ゆっくり友達

 *注意*
うんうん注意
ゆっくりの影が薄いです(特に後半)

以上の事に注意してください




~ゆっくり友達~



「ゆっふん♪」

今、目の前の机でまりさがふんぞり返っている
これから一週間先の事を考えると胃が痛い


事の発端は半月前の求人情報誌がきっかけだった

『ゆっくりのトレーナーさん大募集! ゆっくりが好きな方待ってます! また・・・』

それはとても小さな記事だった

『ゆっくりのトレーナー』とは最近になって認知され始めた職業だ
ゆっくりが愛玩動物として広まってから久しいが、表に出てくる職業ではなかった
しかし犬・猫と同じ様に躾がいるので、新たに資格を設けて広く募集し始めたのが始まりである


早速、書いてある連絡先に電話を入れる

『では来週の・・・』

と、ここまでは順調だった
この後筆記試験は合格し一次試験は通ったのだが 、まだ二次試験の実技が残っていた

今ここで悩んでいた

『一週間、時間をあげますので自分なりにゆっくりを躾てください』
というのが二次試験の課題である

「ゆっふん♪ おにーさん!!お腹すいたよ!!!」
「ふぅ・・・さっき食べただろ・・・」

むにゅむにゅとほっぺを揉みながら答える

「そうだったね!!!でもまりさはお腹すいたよ!!!」
「いっぱい食うからそんなでっかくなるんだぞ?」
「でっかくないよ! まだ10lbしかないよ!」

会社から貸し出されたまりさが今回のパートナーである
しかしなかなかどうして我儘な奴だ
俺の家に連れてくるなり早速の「お家宣言」である

「おにーさんのお家は、今まりさのお家になったよ!!!」
とりあえずデコピンをお見舞いする

「ゆびっ!? しっとはやめてね!!」
「いや、つい・・・」
「でもまりさのお家でゆっくりしていっていいよ!!」

一応躾をする以上お互いの立場ははっきりさせておいた方が良いよな

「じゃあそうさせてもらうよ。ところでまりさはあまあまは好きかな?」
「ゆゆ~♪あまあまさんはだいすきだよ♪」
「そうかそうか♪じゃあクッキーをあげよう」
「むーしゃ♪むーしゃ♪あまあま~♪」

しめしめ、掴みは完璧だな。ここからが本番だ

「はいもう一枚あげよう。あーん」
「はむっ♪むーしゃ?むーしゃ?」

まりさの口に入る直前でひょいと上にあげる

「クッキーさんちょうだいね!9まいでいいよ!」
「そんなに欲しいか?でも条件があるぞ?」
「なんでもいいよ!クッキーさんはまりさのものだよ!」
「俺との勝負に勝ったら良いぞ!」
「ゆふん!いいどきょうだよ!けちょんけちょんにしてあげるよ!」

そしていきなり体当たりを仕掛けてきた
自分で10ポンドあると言っていた通り生身には堪える衝撃だった
「いたた・・・でも捕まえたぞ! こうして、こうしてやる!」

帽子を取り上げ、底面の方を持ち、逆さ釣りにする

「ゆゆっ!お空を・・・ゆぁぁぁ!!おろじでぇぇぇぇ!!まいりまじだぁぁぁ!!」

ちょっと薬が聞きすぎた様なので帽子も返して降ろしてやる
「ゆゆん♪裸にしてさかさづりなんて、まにあっくなぷれいだね!」

全然懲りていないようなので顔の方をむんずと掴む

「う、うそだよ!ちょっとしたおちゃめだよ・・・」
「ほれ、あめちゃんだ。一個やるよ」
「ゆゆ?まりさはまけたんだよ?」
「俺もやり過ぎたしな。正直に敗けを認めた潔さに免じてだ」
「ありがとう!!おにーさん!!ぺーろ♪ぺーろ♪しあわせ~♪」


その日からが戦いの始まりだった


「ゆっくりうんうんするよ!!」
「そこはトイレじゃないぞ!ちゃんと教えたでしょ!?」


「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」
「ご飯を散らかして食べるなよ!片付けが大変なんだよ!」

「ゆ~♪ゆゆ~♪ゆっくり~♪」
「おにーざんはねでるんだよぉぉぉ!!しずがにじでねぇぇぇ!!!」


そんなこんなで試験日も明後日に迫った「さいきんおにーさんはゆっくりしてないね!!!」
「まりささんのお陰ですよ・・・」
「でもまりさは楽しいよ!!おにーさんとはゆっくり友達だよ!!」
「ゆっくり友達?」

何でもまりさが言うには自分がゆっくりしたいときに傍に居ること
ゆっくりしてるときに邪魔をしないこと
面白くて一緒に居るだけでゆっくりできる者の事をそう呼ぶそうだ

「だから、おにーさんはまりさのゆっくり友達だよ」

友達ですか・・・悪い気はしないけど飼い主としては失格だよなぁ・・・

「だから、つぎはまりさがおにーさんをゆっくりさせてあげるよ!!!」
「後日しかないんだぞ?ゆっくりしてる暇なんか・・・」
「3日しかないんだよ!!まりさはおばかでよくわからないけど、あと3日なんだよ!!」
「まりさ・・・お前」
「おにーさんとおわかれしたくないよ!!でもおにーさんをおうえんしたいよ!!!」

