道端で、一人のゆっくりが歌を歌っていた
若干音程がずれていることにも構わず、大声で。道行く人々は殆ど気にも留めなかったが……
夜中までそれは続いた
やがて一人の男が、その前で足を止める
「ゆっ?どうしたのお兄さん。そんなにこの歌に聞きほれちゃったの?」
「………………」
「どうして馬鹿みたいにかたまってるの?歌に感動したなら、さっさとお金をいれてね!!!」
「………………」
「何黙ってるの?馬鹿なの?死ぬの?歌に惚れたんじゃないの?何もしないならとっとと出て行ってね!!!」
「ああ………」
男の口の端が、半月状に歪む
「お前の歌な………もっとゆっくりできるところできかせてくれよ」
す――――と、ゆっくりの体が持ち上がる
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
苦労した甲斐もあって、今年は豊作だった。畑が荒らされることもなく、一面に茂ったとうもろこしを、農園主は満足げに眺めた。
収穫の後、これから訪れる冬も、十分に過ごせるだろう――――
と、ガサガサと畑の一部が揺れている。
「んん?」
思わずそこに目をやると―――――
「ただいまー!」
「ちぇん!!畑を通っちゃだめ、っていってるでしょおお!!?」
かばんをぶら下げた幼いちぇんが、ショートカットして元気に家に帰ってきたのだった。
もう実っているとは言え、大事なとうもろこしを掻き分けていることに、主である母のれいむは怒り心頭である
「何度言ったらわかるのおおお!!?」
「あのねー きいってほしいのー!!!」
目を輝かせながら、ちぇんはかばんから厚紙を取り出した。
箔押しが施された、綺麗な表彰
「音楽会でね、ちぇん、もらったのー!!!」
「ゆ………こじん・さいゆうしゅうしょう………」
「お歌でだよ!!!」
「す、すごいね!!!」
畑に入ったことはとりあえず放置して、母れいむはちぇんに近づいてすりすりを始めた。
「ちぇんはりっぱだね~。お歌が上手いのはお母さんに似たんだよ!!!皆に褒めてもらって、お母さんも嬉しいよ!!!」
「でね、バンド組んだの。あ、これは前にも言ったね!!!今度、お祭りでも演奏するんだよ!!!」
もう完全に怒りを忘れて、れいむは嬉しくなってちぇんにすりすりを繰り返した
「すごいよ!!!お母さんも昔やってたんだよ!!!やっぱりちぇんはお母さんのこどもだね!!!」
彼女自身も、伴侶も含め、家族は皆音楽が好きだった。まだ生まれて間もない頃から、心豊かにと、歌を聞かせて育てたし、
その素晴らしさを知っても欲しかった。欲を言えばきりがないが、一つ、自分の子供が望んだ形に成長してくれた事を、彼女は
嬉しく思ったのだった。
「それでね、それでね」
「うんうん」
しかし、次に―――――
「プロデビューできそうなのー!!!」
すりすりが止まってしまった
「え…………?」
「あのねー、今日、道端でスカウトされたんだよー!!!ほら、『めいし』ももらったよ」
ガタガタと震えながら、それを受け取る。
年端も行かない子供が?何かにだまされていないか?学校との両立はどうなる?プロは本当に厳しい生活となる―――――色々な
考えが頭に浮かび、とりあえず名刺を見て、それがどうやら本物である事を理解した。疑問はいくつか解消されたが、どうしても抑えられ
ない思いがあった。
「だ、駄目だよ!!!それだけは絶対に駄目!!!」
「ゆ………ど、どうして~?」
「駄目ったら駄目!!!プロなんてお母さんは許さないよ!!!」
一歩ちぇんから遠ざかると、れいむはぼいんぼいんと背を向けて家へと跳ねて行った。
「わからないよ~ どうしてそんなこというの~?」
そろそろ薄暗くなる中、予想外の母親の反応に、ぽろぽろと涙を流していると、同じく跳ねながら片親が帰ってきた。
