このSSは作者当て用SSです。ギャグ寄りですが、隠す気はあったりします。
聖ニコラウスは本当に居るのか?
男は、ある一日が嫌いだった。何より大嫌いだった。だが、輪をかけて嫌いになった理由が、実のところある。
つい昨日、御年××歳にして、しっとマスク状態となったためである。
親しい女性にお前と親しくする気はない、要約すればフラれた。というわけだ。無論、当人としてはそうしたくは無くはあったのだが。
そして、肺腑の中から重い空気を吐き出し、シリンダーに鍵を差し込んで、ぐるりと回す。
これにはコツがあり、まわす途中で上に力を入れないと上手く開かない、という鍵としてそれはどうなのか、という代物に経年劣化で変貌していたのだ。
重いドアを開け、首をごきごきと鳴らして荷物を置くと、同居人がテレビから目を外して、うれしそうな声を出す。
「おかえりなさい!」
ぴょんぴょんと跳ねながら、こちらの胸に飛び込んでくる。男はそれを受け止め、ただいまと返した。くりくりとした目と、どこか不遜さを感じさせるその生き物の名は、まあいろいろある。
ゆっくりと呼ばれることが多いのは、単に『ゆっくりしていってね!!!』という言葉を発するから、というだけである。
基本的によくわからない何者かで、生き物というよりはナマモノと呼んだほうがより適切である、というのは、これに接触したものの基本的な感想であった。
青いリボンをつけているあたりは、冬だとどこか寒々しく見える。
「あのね! 聞きたいことがあるの!」
深夜だからもっと声量を落とすように、と男が注意すると、すこし声を落としてそのゆっくりは、きらきらと目を輝かせながら口を開いた。
「サンタさんって、寝てる間に靴下にプレゼントを入れてくれるんだよね!」
どこで知ったのか、とぎくりとした表情で聞くと、Nのつく公共放送の児童向け番組でやっていたらしい。
サンタさんこないかなー、ゆっくりはそう言っていたが、サンタ役になりうる男はと言うと、クリスマスなんて都市伝説ですよ。……と、言い張る派閥に宗旨替えをしたばかりである。
良い子にしていないとな、と言った後に、猛烈に後悔の念を覚える。
というか、嫌いになったと放言したのが馬鹿らしくなった、というのが真相だ。しっと団のマスクは外さねばなるまい。
となれば、ゆっくりが好きなものを調達せねばなるまい。そう考えて、無い知恵を絞るが、一向に思い浮かばない。
確かに昔、母がサンタへの手紙を書かせて、遠まわしに『リクエストしろ』と言っていたのだが、といってゆっくりにどう字を書かせろ、というのか。
「たのしみー!」
そう言っているゆっくりに手紙を書こう、と提案してみたが、サンタさんは言わなくたって絶対わかるんだよ!となぜか教えようとしない。
困り果てて、母に相談してみると、自分で考えなさい、とにべも無い返事が返ってきた。確かに、子供の時分に絶対に言わない、と意地を張った記憶はあるが。
そうこうしているうちに、クリスマス・イヴになってしまう。男は仕方なく、というか悩みに悩んでゆっくりの刺繍が施されたかわいらしいマフラーを買うことにした。赤い包装紙とリボンでラッピングをしてもらい、それをかばんの奥に隠す。
そして予約しておいたケーキを買って、同様に予約した某チェーン店のチキンを受け取り、一人と一匹でささやかなクリスマスパーティを行うと、強引にゆっくりを寝かしつける。
赤い三角帽を被ったままだったので、それを外してやり、プレゼントを入れるために、ゆっくりが事前にかけておいた靴下を見やって、さて一仕事始めるか、と隠しておいたかばんを取り出した。
いすに座ってアルファベットのスタンプで英文の手紙を書き、それをラッピングのリボンにはさんで入れようとする段になって、なぜかまぶたが下がってくる。
ぱん、とほほをたたいて、目を覚まそうとするが、その数瞬前に、すとん、と意識が落ちた。過眠性の気は無かったはずなのだが、と妙なことを考えながら。
だが、意識は落ちたというのに、なぜか、耳にはしゃんしゃんという鈴か何かの音と、独特の笑い声が聞こえていた。昔、聞いたことがあるような、無いような、そんな声だった。
確か、それを聞いたのはサンタの正体を見極めてやる、と無理に起きていて、うつらうつらしていたときだった。
「おきて! おきて!」
机に突っ伏して寝ていた男の前で、ゆっくりがぴょんぴょんと飛び跳ねている。その頭の上には、プレゼントが入って大きくなった靴下が載っていた。はて、マフラーは入れたっけな。と思うが、ラッピングの色が全く違う。鮮やかな、青。
「サンタさんが来てくれたんだよ!」
「……先に言うことは?」
「おはよー!」
えへへ、と恥ずかしそうに笑い。ちるのは跳ね回る。包装紙と同じ色の青のリボンを揺らして。
あとがき
さて、私は誰でしょう?というまでも無く、たぶんバレてますけどねHAHAHA。ネタはあっても書けないぜッ!メルツェェェル!
元ネタは特にありませんが、あえて言うなら、子供のころに見た夢が元ネタですかね……今となっちゃ、何でこんな夢を見たんだろう、という感がありますが。
NORADだって追跡しているんだ、居ないはずもあるまい。……と思いたいところ。居ないと思いますけどね。元ネタもはっきりしてますし。
最終更新:2009年01月03日 09:54