まりさの奮闘記①

「まりさ!?まりさ~!?」
れいむの呼びかけに巣の横から出てきたまりさはあくびをしながら出てきた。
「ゆ~…なぁに、れいむ?」
「まりさ!かりにいかなくていいの!?ごはんをたべなくちゃゆっくりできないよ!!」
巣の中のまりさにれいむが話しかける。
「ゆふぁ~…なにをあわててるの?まりさはべつにおなかへってないからいらないよ!」
大きなあくびをして外にいるれいむに話しかける。
「ゆ~ん…じゃあれいむはいくね!みんなもうおそとにいるんだからまりさもきてゆっくりしようね!!」
そういってれいむはぽよんぽよんと跳ねていく。れいむがいなくなった後にまりさは這い出るように外に出てきた。
ここはゆっくりの群れだ。どすサイズのゆっくりはいないがみんなで決めたリーダーのもとでみんながゆっくりと暮らしていた。
「じめんさんがぬれてるよ…きょうはかりにいきたくなかったのに~」
まりさはため息を吐いて辺りを見回す。
底部に僅かに感じる水分。成体になりかけのまりさは平気だが昨日はそれなりの雨が降っていた。
森の中の開けた広場には子供たちが全然いない。ゆっくりにとって水気はとても危険なもので子供たちは安全な巣の中から出てきてはいないようだ。
「ゆゆ~ん♪きょうはだれもいないね!かりにいくにはいいひだったね!!」
うれしそうに体を捻らせてまりさは今の喜びを表した。
「それじゃあかりにいくよ!!ぼうしさん、きょうもがんばってね!!」
上を向いてまりさのトレードマークである黒い帽子に話しかける。
うれしそうに跳ねてまりさは森の中に繰り出していった。