「どうしたのちぇん~?」
「ゆぅ……………」
、町の役場勤めのちぇんである(兼業農家だ)。
学校で、自分の音楽の才能を認めてもらったこと、友達もでき、バンドを組んでそれが評価されている事、そしてそれが行き着いて、プロ
としてデビューできそうな事を矢継ぎ早に話した
親ちぇんは、わかるわかるよ~も言わず、逐一頷き、前半の話を褒めたりする前に、単刀直入に言った。
「お母さんも、プロだったんだよ」
初耳だった
「えぇ~何それ?」
「家に『ゆっくり・くるせいだーず』のアルバムがあるでしょ?」
「あるね。メジャー2枚目の『EyukkuriMAKING ~Yukkuriとの遭遇~ (2×××年5月30日)』 を一番よく聞いたよ。最初に『べすと くるせいだーず』の
14曲目で初めて『おち〇こーる』を聞いた時には驚いたよ!!!」
「でしょ~?」
ま、まさか…………
「お母さん、『ゆっくり・くるせいだーず』のゆっくりだったの!?」
「違うよ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お母さんが大好きなアルバムなんだよ!!!」
―――あ、そう
「家に『スロウリー・6ハウス・ガールズ。』のアルバムがあるでしょ?」
「先行シングルとカップリング(一応アルバムアレンジver)曲6曲含め、その後3回もシングルカットしちゃったから、12曲中(イントロとアウトロ含む)9曲が
シングルになった、『デビュー版なのにベスト版』な内容のあれだね!!!」
「その後すぐに解散になっちゃったから、もう一枚ベストアルバム出したんだけど、単なるシングル集にしかならなくて、曲順変えて一曲目に新曲が
あって最後がデビューシングルの新録が入っただけの、あんまり意味が無い、11曲のアルバムだね」
「あれとなんの関係があるの?」
「あれが、お母さんのいたバンドだよ!!!」
へえ。そうですか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「この前、『とつげき! あのゆっくりは今』って番組の取材が家に来たよね!!!」
「ああ………何かと思ったら、あれ、お母さんだったんだ………。冒険家だったおばあちゃんじゃなくて……」
「お母さん、物凄くプロになってから嫌な思い出があるみたいなんだよ!!!」
「ヒットしなかったから?」
「いや、ヒットはしたんだよ。最初は、本当に『ゆっくり・くるせいだーず』の再来って言われるほど人気があったんだよ。『東の【スロウリー】・西の【チルテルヨフ】
って言われるほどだったんだよ!!!」
「ゆっ!!!『チルテルヨフ』!!? すごい!!!」
今でも名をはせるベテランのデュオである
「何で嫌な思い出なの?」
「それは、いつかちぇんが大きくなって、将来のことを考えるようになったら話す、って言ってたよ。プロの生活が厳しかった、ってことかな………?」
確かに甘いものではなかろうと思う
しかし、一度目標とした夢を、現実云々の大人の説得で投げ出せる年齢ではなかった
「お母さんと話してくるよ!!!」
「行っておいで!!!」
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
さて、その「あのゆっくりは今」が放映されたのは、その日の夜だった
薄暗い部屋の中、一人のギタリストが懸命に練習している。
休憩にと点けたテレビの中ではまだ若造どもが
ねぇねぇ今どんな気持ち? あれだけ期待の新人って言われたたのに
_,,....,,_ 一枚しかアルバム出せないで、一発屋で終わったって
-''::::::::::::`''、 解散して農家ヤッテルってどんな気持ち?
