とある秋の終わりの、とある山の、とある洞窟。
大人の人間だと立って入れないくらいのゆっくりにとっては十分な大きさで、深さ10mくらいのその最深部にゆっくりまりさとゆっくりありすがいた。
2匹とも、この山岳地帯で生きてきたゆっくりだ。
苛酷な環境で暮らすくらいなら、どこかのゆっくりプレイスに行けばいいと思うかもしれないが、この山々の地形がゆっくりたちの移動を阻んでいた。
来れたのなら行けるはず。
そう思って、ゆっくりプレイスを見つけたらみんなを呼びに帰ってくるねと言い残して旅立っていったゆっくり達もいたが、誰も戻って来る事は無かった。
外にも行けず、外から来ることも無い。
そんな中で、この辺りで生きるゆっくり達は独自にとある進化を遂げていた。
さてこの2匹、まだ成体となってからそれほどでもなさそうだというのに、かなり大きい。
大人の腰ほどまでの大きさである。
ただし、決して正常と思える大きさではなかった。
顔のパーツと体のサイズのバランスがあきらかにおかしい。
胴体だけが膨れた異様な姿であった。
そのため非常に不細工である。
それはさておき。
この2匹は見ての通りつがいである。
今、2匹は赤らんだ顔で膨れた互いの体をこすり合わせている。
だが、幾ら育ったゆっくりとは言え交尾にしては穏やかでゆっくりとしたものだ。
「んん……んぢゅちゅっ、まりさ、まりさぁ……」
「んふぅ、ゆふぅん、ありすぅ……んちゅ、ぷはぁ……」
2匹の間に粘液の橋が出来上がる。
しかし、それ以上行為は激しくならない。
今の2匹はただある時間を待っているだけだった。
今の行為も、互いの愛情を確かめ合うスキンシップ程度のものだ。
「ゆゆぅ……ありす……もうすぐだね」
「ちゅ……ぷはっ……ええ、まりさ。もうすぐだわ」
もう外に出る事も難しくなった秋の終わりの寒さの中、2匹は身を寄せて静かにその瞬間を待っていた。
それから数日後の事。
「んむ、ふ、ぶぢゅう、ぶはっ……まりさ、まりさまりさまりざあああああっ!!!」
「むちゅ、ぢゅうっ、ありず、んほぉ、んむぅぅぅぅぅっ!!!!!」
先日とはうって変わって、激しい痴態を見せる2匹の姿があった。
全身は真っ赤に火照り、あたり一面に2匹が出した夥しい粘液が広がっている。
だが、2匹はさらに激しく体をこすり合わせ、舌を絡めあってお互いを絶頂へと導こうとしている。
「んぶぶぶぶぶぶ、まりざ、あがぢゃんまだ!? ありず、ありず、んほぉ、もうイグ、ありすいっぢゃうよほぉぉぉぉぉ!!!!!」
「まっで、ありず、まだだめだよ、まだ、もうずごじでまりざもイグがらね、まだイッぢゃらめぇぇぇぇぇぇ!!!!」
だんだんとろれつも回らなくなり、表情も白目を向いたどう見ても危険な領域に突入したものになっている。
しかし、2匹はその行為を決して止めようとはしない。
今この時でないとダメなのだ。
「んぐぐぐぐぐぎぎぎぎぎぎぎいいいいいいい!!!!」
ありすが割れてしまいそうなほど歯を食いしばり、絶頂しそうなのを必死に耐えている。
その口から漏れるのも言葉では無く呻き声に近い。
ありすは、まりさより先にはイケない理由があったのだ。
「まっででねありず、まりざもうイグよ! らめ、イグ、イグイグイグううううううううう!!!!!」
まりさもありすの頑張りに応えようとさらに激しく体を震わせ、それの意味する所を理解したありすがまりさを絶頂へと導くためにさらに体を震わせる。
「んぐぐぐぐぐぐあああああああまりざもうだめありずもうダメありずもううぐぐぐんぎいいいああああああああ!!!!!!!!!!」
「あああああありず、ありずありずありずありずありずありずありずむううううんおほおおおおおおおーーーーーーっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!」
一際長い絶頂の声を上げた後、まりさが口から大量の餡子を吐き出した。
いや、違う。
餡子ではない、それは小豆色をした小豆そのものの、だが小豆に似た何かだ。
まりさはまだ大量の「それ」を吐き出し続けている。
「んぼ、ごぼぼぼぼぼぼぼおっげぇっげぼっごっごごげぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!!!!」
嘔吐が続くため呼吸ができずにむせ返るが、それでもまだ止め処無く「それ」は後からあふれ出てくる。
数十秒ほども続いて、ようやく「それ」の放出は止まった。
精も根も尽き果てたまりさは、「すっきりー!」の声も無く、必死で酸素を求めてぜぇぜぇと荒い息をつくばかりだ。
そして、放出が止まったのを見て、ようやくありすが本会を遂げる時が来た。
「まりざ、ありずの、ありずのおもいをうげどっでねえええええええええええーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」
