【バレンタイン企画】魔理沙とゆっくりの奇妙な日々

  • 俺設定があります。
  • 時間の都合上後編は後日投下します。テーマの2月もそちらにて含みます。申し訳ございませんがご了承お願いします。









幻想郷の中でも特に危険な地のひとつ、無縁塚。
周囲に縁の無い者達の墓が立ち並ぶその場所に二人の少女がいた。
一人はうきうきとした顔で周囲に落ちたガラクタを漁り、
もう一人は冷めた目でそれを見ている。

「おぉ……なかなかいいものあるな。さすが危険な場所だけある」

ガラクタ漁りに精を出す少女、彼女の名は霧雨魔理沙。普通の魔法使い。

「ただのガラクタじゃない。そんなもののために何でこんなところまで来る必要があるのよ」

ため息をつきながら反応する少女、彼女の名は博麗霊夢。空を飛ぶ不思議な巫女。

「わかる人にはわかる掘り出し物があるんだよ。いいじゃないかたまには。ハイキングみたいなものだぜ」
「墓が見える場所にハイキングする馬鹿がどこにいるのよ。そういうのは法事の日ぐらいにしなさいよ」

魔理沙は知人の森近 霖之助からこの無縁塚は外の世界との境界が薄いため
外の世界の掘り出し物が流れ着くことがある、との情報を聞きつけやってきた。
博麗神社の巫女である博麗霊夢も一緒だ。

「ほら、さっさと切り上げなさい。私は早く休憩して饅頭片手にお茶を飲みたいの」

魔理沙は霊夢と異変のときは決して組まないが、普段馬鹿をやるときは結構つるむ。
もっとも、その大半が魔理沙から無理矢理誘ってのことであるが。

「もうちょっと、もうちょっとだけ」
「まったくもう……」

魔理沙は蒐集癖があるため、どうしてもつい夢中になってしまう。
霊夢は退屈なガラクタ漁りを見ているよりも、
一刻も早くおやつに持ってきた饅頭と水筒に入れたお茶を味わいたいようだ。
しばらくしたあと、魔理沙は眼前に何かを見つける。

「ん? 何だあれ?」

魔理沙の眼前にあるのはひとつの石柱。
あまりにもそっけなく、決して見た目で注目を集めることは無いが、
魔理沙はなぜか目が離せなかった。
そんな魔理沙に霊夢が石柱の正体を話す。


「あれはお墓よ。無縁塚は文字通り身寄りのない者の墓が多くあるじゃない。だからお墓もそっけないの」
「なるほど墓か、すぐにわかるとは霊夢も一応巫女なだけある。そういえば私も墓荒らしはまだやったことないな」





これは後日談になるが、今回の一件を終えた後に魔理沙が阿求に話を聞いたところ、
この墓に埋められたのは身寄りのない病弱な少女であったという。






魔理沙は少し考え込むと、おやつにとっておいた饅頭のひとつを墓の前に持っていく。

「これも何かの縁だし、この饅頭をひとつお供え物にしてやろう」
「ちょっと待ちなさいよ! 饅頭は二つしかないじゃない! それを置いたら私の分はあんたにあげないわよ!」
「大丈夫だぜ。これは霊夢の分だ。たまには巫女らしいこともしろ」

言うが早く魔理沙は霊夢の制止を無視して、二つあった饅頭のうちのひとつを墓の前においてみる。
そして晴れ晴れとした顔で霊夢に向き合う。

「いや~、いいことした後は気持ちがいいぜ」

それに対して霊夢はほほを軽く膨らませながらふてくされる。
楽しみにしていた饅頭の取り分が減って面白くないようだ。

「あんたはその百倍人に迷惑をかけているでしょうが。具体的には今ここで私に」




魔理沙は見知らぬ人の墓に対してお供え物をするような殊勝な人間ではない。
今回お供え物をした理由は、寂しそうな場所にある墓だったから何となく――そんな気まぐれだった。













魔理沙は霊夢と別れ、家路に着く。もうすっかり日が暮れている。
今回の遠出では掘り出し物がたくさんあってうきうきとした気分だった。

だがしかしその気分も長くは続かないだろう。魔理沙には日常の中で嫌なことがある。
それは自宅の扉を開けて、「ただいま」という瞬間だ。

魔理沙は少女の身であるが父親に勘当されて以来この暗い魔法の森に一人で住んでいる。
当然、家の中には誰もいない。魔理沙一人だけ。

だから魔理沙はよく外出する。そうすることによって少しでも楽しい気分を手に入れる。
例えば魔理沙はほぼ毎日神社に遊びに行く。そのまま神社に泊まることも多い。
もしくは知り合いのところに顔を出す。
魔女の所に行って本を借りに行ったり(魔理沙が死ぬまで)、
人形遣いのところに行って魔法具をもらったり、
河童に色々な実験をしてもらったり、
それだけじゃない。たくさんの人のところに魔理沙は遊びに行き、トラブルを巻き起こす。

