今頃街中はイチャイチャしているカップルで溢れ返っているはずだ。
何故なら今日はバレンタイン。女性が意中の男子にチョコを上げる日。
こう考えている間にも、チョコを渡し渡され、告白し、成功したりしなかったりするのだろうか。
だが、あえて私は
そ の 流 れ に 反 逆 す る !
「れいむ、今日はプレゼントですよ。」
私は背中(?)を向けているれいむに声を掛ける。この子は私の飼いゆっくりであるが、今は多く語る
必要はないだろう。
「ゆ?おにいさん、ぷれぜんとってなに?」
呼ばれたれいむはと言うと、とてもゆっくりとは思えないスピードで此方を向いた。後ろにチラシが
見えるところをみると、ぱちゅりーの真似でもしていたのだろうか?
「とても硬くて、甘いものです。」
「ゆゆっ!?あまいもの!」
れいむの目は私の企み、今実行しようとしていることを躊躇させる程輝いていた
「おにーさん!それって、まっくろのたべものだよね!」
自分はこんなに知っているんだ、そう付け足すように「ゆへん!」と胸を逸らすれいむ。
「どっちかって言うと、銀色っぽいかな?」
私の言葉を聞くと、れいむの頭にクェスチョンマークが浮かんでいた。
ぎんいろ?ぎんいろってあのきんいろさんのつぎにきれいないろだよね?
れいむは、考える。自分がもらえるのはチョコレート、とても甘くてゆっくりできるもののはずだ。
おにいさんがいつも貰っている『文々○新聞』の中のチラシにより、れいむは「ばれんたいんでー」と言う
知識を得、それがチョコが貰える日だと認識した。だが何か間違っているようだ。
れいむは自分の記憶が頼りない事は承知しているため先ほど読んでいたチラシを見る。
印刷されているのは、スタンダートな板チョコ。そしてそれが包まれているのは―――銀のアルミホイル。
「ゆん!そうだね、ぎんいろさんがあるね!」
れいむは今か今かとちょこを待っていた。そして
「はい、これプレゼント。」
「……ゆん?」
置かれたのは袋。『けんこうにぼし』と書かれている袋。
「今日は煮干の日だからね。」
私はうんうん、と一人頷く。
「ゆうううう!?きょうはばれんたいんでーじゃないのおおおお!?」
れいむは泣いていた。
「バレンタインデー……?そんなものウチにはないよ……まぁいいから食ってみなさい。」
私は袋を開けれいむに煮干をやる。
「むーしゃむーしゃ…しあわせー!」
この子は食べられればなんでも良いようです。
ちなみに、この後ちゃんとチョコをあげました。れいむを泣かせたお詫びとして、ね。
最終更新:2009年02月16日 10:21