情やらを深めるのである。と、けーねが言ってた。
高められた信頼は日常生活だけではなく有事の際にも、何者にも変えがたい力を発揮する。
お空とお燐が起こした地下での異変の際も巫女とスキマ妖怪はお互いに
不思議な絆で結ばれていた。
針による強力な射撃、いかなる攻撃もすり抜ける霊撃、
そして巫女が弾幕で壁際に追い詰められた際はスキマ妖怪の助けによって安全地帯へと渡る。
お空とお燐は二人の絆の力の前に敗れ去ったのである。
あぁ、ネチョの力とはなんて恐ろしいのだろう。
「つまり幻想郷ではネチョの強さこそが幻想郷を支配する真の強さだったんだよ!」
「なんだってー!」
「ナンダッテー!」
あまりの衝撃に固まるお燐とうにゅほ。
こんなことに気づいてしまった自分達は消されるかもしれない。
なんて恐ろしい事実があったのだろうか。
「・・・って危うくあたいまで流されるところだった!そんなキバヤシ理論突っ込んで下さいって言ってるようなもんじゃないか!大体それに気づいたからどうだってのさ!それにうにゅほ、当事者のあんたまで驚いてどうするのよ。」
お燐はぜぇぜぇと肩で息をしながら突っ込みを続ける。
ここで自分が流されたら大変なことになると思っていた。
「お燐、ここからが本番なんだけど、うにゅほは最近ネチョに関わる不思議な体験をしたんだって。これから説明するね。うにゅほ、お願い。」
「うん!こんな感じだったよ!」
「まだあるの・・・・・・・・・・」
神様を模したゆっくりが地上から、誰にも気付かれる事なく火焔地獄跡まで一気に
入り込んできたのだ。
そして彼女に語りかけた。
その声は彼女の好奇心を刺激した。
『ネチョには究極にして人類が手にする事が出来た
原初のエネルギーを生む秘密が隠されています。
そして、女子の群れに棲むペットである貴方。
貴方はそのネチョの力を体に宿らせる事が出来る筈です。
それにより地底のみならず、地上にも希望をもたらしましょう』
彼女は光に包まれ、何者かが体に入り込んでくるのを感じた。
気付いた時には彼女の心は大きく変化していた。
空は手に入れた力を使うのが楽しくて、気が付いたらうにゅほの灼熱地獄跡は
熱さを取り戻していた。
その熱はうにゅほの体内のいろんな水を熱し、水蒸気の圧力が限界に達した時に間欠泉
となって吹き出していたのである。
地上から訪れた者。
それは何者だったのだろうか、そして目的は。
うにゅほの小さな頭は、そんな疑問をすぐに吐き出してしまった。
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「・・・・・・・どっかで聞いた話ね・・・・・それ・・・・。しかも吐き出したとか言いつつちゃっかり覚えてるし。」
「でしょ、だから私も共感しちゃってさ。」
「共感も何もあんたとまるっきり同じだよ・・・・。頭痛くなってきた・・・・・。」
インターネットが発達したのはエロ画像が見たい人が頑張ったから、
コミケが世界有数の祭典へと発展したのはエロ同人が見たい人がたくさんいたから、
そしてルネサンスの時代の芸術が名作ぞろいなのはそのあまり余ったエネルギーを裸婦の絵画や彫刻に向けたから。
人類の進化は常にネチョと共にあった。煩悩こそが、ネチョこそが究極のエネルギーなのだ。
「おくうといっしょ~♪」
うにゅほは自分の身に起きたことをまるで他人の笑い話を聞いたかのように無邪気にはしゃいでいた。
突拍子もないはなしを聞かされてやれやれと頭を抱えるお燐。
だがしかし、起きたことを覚えているということはありがたかった。
お空はすぐに忘れてしまったのに。
・・・・・・あれ?お空ってひょっとしてうにゅほよりもおバカ?