毎日、毎日。
よほど天気の悪い日以外は毎日必ず。




自宅に篭って、この世界から置き去りにされるのが―――怖かった。
外で色々な人間や妖怪相手にトラブルを巻き起こしてどれだけ楽しく遊んでも、家の中ではただ一人だけ。
自宅の中で本を読んだり研究をすることはそれなりに楽しいが、
自宅に帰って「ただいま」という、自らの孤独を実感する瞬間がすごく嫌いだった。






魔理沙はかぶりを振る。大丈夫だと。
扉を開ける瞬間がどれだけ寂しくても、家の中で戦利品を物色していればまたすぐに楽しい気分になれる。
そう自分に言い聞かせる。

自宅の玄関を開ける。家の中は真っ暗だ。誰もいないから当然だ。

「ただいま~」

そう、この瞬間がたまらなく嫌で……

『………………ね』

今、何か聞こえた。

『………り……………ね』

聞き違いじゃない。誰かいる。警戒心を高める。たちの悪い妖精だろうか。
魔理沙はミニ八卦炉を右手に持って暗い家の中へと目を凝らす。




そして、【それ】はいた。





霧雨魔理沙が家に帰ったとき、玄関先に【それ】はいた。








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r-'ァ'"´/  /! ハ  ハ  !  iヾ_ノ
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,'  ノ   !'"    ,___,  "' i .レ'    >  ゆっくりしていってね!!! <
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「こいつは一体何なんだぜ!?」

新種の妖怪? パチュリーの作った魔法生物? それとももっと別の何かだろうか?
わけがわからない。

「一見私の特徴を真似しているが……」

魔理沙は『それ』と鏡で見た自分の顔を見比べる。
『それ』は下膨れでふてぶてしい。饅頭のような顔をしている。

「私はこんな憎たらしい顔していないぜ。化けるのならもっと上手く化けろ」
『ゆっくりしていってね!』
「ゆっくりしていってねって……おまえそれ以外の言葉を喋ることってできないのか? 私の言葉が通じるか? 大丈夫なら返事してみろ」
『ゆっくりしていってね!』
「よしわかった」

魔理沙は窓を開けて『それ』を外に放り投げた。
きれいな放物線を描いて家の外を飛んでいくのを見届ける。

「なんだったんだ……あいつは……」

頭を抱えながら窓を閉め、家の中へと再び目を向けたそのとき

『ゆっくりしていってね!』
「うわ!?」

家から放り出したら、いつの間にかいる。
玄関は家に入ってくるときに締めた。窓もついさっき閉めたばかりだ。
そして何よりも家の外に放り投げたばかりじゃないか、魔理沙の頭に疑問が浮かぶ。

ひょっとしたら仲間がいたのだろうか。もしそうなら全て家から放り出す必要がある。

魔理沙が家の外に放り投げる、【それ】はいつの間にか家の中にいる。
魔理沙が家の外に放り投げる、【それ】はいつの間にか家の中にいる。
魔理沙が家の外に放り投げる、【それ】はいつの間にか家の中にいる。


キリがなかった。

どうやら全て同じ個体らしい。
ただし理屈はわからないが、いくら投げても家の中に戻ってくるようだ。

『ゆっくりしていってね!』
「なんだか気味悪いな……」

ずっと同じ表情をのまま同じ台詞を壊れたテープのように繰り返す。

そして気がついたら家の中にいる。
魔理沙はなんだか落ち着かなくなる。
ここは自分の家なのに、なんでこのような気分を味あわなければならないのだろう。
なんだか腹立たしくなった。

すると魔理沙はちょっとした悪戯を思いつく。

「おいおまえ、ちょっとこれから夕飯になるんだが食べていくか?」
『ゆっくりしていってね!』
「そうかそうか、わかった。ゆっくりしていけ。ちょっと待ってな」

魔理沙はしめしめと意地の悪い顔をしながらひとつのキノコを取り出す。
魔法の研究用の毒キノコだ。決して食用ではない。
これを食べさせて一泡吹かせてやろうと思ったわけである。

魔理沙は毒キノコを手早く炒めて目の前の物体に差し出す。
警戒させないように笑顔で。しかし噴出すのを堪えるのは大変だった。


「ほ~ら、美味しいぞ~」

その物体はなんの警戒も無く毒キノコを食べ――




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  ノノ  ( ,ハ          人!      
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感激の涙を流す。