|::; ノ´\::\_,.-‐ァ ゲラ ゲラ
_,.!イヘーァ'ニハニヽヘ,_7 ゲラ _ヘ,_<'ト-、_ __ ゲラ ,_ __
ノ:::::rー''7コ-‐';"´', `ヽ`7 ヒ_!、>ヘゝ‐-ゝ r, __,`ィ-r、'__-イ、
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ノ イ ノ(ヒ],_,ヒン)Y.i ! ,'(( / 〉 〉 レii (ヒ],_,ヒン) ||i、|
( ,ハ " ヽ_ン "ノi、 'ノ ,ン ノレ' レ' ソ、ソ ( L! " ヽ_ン " []ノ i
___,)、ヘ,、)、___,,イ ハ ( |´ レ〈 〓 〓〈ハ レヽ、___,,,''レル'___
ヽ___ 、`\ ヽ 人ゝ| |, - 、| |イソ / ___/
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/ /  ̄ :|::| ::::|:::i ゚。  ̄♪ \ 丶
/ / ♪ :|::| ::::|:::|: \ 丶
彼女の中で、今までくすぶっていた何かがもう一度爆ぜた
そして、電話が鳴る
「もしもし~?」
「ねー。テレビ見た~?」
「見た~」
「むかつくよね~」
「むかつくよ~」
「明日行こうよー」
「うん」
ベーシストからだった。
気を取り直して、もう一度練習を再開すると、また電話が鳴った。
「もしもし~?」
「ねーねー。テレビ見た~?」
「見た~」
「むかつくね~」
「むかついた~」
「明日行こうね」
「うん」
ドラマーからだった。
ガチャリ
と、11時45分である
「寝るか」
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
翌日
母れいむは部屋に閉じこもって話をしてくれなかった。
早朝、直に向き合って2人は改めて話を始めた
「ちぇんはどうしてバンドを続けたいの?」
「多分お母さんと同じだよ!!!音楽も歌うのも大好きだし、もっと沢山の人に聞いてもらいたいんだよ!!!」
「それは解るよ。でもものすごく大変なんだよ!!?」
「聞いてるよ?でも、それでも頑張りたいよ!!!」
「お母さんのことは知ってるでしょ?」
「一体何があったの?」
「ゆう…………」
母れいむは恥ずかしげに、しかし意を決して話し始めた。
―――最初は、道端でストリートミュージシャン気取りで歌っていたこと。
―――ものすごく不良だった事
―――それなのに、ある日人間にスカウトされた事
「あのゲスな性格や言動が、却ってロックぽくっていい!って言われたんだよ・・・・・・」
―――案内された先では、ギタリスト・ベーシスト・ドラマーが用意されていた。
同じ様にスカウトされたのだという。言わば、会社側で作られたバンドだったのだ。
「詩も曲も、殆どプロデューサーが作ったものだったよ。ギターの子は、嫌がってたけど、お母さんはほいほい乗って歌ってしまったよ」
「それで、お母さんは嫌になってバンド活動に見切りをつけたんだね!!!」
「違うよ!!!首にされたんだよ!!!」
――――ある日突然・・・・・・・・
ライブの翌日だったと思う。
プロデューサーは怒り狂ってメンバー達の首をしめあげ、事務所から外に文字通り放り投げたのだった
それからあとの、実家に帰った後は・・・・
ねぇねぇ今どんな気持ち? シングル最初の一枚あてただけで
_,,....,,_ 2発目はオリコン初登場78位
-''::::::::::::`''、 「ライダー(平成23作目)」の主題歌タイアップが
|::; ノ´\::\_,.-‐ァ ゲラ ゲラ 話題にならなかったってどんな気持ち?
