まりさには帽子がなかった。
まりさの親は2匹ともまりさで、共に帽子はあった。
子のまりさは茎型出産で産まれたまりさだったが、4匹の姉妹はみんな帽子があった。まりさだけなかった。
それでも親のまりさや群れのゆっくりは、帽子のあるなしに関係なく5匹とも可愛がってくれた。
しかし、まりさはずっと、帽子がないとゆっくりできない気がしていた。
そんなまりさにも独り立ちの時が来た。
「「ゆっくりきをつけてね!」」
「ゆっくりがんばるよ!」
両親に別れの挨拶を告げ、まりさは旅立った。
まりさは5匹姉妹のうち3番目だったが、5匹で一番早く巣立った。それは、ずっと自分の帽子が欲しかったからだ。
帽子が無くても、家族や群れのみんなのおかげでゆっくりできた。でも、帽子があれば本当にゆっくりできる…まりさはそう思っていた。
まだ成体ではなく、子ゆっくりが少し大きくなったくらいの大きさしかなかったが、早く帽子を手に入れたかった。
それからまりさは、決まった住処にとどまらず、旅をしながら帽子となるべき物を探した。
しかし、帽子や飾りはゆっくりのアイデンティティとも言える物である以上、生死問わず他のゆっくりの帽子をもらうわけにはいかなかった。キノコを帽子にしようとしたこともあったが、美味しそうな匂いに負けてすぐ食べてしまった。
ある日まりさは、湖にやって来た。岸沿いに歩いていくと、すわことにとりが食事している所に遭遇した。
「ゆっくりしていってね!」
「あーうー!」
「かっぱっぱー!」
ふと、まりさがすわこ達の食べているものを見ると、まりさが見たこともないものだった。
「ゆゆ?なにをたべてるの?」
「もぐささん、めだかさん、かいさんだよ!」
「たべてみる?」
「いいの?」
「いいよ!」
まりさは食べ物を少しわけてもらった。
「むーしゃ、むーしゃ…ゆゆっ!?」
群れにいたころに食べていたものとはまた違った味わいだった。でも美味しかった。
「しあわせー!」
その後、まりさはすわことにとりと一緒に行動するようになった。食事は、すわことにとりが湖の物を獲ってくるものがメインだったが、まりさが近くの森まで行ってキノコや山菜などを採ってきて、2匹に食べさせることもあった。
何回目かの食事の後、まりさは頭の上がムズムズする感覚に襲われた。それからは食事の度にムズムズが少しずつ強まっていった。すわこ達に見てもらっても、特に変化は無かったようなので、まりさは放っておくことにした。
3匹での生活が始まって何日か経ったある日、まりさが起きると、頭が少し重くなった気がした。
朝食をとるためにいつもの岸まで行くと、すわことにとりがいた。
「ゆっくりしていってね!」
「あーうー!」
「かっぱっぱー!」
すると、にとりが何かに気づいた。
「まりさのあたまのうえになにかあるよ!」
「ゆゆ?」
にとり達がまりさの後ろに回ると、小さな巻き貝のような物がまりさの頭に載っていた。
「ぼうしみたいなかいさんがいるよ!」
「ゆゆ!?ぼうし!?」
まりさは"帽子"と聞いて喜んだ。
「でもちいさすぎるよ!」
すわこが指摘する。
「ゆ~…」
まりさは少し落ち込んだ。しかし、
「でも、ちいさくでもぼうしはぼうしだよ!まりさのぼうしだよ!」
と、気を取り直した。小さくても、自分の帽子をついに手に入れることが出来たのだ。
その後、食事をする度に貝は少しずつ大きくなっていき、まりさは少しずつ小さくなっていった。
最終的には、まりさは子ゆっくりよりやや小さい位になり、貝の帽子は、口の部分にまりさがすっぽりはまるほどに大きくなっていた。
変化はそれだけでなく、まりさは、歩くのが少し遅くなってしまったが、水を浴びでもふやけにくくなったし、貝の中に物を詰めることも、舟代わりにして水上を進むことも出来るようになった。
まりさは1日半かけてそれらのことを知り、感動の涙を流した。
「しあわせー!」
このことを一度親に報告したい、とまりさが申し出た。
「さびしくなるよ…」
「あーうー…」
「またあそびにくるよ!」
そしてまりさは家族がいる群れへと帰って行った。
まりさが群れに帰った後、その群れを中心として、貝を被ったまりさが少しずつ増えていったが、ほとんどは水辺に住処を求めた。
それを発見した永遠亭により、このまりさ種に新しい名前がつけられることになり、輝夜が遊んでいた外のテレビゲームに出てくるモンスターにあやかって、「まりさつむり」と名付けられたのだった…。
以下作者の言い訳など
- 幻想郷に海はなかった!どうする!どうする俺!…というわけでこんな話。
- 画像があったと思うんだけど見つからない。でもAAあったので紹介(まとめwikiから転載)。
ちなみに「まりンさスライム」ともいうらしいです。
_,、,
ヽ. ,>'''r、i'j,,_、n
゙ヽ _,、._,-―`7、 ッァ
ヾ\'r'‐「ト‐‐っ,;/ /
ィ!゙. 〉´ ノ´∨\_,. -‐ァ
;j ,i゙_/,.!イ,.ヘーァ'ニハ'ヽ、ヘ,_7
〒ソ :rー''7コ|_,‐"リ´V、!__ハ
ノ'‐イ´,'イ ノヒソ _ ヒンY.i !
〒ー( ,ハ" ヽノ )人
,)、 .ヘ,、)ー―‐ '´'レヽ
- 「原因不明の突然変異」って便利だよね。
- 感想、質問、誤字報告等あれば下のコメント欄へ。閲覧ありがとうございました。
尻尾の人
- 愛でしか見てないから分からんけど、良い話でした。 -- 名無しさん (2009-01-18 23:33:55)
- 投下乙なんだぜ、川の物を食べているうちに貝殻ができたなんていい発想じゃあないか
こういうまったりとした話ができるからこそ愛でwikiなのだと思う -- 名無しさん (2009-01-18 23:58:43)
- 餡は貝に詰まってるって信じてる。 -- 名無しさん (2009-01-19 00:04:05)
- 感想ありがとうございます。
>>餡は貝に詰まってるって信じてる。
それだと水上で浮けなくて沈むんじゃ…? -- 作者 (2009-01-19 19:05:40)
最終更新:2009年01月19日 19:05