伝説のゆっくり

  • のっけからいじめ描写があります、ご注意ください。
  • このSSの成分はパロ40%、思いつき30%、悪ふざけ25%、残り5%が愛しさとか切なさとか心強さとなっております。




『伝説のゆっくり』


ある晴れた日のこと。森のはずれで3人の妖怪の子供(A,B,C)が「何か」を投げ合って遊んでいた。

「おーい、次こっちー」
「そらよッ!」
「ゆぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

投げられていたのは、ゆっくりれいむだった。既にさんざん弄ばれたのか、所々傷が見える。

「やめてね!決して焦らず急いでゆっくりして、そして可及的速やかにやめてね!」
「うるっせェ!」

放る瞬間に暴れたせいか、れいむはあらぬ方向に投げられ、受け止められることなく…

「ゆべん!」

みょんな悲鳴とともに地面に落下した。

「ゆぐぅ…」

落下の痛みで動けないれいむに3人が毒づきながら近づいてくる。

「生意気なんだよ!れいむなんて名前しやがって!」
「俺たちなんかABCだぞ!なんだこの名前!?適当付けやがって!どういう事だ!クソッ!」

ごめん。それ付けたの俺。

「だからよォ、こうでもしねーと気が済まねェんだ…よっ!」

3人のうちの一人(B)がそう言いながら倒れているれいむを蹴飛ばす。

「よし!そのリボンを解いてやるぜッ!つくりが本物と同じかどうか見てやるッ!」

蹴飛ばしたことで開いた距離を詰めながら、Aがリボンを解くべく手を伸ばした…その時、彼らの後ろで「ざっ…」という足音が聞こえた。
その瞬間、3人は少し焦った。

なぜなら彼ら妖怪の強さ、格はその精神性にも左右される。

話の都合上れいむをいじめているが、ゆっくりのような弱いものを意味も無くいたぶるそれは彼ら妖怪にとって
(もちろん人間にとってもだが)『低俗で愚かな恥ずべき行為』であり、そんな事をしている現場を見られ、
噂にでもなったりしようものなら彼らにとって大きな汚点となる。おお、愚か愚か。
面倒なことになりそうだ。そう思いながら振り返ったそこにいたのは…

頭の上に付いた2本の白く長い耳。
腰まで伸びた長い髪。
体つきのゆっくり、うどんげだった。

「…なんだ。脅かすんじゃねえよ」

相手がゆっくりならば言いふらしたりする事もないだろう。よしんば誰かに喋られたとしてもゆっくりの言うこと、
まともに受け取る者など居るまい。
っていうかコイツ、ゲラゲラ笑うだけで喋れないし。

「ちょうどいい、お前も仲間に入れてやるよ」

Aが、新しい獲物に手を伸ばす…が、耳を掴もうとした瞬間にゆっくりうどんげはその手を避けた。

「…?」

うどんげの動きは、ゆっくりしていた。捉えられない速さではなかった。
なのに掴めなかった。ゆっくり、軽やかに回避されたAの手は今、虚空を掴んでいる。

「おい、何やってんださっさとしろよ」

見かねてBが捕獲に加わる。耳ではなく、頭を鷲づかみにしようとして…やはり避けられた。
動きは相変わらずゆっくりだ。なのに二人ともまったく捕らえることが出来ない。
3回、4回と繰り返すが全く捕まえることが出来ない。
相手はゆっくりなのに。こっちは二人なのに。
いつの間にかCも参加し、3対1の捕物が始まった。だが、ゆっくりうどんげは一向に捕まらない。
決して早くない、むしろゆっくりしている。何か能力を使っているようにも見えない。なのに捕まえられない。
3人の苛立ちは頂点に達しようとしていた…そこにとどめが入った。

「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!」

うどんげが大笑いしたのである。3人の堪忍袋の尾が切れた。

「こいつ、なめやがって!」
「とっ捕まえるのはやめだ、即ツブす!」
「ABC、容赦せん!」

3人は距離をとり、一斉に弾幕を放った。子供ゆえに規模は小さいが、怒りによって弾の速度と威力は普段以上になっていた。

「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!」
「なっ…」

だが、弾は一発も当たらなかった。それどころか…

EXTEND!!

1アップした。

「全弾回避…それどころかグレイズした!?」
「まぐれだ!いいから撃ちまくれ!」

第二射、第三射が展開されるが全く当たらない。

「なんでだ!?なんで当たらねえ!?」

弾の中をゆっくりと、うどんげは歩く。その姿は飛来する矢の中を悠然と歩いたアレキサンダー大王のようだった。ゆっくりだけど。

いつの間にかうどんげはAの目の前まで来ていた。

「ひィッ!?」

――――――――パキィ
手首を用いたうどんげのその当て技は、兎拳と呼ばれる。

殴られたAは、うどんげのどこにそんな力があるのか…上空へおよそ2丈(約6メートル)は吹っ飛んだ。

「「Aーーーーーーーーーーーッ!」」

高く飛ばされたAはやがて落下し、動かなくなった。気絶しているのだ。

「まさか、あいつは…」

何かを思い出したようにBが呟く。

「知っているのかB!?」
「むう…あれはもしや、噂に聞く『華麗うどんげ』!」

『華麗うどんげ』
ゆっくりうどんげは首から下がある分あつかいやすいし初心者からブリーダーまで幅広く可愛がられるうどんげ種の基本ゆっくり。
対して華麗うどんげは見た目なんかはゆっくりうどんげとほとんど変わらないが動きがとにかく華麗な分並の人妖では歯が立たない
玄人好みのあつかいにくすぎるゆっくり。
伝説のゆっくりと称されるほど稀少な種だってのになんでこんな所に?