_,.!イヘーァ'ニハニヽヘ,_7 ゲラ _ヘ,_<'ト-、_ __ ゲラ ,_ __
ノ:::::rー''7コ-‐';"´', `ヽ`7 ヒ_!、>ヘゝ‐-ゝ r, __,`ィ-r、'__-イ、
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「結局、使い物にならないって判断したんだね」
「お母さん・・・・・・・・・・・」
「結局プロになるなんていっても、所詮は企業の道具に過ぎないんだよ!!!サラリーマンだよ!!!歯車だよ!!!お母さんはちぇんにそんな思いをして、音楽を商売道具
にしてほしくないんだよ!!!」
「・・・・・・・・・・」
「できれば、趣味におさえて、このとうもろこし畑をついで欲しいよ!!!」
言葉も出ない・・・・・・
「お母さんが悔しい思いをしたのはわかるよ~。でも、ちぇんだけの問題じゃないんだよ~。他のメンバーにも話してくるね?」
ぽよぽよと重い足取り出て行くちぇんを見送り、母れいむは肩を落とした。
と、父ちぇんが扉から顔を半分だけ覗かせた
「全て、盗み聞きさせてもらったよ!!!」
「あ、そう」
「そんなに悔しい思い出だったら、言ってくれれば良かったのに」
「ちぇんは『スロウリー』のアルバム聞いて、『え、何これ?『poor rich ones』のリスペクトとか言ってるけど実際はLUNA SEAとラクリマのパクリなの?いや、それで
すらないね!! アリアネだってここまでじゃないよ!!! 馬鹿なの?素人なの?まー、いいんじゃないの。ビジュアル系も華原の朋ちゃんもちぇんはそこそこ好きだよ~
いいんじゃあないの~ げらげらげらげらげらげー』って 笑ってたからね」
「ごめん。あれ、れいむが歌ってたって知らなかったの」
「・・・・・・・・・知ってたらなんて言うつもりだったの?」
「それより、お客さんだよ!!!」
入ってきたのは、ゆっくりてゐ、ゆっくりこまち、ゆっくりうどんげの3人。
「な、何しに来たの!!!」
「もう一度『スロウリー・6ハウス・ガールズ。』をやり直しに来たよ!!!」
「今更何言ってるのおおおおおお!!?」
「昨日、『あのゆっくりは今』を見たよ!!!」
「もう我慢できにゃいよ~!!!」
「解散した後、3人とも練習したから、あの時より上手くなってるはずだよ!!!」
「あとは、れいむ次第だよ!!!」
しかし・・・・・・・
「契約とかどうするの?」
「マネージャーと話を、これからつけにいくんだよ!!!」
「4人揃ってね」
「れ、れいむにはとうもろこしの収穫が・・・・・・・・」
「大丈夫だよ!!!」
ちぇんが不器用に片目を瞑って笑っている
「ちぇんがお手伝いするよ!!!どうせお役所仕事だから、しばらくお休みをもらっても大丈夫だよ!!!」
「でも・・・・・」
「のうかりんさんにもお願いしてやってもらうよ!!!」
心も揺れる
最初に見て、しかも生半分に達成してしまった夢を、捨てきれるものではない
「じゃ、じゃあ行って見るだけでも・・・・・・・・」
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「〇vex ta〇x」の門戸は、その日の内に叩いた。
勿論、最初は門前払いされたが、受付で当時のプロデューサーの名前と、自分達のバンド名を言うと、受け付のめーりんに
「じゃお、思い出したよ。昨日テレビで出てたね!!!『poor rich ones』のリスペクトとか言ってるけど実際はLUNA SEAとラクリマのパクリなの?いや、それで
すらないね!! アリアネだってここまでじゃないよ!!! 馬鹿なの?素人なの?まー、いいんじゃないの。ビジュアル系も華原の朋ちゃんもめーりんはそこそこ好きだよ~
いいんじゃあないの~ げらげらげらげらげらげー」
と容赦なく笑われて、受け付けてくれた。
屈辱に耐えながら通されると、若干太った当時のプロデューサーと、5年振りに会う事になった。プロデューサーは血走った目付きでこちらを睨む
前はもっと上等なスーツに身を固めていたのだが、今はいかにも落ちぶれた様子が解る
「何しに来た」
「もう一度戦いに来たよ!!!」
「クビになった時、自分達に足りないものが何のなのかを考えて、パワーアップして帰ってきたよ!!!」
「もう一度やり直させてね!!!」
行儀の悪い事に、元プロデューサーは禁煙の室内でプカプカ煙草を吸いながら言った
