慧音とゆっちゅりー

「むきゅむきゅ~ん」
セミの音が騒々しくなりつつある夏の朝
質素な日本家屋の縁側で、
人ですら読む人間を選びそうな分厚い古文書を開いて、
ゆっくりパチュリーことゆっちゅりーが楽しげな声を上げる
もちろんゆっくりには、古文書どころか文字を読む知能などはない
しかし、このゆっちゅりーは『本を読む』と言う行動を好み、
暇さえあればこうして本を開いている
「お前はいつもそうやって本を眺めているが楽しいのか?」
そんなゆっちゅりーに隣に座っていた上白沢慧音がたずねる
慧音は、赤ん坊の時に両親とはぐれ、
一匹で死に掛けていたゆっちゅりーを保護して以来ずっと面倒を見ているのだった
「むきゅ!知識を得るのはとても楽しいよ!」
ゆっちゅりーは当然とばかりに答える
文字も読めないのに、と慧音は思うが本人が楽しそうなので特には何も言わなかった
「うむ、では私はそろそろ寺子屋にいかねばならない。留守番を頼んだぞ」
「むきゅ!いってらしゃい!」
慧音は本に熱中しているゆっちゅりーに一言言って寺子屋へと向かった


…もしかしたら寂しいのかもしれない
寺子屋に向かう道で慧音はゆっちゅりーの事を考えていた
自分は毎日寺子屋に出かけ夕方まで帰らないし、
家に帰っても翌日の教材の準備などで忙しい
休日も妹紅などがしょっちゅう遊びに来るのであまり構ってやれない
わざわざ保護しておきながらあまりに無責任だったのでないだろうか
ゆっくり一匹満足に面倒見られずに子供達の指導などできるだろうか
生来生真面目な慧音は自分のあり方について悩んでいた
そんな考えが頭に残り一日中授業にあまり身が入らなかった
悶々とした気持ちで授業を終えた慧音は、早めに家に帰ってみることにした
「むきゅ!」
「ゆっ!わかったよ!」
「ゆっくり理解したよ!」
慧音は家に帰ってみて驚いた
なんと30匹ほどの様々なゆっくり達が庭に集まって集会を開いていたのだった
そして、慧音の飼っているゆっちゅりーが縁側の高台に座り、
仲間達になにやら演説めいた事をしていた


「むきゅきゅ!よく聞いてね!!」
ゆっちゅりーは仲間達に餌のとり方、生き残るための知識に始まり、
たどたどしいが道徳についてまで幅広く語って聞かせていた
そう、これは授業だった
教師は慧音のゆっちゅりー、そして内容は慧音が以前ゆっちゅりーに教えた事そのままだった
「ゆっ!パチュリーのおかげで沢山の食べ物が集まったよ!」
「どーとくのお陰で人間とも仲良くできるようになったよ!」
授業が一通り終わり家路に着くゆっくり達は、口々にゆっちゅりーに感謝の言葉をかけて行く
どうやらなかなか好評なようだった
「むきゅ!おねえさんお帰りなさい!」
少し離れて授業を眺めていた慧音に気が付いたゆっちゅりーが声をかけてきた
「お前、ゆっくり達に授業なんてしていたのか?」
様子を見るにゆっちゅりーの授業はもう何度も開かれていたようだ
自分が知らないうちに慧音の庭はゆっくり達の学校になっていたらしい


「むきゅ!そうだよ!大好きなおねえさんみたいに立派な先生になれるようにがんばるよ!」
そのゆっちゅりーの言葉に慧音は思わず言葉を詰まらせた
本を読む仕草も、授業もすべて慧音を真似ていたのだった
こちらの小賢しい思惑など関係ない
子供たちは大人の行動を見て育っていく
大人に出来ることは、子供たちの範としての姿を見せる事
慧音はそんな教育者としての姿をゆっちゅりーを通して改めて自覚したのだった
「…ふふ、お前はもう立派な先生だよ」
「むきゅ?」
慧音はゆっちゅりーを抱き上げながら言った
「迷っていた私に道を示してくれたんだからな」
慧音は自分の頭の中にかかっていたモヤが晴れるような気持ちだった
慧音はゆっちゅりーの頭をやさしく撫でる
「よし、これからはわからない事があったらなんでも聞くんだぞ」
「むきゅ!上手な頭突きの当て方を教えて!騒ぐ子に注意するんだよ!」
…私はそんなに頭突きをしているのか…ちょっと反省しないとな
慧音は思った


  • ゆっちゅりーかわいいいいいいいい -- 名無しさん (2008-10-20 22:36:35)
  • はぁはぁ・・ゆっちゅりーたん・・。なんて善い子なんだろぅ・・。あーう、スキマ妖怪の仕業かしらないが、ゆっくりが現実にいるかのような錯覚まで!!ほしいっ!!ゆっくりほしい!!むきゃー!! -- ゆっけの人 (2008-10-26 01:48:23)
  • けーね先生の頭突きは我々の業界ではごほうびです。 -- 名無しさん (2010-11-27 14:38:20)
  • ↑がうわさのドMの会か -- 名無しさん (2012-08-11 15:06:59)
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最終更新:2012年08月11日 15:06