ゆっくり愛で小ネタ140 幸せ者

今日は節分。我が家でも豆撒きを行うとしよう。と思い立ち、スーパーへ行って豆買って来る。大豆を使うのが本式なのだろうが、
食うのに手間がかかるので落花生を買って来た。玄関を空け、俺と家で飼っているゆっくりさなえとゆっくりゆかりんの3人で並び立ち、

「鬼はー外!」

「「おにはーそと!」」

と外に向け豆を撒き、

「福はー内!」

「「ふくはーうち!」」

と内に向け豆を撒く。撒いているのは俺だ。ゆっくりには手がないので、2人共声を出しているだけである。
まあ、楽しそうなので問題はないのだろう。撒いた後は家の中に撒いたものを回収して居間に戻るとする。流石にこの時期はまだ寒いのだ。
と、その前にもう1セット撒いておこう。鬼が隙を突いて入ってこないとも限らないので、
急激に方向転換をして遠心力の効いた豆を放り投げる。

「おーっす、福は内とばかりにy『鬼は外ォッ!』ぐおっ!?」

遠心力の効いた落花生は、丁度玄関をあけて入ってきた友人の顔面を的確に捉え命中した。アレ地味に痛いんだよなぁ……

「あ……」

「なんてたいみんぐのわるい……」

なんとも気まずげに仰け反る友人を眺めているさなえとゆかりん。うん、俺もそう思う。
一緒についてきたのうかりんに助け起こされて入ってきた友人と共に居間に入り、席に着いた。

「いやぁ、友人宅に訪れて早々豆をぶつけられるとは、お釈迦様でもわからよなほんと」

「のっくもしないで入ったごしゅじんがわるいっぺよ。じごうじとくとあきらめるっぺ」

コタツに入りつつ、まだ痛いのか鼻面をさする友人。隣では友人の飼っているのうかりんが溜息をついていた。
友人の家ではブリーダーもかくやと言う数のゆっくりを飼っており、うちに来る時はそいつらが付いて来る。
今日はどうやらのうかりんの日のようだ。まあ、悪いとは思うので茶と共に皿に空けた落花生をどんと置く。

「折角来たんだ、豆でも食っていけ」

「お、悪いな。とりあえず歳の数だけ食べるとして……そういやそこのゆかりんって何歳ぐらいなんだ?
 見た感じ成体みたいだが」

「ゆかりんはえいえんのじゅうろくさいよ!」

友人の疑問に軽く仰け反って威張るゆかりん。横ではさなえが苦笑いをしていた。
よく見れば友人の横ののうかりんもなんとも微妙な顔をしている。ゆかりん種は良くこういう発言をするらしいが、
ありす種の「とかいは」発現と似たようなものなのだろうか。しかしその自信満々の顔も、直後の友人の発言で凍り付くこととなる。

「でもさー、ゆっくり年齢で16って人間にすると結構歳食ってるよな」

「「「あ」」」

「…………」

ぴし、という音が聞こえた気がする。ゆかりんは仰け反ったまま硬直し、辺りになんとも気まずい空気が流れる……
どう空気を打破しようかと思い悩んでいた俺達を救ってくれたのは、なんとのうかりんであった。
べし、と友人の後頭部にチョップを入れ、持ってきていたタッパーから海苔巻きを出す。

「まったく、ごしゅじんはもうすこしくうきをよんだほうがいいっぺ。
 そんなだからおとうとさんに『くうきよみひとしらず』なんていわれるっぺよ、このがっかりおうじ」

「うっわ酷ぇー」

「じじつだっぺ。さ、きをとりなおしてえほうまきでもくうっぺよ。うちのはたけでとれたきゅうりと、
 うちでつくったかんぴょうとうちのにわとりがうんだたまごでつくったふとまきだっぺ。
 これをたべればなくこもわらうっぺよ?」

容赦なく主人を罵るのうかりん。まあ、ここまで容赦がないのも信頼の現われなのだろう。羨ましい事だ。
しかし確かに美味そうだ。海苔はともかく、この分だと米ものうかりんの田んぼで作ったものなのかもしれない。

「ゆ、ゆかりんさんもほら、おいしそうなのりまきですよ!」

「ゆかりんおばさんじゃないもん、ぴっちぴちのびしょうじょだもん……」

目に涙を浮かべながらも、恵方を向いてさなえともそもそと海苔巻きを食べるゆかりん。
本来丸かぶりは黙って食べるものだが、まあゆっくりには難しい話だろう。

「「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!! ……あ」」

どうやら本人達もそのことに気付いたらしい。ぽんぽんと2人の頭を撫でてやり、食べている間に剥いておいた落花生を2人に出す。
さて、おれも歳の数だけ食うとするか……

「あ、そういえば……おにいさんはおいくつなんですか?」

「ん? 俺か? 三十(ピー)歳だが」

さなえたちのほうを見ると、予想外だったらしく大層おどろいた顔をしていた。
ゆかりんに至ってはあのすさまじい顔で驚いている。地味に恐い。しかしそんなに驚く事だったろうか。

「お前結構若く見えるほうだしな。ちなみに俺も同じくらいだ」

豆を食いながら言う友人。そうだな、と返して笑い合っていると、不意に太腿に重さを感じた、さなえが乗ってきたのだ。
さなえは俺の方を見上げると、にっこり笑ってこう言った。

「あ、あのですね、さなえはおにいさんがいくつでもおにいさんのことがだいすき、ですよ!」

言っていて恥ずかしかったのか、言った直後真っ赤になって俯くさなえ。俺も気恥ずかしくて視線をそらす。
改めてそう言われるとすごい恥ずかしいというかこそばゆいというか……
ふと周りを見ると友人やゆかりんが「r=ァ r=ァ」な目で見ていたのでまず友人に向け豆をブン投げた。
そして逃げようとするゆかりんを捕獲し、抱え込む。

「よし、貴様の頭を割って中身の納豆を歳の数だけ食ってやろう」

「や、やめてね! ゆかりんをたべないでね!」

じたばたと暴れるゆかりんの頭に軽くチョップを暮れてやり、床に降ろす。まあ俺も食うつもりはない。軽く脅かしてやっただけだ。
しかし、さなえを可愛がっているとことあるごとに「r=ァ r=ァ」な目で見ているので本当に食ってやろうかと思った。
かくしてゆかりんは俺の手の届かないところまで逃げたが、少しして俺の側まで来ると、

「でもおにいさん! ゆかりんだっておにいさんのことがだいすきよ! わすれないでね!」

と言うので、思わず抱え上げて抱きしめてしまった。これは流石に反則だろ常識的に考えて。
驚きつつもまんざらでもなさそうなゆかりんと、羨ましそうに見上げるさなえ。
そしてそれを生暖かく見守る友人とのうかりん。ああ、俺は幸せ者だなと思いつつ、節分の夜は更けて行った。




どっとはらい。


  • ニヤニヤしちゃいました。 -- 名無しさん (2009-04-16 23:52:47)
  • 続きみたーい -- ゆっくり愛護団体団員 (2011-03-22 12:04:10)
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最終更新:2011年03月22日 12:04