「失せろ」
「「「どおじでそんなこというのおおおおおおおおおおおおお!!?」」」
「実力的には、もう大丈夫だよ!!!」
「ボーカルのれいむとはまだセッションして無いけど」
「お前等の実力なんぞどうでもいい」
更にガラの悪い事に、机に足を投げ出し始めた
「俺の人生はお前等のせいで滅茶苦茶だ!!!」
「はあ?」
「俺の考えた戦略を台無しにしやがって。いいか、思い出せ、お前等最初は何て評価された?」
「『ゆっくり・くるせいだーずの再来』・・・・?」
「そうだ。今じゃ、ゆっくりのアーティストなんぞ珍しくも無いが、当時としちゃ、メンバーが全員ゆっくりの上、胴無しなのに演奏ができる『ゆっくり・くるせいだーず』は
革命的な存在だったんだ!」
「そうだね!!!」
「みんな憧れてたよ!!!」
「だから、それにあやかって俺は第2の最高のゆっくりバンドを作ろうとしたんだ。そこで、差別化のためにも胴付を3人、ボーカルはまあ、そこそこなら種は問わなかった」
「そうして集まったんだよね」
「いいか、『ゆっくり・くるせいだーず』は、胴が無いにも関わらず(原理は不明だが)ほぼ完璧な人間以上の演奏を確立させていたんだ!!!あんな事ができるわけ無いと
俺は最初から見切りをつけていたから、胴のあるお前等に楽器を持たせて、ひたすら『ゆっくり・くるせいだーず』以上の演奏をひたすら弾く真似だけをさせていたんじゃ
ないか!!」
―――ちょ、ちょっと待ってね!!!
「あれ、打ち込みだったの!!?本当は弾いてなかったの!!?」
「何だよ、れいむは知らなかったのか。珍しくねえだろうそんなもの」
「ひ、ひどいよプロデューサー!!!」
「ばかか!!!要は話題作りなんだよ!!!馬鹿な客ども騙して何が悪い。どうせ解りゃしないんだから、実際に演奏してるかしてないかなんて問題じゃねえ!!」
「本当にゲスだね!!!」
「ゆっくり以下だよ!!!」
「じゃあ、何でクビになったの?ちゃんとひたすら弾いてる振りを、うどんげもこまちもてゐだって続けたんだよ?」
「自分の胸に聞いてみろ!!忘れたか、ありゃあ赤坂BL〇TZのライブでだ」
演奏中、皆、何度も何度も、音は鳴っているのに・・・・・・・
,.-‐、. ,.-‐、
. 。 / / / /
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゜ ,.''-' └'`ヽ. 。
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〉' 〈!' レ':、 ノ|」Xヽ、__「Xト、 ン'
〈| `''<,_!イ7:::::`ヽYX/:::Y´
―――あんなポーズとってパフォーマンスしやがって!!!
「実際は弾いてないのがまる分りじゃねえか!!!」
「そ、それは・・・・・・・」
「何だ?ミュージシャンとしての誇りか?プライドか?無理やり『演奏してるふり』を強制してる俺へのあてつけだったのか?」
あれは 素 で は な し て し ま っ た ん だ
「感極まった結果がこれだよ!!!」
「どうしようもなかったね!!!」
「だから、あれから皆で練習してちゃんと弾けるようになったんだよ!!!もうあの時の打ち込みよりもはっきりいって上だよ!!」
「ああ、そうかもしれねえな。しかし、俺がお前等の面倒見てやる義理はねえよ」
出て行こうとする元プロデューサーを、4人は必死で引き止めた
「お願いだよ!!もう一度チャンスが欲しいよ!!このままじゃ終われないよ」
「くどい!!もう賞味期限の切れた商品に興味はねえ!」
「まちなはれ!!!」
と、扉を開け放して現れたのは――――
「き、きもんげプロデューサー!!」
「話は、全て盗み聞きさせてもらったでえ」
「あ、そうですか・・・・・」
「何やあ、かつての一発屋だったバンドが再びリベンジて、結構な話題やないかい」
「はあ・・・・・・・」
「せやけど、こっちにもあの時は迷惑がかかったさかい、はいそうですか、と素直に入れるわけにはいかへん。実際の実力見るには、
お客さんの前に出させるのが一番や」
「じゃ、じゃあ」
「チャンスをやる。要は、対バンや、新人バンドのな!!!」
そして通されたのは――――
「ちぇ、ちぇええんん!!?」
「お、お母さん!!?」
何という皮肉だろう。
昔の夢を取り戻そうとする母親と、未来の夢に向かう娘が、こんな所で争わねばならなくなるとは!!
