ゆっくり愛で小ネタ11 饅頭の恩返し

つかれた。今日も残業で家に帰ってくるのが夜の11時。いい加減過労死になってしまうか、うつ病で入院してしまうかのどっちかだろう。
今の職場きついし、ぼっちだし、転職でもしようなねぇ。
そう思って夜食におやつを食べてゆっくりしようとする。そうだ、戸棚に饅頭の残りが置いてあったはず。いそいそと戸棚を空けて、饅頭が入った箱を見る。
消費期限のところを見ると、3日過ぎていた。
いっけねぇ、最近忙しかったから食べるのを忘れていたんだ。
しょうがない、これは勿体ないけど捨てるか。
そう思い、中身に一戸だけ余っていたが、ゴミ箱の中に箱ごと捨てる。

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  レリイi (ヒ_]     ヒ_ン ).| .|、i .||
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    L.',.   ヽ _ン    L」 ノ| .|  > ゆっくりしていってね!!!  <
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うおお!いったい何なんだこいつは!?
次の日残業でくたくたになって帰ってみたら、得体の知れない生き物が玄関先にいた。
手のひら大の生首が、わけのわからない言葉をひたすらしゃべって跳ね回っている。

「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」

わけわかんねぇ。そもそもここは俺のうちなのに何が
「ゆっくりしていってね」だよ。気味悪。何これ、妖怪?気ぐるみ?
取り敢えずこいつをどうするかとしばらく考えた結果、
玄関先から外に追い出すことに決めた。
「おい、おまえちょっと出てけ」
「ゆっくりしていってね!」
「出てけって!」
居座る気かよこいつ。ほっぺたを引っ張って外に連れ出そうとする。


「ゆっぐり・・・・ゆっぐ・・・・・・・・・」



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おいおい泣くなよ。俺が悪いみたいじゃないか・・・・・・・・・。
ふとしたところで甘い考えが頭の中をよぎった。
こいつがもしこのまま大泣きしたら近所迷惑になるかな。
それにこいつの事をどう説明すればいいだろう。
ふと、この1週間仕事とコンビニ店員以外とは会話していなかったことを
思い出す。その会話も殆ど事務的なものだ。・・・・・・・・
こいつ、中に入れてやるか。寂しさって恐ろしいな。

「おにいさん!ゆっくりしてくれてありがとう!」
「そんなことはどうでもいいんだよ。おまえいったいなんなんだ?」

「ゆぅ!?れいむはおいしいおまんじゅうだよ!
おにいさんにたべてもらいにきたんだ!」
「おまえはアンパンマンかよ!?」

まったく非現実的なこともあるものだ。この生首が饅頭だなんて。
しかも自分から食べて欲しいなんていうか普通?っていうか、
これって現実か?現実・・・そうか!

このとき、俺の頭はこの事態について説明をつけた。
これは俺の頭が見ている夢だ。最近疲れていたし、寂しかったから、
こういうことが起きたのだろう。饅頭が話すわけないもんな。
そう自分に言い聞かせると、この状況を楽しもうと思った。
めったにない自宅での会話だ。楽しんでもいいかもしれない。


「いや、別にいいんだが、食いきれんぞ。」

そうは言っているが、実際には手のひら大の饅頭なら食べきれるだろう。
しかしアンパンマンみたいにちょっとだけ囓る程度ならともかく、
全部食べるのは気が引けたからだ。
いくら夢とはいえ死んでしまうだろうと思えたためだった。
けれども、饅頭は目を輝かせて喜ぶ。

「いいよ!ひとくちでもたべてくれればいいよ!」

目の前の饅頭はうれしそうだった。何でこいつは食べられるのが
そんなにうれしいのだろう。まあいいか、腹が減ったし、
一口ぐらいならいいだろう。その後の事は後で考えよう。

「一口だけな。じゃ、いただきます。」
「おいしくたべてね!!」

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その饅頭は、とてもうれしそうだった。味のほうはというと、
市販の饅頭と変わらなかった。
あまり上等な味ではない。けれども空腹のためかなかなかうまかった。
饅頭は食べられて満足そうに笑うと、そのままその場で動かなくなった。
「おにいさんありがとう!たべてくれてありがとう!
れいむはここでゆっくりしてるね!」
いや、だからここは俺のうちなんだが・・・・・・。
饅頭は目をつぶってうれしそうににやけている。
手がかかりそうだなこいつ。そう思いながらも、
もしこれが夢でなかったら、
これからこの不思議な生物との生活が始まるのかという期待もあった。
家に帰ってきたら誰かが出迎えてくれる日々を夢見て、俺は饅頭を放って、
布団の中で意識を失った。夢の中で眠るというのも変な話だ。


次の日の朝、床にはひとつの饅頭が置いてあった。
この饅頭には見覚えがある。あの日賞味期限切れで捨てた饅頭だ。
もしやと思い、ゴミ箱を漁ってみると・・・・・・ない。
箱の中には饅頭がなかった。
寝ぼけて取り出してしまったのだろうか。
もしくは、あれは夢ではなく、あいつはこの饅頭のお化けだったのだろうか。
だからあいつはあんなにうれしそうな顔をしたのか。たべられてまんぞくだったから。
俺の頭に浮かぶのは、深い後悔と、何も考えず食べて放っておいた
自分への怒りだった。夢でも見ていたのは間違いない。
けれども、もしかしたらあの時俺が食べなければあいつは成仏しないで、
まだこの場にいたのかもしれない。朝の挨拶をあのうるさい声でしてくれたの
かもしれなかった。

そう朝のぼんやりとした頭で考えながら、饅頭の残りを口の中に突っ込んだ。
消費期限は4日過ぎていたし、一度はゴミ箱に突っ込んだ饅頭だったが
気にしなかった。


  • すごくいい。 -- 名無しさん (2010-05-24 19:29:33)
  • 消費期限1週間くらいなら平気で喰うオレはゆっくりには会えないのか -- 名無しさん (2010-12-10 11:58:25)
  • 3枚目のれいむのAA凄くいい表情 -- 名無しさん (2011-02-18 17:59:42)
  • イイハナシダナー -- 名無しさん (2012-12-02 00:56:01)
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最終更新:2012年12月02日 00:56