「ゆーん!!おいしいきのみさん!!ゆっくりおちてきてね!!」
「むきゅ~、きのみはどうしておちてこないのかしら!?」
「れいむにくわれるためにゆっくりおちてきてね!!きのみさん!!」
森の中にある一本の木の下で様々なゆっくりが木の枝を見つめていた。
「ゆ!きのみさんがおちてきたよ!!」
「とかいはなわたしたちのために、ゆぎゃん!!」
そうしていると見つめていた木の枝に生えていた赤い木の実が落ちてきた。
成体のゆっくりの半分にもなるその木の実は少しそこがへこみながらもそこに堂々と紅く鎮座している。
ありすの頭部に直撃したがやわらかい木の実だからカスタードを吐くこともなかった。
森に自生している木の実を生やすこの木にはいつもゆっくりが群がる。
甘くて綺麗な木の実ではあるがその代りにとても高い所にあったためこうして落ちてくるのを待つしかなかったのだ。
「ゆゆ!!まりさのきのみなんだぜ!そいつをゆっくりよこすんだぜ!!」
「なにいってるの!!?これはみんなでゆうがにくおうとしたきのみなのよ!!!」
一匹のまりさがきのみを奪い取ろうとしたのを頭に木の実がぶつかったありすが必死に食い下がる。
ありすはみんなで食おうとしてた木の実を奪われるものかと頬を膨らませていたが、逆に動けなくなったありすから木の実を素早く盗んだ。
「かえしなさいよ!!このいなかものおおおおおおお!!!!」
「ゆっふぇっふぇ!ふぉろいふぉんだじぇ!!(ゆっへっへ!ちょろいもんだぜ!!)」
ゆっくりらしからぬ動きで茂みに逃げ込もうとするが、不意にその茂みがガサッと揺れた。
さっきれいむに怒られていたまりさがその茂みから姿を現していた。
「どくんだじぇ~!!」
「…ゆん!!」
「ゆぎゃ!!?」
そのまま突っ込もうとしたまりさは逆に鋭い体当たりで木の実ごと吹っ飛んでいた。
ごろごろと転がってまりさは後ろから追いかけていたほかのゆっくりに囲まれる。
「なんていなかもののまりさなの!!ゆっくりできないまりさにはきのみさんはにあわなわ!!」
「どうしてそんなこというのおおおおおおお!!」
「うるさいよ!!みんなでゆっくりしようとしたきのみをとるな「はい、もっていっていいよ!!」…ゆ?」
体当たりをしたまりさ木の実をまりさの前に転がす。
みんなが唖然とする中、まりさの行動は早かった。
「ありがたくもらっていくぜ!!」
「ちょっと!!まりさどういうことなの!!?」
まりさが逃げ出すのを引きとめることもなく、ゆっくりはまりさに詰め寄った。
「べつにひとつぐらいいいでしょ!いっぱいあるんだし!!」
「むきー!!わたしたちじゃあれはとれないんだよ!!せっかくおちてきたのにー!!」
他のゆっくりが騒ぎ立ててるがまりさは冷静だった。
木の実が生えてる気は人間でも梯子を使わなくてはいけないほどの高さを誇ってはいるが、隣の木からは離れていない。
ゆっくり二匹分の隙間しかない空間を見てまりさは自信満々に言った。
「ゆっくりきいてね!!いまからまりさがきのみをおとしてみせるよ!!」
「「「ゆゆ!!??」」」
騒いでいたゆっくり達が急に静かになった。
まりさは木のそばに移動すると帽子を地面に置いた。これからすることに帽子は邪魔でしかない。
まりさは体をひねらす。人間風にいえば準備体操のようなものなんだろう。
「…えい!!」
そういってまりさは木に体当たりをした。そして隣の木に向かって飛んだ。
「ま、まりさ!!?」
まりさは体を器用に動かしながら交互に木を登りながらどんどん木の実に近づいていく。
みんながハラハラと見守る中、まりさはついに木の実がなってる枝に上がることが出来た。
「ゆっくりしていってね!!」
登り切れた達成感からまりさはゆっくりとしての決め言葉で嬉しさを現す。
「すごーい!!」「とってもすごいわ!!」「すごいんだねーわかるよー!!」
下からはまりさに対しての賞賛の言葉が聞こえているがまりさはすぐに枝を自分の重さでゆすり始めた。
「みんな!!きのみをおとすからきをつけてね!!」
それをきいてゆっくりたちは木から離れて安全な場所に移る。
「ゆ、ゆ、ゆ!!」
一つ目の木の実が落ちてくる。ふたつ、三つ落ちたところでまりさは枝を揺らすのを止めた。
そしてまりさは上った時と同じように交互に木を飛びながら地面に無事に降り立った。
野生動物もこれでは顔負けだ。
「まりさはすごいね!!いつもねむそうにしているのにやるときはやるんだね!!」
今朝話しかけてきたれいむがうれしそうに笑う。
「みんな!!これでさっきのまりさのことはゆるしてあげてね!!」
「ゆん!わかったよ!!まりさにめんじておとがめなしにするよ!!」
一つだけのものが三つになったのだ。どのゆっくりも嬉しそうに飛び跳ねている。
そして一匹のありすがまりさの帽子を取ってあげようとして驚いた。
「ゆーん!!すごいわ!!なんてりょうなの!!まるでたからばこみたい!!」
まりさのぼうしには木の実やキノコ、そして芋虫などたくさんの餌で埋まっていた。
口に咥えて運んでみたがゆっくり一匹分にまでなりそうだ。
「ありがとうね、ありす!!」
まりさはお礼を言って帽子を受け取ると咥えたまま器用に前転をして帽子をかぶる。
深くかぶるとまりさは木の実に見向きもせず、そのまま走りだした。
「みんなでなかよくたべてねー!さよならー!」
「ありがとうね、まりさ!!ゆっくりありがとー!!」
重さも感じずに颯爽と走ったまりさを見送った後、残ったゆっくり達は木の実の分配に勤しんだ。
家族があるものには多めに、一人身だとしてもしっかりとした量をもらえていた。
一人で一個の木の実を貰ったさっきのまりさよりも彼女たちの顔は嬉しそうだった。