「・・・・・・・親子かいな・・・・・・」
「ごめんね、お母さん。やっぱりちぇんは夢を捨てきれないよ・・・・・・」
「そうだね、わかるよちぇん。お母さんもやっぱりこんな所に来てしまったよ。だから、お母さんはちぇんの夢を止めないし、邪魔はしないよ」
「あ、ありがとう。じゃあ、ゆっくり対バンは辞退してね!!!」
「いや・・・・・・そのそれは、それとこれとは・・・・・・」
少し考えて、れいむは無理にいった
「ほ、本当にプロになりたいんなら、お母さんを倒してからにしなさい!!!」
「お、お母さん!!?」
「こんな年寄りバンドよりも盛り上げられないようじゃ、デビューしてもやっていけないよ!!!夢をかなえるんなら、お母さんを越えるんだよ!!!」
「解る・・・・・わかるわかるよ~ じゃあ、今日からはライバル同士だね!!!」
「そういう事!!!」
れいむはきもんげプロデューサーに向き直った。
「もう迷いは無いよ!!!対バンなら喜んで受けてたつよ!!!」
「話が早いでえ」
「ゆっくりライブの日取りを決めてね!!!」
「ほな、これからはうちらとあんたらはライバル同士や!!!きばってきなはれ!!!」
―――これは、子供の夢を阻む事になるのか?
否
本当に夢をかなえたいと思うなら、それにあえて試練を与えるのも、親の役目では無いか?
「まあ、駄目なら駄目で、こっちは再デビューだよね・・・・」
「げらげらげらげら」
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
そして、運命の日が来た。
あれから、再結成したメンバーと餡の滲む様な練習を続けた。
悔いは無い。
これで負けてしまったら、娘のデビュー。勝ったら勝ったで・・・・・
「ああ~緊張するよ!!!」
「ライブ前はいっつもゆっくりできないね・・・・・!」
「それはおちびちゃん達も同じだよ!!!」
部屋の隅では、ボーカルのちぇんと共に、おそろいの恐竜のぬいぐるみを被った小れみりゃ3人がおろおろと震えている。どうやら姉妹らしく、関係はよく
解らないが、保護者らしいOL風の人間の女性が、これまたおろおろしている
「わからない、わからないよ~ やっぱり緊張するよ~」
「う~・・・・・こんな所で弾くのは初めてだぞ~」
「上手くいくの~?」
「おうち帰りたくなったよ・・・・」
そんな4人のちびっ子を、元気良くきもんげプロデューサーが励ます。ここだけみると、中々いい大人である。
「大丈夫やて、あんたらの実力は折り紙つきや!!!」
「でも怖いよ~できないよ~」
「緊張してるんか?だったら手の平に『人』って字を書いて飲みこむんやで」
「そんなの効くの?」
「せやな・・・・・・・・・・・・」
にやり
凶悪な笑いを浮かべたのを「スロウリー・6ハウス・ガールズ。」は見逃さなかった
「手の平に・・・・・・・・こう書いてのみこになはれ」
はっ、と、その筆跡を見て、思い当たる節があり、舞台裏から客席を4人は覗いた。
しかし、もう手遅れだった。
「「「「う、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」
ガタガタと全身が震える
「「「「き、汚いよプロデューサー!!!!!!!」」」」
――――そこには、客席いっぱいに、溢れ返らんばかりのゆっくりらんしゃまとゆっくりさくやさん達がひしめいていたのである
了
- これはふぃどい -- 名無しさん (2009-01-26 23:02:03)
- 完全にアウトローwww -- 名無しさん (2009-02-11 13:51:44)
- ↑アウェイの間違い? -- 名無しさん (2009-02-11 15:14:36)
最終更新:2009年02月11日 15:14