風のゆっくり

「きゃあ!」
妖怪の山に悲鳴がこだました。
覆面の集団が少女を襲っていた。
正確に言うと、彼女が抱えているゆっくりれいむを狙っているのだ。


こいつらはゆっくり強盗団。
ゆっくりを捕まえては高値で売りさばく、巷で評判の悪いやつらだ。


「なんなんですか、貴方達!」
少女――東風谷早苗が叫んだ。
「何だと言われても、俺たちゃゆっくり強盗団だからなぁ」
「なぁ」
男達はうなずくと、早苗に向き直った。
「時にお前……最近引っ越してきた東風谷早苗だな?」
「え、ええそうですが」
「とてもゆっくりを可愛がっているな?」
「はぁ、そうですが」
「寝食をともにしたり、一緒に風呂に入ったりしてるんだろう?」
「ええ、まあ……」
強盗団はニヤリと笑った。


「という事は、あんたのゆっくりには、あんたの入った風呂のエキスがたっぷり染み込んでいる訳だ!」


「!」
「そいつをもどした湯を片手に、アンニュイな午後の始まりというわけさ」
「げっげっげっ」
「なっ、なんて事を考えるんですかっ ///」
早苗は顔を真っ赤にして怒鳴った。
しかし、御幣(あの紙を挟んだやつ)は家に置いて来ている。
あれがないと、奇跡を起こす力を制御できないのである(多分)。
ジャージにチャリンコスタイルで散歩気分でサイクリングのつもりが、
ノンブレーキで麓まで駆け下りた挙句に大木に激突してお釈迦になった自転車を
キュウリ5本で修理をお願いしたにとりのところに預けっぱなしなのが運の尽きだった。色々と。
今度から御幣の一本くらいは、谷間にでも仕込もうと心に決めた、東風谷早苗じゅう○○さいであった。
「くやしいっ。でも……」
強盗団はにじり寄ってきた。
「さぁ、そのゆっくりを渡してもらおうか。
 なに、あれだ、仮にゆっくりをとろうとしてそのふくらみに手が触れたとしても、それは不可抗力というものだよ……」
フフフ、と紳士的な笑みを浮かべる強盗団。どこが紳士なのだ。



その時。一陣の風が、通り抜けた。



「さ「とぅッ!」」
強盗団の一人が吹っ飛ばされる。
「な、なんだなんだ」
慌てて周りを見回す一堂。
何かに気付いたらしい男の一人が、木の上を指差した。
「あ、あれは!」
「な、なんだ天狗か?」
いやさ、違う。


あ、


天狗のようで、天狗でない。


ゆっくりのようでゆっくりでない。


人を見下ろすニヒルなあいつ。


天上天下唯我独尊を地でいく、その生き様は!


「き「清く!」ごふっ」
「げh「正しい!」」

強盗団2人を吹っ飛ばして、そいつは地に降り立った。
これすなわち、



「きめぇ丸ちゃん!」



その口元から、キラリ、白い歯がのぞいた。
「ちゃんは余計ですよ、サマエさん?」

直後、体格のいい男が、角材片手に踊りかかる。
「この野郎、どこから沸いてきやg「風に聞いたのさ」べきょっ」
しかし、気だるげに首を振って攻撃をかわすや否や、逆に一撃で鳩尾を貫いた。
その動き、まさに扇風機ッ!
「……このキュートなおにゃのこさんをいじめるワルがいるってなぁ!!!」
すると、数人の男が、四方からつっかかる!



「 ラ デ ィ カ ル グ ッ ド ゆ っ く り 頭 部 限 て ぇ ゐ ! ! !」



瞬間、あたりの岩が爆ぜ、きめぇ丸の体が虹色に輝いた。
見れば、先ほどの男どもはあらぬかたへ、みな吹っ飛んでいた。
「フッ それなりに人数だけはそろっているようだな?」
「畜生! ええい、かかれ、ものどもかかれぇい!」
リーダーらしい男が、悪事の露見した代官ライクにメンバーをけしかける。
何人かやられたとはいえ、残りはまだ十数人。
並のゆっくりならば、瞬く間に殲滅されているだろう。
だが、
「だが、まだ足りない!」
彼女は風。
「足ァりないぞ!」

