「れ~む!ゆっくりたべてい~い!!」
「今は駄目よ。ゆっくり待ちなさい」
私、博麗 霊夢はゆっくりを飼っている。【以下ゆっくりれいむは自分の事をれいむ、霊夢のことはれ~むと呼ぶ】。これはれいむが来てから少し経ったころのお話。
その日、家で飼っているゆっくりれいむ(以下れいむ)は今目の前に置いてあるご飯の前でじっと待っていた。
今私は晩御飯の支度をしている。味噌汁を煮て、その間に別の料理を済ます。台所にはトントンと包丁がまな板を叩く音が響いている。
今れいむは食器を頭にのせてお盆の代わりにして器用に並べ終えたところだ。
れいむは自分の仕事が終わって手持ち無沙汰になり、晩御飯が待ちきれないのだろう。
「おなかすいたよ!ゆっくりできないよ!れ~む!ちょっとだけたべてもいい?」
「もう少ししたらできるから、もう少し・・・・・・・・そうだ。」
れいむはゆっくりという名前の割にはゆっくりすることができていない。
これを機に少ししつけてみてもいいだろう。
野菜のおひたしを小皿にとって、れいむの前に置く。
「れ~むありがとう!ゆっくりたべるね!いっただきま~・・・・・」
れいむの顔がぱぁっと明るくなり、喜びのあまり頬が緩む。ここまでうれしそうだと少し躊躇を覚える。
「ちょっと待った!」
だがしかし、ここで私は容赦しない。れいむの口を塞いで、厳しく言いつける。
「れいむ、そんなに言うならちょっとだけなら食べてもいいわよ。ただし私がいいよといってからじゃないとダメよ。もし破ったら晩御飯抜き。」
「ゆぅ!れいむゆっくりできるよ!ばかにしないでよ!れ~むゆっくりできないの?」
れいむはまったく問題なさそうにふふんと笑う。面白い。その生意気な顔を泣かしてやる。
いつしか目的が摩り替わっていた。
れいむは顔を真っ赤にして耐えている。口元はぴくぴくと動き、目の前の食べ物をいまかいまかと待ち構えている。いきなり食べてしまうかとも思っていたので、少し意外だった。
「ゆぐぐぅぅぅ・・・・・・・・・・・・・・・」
だがしかし、時間のほうはというとまだ一分しか経っていない。おいおい。先が思いやられるぞ。
三分経過
なかなか意地があるようだ。関心関心。
れいむは黙りきったまま小皿を見ている。たまにちらっちらっと上目遣いにこちらを見てくる。その目にはうっすらと涙がにじんでいる。
四分経過
こちらを見てくる回数が明らかに多くなってきた。もう我慢の限界だろう。
そろそろいいかなと思っていると、ちょっといたずらを思いついた。別にこれくらいなら平気だろう。
私は軽くフェイントをかけるようにした。
「れいむ、ご飯食べたい?」
「すっごくたべたいよ!おいしいごはんたべたいよ!」
れいむは間髪をいれずに返事をする。口を開いた瞬間よだれがたらりと一筋出てきた。汚いなぁ。どれだけ我慢してるのよこの子。
「そう、わかったわ。」
れいむが目を輝かせる。口を軽くあけて、目の前の小皿に照準をかける。それを見て私は意地悪に笑う。
「い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱダメ。」
ずっこけた。れいむは一目散にかぶりつく姿勢だったので、その状態からのいきなりの停止に耐えられず、勢いあまって転がってしまった。今では部屋の反対側の壁に激突している。
あ、戻ってきた。いつものように跳ねず、ずりずりと体を引きずってくる。
そしてれいむはご飯の前に来ると、ご飯をにらんだまま泣いてしまった。
「ゆっぐ・・・ゆっぐ・・・・・・・・・・・・・・」
未検に皺を寄せて必死に耐えている。ここで私はやりすぎたことに気がつく。
「ごめん!れいむ大丈夫!」
しかしすでに遅かった。れいむの涙はどんどんと水かさを増し、今では滝のように流れている。
「ゆ゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ん!!れ~むのばがぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!ゆっぐりでぎないよ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!」
「ごめん!悪かった!すまぬ!」
私は謝る。ひたすら謝る。しかしれいむは泣き止まない。
私はれいむを泣き止ませるために約束をする。今度の約束は絶対に守る。何が何でも守る。
「れいむごめんね!今日は特別に私の膝の上で食べていいから。」
結局、ご飯を食べることができたのは当初の予定よりも30分ほど遅れた。
今度からこういった馬鹿なことを考えるのはよそう。とても懲りた。恐ろしく疲れた。
「れ~むどうしたの?ゆっくりかんがえてるの?」
「ああごめんね。なんでもないわよ」
今れいむは私の膝の上に乗っている。ご飯を一緒に食べるためである。
れいむは食べこぼしてしまうので、いつも下に新聞紙をしいて食べさせている。
だから膝の上でご飯を食べさせるのは今日が初めてだ。
私の膝の上にこぼさないか心配だった。
「ごはん・・・・・ごはん・・・・・・・・・れ~むのつくったごはん・・・・・・・・・・」
れいむはうっとりとした顔でちゃぶ台の上を見渡す。
あれから短時間で気合を入れて作った。人間やろうと思えば集中して作業をこなせるものだ。
「そんなに意地にならなくても大丈夫だったのに。どうしたのよいったい。」
「れ~むのごはんすっごくおいしいよ!ゆっくりたべたいの!れ~むのごはんがたべられないのはゆっくりできないよ!!」
うれしいことを言ってくれる。目頭が少し熱くなってしまった。
れいむは膝の上に乗っているので、ご飯に届かない。しょうがない。私が食べさせてあげるか。
「ほら、口開けて。」
「ゆっくりたべさせてね!」
れいむは口を全開に開いておひたしを口に入れる。おいおい、そこまで大きく開けなくても十分入るから。
「む~しゃ、む~しゃ」
いつもならここで「しあわせ~♪」なんていうんだよね。そうやっておいしくたべてもらうと作ったかいがある。この子はそういったところでありがたい。私はぎゅっとれいむを抱きしめる。
だけどれいむはいつもと様子が違った。ぷるぷる ぶるぶる ブルンブルン ブルブルブル
どうしたの!?この子おかしくなっちゃった!?
そのときれいむは白目を剥いて口をガっと開き、昇天したような顔で叫ぶ。
「ヘヴン状態!」
空腹が続いたためだろうか。よっぽどおいしかったらしい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いたずらするのは二度とやめよう。
- 温かい家庭って感じが伝わって・・・ -- 名無しさん (2008-08-16 22:26:42)
- 可愛がってるのにヘヴン状態だとドン引きですか霊夢さんwww -- 名無しさん (2008-09-10 14:19:04)
- ヘヴン状態には笑いました -- ine (2008-09-23 18:58:06)
- ゆっくりゆっくり -- 名無しさん (2010-11-27 18:05:53)
- ヘヴン!・・・・萌 -- ゆっくり愛護団体団員 (2011-03-20 03:52:08)
- チョーイイネ!サイコー!! -- 名無しさん (2012-12-13 21:28:09)
- おひたしでヘブンとは・・・ -- 名無しさん (2013-08-26 18:39:12)
最終更新:2013年08月26日 18:39