「美味いのかよ! それにおまえ喋れんじゃん!」
『ゆっくりしていってね!』
「それはもういいって!」


おかしいと思い何度か毒キノコ料理を与えるが結果は変わらない。
しかしおいしそうに食べること以外反応は変わらない。
普通なら泡を吐いて卒倒するぐらいの猛毒なのに。


「おかしいな~……。ひょっとしてキノコの種類を間違えたのかな?」

疑問に思った魔理沙は毒キノコ料理? を一口食べてみる。







めっちゃ猛毒でした。





まごうことなき猛毒でした。










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`!  !/レi'  '"トニニニ┤' レ'i ノ  >  ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ!!   <
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 (  ,ハ   ヽ  .::::ノ 人!     
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「こ……この野郎………」

勝ち誇ったかのようにゲラゲラと笑い声を上げる目の前の物体。魔理沙の怒髪が天をついた。
乙女にあるまじきことだが、拳を握りグーで殴った。

すると――





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    ノ ̄ ̄`ヽ、―ニ ::::::::::rー''7コ-‐'"´    ;  ', `―ニ   
  / ´`ヽ _  三,:三ー r-'ァ'"´/  /! ハ  ハ  !三,:三ー
 .ノヽ--/ ̄ ,    `  !イ´ ,' | /  ノ  ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
  }  ...|  /!       `!  !/レi' ミ }      
  }`ー‐し'ゝL _     ,'  ノ   !'" _}   
  ヘr--‐‐'´}    ;ーー-(  ,ハ _,:ヘヽ---------------
   `ヾ---‐'ーr‐'"==,.ヘ,)、  )>,、 _____, ,.イr= ==-


魔理沙はどうせ女の拳なんて効かないだろうと思い切り殴ったが、
まさか突き抜けるとは思っていなかった。
悪いことをしてしまったかなと少し焦る。


「や……やりすぎたかな……はは……。お前が悪いんだぜ……。そうだよな、な……」



その瞬間だった。




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            ヽ:::::::::::::::::::::::::::`'::.、    ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
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            _,.!イ_  _,.ヘーァ'二ハ二ヽ、へ,_7  グキョ
    ノ ̄ ̄`ヽ、::::::::rー''7コ-‐'"´    ;  ', `―ニ  グキョョン
  / ´`ヽ _ ー r-'ァ'"´/  /! ハ  ハ  !三,:三ー
 .ノヽ--/u ̄   !イ ´ ,' | /__,.!/ V ノ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  }  ...|  /!    `!  !/レi' rr=-,   r,} u
  }`ー‐し'ゝL _  ,'  ノ   !'〃 ̄   _}      u
  ヘr--‐‐'´}    ; (  ,ハ    'ー=ヽ---------------
   `ヾ---‐'ーr‐',.ヘ,)、  )>,、 _____, ,.イr= ==-



【それ】がギチギチと音を立てながら万力のような力で締め付けてくる。

「痛い痛い痛い! おい! 抜いてくれ! 頼むから抜けって!」

しかし【それ】はギリギリと締め付け続ける力を緩める気配が無い。
魔理沙が恐ろしさのあまり段々と取り乱してくる。

「早く放せよ! でないと吹き飛ばすぞ! 聞いてるのかおまえ! 放せ! 放せ放せ放せぇっ! 私の言葉がわからないのか! わかってるんだろおい! うっ!」


ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ

締め付ける力は弱まらず、むしろ強くなる一方。
ここまで来ると魔理沙は自分がうかつなことをして、命の危機にさらされているのではないかと思い、ぞっとする。
魔理沙は涙を浮かべて必死に腕を振る。普段の彼女を知る人には決して見せない表情で。

「抜いて! 放してよ! ごめんなさい! ひぎっ! お……お願いだから抜いてぇ!」

必死の言葉が通じたのか、『それ』は魔理沙を解放した。
ぜぇぜぇといきを荒げながら、魔理沙は後ずさる。

「一体何なんだよおまえ……」
『ゆっくりしていってね!』
「わけわかんないって!」

こいつは家から出ようとはしない。無理矢理出しても無駄だ。どうせまた戻ってくる。

「こうなったら霊夢のところに泊まるかな」

それならば今日は無理をしないで霊夢のところに行って、明日調伏してもらえばいい。
魔理沙は考える。散々迷惑をかけさせてもらったんだ、明日はたっぷり礼をしてやる、と。

「おまえが何者かわからんが達者でな」

その場を後にしようとしたそのとき、【それ】が引き止めるように声をかける。

『ゆっくりしていってね!!!』
「何だよおまえいいかげんに――」

【それ】は魔理沙に対して引きとめるように声をかけ続ける。
そのヘンテコな姿からは哀れみを感じさせるには程遠いが、
魔理沙は思わず躊躇してしまう。

『ゆっくりしていってね!!!』
『ゆっくりしていってね!!!!』
『ゆっくりしていってね!!!!!』

段々と声が大きくなってくる。たまったものではない。

「あぁもううるさい!」

魔理沙はとうとう耐えられなくなった。

「しつこいな! いい加減にしろよ!」
『ゆっくりしていってね!!!!!!!!!!!』
「だから黙れって――」
『ゆっくりしていってね!!!!!!!!!!!!!!!』
「もしも~し」
『ゆっくりしていってね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
「わかったわかった! おまえの勝ちだよ! 私はどこにも行かないって!」