「まさかそんな相手だったとは…けど…!」

二人は倒れたままのAを見る。無様に打ちのめされ、ピクリとも動かないAを見ると…恐れよりも、それを超える怒りがこみ上げてくる。

「よくも、Aを……………………ッ!?」

だが、うどんげの方に向き直った二人の胸にあった怒りは、「それ」を見た瞬間驚きに変わった。
うどんげはそこにいた。いつの間にか目の前に来ていたとか、巨大化していたとかではない。変わらずにそこにいた。
だが、その手には…

「何…………だと……………!?」

スペルカードが握られていた。
BとCは弾幕を張れる。だが、スペルカードを扱えるほどの力は持っていない。
つまり、あの『華麗うどんげ』は自分たちよりも…

(まずい!)

そう思った時にはもう遅かった。うどんげのスペルカードが発動する。

華麗「月のケンジャの舞」

うどんげの眼前におよそ1尺(30センチ)ほどの、白い円筒状の弾丸が現れた。
うどんげはそれを持ち、何か妙な(しかし華麗な)舞を舞ったかと思うと

「がっだい!」

妙な掛け声とともに、弾丸でBの顎を打ち上げ

「てっじょう!」

腹に弾丸を撃ち込んだ。Bはボロ雑巾のように吹き飛ばされ、Aと同じように気絶した。
Cは一歩も動けず、その場にへたり込んだ。弾幕を張るとか、逃げるとか以前に腰が抜けて動けなかった。

「ひぃっ…」

ゆっくり迫ってくるうどんげに、Cは恐怖に震えた。目の前にいるのはゆっくりではない。もっとおぞましい何かだ。

「やめて…やめてくれ…」

それは、れいむがさんざん自分たちに言ってきた言葉だった。
自分たちはやめなかった。何度やめてと言われても、れいむをいじめ続けてきた。
そんな自分が今、あの時のれいむと同じように『やめて』と懇願している…
なんと都合の良い事か!
そんな事はわかっている。だが願わずにはいられなかった。
Cはれいむが味わった恐怖を…その何倍もの恐怖に全身を包まれていた。

「…」

だが恐怖に震えるCを見て、ゆっくりうどんげはゆっくりと、華麗に背を向けた。

「え…?」

うどんげの目的。
それは、ゆっくりをいじめていた3人を懲らしめること…などではなく。
知ってほしかったのだ。本当の恐怖を。いじめられる側がどんな気持ちになるのか、その絶望を。
それを知ればもう弱い者いじめだなんて愚かな事はしないだろう。いじめる者も、いじめられる者もいなくなる。
みんな幸せになれる。みんなゆっくりできる。
そう、その目的が達せられた今、Cを叩きのめす必要は…
















連打「ゲラゲラ」



そうでもなかった。2枚目のスペルカードが発動する。

「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!」

笑っているのか叫んでいるのかわからない声と共に、白い弾丸の嵐がCに殺到する。
結局Cもボコボコにされ、その場に倒れた。

3人を叩き潰したうどんげは、おそらく読者からも半分忘れられているであろうれいむの所へ向かった。
れいむもまた、動けなかった。傷によるものではない。同じゆっくりとは思えないほど圧倒的な『華麗うどんげ』に萎縮し、動けなかった。
しかしもちろん、うどんげはれいむに対し力を振るったりはしない。
いや…別の力を振るった。れいむの傷を治療し始めたのだ。
その華麗な手さばきはあっという間に治療を終え、乱れた髪を整える余裕まで見せた。
髪になにかサラダオイルのようなものを塗っていたのが唯一気にかかったが。

治療を終えたうどんげは立ち上がり、れいむに背を受けて歩き出した。もはやこの場に用は無い、クールに去るということなのだろう。

「助けてくれてありがとう!」

れいむの言葉をその背に受けて、うどんげは立ち止まり、

「ゲラゲラゲラゲラ!」

そう笑って、ゆっくり、華麗に去っていった。














そして――――
















1ヵ月後 ――――


















――――そこには元気にれいむと遊ぶABCの姿が!

「あの時は本当に驚きました。ずっと取るに足らない存在だと思っていたゆっくりに、あんな強いのがいたなんて…。
いつか僕たちもあれくらい強くなりたいです」
「あれかられいむに謝って、今ではほら、一緒に遊ぶ友達になりました」
「3人とも、ゆっくりできるようになったよ!」
「もう2度とゆっくりをいじめたりしないよ」

華麗うどんげ。
彼女は今日もどこかで、その華麗な振る舞いで人々を惹きつけていることだろう。

-End-








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   ハ:::::::レヘ::i' rr=-,´   r=;ァハソ:::ハ
   |::::::::ノ:::l:|  ̄      ̄ l:::::|::ノ   パロネタ入れすぎちゃったかな…まあいいや
   ノ:::::::::::::ハヽ、   ー=-  ノ::::i:::(    
  イ:::/::::::/:::イヽ>, -r=i':´イ:::ハノ
  〈rヘ:::::!::レ´   `y二」ヽレ':::〈



  • 死ぬほど遅れたけど、歴史に名だたる「斬」が含まれていることに気付きました……お見事です -- 名無しさん (2009-02-01 12:22:51)
  • ABCの変貌ってば洗脳レベルw -- 名無しさん (2009-11-01 23:23:59)
  • それにしてもこのうどんげ、ノリノリである -- 名無しさん (2009-11-02 06:27:36)
  • しかし道徳的に良い話だな~ -- 名無しさん (2010-01-23 01:15:11)
  • うどんげいいな -- 名無しさん (2010-06-13 10:03:49)
  • こういう道徳的に立派なゆっくりも本当にいてほしいものだね -- 名無しさん (2015-03-17 22:30:26)
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最終更新:2015年03月17日 22:30