一陣の、風。

「お前達に足りないもの!
  それは――ッ情
          熱
"ここからはダ  思  ストでお送りします"        
(便宜上、強  想  バーをそれぞれアルファベットで呼ぶことにしよう)
AとBはまと  理  飛ばされた。
C~Eは浣腸  念  絶した。
Fは泥饅頭を   頭  れた。
Gは恥ずかし  脳  露された。
まだ息のあっ  気  Cに文々。新聞を突き刺した。
HとIを向かい  品  制ぶちゅーさせた。
Jはそれを見  優  嫉妬した。
Kがそれを助  雅  た。
Lの立てた計  さ  通り、完全犯罪を目論んだ。
Mと愛の逃避  勤  についた。
しかし、Nは  勉  優秀な刑事だったので、崖に呼び出し自白させることに成功した。
と、ここまで  さ  聞連載の小説が終わってしまったので、Cの臀部に突き刺した。
ちなみにJ~  ゆ  は、本当は木につるしておいた。
Oはまったく  っ  正攻法で殴り倒した。
何だか飽きて  く  の臀部に3本目を突き刺した。
Pはどこかよ  り  ったのでCに4本『もうやめてCのおケツのHPはもうゼロ
          さ
           そしてェなによりも!!!!!!!」


掻き消える風神少女。


「ゆっくりが足りない!!」


「あべしッ」
最後まで残ったリーダー格の男。しかし、その一撃を受けて崩れ落ちる。
恨みがましい声で、
「頭部、限定って、元から、頭しかねぇじゃ、ねえかっ
 ……それに、ゆっくり、2回、言うn「大事なことだから2回言いました2回言いました!」


――ガクリ。




悪は、去った。
きめぇ丸の手によって。
「ありがとうございました、きめぇ丸ちゃん」
「フッ、当然のことをしたまでです」
ゆっくり強盗団は、簀巻きにして川に流した。
トラウマになってゆっくりを襲うことももうあるまい。
「では、これで失礼します」
「え? そんな、まだお礼もしていないのに……」
そういって顔を曇らせる早苗に、きめぇ丸はニヤリと笑った。
「貴女はとてもいい被写体だ。その表情こそ、キャメラマンへの報酬ですよ。……サマエさん?」
ウインクするきめぇ丸に、ハッとする早苗。
「サマエじゃありません、さなえです!」
「おおこわいこわい」
大袈裟に肩を竦めると、きめぇ丸は去っていった。
これから記事を書くのか、写真を撮るのか、はたまた救いを求める声に再び手を差し伸べるのか……?



名前を間違えた事に怒っては見せたものの、早苗の表情はどこか晴れやかだった。
「私も、もっと強くならなくっちゃね」
早苗は、ぎゅぅっっとゆっくりれいむを抱きしめる。
幻想郷は、まだまだ不思議でいっぱいだ。


――ところでその腕の中のれいむといえば、人知れず目を回していたりする。


きめぇ丸のゆっくりは、おこちゃまなれいむにはビター過ぎるようだった。





“風のゆっくり”fin



『次回予告』
きめぇと人には罵られ、
うぜぇと人には叩かれる。
ああだがしかし、彼奴は絶対に止まらない
おのれの信念口笛に乗せて、我が者顔で闊歩する。
なぜならあいつは風、風なのだ。
風の行方は、風が決める。

  • 次回予告が秀逸すぎるwww
    若本ボイスで再生余裕でした。 -- 名無しさん (2009-02-06 14:09:32)
  • 早苗です!
    あってるでしょう?
    こんな感じになるのかな -- 名無しさん (2010-09-30 17:12:15)
  • ちょっと待て。守矢一家の風呂に入る順番を考えてみよう。
    一番風呂は当然、上位者たる神奈子さま・諏訪子さまが入るよな・・・
    と、すると、早苗さんは三番風呂・・・
    つまり、このゆっくりれいむには、
    早苗さんだけでなく、神奈子さま諏訪子さまのエキスもしみ込んでいるのではなかろうか。
    守矢三柱のエキスがしみ込んでいる・・・ゴクリ・・・
    -- 名無しさん (2010-11-27 16:31:22)
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最終更新:2010年11月27日 16:31