次の日、まりさはまだ日が出始めたころに起きた。
ご飯もそこそこに食べ、巣の中から出て地面を踏んでみて笑顔になる。
「きょうならだいじょうぶだね!!きょうこそ「「まりしゃおにぇーちゃーん!!」」……」
嬉しそうにしていた顔が一気に冷める。ゆっくりと声のする方を向いてみると何匹もの赤ゆっくりが嬉しそうに跳ねながらこちらを目指していた。
ぴょんぴょん。ぴょんぴょん。あ、一匹の赤まりさが転んだ。
「ゆえーん!!いちゃいよー!!!」
「おにぇーちゃん、だいじょうぶ!?ゆっくりなきやんぢぇね!!」
「ゆ…なきやんぢゃよ!!まりしゃはちゅよいもん!!」
土だらけの顔で起きあがる。
「だいじょうぶ?いたいところはある?」
まりさは転んだ赤まりさのところまで来てくれた。
顔は汚れていて、涙を流してはいるが帽子も傷ついていないし大したことは無い。
ほっとしたまりさは赤ゆっくりの顔を舐める。
「ゆ、ゆーん♪」
「いいにゃ、いいにゃぁ!!れいみゅも!れいみゅもー!!」
「だめぢゃよ!!こんぢょはまりしゃだよ!!でしょ、まりしゃおにぇーちゃん!?」
土を舐めとられている赤まりさの嬉しそうな顔を見てほかの赤ゆっくりが騒ぎ出す。
舐めとってあげたのに赤ちゃん達は騒がしい。
このまま逃げようかと思ってると赤ちゃんたちが来た方から大きな声が飛んできた。
「いいげんにしなさい!!まりさがこまってるでしょ!!」
「「「ゆ!!お、おかしゃーん…」」」
鶴の一声で途端に静かになった。
成体のれいむがゆっくりとまりさにちかづいてくる。どうやら赤ゆっくりたちの母親のようだ。
「おねーちゃん、たすかったよ」
「きにしないでね、まりさ!あかちゃんたち!!」
キッと赤ゆっくりを睨む。とは言っても目はかなり優しい。
「「「ご、ごめんにゃしゃい!!」」」
「あやまるあいてがちがうよ!!まりさにあやまりなさい!!」
「「「ごめんにゃしゃい、まりしゃおにぇーちゃん!!」」」
ぺこっと頭を下げる。聞き分けがよいのは教育の賜物だろう。
「こんどからきをつけてくれればいいよ!!ゆっくりしていってね!!」
「「「ゆっきゅりしちぇいっちぇにぇ!!!」」」
満面の笑みで挨拶をする赤ゆっくり達。
「それにしてもどうしたのおねーちゃん。こんなはやくに?」
「どうしたもこうしたもないよ!!きのうまりさがきのみさんをとってきてくれたんでしょ!!そのおれいにきたんだよ!!」
これにまりさは驚いた。聞いたところによると昨日取った木の実を持って来てくれたれいむがいたという。そのれいむは母親のれいむがまりさと姉妹であることを知っており本人はもらわないというのが分かっているのでこっちにもってきたらしい。
ちなみに巣に迎えにきてくれたれいむである。
「れいむめ…よけいなことを…!!」
「ありがちょうにぇ、まりしゃおにぇーしゃん!」
「あまあまありがちょー!!」
「ゆう…」
まりさは困っていた。何もお礼が言われたいから木の実を取ってきたわけじゃない。
いい訓練になると思ったからのことなのにこれでは気恥ずかしい。
「きょうもいくの?」
「あたりまえだよ!!」
まりさはキッとした表情をする。その顔をみてれいむは口をもごもごとし始めた。
「ゆ!さあ、おたべなさい!!」
れいむは口から昨日の木の実を取り出した。とはいっても一口分だ。それでもまりさからしてみれば十分すぎる量だが。
「ゆ!?おねーちゃん、これって?」
「いったでしょ!おれいをしにきたって!!」
まりさは困惑してた。この木の実の上手さは群れのゆっくり全員が知ってた。
そのためにたまに落ちてくる木の実はみんなで分けあい、その日のうちには絶対なくなっていたものだ。それが目の前にある。
まさか食えるとは思っていなかった突然の事態にまりさは戸惑うが、覚悟を決めた。
「いただきます!!」
そういって口に木の実を放り込む。
甘い、口の中で溶けていくような舌ざわりはまりさの餡子に活力を与えてくれた。
「ありがとうね、みんな!!まりさはもういくね!!」
「きをつけてね!!」
「「「ゆっきゅりいっちぇらっしゃい!!」」」
見送りの言葉を背にまりさはある建物に向かって走り出した。
目指す先は紅魔館。

「すぴー、すぴー…」
「なんだってこんな奴があんなに強いんだろうねぇ?」
所変わって紅魔館の門。
一匹のゆっくりがシエスタをしているのを門番である紅美鈴が横目に見ていた。
ご丁寧に鼻ちょうちんまで膨らませている。
「すぴー、す…ん?」
「お、来たか?」
途端に厳しい表情に変わるゆっくり。近くにゆっくりがいる証拠だ。
美鈴が目を輝かせる。気を操れる美鈴ではあるがゆっくりの気配は読めない。
これから起こることはとても面白いものなのだ。
そしてがさがさと茂みが揺れ…
「きたよ!!めいりん!!」
「じゃお!!」
まりさが現れた。


以前にぱちゅりーに対する演説を書いたものです。
シリーズものです。断片的にしか次の作品は考えておりません!!
うわぁ…もうどうしたらよいのやら…書いた以上なんとかさせたいとは思います。
分かりずらいとこや矛盾点、指摘してくだされば次の作品の良い土壌になります。
最後まで読んでくださった方がいればここでお礼を。
どうもありがとうございました。


  • あまあま、ねぇ・・・ -- 名無しさん (2012-06-13 03:48:31)
  • ↑あまあまはいいんじゃないですかねぇ、子供の弁ですし -- 名無しさん (2012-06-27 09:17:01)
  • 森ののどかさとゆっくりの一生懸命さが良く出ている作品だと思います -- 名無しさん (2012-06-27 09:31:26)
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最終更新:2012年06月27日 09:31