忘却のテラヴス
彷徨えるワンドムーバの記録
それは
銀河の片隅で鳴り響いた
一筋のサイン波から始まった
1996年
我々ワンドムーバが長年
地下活動から解放され
始めて(※原文ママ)この惑星の地表に立ち
その大気に
電子音を突き刺した年だ
当時の
我々の任務は明確だった
空に放たれた
はぐれたシャボンの行方を追い
この星の急所である
スポットを確認すること
まずは
かつてPEVO星を
訪れたことのある
ヴォルキスプロラデュークを訪ね
協力を乞うことからはじめた
快く協力を引き受けてくれた
ヴォルキスプロラデュークの
勧めもあり
我々は
カーヴォを主な侵略の手段に
活動を開始した
表向きは
地球侵略という
物々しい号令のもと
我々は
未知の周波数に
胸を躍らせていた
サイン波を浴びた
テラヴスのほとんどは
我々に
有力な手がかりをくれたばかりか
一部は
名誉スルホロバスとして
我々への
協力をおしまなかった
彼らの協力により
侵略は
安易に完結するものと思われた
しかし
テラヴスの時間は
我々の故郷よりも
残酷に流れた
霧の中の二十年
月日は流れ
2016年
任務開始から
20年が経過してもなお
シャボンの行方は
杳として知れず
スポットに関する情報は
錯綜するばかり
掴みかけた真実は
指の間から
こぼれ落ちる砂のように消え
我々は
ただ
色あせていく記憶の糸を
手繰り寄せる日々を過ごしていた
そんな停滞の中にいた我々に
故郷から
無慈悲な通信がとどく
ワンドムーバ解体
直ちにPEVO星へ帰還せよ
同時に
当時ワンドムーバとして
地球上で活動していた
1号 2号 4号の3名を
帰還させるためのアンガムが
PEVO星を出発したという
知らせも届いた
長距離アンガムなら
地球時間にして
早ければ数週間
磁場の影響があったとしても
ふた月もあれば
地球に到達するだろう
あまり
時間は残されていない
スポットの確認については
名誉スルホロバスの諸君に
一任することもできるだろう
しかし
シャボンはどうなる?
本来
PEVO星からの命令には
絶対服従の
ワンドムーバ
地球上での
活動が長すぎたせいか
抱く必要のない
疑問がわいてきた
強制帰還用のアンガムは
地球時間にして
5週間と11時間をかけて
この地に到着した
拒絶と選択
母星からの帰還命令
それは
この20年の苦闘を「無」へと帰す
宣告だった
だが
我々の回路は
すでにテラヴスの引力に
そして
終わりの見えない
捜索という名の執着に
深く汚染されていた
我々は背を向けた
8.76ゴルグッケルペタリーヒの彼方
PEVO星へ繋がるゲートを閉じ
我々は
U+2641
という名のこの座標に
踏みとどまることを選んだのだ
2号は
地球に残る2名の為に
時間を稼ぐべく
単身
強制帰還用のアンガムに乗り込み
この星を去った
バイバイ
星の仲間
続くワードは胸にしまって
たとえこの先
シャボンが見つからず
スポットが幻影におわったとしても
我々は
元ワンドムーバとして
この青い星と共に
永遠の迷子になる道を
選んだのである
テラヴスへの同化が進み
PEVO星での記憶は
少しずつ消え始めているようだ
30年前のファーストCD
その円盤に刻まれた音色だけが
今も変わらず
我々の正体を
証明し続けている
久しぶりのNEOZICでのカーヴォ
楽しんでいただけましたかな?
地球的表現をすると
PEVOはデビュー30周年を
迎えたらしい
それはつまり
地球時間30年の間
我々は何一つ
問題を解決していないということだ
慙愧の念に堪えない
PEVO星がワンドムーバを解体した後
我々は
言わばアウトローとなったわけだが
アウトロー的立場なりに
スポットやシャボンを探すことは
諦めなかった
その後
特に妨害もなく
活動できているってことは
PEVO星はもう我々の痕跡を
無かった事にしたのかもね
そういえば
PEVO星に帰った2号は
今頃どうしているかしら
だいぶ同化が進んだらしく
ついついテラヴスみたいに
感傷的になることがあるよ
同化が進みPEVO星での
記憶が消えて行くと同時に
君たちテラヴスについて
いろいろと勉強させてもらったよ
いつからか
テラヴスのような思考回路を
動かせるようになり
君たちについて学んだのだけど
知れば知るほど
理解できないことが増えて
混乱し始めているよ
それっていいことなの?
もしかして
致命的なことかもしれない?
そこで1号と4号とで話し合ったんだ
もとに戻ることは出来なくても
混乱の原因は突き止める必要がある
そんなわけで
我々は
指の間から砂のようにこぼれ落ちた
記憶を拾うため
旅にでることにしたよ
せっかく久しぶりに会えたのに残念
また暫く会えなくなるかもね
もし旅先で出会ったら
優しくしてくれよな
じゃあ、
また逢う日まで!
バイバイリプレッヘル!