そして、まりさが吐き出した「それ」に向けて口から大量のカスタードクリームを放出する。
いや、これもカスタードクリームではない。
カスタードよりももっと白く、粘液質の「何か」だ。
ありすもまりさと同じ様にむせ、えづきながら「それ」全てにかかるように大量の「何か」を吐き出し続けていく。
こちらも長々と時間をかけて吐き出し終わると、酸素を求めて喘ぐような呼吸を続けた。
それから2匹ともがようやく呼吸を整えた頃。
先程までの嬌態の残渣はもうどこにも無い。
あるのは、半分ほどに縮んだ2匹のゆっくりと、その2匹と洞窟の壁との間に挟まれる様にして広がった何かがあるだけだ。
「ん……ありす……ちゃんとまりさたちのあかちゃん、のこせたね……」
「そうね……みんな、ちゃんとうまれてくれたらいいね……」
そう、あれは他でもないゆっくりの卵なのだ。
この苛酷な環境で生きるゆっくりは、冬の間常に食料があるとも限らない状況に適応して、卵生へと変わったのだ。
食事を取る事も無く冬を過ごせ、生れ落ちた時には外はもっとも快適な春である。
こういった洞窟の奥でなら、卵もかろうじて寒さには耐えられる。
それくらいの際どいバランスの中で、ゆっくり達は生き抜き、世代交代を繰り返してきたのだ。
しかし、せっかく自分達の卵が生まれたと言うのに親達は元気が無い。
「すっきりー!」も「しあわせー♪」のひとつも無く、再び静かに身を寄せ合っているだけだ。
「まりさ……」
「なぁに、ありす……?」
「わたし、まりさとあえてよかったよ…………」
「うん……わたしもありすとあえてしあわせー…………」
2匹の脳裏には、2匹が生まれ、出会い、そして生きてきた思い出が止め処無く溢れかえっていた。
そのどれもが、決して忘れることの無い輝く宝物だ。
「ありす……ありす……?」
まりさは、ありすまだ伝えたい事があったのでありすに呼びかけた。
だが、ありすからの返事は無い。
わずかに体を動かしてありすの横顔を見る。
先程までとは違い、ありす本来の綺麗で整った横顔だ。
ありすは、僅かな微笑を浮かべて自分達が生んだ卵を見つめている。
だが、その体からは呼吸の振動が伝わってこなかった。
それは、鮭や昆虫などと同じ現象。
生んだ後に、親たちはほぼ間違い無く死んでしまうのだ。
「そっか……ありす、さきに、ゆっくりしちゃったんだね」
おつかれさま。
その意味を込めてもう一度頬擦りし、口付けをする。
体を横に向けて、少し伸び上がる。
それだけの動作が、もう酷く億劫だった。
そして、もう一度自分達が生んだ子供達を見る。
少しでも多く生まれて、少しでも大きくなって、少しでもたくさん幸せになれますように。
それだけの事を思い浮かべるのにとても時間がかかった。
寒い。
隣のありすの体温ももうほとんど感じられない。
そしてとても眠い。
ああ、自分も時間だ。
「ありす……だいすきだよ……」
だめだ、もう眠ってしまう。
「ありす…………ずっと、いっしょに、ゆっくりしようね…………」
最期に直接伝えられなかった想いを振り絞るように言葉にして、まりさの意識は静かにとても、とても深い所へゆっくりと沈んでいった。
終わり
作・話の長い人
あとがき
たまにはこうやってゆっくり同士で大自然を生き抜いて、天寿を全うするゆっくりもいいじゃない。
細かい突っ込みは無しで。
わかっててあえて書いてない所もあるし。
- 過酷な環境でも、2匹で過ごした時間はしあわせそのものだったはず。ゆっくりやすんでね -- 名無しさん (2008-07-26 00:44:58)
- これからもずっと2人でゆっくりしてね。。。。。 -- 名無しさん (2008-08-30 17:34:23)
- きっと元気な子が生まれるよ!!だいじょうぶだよ!! -- ゆっけの人 (2008-10-26 02:25:29)
- なんか、とても切なくて泣けてくる・・・ -- 名無しさん (2008-10-26 02:48:38)
- ・゚・(ノД`)・゚・。 目が…目があぁぁ(ry 稀でもゆっくりに泣かされた経験があるのは私だけでは無い筈。。。 -- 名無しさん (2008-12-09 02:59:22)
- けど卵生ってことは生き延びる赤ゆの数も少ないわけだよな・・・自然だから仕方ないけど -- 三下 (2009-04-01 16:26:45)
- 何故? -- 名無しさん (2009-04-28 01:00:22)
- おにいさんもビックリの生態だね -- おにいさん (2011-04-16 09:58:13)
- この人ってアッチの人だったの? -- 名無しさん (2012-04-16 20:38:42)
最終更新:2012年04月16日 20:38