まりさがこんな真剣に物事を喋るのは多分始めてだろう
俺気づかないところでこんなに思い詰めていたなんて

「でぼっ!でぼっ!おにーさんにおじごどがんばっでほじいがらっ・・・」
「そんなに泣くなよ。俺が仕事を始めても一緒に居てやるよ」
「おにーざぁぁぁん !!ありがどぉぉぉ!!!」
「ほらほら、クッキーさんだぞぉ♪今日は9枚用意したからな、一緒に食べよう」
「ゆん゛っ!ゆん゛っ!・・・ゆう、経験がいきたね!!」
「「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」」



「がんばろうね!おにーさん!」
「そうだな、がんばんないとな!」

まりさを枕にしながらそんな言葉を交わす
少し重いがまりさを抱えほっぺをすりすりする
もちもちして気持ちが良い

「おにーさんどうしたの?あまりの美肌に頭がわいちゃったの?
あとおにーさんのほっぺはじょりじょりしてゆっくりできないよ・・・」

頭は沸いてないぞ、失礼な
そんなこと言うと・・・もう一回やっちゃうぞ!!

「そんなことないぞ!!ほら、すーり♪すーり♪しあわせ~♪」
「いやぁぁぁ!!!やっぱりじょりじょりだよぉぉぉぉ!!!」


そして試験日の朝が来た
なれないスーツを着てまりさを連れ試験会場に入る
同じ日に受ける人は俺を入れて4人いて、俺の受験番号は4番だった
実技試験は二人一組で、お互い課題は一つずつ。なので失敗はできない


 *まりさの課題「ご飯」*

「良いって言うまで食べちゃダメだぞ!」
「ゆっくりまつよ!!ゆ~♪ゆゆ~♪」

おいィ・・・歌を歌いながら待ってるのうちだけじゃん

「よし、もう良いぞ」
「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」
うち以外は黙々と食べてるなぁ
ちょっと心配になってきたぞ


 *俺の課題「面接」*

『貴方にとってそのまりさはなんですか?』
「友達みたいなものですかね?」
『友達ですか・・・』
「こいつは我儘で、飯はすごい食べるし、でかいですけど、一緒に居ると楽しいですから」


そして試験終了後の控え室


「絶対無理だぁ・・・
落ちたよぉ・・・」
「まりさはかんぺきだったよ!!だから クッキーさんちょうだいね!!」
「ほれ・・・粕をこぼすなよ、怒られるから」
「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせ~♪」

おっ、試験官が入ってきたもう発表するのかな?

「受験番号4番の方のみ退室してください。お疲れさまでした」

え?退室?お疲れさまでしたって・・・落ちたのか・・・
とぼとぼ廊下に出るとさっきの試験官に声をかけられた

「4番の方ですね?こちらにどうぞ」
「あっ・・・はい」

通された部屋の中の机には書類が何枚か置いてあった
誓約書・・・引き取り申請書・・・?

「あの~、これは?」
「我々は貴方を採用 したく、ここにお呼びしました」

あれ?俺落ちてないの?動揺する俺を尻目にまりさは足元で跳ね回って喜んでいる

「え・・・でも」
「書類にご署名いただけませんか?」
「あっ・・・いえ、落ちたとばかり思っていたものですから・・・」
俺が納得できないのを感じ取ったのだろう

「貴方は他の三人のゆっくりを見てどう思いましたか?」
「完璧でした。聞き分けが良くて、従順で大人しくてペットとしては非の打ち所がなかったです」

「我々もそう思います。しかし、あれではペットではなくて機械です」
「機械ですか?」

試験官はまりさを膝の上に乗せ、話を続けた

「我々は彼女のように人間の友達となりうるゆっくりを世に送り出したいのです」

頭を撫でられたまりさはすごく上機嫌のようだ

最後に試験官が言った言葉が忘れられない

「私達は機械を相手にしているのではありません。生きているゆっくりが相手なのです」


おわり

どうも携帯からの人です!
名前までつけてくださってありがとうございます
PCが治ったら「携帯からの人」ではなく、本当の名前で投稿したいと思います

  • すごく考えさせられる話でしたね。
    人間の言葉を話すゆっくりの場合、ほかのペットとは違った奥の深い躾の
    形がよく出ていました。 -- 名無しさん (2009-03-22 03:17:31)
  • ゆっくりはもっとしっかり躾けないと他人に迷惑かける気がする。
    知能が高い分、なおさらに。 -- 名無しさん (2009-04-24 21:37:22)
  • 個人的には他の三人のトレーナーとそのゆっくりが可哀想に思ったな。
    試験の日のためにトレーナーと力を合わせて共に努力していただろうに、
    「機械」と言われるほどまで必死になったその頑張りが否定されたことになるのだから。 -- 名無しさん (2009-04-24 21:48:04)
  • ↑ 確かに
    しかし、逆に考えると、そこまで共に必死に努力していた間柄なら、試験には落ちたが
    まあその後良い感じの試験管の言う「友達」にはなれたんじゃないかと思う
    実際有能だったんだろうから多分この先も… -- 名無しさん (2009-04-25 00:26:31)
  • 公共の場では「まるで機械のように」静かにすることも必要だよな。
    テーマが「躾」なんだし試験でなけりゃ残り3匹も生き生きしてんじゃないの?
    野生児マンセー☆彡は後味悪い。 -- 名無しさん (2009-07-12 15:23:36)
  • 躾けって難しいですね。
    そんな描写を細かく描いていて、個人的にはGJでした♪ -- 名無しさん (2009-07-13 13:15:38)
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最終更新:2009年07月13日 13:15