魔理沙は観念したのか、外に出ることを諦めた。
結局根負けをしてしまった。

『ゆっくりしていってね♪』

【それ】の表情は変わらないが、どことなく嬉しそうだった。












「今日だけだからな。明日にはおまえを追い出すぜ」
『ゆっくりしていってね♪』
「嬉しそうにするなよ。まったく、調子が狂うぜ……」


結局どうしようもないので、その日は【それ】を泊まらせる事にした。
家の中に防波堤代わりのラインを引いて、そこから先に出ないように言い聞かせる。
先ほどのやりとりから考えるに、たぶんこの物体は言葉を理解することはできる。


「寝込みを襲ってきたりとかしないよな……」
『ゆっくりしていってね!』
「本当にわかってるのか……」

寝ている間に命を狙われたらそれまでだが、なぜか【それ】はそのような姑息なまねはしない雰囲気があった。
もしそうなら先ほど腕をとられたときにそのままやられていただろう。
【それ】はふてぶてしくも自信満々の表情をしているのも卑怯な行為はしない雰囲気を放つ一因となっていた。












魔理沙が朝起きたら【それ】に抱きついていた。
どうやら寝ている間に防波堤を突破されていたようだ。

【それ】はにやにやと勝ち誇ったような顔をしていた。
魔理沙は何となく腹がたち、無言で【それ】の頬をつねる。




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 !'" .圷旡≧/ /≦乏\_,ノ´ ̄`¨ヽ
 ハ   |  |/ / / / | | .弋_,.,ィー-  ヽ
 )   .|  | , -- 、 | |  / -´つ \__
( >    ,、ー'⌒ー' ィ -'´  ヽ二ン



やっと泣かせることができたぜ、ざまぁみやがれ。魔理沙はほくそえんだ。












「何もいないじゃない」
「あれ、いない……」

次の日魔理沙は霊夢にこの話をしたところ、
霊夢曰く性質の悪い妖怪だと危ないとの事でついてきてもらったのだが、誰もいなかった。

「見間違いなんじゃないの? 寂しさのあまり幻を見たとか」
「馬鹿言うなって! この私が夜な夜な「寂しいよパパ~」とか言いながら枕を涙でぬらすように見えるか?」
「見えない」
「だよな。自分でも気持ち悪かった」






「とりあえずこれを持っていきなさい。害意を持った妖怪相手に反応するお札よ」

霊夢から魔除けのお札を受け取ったが、結局帰ってもらった。
霊夢がいなくなり、魔理沙が一人になった時のことだった。

『ゆっくりしていってね!』
「うわっ!?」

【それ】はどこからともなく姿を現した。

「おまえ今までどこ行ってたんだよ……」
『ゆっくりしてたよ!』
「はぁ……もういいよ……勝手にしろ――ってちょっと待て! おまえ喋れたのかよ!」
『ゆっくりことばをおぼえたよ!』
「そうかわかった。じゃあ出てけ」
『だが断る』
「……………………………」
『……………………………』










           -恋符「マスタースパ―……」-
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       >     ヽ, i  i L_~~''f` ヽ,, ノ 7 v' i,,,,  `-,::::: i
      ヽ---''7 /''; ヽ,, ' 〈\    `'' ヽ ヽ ヽ\   i__::ヽ
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,'  ノ   !'"    ,___,  "' i .レ'    >    マスタースパーク!!!   <
 (  ,ハ    ヽ _ン   人!      ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
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    /      )     ドゴォォォ _  /
∩  / ,イ 、  ノ/    ∧ ∧―= ̄ `ヽ, _
| | / / |   ( 〈 ∵. …(   〈__ >  ゛ 、_
| | | |  ヽ  ー=- ̄ ̄=_、  (/ , ´ノ \
| | | |   `iー__=―_ ;, / / /
| |ニ(!、)   =_二__ ̄_=;, / / ,'
∪     /  /       /  /|  |
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    / _/             |_/
    ヽ、_




こうして魔理沙と奇妙な物体【ゆっくり】の奇妙な生活が始まった。

  • 今更ですが、魔理沙の嬌声がエロかぁいい。
    随所随所のAAで吹きます -- 名無しさん (2009-08-24 20:45:09)
  • トンファーw
    所々ジョジョネタがあって吹いてしまいましたw -- 名無しさん (2009-08-28 02:15:53)
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最終更新:2009年08月28日 02:15