お燐はそう思ったが、親友のプライドのために、思ったことを口にせずおいた。
うにゅほは先ほどの話の影響かぴょんぴょんと跳ねて調子に乗る。
「わたしはかくをつかえるよ!ほめてほめて!」
「はいはい・・・・。」
「で、具体的にどうすりゃいいのさ?その力って今使えるの?」
「それがいつでも使えるわけじゃないんだよね。燃料が必要なんだ。」
「燃料って?うにゅほとネチョればいいの?そこまでいくと冗談ですらないと思うけど・・・・」
「それはね・・・・」
お空がもったいぶってお燐への返答を溜めていることがうにゅほは堪え切れなかったようで、
うにゅほはお空が質問に答える前に叫んだ。
「えろほんよんで!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「え・・・・・・エロ本?」
「そう、外の世界の人間がその力を込めて必死になって作り上げるエロ本だよ。ずっと眠らず、仕事と板ばさみになりながら、睡眠不足を栄養ドリンク片手に乗り越え、印刷所の締め切りに追われ、外の世界の年に二度あるお祭りで奉納するための作品。そのエネルギーこそがうにゅほのエネルギーの源となるんだって。」
「えろほん!えろほんー!」
人間がその持てる技術を結集して作り上げた作品。それがエロ本だ。そうお空は熱心に語っていた。
お燐は、お空ってば何か変な宗教にでもはまってるんじゃないかと内心思いながら、
そっと胸に秘めた。段々突っ込むのも疲れてきた。
「はぁ、さいですか・・・・。」
うにゅほが不思議な力を手に入れたことが本当かどうかわからないけどとりあえず止めておこう、
お燐はため息しながら思った。
「でも地下にはエロ本なんてないじゃん。」
これで一安心だとお燐は思った。
たとえうにゅほがトラブルを巻き起こす力があっても燃料がないんだったらどうしようもない。
「それが問題なんだよね~。お燐、地上にはエロ本ってないの?」
お燐は地上には外の世界の本が流れ着くことがあることを思い出した。
そして先ほどの気の緩みがお燐にこれより始まるトラブルの元凶となる一言を口走らせる。
「それなら地上には外の世界のエロ本が流れ込むことがあるらしいよ。」
お燐は迂闊だった。
調子に乗りやすいお空にこんなことをいったらどうなるか答えは決まっている。
お空は天を仰いで高らかに宣言する。うにゅほも体を傾けて天井を見あげる。
「よしきた!さぁ、地上侵略だ!地上ならえっちな本がたくさんあるはずよ!」
「わたしったらさいきょうね!」
やる気全開のお空とうにゅほ、きらきらと目を光らせて明後日の方向を見つめている。
お燐は口が滑ったことに後悔しながら慌てて止める。事態をより悪い方向に誘導してしまった。
お空とうにゅほが地上に向かおうとしていることを彼女たちの主人のさとりに知られたら大事だ。
ただでさえもお空は以前核の力を得たときに大騒動を引き起こした。
お燐はあのときの二の舞になることは御免だった。
「駄目だって、さとり様に叱られるって!」
「大丈夫よお燐!うにゅほの力が役立つってわかればさとりさまも褒めてくれるって!」
「あんたもう前の失敗忘れたの?鳥頭にも限度があるわよ。」
「私は過去を振り返らない!前を見て進むのよ!」
「わが生涯にこうたいの二文字はない!」
「うわっ・・・・あんたら学習しないタイプの言うことだそれ・・・・。」
止められない止まらない。もはやこうなっては後の祭りだった。
うにゅほが本当に不思議な力を持っているかどうかすらもわからないのに、
お空とうにゅほは変な確信を持っている。
うにゅほと似たような体験をした結果核の力という強大な能力を得たお空は自分とうにゅほを重ね合わせているのであろう。
お燐はさとりに知らせるべきか、それとも自力で解決できるように努力するか迷った。
板ばさみになる者の苦悩であった。
しかしその心配は杞憂に終わった。
「どこに行くつもりですか?」
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最終更新:2010年04月15日 16:02