その獣は、不満だった。
オモチャで楽しく遊んでいた最中に、突如として得体の知れない漢に連れ去られ。
訳の分からぬ話をされて、得体の知れない知れない場所へと放り出されたのだから。
動物園に、帰りたかった。
また、オモチャで遊びたかった。
そんな不満を抱いて、彷徨う獣は、さっき迄遊んでいたオモチャににた存在を見つけて、喜んで駆け寄った。
「ほう…」
向かって来るゴリラを見て、漢(オトコは感慨深げに呟いた。
年齢は、よく分からない。老境に差し掛かっている様にも、壮年の様にも見える。
鍛え抜いた体躯の男だった。
自信と覇気に満ち溢れた傷だらけの顔貌を支える太い頸。岩を思わせる質感と、分厚いゴムの強靭さと弾力を持つ大胸筋。
皮膚の下のうねる筋肉の束が、力を入れずとも見て取れる四肢。
格闘家や武道家の類だと、身体つきを見れば誰しもが思い、そう納得する。
そんな肉体の持ち主の名は、鬼龍院茂。
六ヶ月の間に二百六十の道場を潰し、千二百人以上の死傷者を出し格闘の魔人。昭和四十年の日本格闘技界に於いて、拳王と呼ばれ、恐れられた漢である。
「私の相手が務まる人間が居ないといって、ゴリラですか」
鬼龍院は構えを取ることも無く、ゴリラを待ち受ける。
常人の四倍はあろうかという、キング・コング並みの体躯のゴリラを、少しも恐れてはいない。
ちなみにゴリラの体高は160cm〜-80cmである。大き過ぎる?サイズの話はするな。ワシは今メチャクチャ機嫌が悪いんや 。
人間の頭蓋骨を人神で噛み砕く顎と、人間の腕など一瞬で引き千切る。
人間など比較にならない霊長類最強の身体能力を持つゴリラを、座敷犬(ポメラニアン)を見る目で見つめている。
「ホギャアアア!!」
雄叫びと共に繰り出された剛腕を、鬼龍院は無造作に廻し受けで裁く。
瞬発力と持久力を司る柔らかい筋肉と、パワーと防御力を司る硬い筋肉。
相反する質を持つ二つの性質を併せ持つ肉体を有する鬼龍院にしてみれば、雑作もない児戯である。
ゴリラの攻撃をいなした鬼龍院は、短く息を吐くと、ゴリラの腹部へと正拳を撃ち込んだ。
「ぼぎゃああ!!」
ボクサーの様なスピードと、空手家の様な破壊力の突きは、ゴリラの強靭な腹筋をブチ抜き、内臓に深刻な損傷を与える。
続く蹴撃。ムエタイの様にしなやかで速く、まるで鞭の様にな一蹴。
鞭の様な、打撃というより、刃物に近い蹴りは、ゴリラの腹部を深々と切り裂き、鮮血を噴き出させた。
ゴリラは悟った。この漢は、オモチャでは無いと、己を上回る絶対強者だと。
敗北を────死を悟ったゴリラが、逃走の為に背を向けるよりも早く。
鬼龍院貫手が、ゴリラの心臓を穿っていた。
【動物園のゴリラ@TOUGH外伝 龍を継ぐ男 死亡】
「フッ…他愛も無い。所詮は畜生という事でしょうか」
息を僅かも乱す事なく、霊長類最強生物を屠った鬼龍院は嘆息する。
この鬼龍院茂を、拳王を招いた殺し合いであるというのに、この様な畜生でお茶を濁すとは何たる事かと。
鍛え上げた肉体を研鑽し抜いた技術を、全てぶつけられる敵を用意しておいて欲しいものだと。
「まあ良いでしょう。この次の相手に期待しましょう」
凄絶な笑みを浮かべ、鬼龍院は次の相手を求めて歩き出した。
【鬼龍院茂@押忍‼︎空手部】
[状態]:健康
[装備]: 無し
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜3
[思考]:強者と戦う
最終更新:2026年02月18日 22:03