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「(……お願い。誰か……、)」


 暗く、冷たい塔の最上階。檻の中。
無機質な鉄格子越しに覗く夜空には、暴力的なまでの流星群が降り注いでいた。
夜を切り裂き、見る者に甘美な幻想を味わせる──その大自然の輝き。
『彼女』にとってはそれは、友達が取得した「ほしを おとす ほうほう」──『PKスターストーム』さながらの光景だったかもしれない。


「(誰か、誰でもいい……。わたしの声を聞いて……)」

「(ネス、ジェフ、プー……)

「(暗くて、なにも見えないの……!)」


 赤いリボンを揺らすブロンド少女──ポーラ。
「リスポーン地点が檻」という主催者の悪意が透けて見える境遇にあって、鳥籠の姫君に許された抵抗は、ただひたすらに『いのる』ことだけだった。
物心ついた頃からその身に宿した超能力(PSI)。
──ポーラの無垢の祈りは、これまで幾度となく友の窮地を救ってきた。
ある時は傷ついた心身を癒す柔らかな光となり、またある時は、絶望的な戦況を覆す一筋の奇跡となって。
たとえ、ここが惨劇の舞台であっても、彼女は指針を揺るがすつもりはない。


「(お願い……届いて……!)」


ポーラは祈った。
降り注ぐ流星を拡声器代わりに、天を仰いで祈り続けた。
この地獄に囚われた全参加者の「救済」と、
何より──この檻から自分を連れ出してくれる『誰か』の到来を願って────。


「(壁の向こうの、遠い遠いところにいる…………心優しい誰か……!)」


極東の島国では、流星群が夜を駆ける七夕の夜、人々は願いを託すという。
ポーラは無我夢中で、その純粋な祈りを叩きつけていた────。


「……こんな場所に閉じ込めるなんて、ずいぶん趣味の悪い連中だね」

「え?」


 ──『その勇者』にとっての流星群は、「半世紀流星」──旅の終わりを告げる象徴だった。

 不意に、暗闇の密度が変わった気がする。
声が響いたのは、檻のすぐ外側。
ポーラが弾かれたように顔を上げると、そこには夜の闇を優しく撥ね退けるような、淡い光を纏った男が立っていた。


「……あなた、誰……?」

「え゙。……僕のこと、知らないの?」

「……ごめんなさい。分からないわ……」

「あ、あぁぁ……そ、そう…………。大丈夫大丈夫。全然平気さ。僕は勇者だからね。こういうことにも慣れてる。うん」


整いすぎているほどに整った顔立ち。──その面持ちは今、自身の青髪に負けぬほどの「青ざめたメンタルブレイク」を露呈している。
第一に目につくのは腰に差した剣。
次いで目線を奪う、時代錯誤なほどに古風な装束。
そして何より、初対面の相手に「まずは顔の良さ」を認識させるその容貌は、一目で『勇者』を想起させるに十分なものだった。


「……安心してほしいな。僕は勇者だからね」

「ゆ、勇者……?」

「そう、勇者さ。……いい響きだろう? 勇者。何度口にしても飽きない」

「…………」

「僕はね、この言葉だけは神様が発案したものじゃないかって、信じてるくらいなんだ」

「…………う、うん(ネスだってここまで自惚れないわ……)」

「もっとも、ハイターは“神なんていませんよ”って言ってたけどね。……この生臭坊主めっ! 彼にとって、勇者とは空想らしい……」

「……?」


呆気にとられるポーラへ、独りよがりな美学を云々かんぬんと並べ立てる男。
だが、その軽薄さの裏には、不思議と澱みのない『正義』が透けて見えた気がした。
それはほんの気のせいか、それとも彼女の勇者であるネスと照らし合わせた結果なのか。

彼は好き放題に話し終えると、まるで「今度は君が喋る番だ」と言わんばかりに──、


「──泣いている女の子を放っておくほど、僕は不格好じゃない」

カチャンッ……。

「……!」

「僕は──ヒンメル。この殺し合いを終わらせる──『勇者』だよ」


──『勇者ヒンメル』は、その無慈悲な檻の錠を軽やかに断ち切った。


「さあ、立てるかい? 僕の後ろにいれば安全だ」

「……ありがとう。(ちょっと変わってるけど……かっこいいかも)」

「ちょっとじゃないよ。僕はかなりかっこいい」

「えっ(こ、心……読んだ?!)」



──恐らくPSI(超能力)の類など持たぬはずの男が、何故ポーラの心を読めたかは、──彼特有の嗅覚として、置いておく。
無論、互いについて知らぬことは山積だ。
それぞれの出自も、胸の奥に秘めた真実も、そしてこの狂った『殺し合い』の全貌さえも、今はまだ霧の向こう側。


