【バレンタイン企画】とある魔法使いの誕生

 私は賭にでた。
火鉢から発せられる一酸化炭素が部屋に充満する前に
幼なじみの可愛い子が部屋に入ってきて
「あんたのためじゃないんだからね!」と言って
チョコを手渡してくれることに生死を賭けたのだ。
 例え実際に幼なじみがいなくても私はこれ以上魔道に堕ちることを嫌ったのだ。
そして意識が薄く遠のいたその瞬間である。
「ゆっくりしていってね!!!」
「お、おお……一体どうしたんだ?」
薄れゆく自分の視界に多くのゆっくり達が映る。
れいむ、まりさ、ちぇん、らんしゃま、みょん、さなえなどの多種多様なゆっくり達が
この一酸化炭素が充満寸前の部屋に入ってきたのだ。
「きょうはおせわになったおにいさんのためにおくりものだよ!」
そう言って外からゆっくり一つ分くらいありそうなプレゼント箱が
ゆっくり秋姉妹によって運ばれてきた。
 思えばこいつらゆっくりとのつきあいも相当長かった。初めて女性にふられた時慰めてくれたのも
ゆっくりだし、クリスマスはいつも一緒だった。
え?ゆっくりを女性の代わりにしてるだと?泣いてなんかいないやい。
「そ、それで……まさか……」
「せいいっぱいがんばったよ!さぁうけとってね!」
 そしてそのプレゼント箱が自分の目の前に置かれた。
そうだ、忘れていた……今日はあの忌まわしき2009年2月14日ではないか…
そして目の前にプレゼント箱が。
「そ、そうなのか…………これは……バレンタイン……」
「ちーんぽ!」
「ちがうよ!!ちんぽじゃないよ!」
 みょんな合いの手が入ったがこれは所謂バレンタインチョコなんだろう。
今僕は非常に嬉しい、しかしそれと同時に妙な切なさと情けなさがこみ上げてくる。
 傍目から見れば今の僕は女性からチョコが貰えずゆっくりから情けをかけられている男の図
ではないか、ゆっくり達は好意でやっているのだろうが純粋に喜べない。
「さあ!はやくあけてね!」
しかしそんな自分にお構いなしにゆっくり達は純粋な笑顔を向けている。
「分かった……お前達の好意無駄にはしないぜ!!」
 情けなさを振り切って自分はプレゼントの箱をゆっくりと開けた。
そしてその中には
「むきゅん、ゆっくりしていってね」
………………なぜにぱちゅりぃ?
というかチョコじゃないやん。
「あの……これはチョコじゃないですよね」
確かぱちゅりぃの中身は生クリームだったはずだ。
「きょうはおにいさんのたんじょうびだったよね!!」
「あ、ああ、バレンタインと一緒で誰も祝ってくれない俺の誕生日だけど……」
まさかこれは誕生日プレゼントだというのか?バレンタインじゃないというのか!?
「……どうせなら……バレンタインチョコの方が良かったんだけどなぁ」
「ゆっ?バレンタインってなぁに?」
知らなかったのか、まぁれいむは日本神道と言うし仕方ないのかもしれない。
「ま、まぁ誕生日プレゼントありがとうな、精一杯育てるよ」
「げんみつにはたんじょうびぷれぜんとじゃないよ!」
…………………それってどういう事なんだ?
ゆっくり達はバレンタインでもあり俺の誕生日でもあるという日に気まぐれで
プレゼントを渡したというのか?
「じゃあ……一体何なんだ?」
「ひんとだよ!ぱちゅりぃはまほうつかいだよ!」
背筋にピンと嫌なものが走る。
「ふたつめのひんと!おにいさんはきょうでにじゅっさいをそつぎょうだよ!」
頭に青線のエフェクトが罹っているような感情と悪寒に襲われていく。
「……………まさか」
「というわけで」
「「「「「「おにいさんがぶじまほうつかいになったおいわいだよ!!!」」」」」

 その日、ある村で魔法使い(男性30才♂)の断末魔が上がり
幻想郷や外の世界を大いに振るわせたそうな。

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最終更新:2009年02月16日 10:21