「……」


──例えばヒンメルにとっては、なぜ死したはずの自分が今ここに生を受け、全盛期の姿で若返っているのか。
──そんな、解読不能な矛盾さえも。


「……私、ポーラ。……よろしくね、ヒンメルさん」

「…………」

「……? ヒンメル……さん?」

「あ、ああ。ごめんごめん。…………フリーレンっていうんだけどね、彼女もハンバーグが好きだったなって」

「……なんの話?(ネスは……それを挟んだパンが好きだけど……)」


ただ、知らぬのであれば、これから『知ればいい』だけの話だ。
奇しくも二人は、知を探求し続けた『仲間』を持つ者同士。
未知を既知へと変える権利だけは、いかなる法の束縛にも、この殺戮のルールにも囚われない──全人類が平等に持つ特権である。

天文学者が今もなお、その真価と正体を探求し続ける、流星群の夜。


「ポーラ。いい名前だ」

「……そう?」

「うん。呼びやすいし、覚えやすい。僕はきっと忘れないよ。──」


「──よろしく。ポーラ」

「うん。よろしくね」


少女の切なる祈りは、こうして運命の歯車を静かに回し始めた──。


窓の外では、相も変わらず星々が流れ続ける。



「……うん、もう出ておいでいいよ」

「え?」


「…………ぐうっ…………!」



 最後に。


ヒンメルに促され、扉の向こう側から這い出してきた、
──『その男』にとっての、


「紹介するね。“誰か、私を助けて”って、……君は、『彼』を呼び続けていたんだろう?」

「え? え?」


──よれよれの開襟シャツに脂汗を浮かべた、
──あまりにも現世的で、
──あまりにも殺し合いにそぐわない『中年男』にとっての、


「……つくづく、世の中とは不可解の極みっ…………! やれテレパシーだの……やれ心の声だの……やれ、何故それにワシを選んだだの…………っ。──」

「──ククッ……。だが、あいさつ代わりの質問はこうっ……こう聞いた方が、君も締まりがいいはずだ…………」



──『流星群』とは、



「────き、君の……名は…………っ?」



──かつて地上を席巻した、大ヒット映画のワンシーンだった。



♪Fate, wishes... no matter how much
 (運命だとか願いとかって、)
 ♪these words reach out their hands—
  (言葉がどれだけ、手を──。)


【大槻班長@一日外出録ハンチョウ】
[状態]:健康
[装備]:宮本一@ハンチョウ
[道具]:不明支給品×2
[思考]:今日を頑張った者にのみ……明日が来る……!
1:なんだこの小娘は……?
2:平常心……平常心だ大槻……!
3:PSI……? 勇者……? ククク……そんな不確かなものに頼るから足元を掬われる……っ!
4:一日外出券が……パァ……っ! 責任取れ、ベリアル……っ!

【ポーラ@MOTHER2 ギーグの逆襲】
[状態]:健康
[装備]:くまのぬいぐるみ、フライパン
[道具]:不明支給品×2
[思考]:奇跡は、起こすもの。
1:班長さんに祈りが通じたの? ……どうしてこの人に?
2:……怖そう。でも、心の中は……すごくうるさい。迷ってる音がする。
3:ネスたちがしてくれたみたいに、今度は私がつなぐの。二人のあいだに、小さな光を。

【勇者ヒンメル@葬送のフリーレン】
[状態]:健康
[装備]:剣
[道具]:不明支給品×2
[思考]:一番かっこいい勇者であること。
1:ポーラの祈りは気高く、大槻の生存本能は逞しい。実にいいパーティだ。
2:フリーレン。君に教わった『人を知る』旅は、どんな世界でも続けられるらしい。
3:ゲームが終わったら地下とポーラ幼稚園に僕の銅像を建てよう。……もちろん、一番かっこいいポーズでね。
※参戦時期は死後です。
最終更新:2026年02月23日 13:30